DGP第一ゲームからの翌日の朝、一夏と箒は食堂で朝食を摂っていた。しかし一夏の表情はお疲れ気味だった。
「一夏…」
「何だ」
「…昨日、何があった?」
「……聞かないでくれ、頼む(言えるわけねぇだろこればかりは…)」
「承知した…」
箒は一夏の表情を見てこれ以上は追求しなかった。何があったかそれは前日に遡る。
◇
その写真には浮世
そして一夏は
『よう、届いたか?』
『【届いたか?】じゃないですよ⁈なんで
『ああ、それは束が俺の妻だからだ』
『……へ?』
一夏は束が
『つ、妻……?は、はは…また俺を化かそうとしても冗談キツいですよ?』
『嘘かどうかは本人に聞いてみろよ』
『それってどう言う『アロハーいっくん!久しぶりだねぇ!』……束さん?』
突然
『いっくん元気してた?私は元気だよー♪』
『あ、はい。お元気そうで何よりです……』
束の相変わらずのマイペースぶりに一夏は戸惑いながらも返答する。
『あはは!驚いたかな?』
『はい…それはもう』
『ふふっ!多分いっくんも写真見て気づいてると思うけど、私…エーくんと夫婦になったんだ。養子だけど1人娘もいるよ!』
『はい……』
『あ、あれ?あんまり驚いてないね?』
一夏は驚きで固まっているのではない。ただ単に言葉が出ないだけなのである。そして数秒後にゆっくりと口を開く。
『あの……束さん』
『ん?何かな?』
『えっと……おめでとう御座います』
取り敢えず祝福の言葉を送る一夏であった。
『ありがとういっくん♪』
『ちなみにいつから交際してたんですか?』
『えーっと……いつだっけエーくん?』
『第1回モンドグロッソ後だろ?』
一夏は頭を抱えた。ISを作った科学者とデザイアグランプリで不敗を誇り、今はその願いで世界中誰もが知っているスターとなった男と交際してるとなると騒ぎのレベルではない。
『2人ともすみません、少し状況を整理したいのでまたかけ直しますね』
『うん分かった!それじゃあまたね!はい、エーくん』
『また次のデザグラでな、それとちゃんと送った服着ておけよノアール』
通話が切れたスパイダーフォンをポケットにしまい一夏は椅子に深く腰掛け大きくため息を吐く
『あの束さんが結婚……しかも相手は
束にお相手ができた事は一夏としては素直に嬉しいが相手が相手のため頭を抱えられずにいられなかった。
『(箒はこの事は知ってるのか?)』
そんな事を考えているとスパイダーフォンからではなく一夏のスマホから着信音がなり画面を開くと束から一通のメッセージが来ていた。
『(束さんからだ……一体なんだろう)』
一夏は束本人と連絡先は交換しているので連絡はしようと思えばできるし、立場上中々連絡できず一年に数回程度しか連絡しないのだ。一夏は束のメール内容をよむ。
【いっくんへ。箒ちゃんにはさっきの事は秘密にしておいて、ちゃんと…全てを片付けたら、ちゃんと伝えたいから】
『わかりましたよ束さん。俺は信じてますから…。束さんの願いも…叶えてみせますから』
〜♪
『ん?もう一通来たな』
また束からでありメッセージを読み上げる。
【伝え忘れてだけど、デザイアグランプリに関しては私も知ってるから秘密を共有しても大丈夫だよ!だから困り事があったらいつでも聞いてね♪】
『なっ⁈』
束がデザイアグランプリの事を知っている。しかも共有しても問題ないことと来た。
『(なんで束さんがデザイアグランプリの事を…デザイアグランプリは関係者以外にこの事を話すと強制脱落なるはず……まさか)」
一夏はある推測がよぎるが、また次のデザグラで聞く事にし、荷物をまとめた後食堂に向かう。その際女子生徒から一体何があったのかと言う表情で多くの視線を送られる事になったのは言うまでもない。
◇
「一夏、何をボーッとしている。冷えるぞ?」
「わかってる…」
「ねぇ織斑君」
「うん?」
一夏が横を見るとクラスメイトの三人が朝食を乗せたお盆を持って立っていた。
「と、隣いいかな?」
「あぁ、いいぞ」
「やった!」
2人は一夏の隣に並ぶように座る。
「そういえば織斑君朝は多いんだね。やっぱ男子だからかな」
「そうか?俺は朝多く摂る方だけど、逆にみんなそれぐらいでいいのか?」
一夏の質問に谷本と鏡は顔を引き尽かせた。
「えぇ…まぁ…」
「ちょっとね…」
「お菓子食べてるからね~」
「そいつは聞き捨てならないな。無理なダイエットやバランスの良くない食事は逆に体に悪影響だ。一番なのはよく食べよく動くことだ。後は頭を使ったりとかな…」
この言葉は3人だけでなく箒にも響いたようで4人は何か考え込むような顔になった。
