「負けて……しまいましたね…」
クラス代表決定戦の後、セシリアは部屋へと戻りシャワーを浴びていた。
今日の試合、自分は織斑一夏に負けてしまった。自分は彼より上だと思っていたが彼は自分より強く、それを担う技術、そしてあの冷たくて殺意に満ちた瞳、まるで戦場を経験したかのような動きだった。
家に婿入りした父。母は女性ながらも多くの会社を経営し、成功を収めた人だった。セシリアにとって理想の強い女性だった。そんな母の機嫌をとるべく父の態度は弱々しいものだった。ISが開発され世界が女尊男卑になってもっと酷くなった。そんな父親を見て幼いながらも『将来は情けない男とは結婚しない』と思っていた。
その両親はとある越境鉄道の横転事故で死んだ。手元に残った莫大な遺産。
それを守るためにセシリアはあらゆる勉強をした。その一環で受けたIS適正テストでA+を取った。
政府から国籍保持のために様々な好条件が出された。両親の遺産を守るため、即断した。
第三世代装備ブルー・ティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼動データと戦闘経験値を得るため日本にやってきた。
そして出会った。自分には無い強さを持つ男性に
「織斑…一夏……」
彼の瞳には殺意もあった。下手したら殺されていたかもしれない勝負の後、色々考えていたら一夏の瞳は常にまっすぐ、その先を見てるかのように。
「全員居るな。織斑起きろ」
「うい…」
「返事ははい、だ」
決闘から翌日。教室の入り口が開き、担任の千冬と副担任の真耶が入ってきた。そんな一夏は千冬に起こされ目を擦る。
「まずは連絡だ。クラス代表はオルコットに決まった」
千冬のこの一言で、クラス中がざわついた。全員嘘だろ!?と言うか顔をしている。
「な、何故わたくしなのですか!?」
「決まっているだろ。織斑がそう言ったからだ」
セシリアは一夏の方に顔を向ける。
「決める前にも言ったろ?俺はやるつもりはないし、やる気のあるお前にやらせた方が楽だしな。それと決める前にオレが勝ったらお前は【貴方が望む事をなんでもして差し上げますわ】と言ったろ?つまりそう言う事だ。クラス代表おめでとう、オルコット」
セシリアは絶句するものの、自分から出した条件にぐうの音も出せず大人しく一夏に従う事にする。取り敢えず先日の不手際をクラスの全員に謝った。その事は別に問題にならなかったのだが、クラスの大半の女子が嘆いていた「スイーツ無料パスが貰えない」と。
「(試合そっちのけでスイーツ無料パスかよ)」
と内心で言うしかなかった。今の一夏からすれば学業は二の次、デザグラを優先している為そっちに集中したかったのだ。勿論成績を維持するため勉強は怠ってはいない。
「一時間目はISの基本的な操作訓練を行う。着替えてからグラウンドに集合だ」
「(取り敢えず第一関門は突破だな。これでデザグラに集中できる)」
朝のホームルームが終わり、千冬の指示で生徒は移動を始める。
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、試しに飛んでみせろ」
IS実習である。担当は千冬と真耶である。一夏とセシリアはISを展開する。
「よし、飛べ!」
織斑先生の合図で一夏、セシリアは上昇した。上昇は一夏の方が早かった。
「(イメージして飛ぶとは聞いていたが、ブーストフォームの感覚で飛べばなんとかなるもんだな…)」
一夏は難なく飛び上がり一番手に指定の距離と高度まで飛んでいた。
「い、一夏さん、早すぎですわ」
「別に、普通だろ?」
「普通って、あの速度で飛ぶのは普通ではありませんわ」
「そんなもんか?お前が遅いだけだろ」
「ぐっ!そ、それより、一夏さんのISのスーツ…変わった見た目ですわね?」
「ああ、これはとある名無しの狐さんから貰った物だ…思いの外着心地もいいし水着寄りのスーツよりはマシだな」
「そ、そうですか…(な、名無しの狐?ツッコミどころ満載ですが…聞かないでおきますわ)」
一夏の場合仮に本来のISスーツを着ると一夏の命懸けのゲームで鍛え抜かれた身体のラインが丸分かりで、それを見た女子生徒は間違いなく目を逸らす物である。一夏とセシリアが話していると
