オガミ婆の孫(本物)   作:スターリー

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IF7

 

五条悟は呪力で身体を強化して刀の動きを止める。

 

そのまま応戦しようとしたとき、作戦会議後に拝神がこんな事を言っていたのを思い出した。

 

『一応作戦考えていたんで伝えておきますね!どうするかはお任せするっす。パイセンたちの考えをプランAとするなら俺のはプランB的な感じで!』

 

なんの遠慮もせずに意見してくるのが拝神崇の良いところで生意気なところ。それを気にしない五条と夏油の懐の深さもある。つまりいい先輩後輩である。

 

『二人とも天内の安全が確保できるまで逃げに徹してほしいんすよ。一人で足止めとかして、別にアレを倒してしまっても構わんだろう?的な考えだとダメな相手だと俺は思ってます』

 

二人とも常にどこかに俺一人で大丈夫でしょ的な考えがあるだけに気まずげに視線をわずかにそらす。

 

『どんなに強い伝説のポケモンだって相手のレベルが高くて相性対策されてれば簡単にやられるんす。ボッコボコっす』

 

もし、パイセンズの対策が済んでるなら敵の狙いは一対一の状況にこそある筈だ。

何をしてくるか分からないなら、相手のペースに乗るのだけは止めるべき。特に今は自分たちだけじゃなく天内の命がかかってる。

 

『せめて数の利と相性をズラせる状態を確保しましょう。いいすか。パイセンたちがそれを守れないなら死ぬのはパイセンたちじゃなくて天内と俺っす』

 

拝神は頭を下げる。

 

『だから、お願いします。どうか俺たちを助けてください』

 

五条悟を貫いたのは呪具ではない普通の刀。

だからこそ呪力探知に引っかからなかったし、気付けなかった。背後に現れた瞬間に気取って即座に反応してみせたのは五条悟の勘がイカれてるだけ。本当ならこれで終わっていた。

 

普通なら強い敵を相手にするとき、少しでもダメージを与えるために威力の高い呪具を使いたがるものだが、伏黒甚爾は恐れから来るおよび腰や心の余分から生まれる勇み足のような不確実性を捨てられる。

 

恐るべきステルス性能と六眼ですら取り逃す身体能力、それを十全に活かしきる頭とそれを淡々とこなせる判断力と精神力。

 

筋肉だけじゃねぇ!それを一瞬で理解させられた。

 

だが、幸い大事には至っていない。

無下限でぶっ飛ばして、身動き取れないうちに夏油の呪霊が飲み込む。

 

二人とも思い出していたことは同じだったらしい。

心配するより早く互いに目線を合わせて頷く。

 

「「プランBで!」」

 

即時撤退を開始する。

 

呪霊の腹の中で武器庫呪霊を身に着けて釈魂刀を取り出すとぶった斬って脱出する。

だが、その場に誰も居なくなっていた。

 

それは伏黒甚爾にとって予想外の行動。

自らは強いと自負するやつはそれ相応にプライドが高く、自惚れる。そんなやつほど勝負を挑みたがるものだ。

 

「撤退、ね。どっちかをやるつもりだったんだがな」

 

あの二人じゃ出来ねぇ考えだな。恐らくあのガキの入れ知恵。まあいい、と半殺しになって転がっている一級相当呪霊を武器庫呪霊にしまって四人を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

「拝神、大丈夫か?」

「よゆーよゆー」

 

そんなことはないのである。

 

熱と煙に包まれた通路であんな暗殺者の鏡みたいなやつの相手をするのはゴメンだ、と奥まで進んだは良いものの拝神は苦虫を噛み潰す。

 

拝神と天内は今天元様の居る場所の手前の開けた場所に身を潜めていた。

ここに来るまで逃げ一択で総スルーしてきたが伏黒甚爾をまるで正解の道に導くように呪霊どもが配置されていた。

 

ようやくたどり着いたこの空間もなんちゅー構造してんだっと嘆きたくなるほどごちゃごちゃした造りで、その上、ここを我が物顔で住み着いている一級相当呪霊が三体。

 

 

あの呪霊ども。

伏黒甚爾の仕業ではないだろう。

今までにこんな戦法をしたことなんて聞いたことないし、そもそも高専内部の人間しかできない犯行だ。

 

なら、あり得るのは総監部関連。

まだ混乱の最中。犯人探しはまだやる余力はないはず。他に何の因縁があってどんな思惑があるかは分からない。決めつけや思い込みは視野を狭めるのと変わらない。現状今ある情報だけで推理するには足りないものが多すぎる。じゃあ置いておくべきだ。無駄な思考はカットカット。

 

ただわかるのは、最低限機能していればここまで高専結界内部が荒れてはいなかった筈だ。パイセンたちや天内の命が脅かされるリスクも減っていたはず。

 

その原因は…。

 

「俺にある」

 

観察を止める。

天内にバレないように目を閉じて静かに息を吐く。もっと良く考えて行動すべきだった。この責任はこれからの行動で取り戻す。

 

よし!切り替え!切り替え!

