『星漿体のガキが同化を拒んだ時ぃ?………。そん時は同化なし!』
『クックッ、いいのかい?』
『あぁ?』
『天元様と戦うことになるかもしれないよ?』
『ビビってんの?大丈夫。なんとかなるって』
――――俺達は最強なんだ――――
「「「「「めんそーれ!!!!」」」」」
五条悟と拝神崇、家入硝子と天内理子、ついでに庵歌姫が水着で大はしゃぎで海に飛び込んで行くのを夏油傑と黒井さんが見守りながら話し込む。
黒井さんの救出作戦はあっさり成功した。
そこら辺のことを二人はお互い頭を下げ合いながら話していると後ろから日傘を差した水着の冥冥が現れる。
「やあ、夏油くん。それと黒井さんだったかな?私は冥冥。好きに呼んで貰って構わないよ」
「は、はい、黒井と申します。冥さんですね、よろしくお願いします」
「話は一通り聞いているよ。災難だったね。せっかく沖縄まで来たんだ。君たちも彼らと一緒に遊んできてもいいんだよ」
「いえ、私は遠慮しておきます」
「私も十分羽を伸ばせてるんで。それにしてもよく都合がつきましたね。冥さん」
「割の良い依頼がいくつも来ていたのは確かだよ。正直来るつもりはなかったんだけどね。拝神くんにこの任務を受けてくれるならその倍以上の額を提示すると言われてね」
五条悟と夏油傑と天内理子は黒井さんの救出へ行き、拝神は一人協力者集めをしてこの海で集合する手筈になっていた。
『家入パイセン!沖縄いきましょう!沖縄!』
『んー。まーいいけど。でも沖縄まで行って何すんの?』
『五条パイセンの頭(の疲労を)、治してほしいっす!』
『崇……。ごめんね。私も五条の頭までは治せない。…ホントにごめんね……!』ヨヨヨ
『合ってるけど合ってない!伝え方ミスったっす……んでどーします?』
『もち、行く』
そして家入パイセンの隣でずっとチラチラスタンバってるウタヒーパイセンの方を向いた。
『で、ウタヒーパイセンもついでに一緒に行きますか?』
『ついでって何よ!ついでって!い、行かないわよ!だって予定が……』
『えー?先輩もいきましょうよ』
『そうっすよ!みんなで旅行っす!』
『そ、そう言われても…そ、そうね、どうしてもっていうなら…』
『ウタヒーパイセン行かないって!美味しいお店予約してたのになー』
『ちょっ』
『残念だねー。せっかく一緒に服とか見て回りたかったのになー』
『ああ、もう!行く!私も行くから!!』
実に無駄のない連携である。
「空港の方は沖縄の術師のユタの方たちの力を借りてるそうだよ。なんでも現地の人のほうが危ない人たちをよく知っているし、そういう他所から来た呪詛師にも鼻が効く、だそうだ」
「………それはずいぶんと抜かりないですね」
「それだけ今回の案件に気を使ってるんだろうね。まったくこれじゃあ大人顔負けだよ」
ふと景色を見ると沖縄の砂浜の波打ち際で七海建人は歩いていた。
夏の爽やかな風を受けながら浮き出る汗をハンカチで拭う。ふぅと息を吐くと目を細めた。
あとからやってきた灰原が大手を振りながら七海に呼びかける。
「七海〜!!一緒に遊ぼー!」ビーチボールモッテキタヨ‼
「マレーシア………そうだな…マレーシア…クアンタンがいい」
「えっと…な、七海?どうしたの?」
「なんでもない海辺に家を建てよう……」
「七海が変な電波受信してる!?!?大丈夫?七海!七海ってば!」
「買うだけ買って手をつけてない本が山程ある。一ページずつ今までの時間を取り戻すようにめくるんだ……」
「帰ってきて七海ぃぃぃぃぃ!!!!」
「はっ!私は、何を?」
とそんなふうに仲良し二人の会話が聞こえる、
「……まあみんな疲れてたみたいだし、いい気分転換になるんじゃないかな?」