「さて、早く食べ終わらねぇと授業に遅れっちまう」
「一夏、私は先に行く」
「おぅ、分かった」
箒は先に食べ終え席を離れた。
「ねぇ織斑君と篠ノ之さんって仲良いよね」
「まぁ、幼馴染みだからな」
「そうなんだ!!」
「ねぇねオリムー、なんだが疲れてる顔してるけど大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。それにオリムー?えっと…君は(そう言えばこの子、前のDGPで……)」
目の前にいる女の子が前のデザイアグランプリで助けたうちの片割れである事を思い出す一夏。
「布仏本音だよ!よろしくね〜、名前は織斑からとってオリムーだよ!」
当然彼女も一夏……ノアールギーツが助けてくれた事は覚えておらずこの世界では初対面となる。
「そう言う事、よろしく布仏さん。それより布仏さんが着てる服って…狐?」
「そうだよ〜、可愛いでしょ?」
「……」
狐と聞いて一夏の脳内には浮世英寿と仮面ライダーギーツが浮かび上がっていた。一夏は狐と聞いてしまうとその二つが頭によぎってしまい狐と言えば?と、問われたらこの二つを間違いなく答えるだろう。自身も黒の狐なのだがどうしても浮世英寿の浮かび上がってしまう一夏である。
「お前達、飯は効率よく食べろ。授業に遅れたらグランドを走ってもらうぞ」
千冬の言葉で我に返った一夏達は急いで朝食を済ますのであった。
時刻は2時間目の終わり、千冬は一夏に話しかけた。
「織斑、お前のISだが、準備まで時間がかかる」
「ん?」
「お前には専用機を用意されるそうだ」
この言葉はクラスメイト達を震撼させた。
『せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?』
『つまりそれって政府からの支援が出てるってことで…』
『いいなぁ…私も早く専用機欲しいなぁ』
何故みんな騒いでいるのか一夏は理解出来なかった。
「織斑、試しに教科書の6ページを読んでみろ」
一夏はページを開きそこに書かれている内容を読んだ。
「『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS467機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』」
「よろしい。本来IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。だからソレ等に所属してないお前が専用機を与えられるのは異例中の異例だ」
「フーン」
「しかしお前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解出来たか?」
「なんとか…(成る程…束さんだな、専用機を俺に造るの)」
一夏は千冬の表情をみて意図を察しあえて教科書の内容を読ませる事で専用機が束宛からだと言うのを察する
ここで生徒の1人が手を挙げ質問をした。
「あの先生、思ったんですけど篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」
「ええええーっ!??す、すごい!!?このクラス有名人の身内がふたりもいる!!?」
「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!??やっぱり天才なの!??」
「篠ノ之さんも天才だったりする!??今度ISの操縦教えてよ!!?」
すると女子達が一斉に箒に詰め寄って行った。
「あの人は関係ない!!?」
箒の怒鳴り声により周りは一気に静まり返る。
「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」
「………さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」
「は、はいっ!」
「(今のは千冬姉の責任だろうに……)」
「織斑、何か言ったか?」
「なにも(さりげなく心読んでんじゃねぇよ…ここは)織斑先生はいつになったら家事の改善はできるのかなあ、なんて事は考えていませんよ?」
「よ、余計な事を言うんじゃないこの愚弟!!」
千冬はチョークを投げつけるが一夏は指を挟むことでキャッチする。一悶着あったが、授業は開始された。
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど。まあ、一応勝負は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね」