「一夏っ!いつまでそんな所にいる!早く降りて来い!」
通信回線で箒の声が響く。見ると、地上では山田先生のインカムを奪った箒がいた
「織斑、オルコット、急降下と完全停止をやって見ろ。目標は十センチだ」
「了解です。では一夏さん、お先に」
「ああ(と言うかあいつ、なんで俺の事名前で呼んでんだ?)」
そう言ってセシリアは地上に向かって急降下した
「……11.5cmというところか。まあ、及第点だな」
「あ、ありがとうございます」
千冬はセシリアに評価すると一夏に降下するように指示を出す。
「んじゃ、いきますか」
一夏はそう言って急降下した。しかし降下する速さがセシリア以上だった
「おい、あいつ突っ込む気か⁉︎」
一夏は地上に向かって突っ込んで行った。このままでは地面にぶつかってしまう。
「ほっ!」
一夏は地面ギリギリで急上昇ように完全停止した。
「馬鹿者!!誰が1㎝で止まれと言った!あんな急降下をする奴があるか!内心ヒヤヒヤしたぞ。今後はあんなやり方はするな、いいな?」
「はい」
一夏は少し頬を掻きながら返事をし移動する。千冬が呆れたような顔をした
「全く、オルコット…武装を展開しろ」
「は、はい!」
そう言われてセシリアはスターライトmkⅢを展開した
「流石だな、代表候補生。だが、そのポーズはやめろ。誰に向かって撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」
「で、ですがこれはイメージをまとめるのに…」
「直せ。いいな」
「……はい」
「よろしい。織斑、武装を展開しろ」
「はい」
一夏が意識を集中すると右腕にブレードが現れた
「0.2秒。早いな」
「こんなもんです。後は常備装備型のコイツだけですね」
一夏はテイルブレードを操作し千冬に見せる。
「……う、うむ。オルコット、近接用の武器を展開しろ」
「えっ…あ、はいっ」
セシリアは銃を収納し近接武器をコールした。しかしその手には武器が現れなかった
「まだか?」
「す、すぐです。……ああ、もうっ!インターセプター!」
ヤケクソに叫ぶ。そしてその手にショートブレードがにぎられている
「何秒かかっている。実戦で相手に待ってもらうつもりか?」
「じ、実戦では接近させませんから大丈夫ですわ!!」
「ほう。織斑との対戦では遊ばれた上簡単に懐をとられた挙句敗北したのにか?」
「あ、あれはその……」
セシリアの歯切れが悪いセシリアが一夏にプライベート・チャンネルを繋げる
『あなたのせいですわよ!』
「知らねぇよ。なんで俺が悪いんだよ?」
『あ、あなたがわたくしに飛び込んでくるから……』
『対応出来なかったお前が悪い。言われたくなければ遠距離じゃなくて近接戦の訓練でもするんだな』
『うっ、せ、責任をとっていただきますわ!』
「なんの責任だよ?油断したお前が悪いじゃないか」
プライベート・チャンネルで一夏とセシリアが言い合っていた。
「今日はここまで。各自、後片付けをしておけ」
そう言って千冬は去って行った。一夏とセシリアはISを解除し着替える為移動する。
放課後…一夏は誰もいない学園の屋上で学園内を見渡していた。中には部活生がランニングをしたり、寮に帰宅しながら話す生徒が見受けられた。
「…やっぱりISをおもちゃ感覚で見てる奴が多いな、相手の命を奪いかねないものなのに…」
ISは表面上最強兵器として扱われているが…扱いを誤れば人を殺しかねないものだ。しかし報道されていないだけでISによる犠牲者も出ているのが現実だ。女尊男卑、女性権利団体やらのせいで罪のない人たちが無実の罪で極刑を受けたり、他人の人生を崩壊してしまう。ISのせいで理不尽な世の中となっている。
「束さんは、そんな事の為にISを造ったんじゃない…」
一夏は無意識に拳を強く握る。一夏は束がISを造る理由と夢を知っている。しかもそれが【白騎士事件】により束の夢は遠いものとなってしまった。
〜♪
「……呼び出しか」
DGP参加者に支給されるスパイダーファンから通達が来て気を引き締め、一夏は懐にしまっていたデザイアドライバーを手にとる。
「束さん、あなたの夢は…俺が実現してみせる。だから…こんな理不尽な世界、早く終わらせないとな」
DESIRE DRIVER!