ヘリが飛び立ち、その場は重い空気に包まれている。
<シグナム...すまない。嫌なことをさせてしまって...>
<気にするな。これくらいは慣れている。>
祐二は顔には出さないが念話で申し訳なくシグナムに謝る。
「祐二さん、シグナム副隊長!!」
「なんだ?」
「....」
スバルは祐二とシグナムに向いあう。
「確かにティアは命令違反など色々問題はあったと思います。それを止めなかった私も悪いと思います...。けど強くなりたいとか...きつい状態をなんとかしたいとか...その為に頑張ることっていけないことなんですか!!」
スバルの瞳は話を続けるにつれて次第に定められていく。スバルの必死の問いかけに祐二はどうするか考えていると丁度その時だった。
「自主練習や強くなる為の努力は大切だよ。」
「...シャーリーさん??」
ヘリポートにさっきまでいなかったシャーリーの登場で全員が驚いている。
「シャーリー、持ち場はどうした?」
「メインオペレートはリイン曹長がしてくれますから...それよりもなのはさんも、祐二さんも、スバルも、ティアナも、みんな不器用でなんか見ていられなくて...。」
「不器用、か...」
「みんな、ロビーに移動して。私が全部教えてあげる。なのはさんの教導の意味を。」
フォワード達はシャーリーが言ったことを理解出来ずにいた。
ーーーーーーーーーーーー
ロビーにはフォワード達、シグナム、シャマル、ザフィーラ、祐二が集まる。そしてシャーリーは話し始めた内容は悲しくて痛ましいものだった。
昔、女の子がいた
その子はごく普通の女の子で魔法なんて知らなかった
友達と楽しく過ごし、家族と一緒に楽しく暮らすような生活を送るはずの子だった...
だけど事件が起こった
魔法学校の通っていたわけでもない、特別なスキルがあったわけでもない
偶然の出会いで魔法を得て、たまたま魔力が大きかっただけの、9歳の女の子
魔法と出会ってわずかな期間で命懸けの実戦を繰り返す
その戦いはのちにプレシア・テスタロッサ事件、あるいはジュエルシード事件と呼ばれた
そしてその事件が終わってからもさほど時を置かずに、戦いは続き
その女の子は戦いを終わらせるために、当時まだ不安定で危険な力ーカートリッジシステムーを使用して
自分の思いを通すため、友達を救うため、自分の限界値を超えた力を無理矢理引き出す無茶をし続ける
そして収束させた闇の書事件
しかしその後、そんな無茶を9歳の女の子が繰り返して体に負担が生じないわけなかった
時空管理局に入ってから2年目の冬
ある任務中に不意に攻撃を受ける
いつもの状態であれば問題なく終わるはずだった...
だが度重なる無茶が原因で、動きを鈍らせ大怪我を負ってしまう
もう二度と魔法が使えないほどに...
フォワード達はシャーリーから聞かされたなのはの過去を知り、顔を俯いたまま黙ってしまう。祐二も知っていたものもあるが半分以上が衝撃なものだった
(なのは...お前はなんて強いんだ。俺なんかより遙かにずっと...)
「だからなのはさんはみんなに自分みたいな思いをさせたくなくて、本当に...丁寧に...一緒懸命教えていたんだよ。」
シャーリーは当時のなのはの辛さを思い出し、悲しげな顔でフォワードたちになのはの教導について説明する。
「確かに命を懸けで闘う時はある。だがティアナ、あの時の"ミスショット"は命懸けで撃たねばならないものだったか?模擬戦でのあの技は一体なんのための、誰のための技だ?」
シグナムの言葉に、ティアナはようやく自分がしてきたことが間違っていたことを理解する。そしてティアナは考えてしまった、あの模擬戦が実践だったらと。模擬戦での戦いはスバルの安全を度外視していた。
「...ゴ、メンね...スバル。あたし..勝手な..ことばかり..押し付けて。」
「ティア...」
ティアナは頬に涙を流しながら、スバルに自分がしてきたことを謝っていた。するとティアナは祐二の方へ振り向く。
「祐二、さん...すみ、ませんでした...」
「...ティアナ、お前は自分を過小評価し過ぎだ。お前はスバルやエリオやキャロが持っていない自分だけの力を持っている。
まだそれを扱いきれてないだけであって、決して"凡人"ではない。
だから...今はなのはについていけ。そうすればお前が欲しい力をなのはが与えてくれるはずだ。」
「っ!...はい!」
「ティアナ、なのはちゃんたちがもうすぐ帰ってくるからちゃんと話してみて、大丈夫、きっとうまくいくから。」
シャマルの暖かい言葉にティアナは涙を何度も拭いながら頷く。
泣きながらもティアナの心はもうすでに暖かくなっていた。
その後、ティアナはなのはと2人で話し、なのはが自分たちのことをどれだけ考えていたかを知った。その顔からもう無茶なことをしないことが伺えた。
「なのは」
「ん、祐二くん?」
「ああ。隣いいか?」
「うん。」
ティアナとの話を終え1人きりで海岸沿いに座っていたなのはの隣に祐二は座る。街灯はいくつもあるがまだあたりは暗い。
「...祐二くんも私の過去を知ったんだよね。あんまり知られたくなかったんだけど」
「ああ...色々大変だったな。」
「気にしないで、もう昔の話だよ。体も完治しているしね。」
なのはは笑いながら怪我のことを話している。しかしその姿は祐二にはその笑顔が少し無理をしているようにしか見えないかった。
「なのは」
「うん? 何かな祐二くん?」
「...1人で何もかも背負おうとするなよ。」
「えっ...」
「1人で何もかもやるんじゃなくて、フェイト達を頼れ。フェイト達が忙しいなら俺を頼れ」
「でも...」
「
「...だけど1人でやらないと、みんなに迷惑「するわけないだろう」!?」
なのはは祐二の方へ顔を向けてくる。その顔は今まで祐二やフォワード達に見せていないような顔だった。
「当たり前だろ。迷惑なんて誰が思う?」
祐二はなのはに笑顔を見せながら言う。なのはは祐二の笑顔になのはは困惑し驚いているが、それと同時になのはは柔らかい笑顔を浮かべている。その笑顔こそが本来のなのはの笑顔だと祐二は理解する。
「...ありがとう、祐二くん。じゃあ一つお願い...してもいい?」
なのはのお願いを祐二は当然頷く。
頷いた瞬間なのはは隣に座っていた祐二の胸に飛び込んで抱きついていた。
「...なのは??」
「少しだけ...こうさせて」
祐二は抱きついているなのはを見ると密かに声をあげずに泣いているのを見て、なのはの頭を撫でる。なのははそのまま泣き続ける。
(長い間我慢していたのだろう...、いくら強いといっても)
今のなのはの姿は前線で戦い続ける時空管理局のエースオブエースではなく普通の1人の女性の姿だった。その姿に俺はある思いを抱く。
(俺はなのはのことを好きなってしまったんだろうな。俺なんかがこんな思い抱いていいのかわからないが、それでも俺は守りたい、なのはを。
クラウドさん、ザックスさん...俺にも守りたい人ができました。
だから2人からもらった力を使います、大切な人を守るために)