「……(ウルセェ…)」
一夏は鬱陶しくて仕方なく適当に聞き流す。
「ご存じないのなら庶民のあなたに教えて差し上げましょう。この私、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの!!?」
「フーン…あんたの自慢話なんか心底どうでもいいわ」
「なっ⁉︎……馬鹿にしていますの!!」
「他のクラスとか学年の先輩とかも持ってるだろ?確かこのクラスにはいないが、1学年には日本の代表候補もいただろ?」
「くっ……こほん。さっき授業でも言っていたでしょう。世界でISは467機。つまり、その中でも専用機を持つものは全人類六十億超の中でもエリート中のエリートなのですわ!!?」
「なぁ…」
「なんでしょう?」
一夏はセシリアに質問し問う。
「人類って六十億超えてたのか?」
一夏の発言に一同はずっこける。
「そこは重要ではないでしょう!??」
一夏の質問に綺麗なツッコミが炸裂した
時間が進むこと放課後、校舎と学園寮の間の道にて、箒と一夏は横に並んで歩いている。しかし一夏の頭はほぼ前日の事で頭が一杯だった。
「(
未だ
「一夏…」
「なんだ?」
「オルコットに、勝てるのか?あれでも相手は代表候補なんだぞ」
放課後となり一夏は篠ノ之箒と一緒に寮に向かって帰宅している道中だった。
箒は一夏が勝てるのかどうかわからない。
「ISに関しては基礎知識を少しずつ身につけている所。操縦に関してはぶっつけ本番になるだろうな…(負ける気はしないけど)」
「そ、それなら、私が決闘まで相手をしてやろうか?」
「いいのか?」
「も、もちろんだ!」
箒の提案に一夏は素直に受けるが、箒の心境はかなり不安だった。
「(い、一夏のヤツ。昨日あんなことがあったというのにやけに平然としていないか?)」
一昨日の出来事が未だに頭から離れない箒、あそこまでの異常な殺気は箒は受けた事はなく、思い出すだけで冷や汗がかいてくる。一夏はこっちを見ていない。再開した時の雰囲気とは違い一気に別人のような雰囲気に箒はまだ戸惑っていた。
「(しかし、承諾したはいいが……大丈夫だろうか?)」
箒は懸念していることがある。一夏の腕前がどの程度あるのかということだ。再会するまでにそれなりの月日がある。
剣の腕というのは一日だらけると取り戻すのに五日かかるといわれるので剣を握っていない時間が長ければ長いほど衰えは大きくなってしまう。
「(もし、一夏の剣が衰えていたら?)」
箒は不安を抱えながら学園内にある剣道場へ向かう。
そして、箒の懸念は無駄に終わった。
「ど……どういうことだ!?」
「ん、なにがだ?」
箒の声に一夏は面を外して尋ねるが、彼は一切額には汗が一滴も流れていない。
それなのに平然と『鈍ってるかな?』平然というのだからこちらとしてはたまったものじゃない。
「お、織斑君ってかなり強い?」
「すごい。何が起こったのか全然わかんないし、て言うか…あれ何?いわゆる剣気ってやつ?見てる私も怖くて動けなかったんだけど」
「ぜ、ぜひとも剣道部に入ってほしいわぁ!」
「い、一体。今までどのような生活をしていたらそんなに強くなるんだ?」
昨日の殺気でもしかしたら、と思ってはいたが、一夏の強さは彼女が思っていた以上に凄まじいものだった。剣の腕は昔と比べたら天と地の差といえるほどに上達していて箒などでは歯が立たないほどに差はあった。
今の一夏はDGPで命懸けのゲームを2度も最後まで生き残った仮面ライダーだ。人が目の前で殺される場面をたくさん見た。生きるか死ぬかの刹那の中で戦い抜いただけあって一般留まりの箒には理解は出来ないだろう。
「……どうしても追いつきたい人がいる。悪いけど…言えるのはそれだけだ」
一夏の瞳と背後に並々ならぬ覚悟と出来事があったということを箒は感じた。
「(私が知らない間に…お前をそこまで…)そうか……なら、後はISの動きくらいだな……というか、私を鍛えてほしいくらいだ」
「?箒も十分強いだろ?」
「あんな無茶苦茶な剣筋…誰が見切れると言うのだ⁉︎あれを見切れるのは千冬さんくらいだぞ!」
箒の発言に他の剣道部の女子も頷く、ほぼ箒は一夏に手も足も出ずにやられており…一夏基準では感覚も狂ってしまっているのだ。
「そ、そうか?そういや、箒はISのことには詳しいのか?」
「……まぁ、そこそこにな。お前よりかは知識がある」
「なら助かる。来週までよろしく頼む(まだ、束さんとはギクシャクしてるみたいだな。今の俺にできるのは、見守ることくらいかな)」
一週間の間…基礎を学び、6日後の決闘に励むのだった。