 

「どうするの?」

「もちろんこのままスピードで天内を天元様んとこまで届ける」

「わかった。拝神」

「ん?」

「ありがとう」

「ストップ。今何か言うと死亡フラグにしか聞こえないからナシで!」

「もう!なんなんじゃ!まじで!」

 

「まっ、後で聞くって。みんな一緒にゲームでもしながらさ!」

「………うん!」

 

昨日までと違って天内には明日がある。だから急ぐことはないんだ。

 

投射呪法で天元様の結界手前まで来たところで呪霊どもにバレる。

同じ顔をした大量の呪霊の攻撃。その隙間を縫うように避けて、残り三歩のところで目玉の呪霊の術式で動きを止められる。奥に見えるタレットを生物化したような呪霊から莫大な呪力。

 

天内を天元様の結界に投げ飛ばす。

 

「ぎゃあああ!こんなんばっかじ」

 

天内は無事結界の中にぶん投げ…避難させることができた。

 

撃ってきたのは光弾。簡易領域と呪力ガードで防ぐが、盾にした左腕がモザイク必至の状態に早変わりである。

 

だが天内の安全は確保した。

第一目標は達成。これよりディフェンスからオフェンスへ。

 

敵は動けない縛りで高火力の光弾を撃ってくる術式の固定砲台呪霊。攻撃しない縛りで視界に入った者の動きを封じる術式の目玉が無数についた球体の呪霊。本体が小さく弱い縛りで生み出す呪霊が強い上に一定時間ごとにねずみ算的に増える増殖呪霊。

 

怪我させたのが余程嬉しかったのか呪霊どもが笑い声を上げている。

 

「いひっ!」

 

拝神は腕に術式を投射する。

コマ打つのは肉体が再生していく過程。骨、神経、血管、筋肉と繋がって元の腕に戻っていく。謂わば自己治癒の加速。再生も突き詰めれば肉の動きでしかない。体力も消費する縛りはしたものの反転より遥かに軽い呪力消費で腕を治す。

 

「いひひひっ!舐めやがって…!」

 

恐らくここが最終防衛ライン。

 

「あんまこっち、見下してるとよォ」

 

するべきはパイセンズが来るまでにこいつ等を殺すこと。

 

「痛い目ぇ見ちゃうんだからなァ!」

 

 

 

 

逃げる五条と夏油は通路にいる呪霊を通りざまに殺す。

これで二体目。スルーしてもいいが、この先で戦ってる最中に横槍を入れられても困る。

銃声。銃弾が夏油に向かって飛んでくる。なんとか頬を掠りながら回避する。もう追いついて来たらしい。

 

だが姿は見えない。

 

揺らぎを見て五条がすかさず反撃しようとするが、すぐに煙の中に消えるだけ。探るように五条は声を上げる。懸賞金関連の煽り合いをするがネタバラシをくらうばかりだ。

 

「天元様から同化はしないと通達があったはずだ!なのに何故まだ星漿体を狙う!」

「天元が同化を始めて数千年。今更そんな話を素直に信じるバカはいねぇさ。実際オマエらはここに居るわけだしな。それに連中にとっちゃ俺が殺そうが同化しなかろうがどっちも変わらないんだろうよ」

 

五条が発せられる声から位置を特定する。

通路の幅目一杯の蒼が通路を破壊しながら進む。夏油も意味があるかは不明だが、無限ループ呪霊を設置しておく。

 

「行こう」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

拝神の音速の飛び蹴りが炸裂する。

 

「これでぇ!ラストぉぉ!!!!」

 

増殖呪霊が弾け飛んだ。

それと同時に爆発音。振り向くと血だらけのパイセンズが降りてくる。

 

「めっちゃやられてるじゃないすか!」

 

すぐに駆け寄って反転で出来るだけ治す。

 

二人は煙で視界が遮られる中、奇襲してくる伏黒から逃れつつ道すがらにいる呪霊全てを祓ってきた。

 

「ぜんっぜん大したことねぇから!それより天内は?」

「天元様に守ってもらってます」

「そうか。これで一安心ってところかな。さて…」

 

上からスタッと降りてきた無傷の伏黒甚爾。

武器庫呪霊を身体に巻き付けて、右手に万里ノ鎖のついた天の逆鉾。左手に釈魂刀。もう凄みしかない。

 

「崇、気をつけろ。右のは術式解除、左のは硬さ関係なくぶった斬ってくる」

「えぇ?規格外過ぎるでしょ!フルアーマーダブルゼータかよ!」

「ふる…?」

 

伏黒が通路で一人でも殺しておかなかったのは、ここで無理をする必要はないと踏んだからだ。

それよりも選んだのは二人を相手取るための反応速度や術式発動までのラグ、連携の隙といったデータを揃えながら、ブランクからくる自らについたサビを落とし勘を取り戻すこと。

今の伏黒甚爾なら奇襲に頼る必要もないだろう。

 

「あんま逃げんじゃねぇよ。生憎、男の尻を追いかける趣味はねぇんだ」

「じゃあ帰れよ。こっちだって追われる趣味はねぇよ!」

「オマエらが退けばそれで済むんだがな?」

「それは出来ないな。こっちだってプライドがある。それより、もうこそこそするのはやめたのかい?」

「もういい加減面倒なんでな。そろそろ終わらせてもらう」

 

「そりゃ、こっちのセリフだっつーの!」

 

最終決戦が始まる。

 

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