オガミ婆の孫(本物)   作:スターリー

4 / 38
4

「順平。今日は遅いから君はもう帰りなよ」

「えと、でも……はい。わ、かりました」

 

 その言葉に理解を示すと目隠れ少年はこちらを少し凝視した後軽く会釈して帰っていく。彼の背中をしばらく見送った後、ツギハギが無邪気に笑う。

 

「アンタがオガミ、だっけ? 夏油から話は聞いてるよ。俺が真人。……それじゃあ始めようか!」

「ほーん。お前が真人ね。よろ、って何を!?」

 

 真人の手から放たれ、膨れて現れたのは呪霊? のような何かである。

 

 質量で押しつぶす攻撃をひょいひょいと避けながら解析を進める。あっこれ人か。ははーん。流石呪霊禍々しとるわ。キッショ!

 

 てか目があったらバトルとかポケモンかよこいつ。いや羂索の手持ちか! つまりこれはポケモンバトル! (違う)

 

「夏油がさ! アンタのこと強いって言ってたから、会うの楽しみにしてたんだ!」

「へー、そりゃ過分な評価でぇ。ありがたいかぎりでぇ。でもそれがなんで戦うことになったのか理解できないんですけどね!!」

 

 生まれたばかりだな。そう結論付けるには証拠が多すぎる。

 呪術の基本もそうだが、構えの隙、立ち居振る舞い、術式の理解、瞬時の判断。そこかしこの粗さ。攻撃の単調さ。フェイントの素直さ。戦闘経験の薄さが手に取れる。

 

 人ならともかく呪霊の思考なんて読もうとも思わないが、人型であるからこその動きの読みやすさがある。

 

 術式、狙い、呪力の流れ。

 そのすべてが次の攻撃へのヒントになる。答えが分かってしまえば後はそこに正解となる技を置いておくだけ。

 

 奴の攻撃の起点はあの両手。

 意識が両手に集中し過ぎでわかりやすい。なんとか触れたいという意識がバレバレである。術式は触れた者の形を変える能力だろうとざっとり目星を立てる。いや、自分の形も変えられるか? 俺ならそうイメージするね。

 

 案の定、腕ごと刃に変えた真人の攻撃を軽く受け流して投げ飛ばす。次は、避けられないように速さを補うために足もそれらしく変えてくるかな? なら、こちらはあらかじめ予備動作を済ませておくのだ。

 

「へぇ! やるね! 今の避けるんだ!」

「はっ? なめてんの? こんなんが特級とかまじ? やる気がないんなら帰んぜ?」

「冗談! こっからでしょ!」

 

 呪霊人間的なアレが数体放たれる。

 次は武器としてでなく兵隊として。まあ、どうせ囮だろう。アレが人間だと言うなら弱点は人間と同じと見て良い。ならば脳を一撃で破壊するか、足を破壊すればそれだけで無力化は可能だろう。

 

 さっきまでの数体で魂からの情報は引き出し終わっている。

 改造人間呪霊もどきの命は長くは持たない。弄くり方して生命が持つはずがないのだ。これからの工夫で呪霊程度には動けるようになるだろうけども。

 そんなことより重要なのは肉体を改造するのではなく、魂ごとを改造されているということ。つまり、そういう術式なのだろう。

 

 改造人間の攻撃を反らして避けたそのすれ違いざまに振り返れないよう足を破壊する。

 そして最後に残った改造人間に今までと違うかなり呪力を込めた拳を振るう。その身体を貫通して、その後ろで虎視眈々と隙を伺っていた真人の脳天に突き刺さる。

 

 悲鳴と後方への衝突。その一瞬にも目を配る。手応えとぶっ飛ばされた瞬間の様子を見て判断するのだ。

 

「へー。ダメージ無いんだ。おもしろいじゃん。ほら、次来いよ。いっひっひ。魂の自己補完による再生かな? それイいね」

 

 実に邪悪な笑みである。

 呪霊特有の呪力による再生ではなく、魂の自己補完からの再生。並の術師ならお手上げだろう。だが、拝神という呪詛師は違う。それを見切ると次はその魂の外殻を捉えて砕くように呪力を廻す。

 

 その選択が出来る。

 

 終始優勢。生まれたてとはいえ、術式の使用も無く体術のみで真人を圧倒する。

 本人に自覚はないが、呪術師、呪詛師、呪霊のバランスを五条悟が壊したならその線引を少し戻せるぐらいに…………。

 

 強い。

 

 ヒリつくような威圧感。薄ら寒くて、まるでナイフで薄皮をなぞられているかの様な嫌な感覚。それは恐怖を実感するということ。真人の顔色が変わる。ただの実験台から、自身の命を握る敵へと意識が移り変わる。羂索が言っていた強さというものを理解する。

 

「俺の術式は触れた魂の形を変える。無為転変!」

「イヒッ! 術式の開示による威力の底上げ。よちよち偉いぞ〜。それくらいは知ってたんでちゅね!」

「くそっ! いつまで余裕ぶってられっかな! アンタもそろそろ術式使ったほうが良いんじゃない?」

「はははっ、使わして見ろよ。じゃないと特級の名が泣くよなぁ?」

「上等!」

 

 両者気合十分。呪力が爆上がりして今にも殺し合おうと踏み出そうとしたその時だった。

 

「はいはい。二人共そこまで。まったく来といて良かったよ」

 

 計画がおじゃんになるところだったと言いながら羂索が現れる。そこで死合は終了である。拝神はふぅと肩の力を抜いて分かったとジェスチャーして、真人はいいとこだったのにと肩を落とすのだった。

 




誤字脱字報告ありがてぇありがてぇ

ナナミン、生存してほしい?

  • 強化して生存
  • 原作こそ美しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。