「一応これ護衛任務なんですけどね」
「ブハハハハハ!ナマコ!ナマコ!」
「キモ!なのじゃー!」
「ひぃあんた達よくそんなもの触れるわね!」
「「!」」キラーン
「いやぁぁぁ!!こっち持ってくんじゃないわよ!!!」
逃げた先に家入硝子の後ろ姿。思わず助けて硝子!と叫ぶ歌姫。振り返った家入硝子のその手にはダブルハンドナマコだったそうな…。
「いやああああ!!!!」
「うるさいっすよウタヒーパイセン。どこのスクリームクイーンすか!」
「みんな集まってくれ!そろそろ昼飯を食べるとしよう!」
夏油傑の声掛けにみんな集まって浜辺で各々の昼食を取る。食事中も五条悟は大暴れでワイワイガヤガヤ騒がしい。
この日はみんなきっと術師じゃなかった。
最低限気を張ってはいたけど、みんなで騒いではしゃいで遊んで笑いあってそこには普通の中学生と高校生しかいなかった。
「ほら五条。ここ座って。頭、回復するよ」
「ん、ああ」
「星漿体だっけ。理子ちゃんなんでしょ」
「まーな」
「どうにかならないの?」
「……。どうにかって?」
「そっか。なんでもない。はい、これで終わり」
みんな薄々気づいていた。
………灰原以外。
「今日なんかみんな、変?」
「灰原は気にせずいつも通りでいてください」
「うん?おう!」ワカッタ
「理子ちゃん、買い物行こっか!」
「えっと庵さん」
「歌姫でいいわ」
「は、はい。でも…」
戸惑いながら向けてきた視線ににこやかに返す。
「大丈夫。警備も万全!時間も余裕ありあり!あ、でも水族館も行くっすから長すぎはだめっすよ。わかったっすかウタヒーパイセン」
「わかってるわよ!」
「やった!黒井!」
「はい!楽しみですね!」
「私も行く〜」
「わあ、家入さん!」
少し離れたところで夏油パイセンが携帯電話て話している。そのままこっちに来る。
「冥さん、七海、灰原、崇。夜蛾先生から話があるらしいから悟と少し抜けるよ」
「ああ。任せると良い」
「はい、わかりました」
「その間、頼んだ」
「「はーい」」
みんなが見える位置且つ人気の少ないところで話をする。
「朗報だ。同化の件。了承を得ることが出来たぞ」
「ええと、何の話でしょうか」
「………なんだ、崇から話を聞いていないのか」
それはまさかの同化しない選択肢の話だった。
「天元様は星漿体の意見を尊重する。同化を拒んだらその通りにしてほしい、だそうだ」
「ただ同化しないことを選んだ場合、天元様が自身の意志に関わらず進化したときのことを考慮してお前たち二人には明日の夜、天元様のところに居て貰うのが条件だ」
「まさかこんな事になるとはな。おかげでこっちも今から各所に説明と根回しだ。だから手助けはできん」
「たとえ同化しない道を選んだとしても命を狙われていることに変わりはない。引き続き任務を任せる。気を抜くなよ」
ツーツーと通話が終わる。
二人は目をまんまるにして顔を合わせると吹き出すように笑い始める。
「なんだよそれ!」
五条悟と夏油傑が考えていた天元様と戦うという最悪の構図が拝神崇の
ひとしきり笑いあったあと、これをサプライズにしようと話し出す。
水族館に行って、予約していたディナーを食べて、そのすぐ後に移動して夜に飛行機で帰るそういう予定だ。
そしてディナーの最中にそれが伝えられる。
「理子ちゃん。私達は君の味方だ。どんな選択もその未来を私達が保証する」
「わ、私は――――」
その答えは聞くまでもなく。
少女のささやかな願いを叶えるためにそれぞれがそれぞれに覚悟を決める。
十年後、二十年後。
いつ思い出しても大変だったけど最高の結果だった。
そう笑い合ってふざけ合って胸を張って言えるように。