前回の話
家庭教師として同級生のナインと4人の兄弟に勉強を教えることになった上杉風太郎(転生前は元会社員の稲森庄司)、ナインに解かせた問題を4人にやらせて採点をしたが点はまさかの5人全員の点数合わせて100点というとんでもないもの…なんとナインと4人の兄弟達はまさかまさかの赤点候補だった、だが彼らは隙を見て自室へと逃げてしまうのだった
風太郎(中身は庄司)「やっば…長く勉強し過ぎた」
朝、遅刻する寸前まで勉強していた俺は急いで支度をして学校に向かって必死に走っていた、自分の勉強と家庭教師のバイトの両立…難しいな、今までにない経験だぜ
腕時計は始業時刻である8時30分の10分前を指していた、学校に到着し下駄箱へと向かおうとした時、門の向こうの道路に黒塗りの外国車が停止した、それに気づいた俺は学校に背を向けその車の所へと歩き出した、すると車の扉が開かれその中から5人のギーツが順番に外へと出てきた
風太郎(中身は庄司)「お前ら…」
レブ「勉強は一人で出来るからな」
ツウ「そうそう、要するに余計なお世話なんだよ」
風太郎(中身は庄司)「そうか!じゃあ一昨日のテストの復習は全員したよな!」
二日前のあの時、テストを突き返された4人は逃げるように自分の部屋へと逃げていった為勉強を教えることは出来なかった、ナインに解答と解説だけ渡してその日は帰ったが、きっと自主的に復習くらいはしてくれると一筋の希望を抱いていた、だが目の前にいる5人の反応を見るにそれは霧散したことが明らかに分かった
5人「…」
5人ともそっぽを向くだけで誰一人返事をくれなかった、せめてナインくらいは…と思ったが彼はそっぽを向いたまま小刻みに震えていた
風太郎(中身は庄司)「…第1問、厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ」
試しに一問目の問題を音読してみた、しかし彼らから答えが帰ってくることはなかった。俺は思わず口を開けたまま空を仰ぐことしか出来なかった
この数日で分かったことがある、それは5人が勉強が苦手だけでなく嫌いで、そして俺の事を嫌っているということ、転生してから録に知人も友人も作らなかった俺にとって信頼を築くということは困難を極める可能性が高いと予想された、教室の隅に座り『ファイブギーツ卒業計画』と銘打ったノートを開いて前回の結果を見たが、ここであることに気づいた
先程出題した歴史の問題にはレブは正解していたのだ、分かっているにも関わらず答えなかった事に疑問を覚えた俺は昼休みの時間に訳を聞く為にレブの元へと行った
風太郎(中身は庄司)「よ、よう…レブ、…ん?なんだその飲み物?」
レブ「抹茶ソーダ」
食堂に行くとレブはすぐに見つかった、手に持ったトレーにはサンドイッチと一本の缶ジュースが置かれていた、でもそのパッケージに見覚えがなかった、抹茶味の炭酸飲料とは…このような奇抜な飲み物がこの世界に存在しているということに俺は驚きを隠せなかった、だが話しかけた用事はこれではないので話題を切り替えた
風太郎(中身は庄司)「一つ聞いていいか?今朝の問題についてなんだg」
マグ「上杉!お昼一緒に食べないか?」
俺が話を切り出すとレブは何かを言おうとした、だがレブよりも先にどこからか現れたマグの大声が先に耳に入ってきた
風太郎(中身は庄司)「なんだマグか、お前いつも突然なんだよ」
マグ「それよりこれ見ろよ!英語の宿題全部間違えてたぜ!」
風太郎(中身は庄司)「(それわざわざ言うことか?)」
笑いながらしてきたとんでもない報告にレブへの問いかけが遮られた事に軽い苛立ちを覚えたが、コマンド(制服は着てる)がマグの背中を押して回収してくれたおかげでその場はなんとか収まった、懸念点が一つ増えたせいか妙に胃が痛くなってきたような…
マグ「コマンドも勉強見てもらおうぜ」
コマンド「うーん…パスだな、だってバカだしよ?。それに高校生活勉強だけってどうなんだよ?もっと青春をエンジョイしようぜ!例えば…恋とか」
風太郎(中身は庄司)「…恋?あれは学業から最もかけ離れた愚かな行為だ…したいやつはすればいい…だがそいつの人生のピークは学生時代となるだろうな…」
恋か…俺なんて録に出来なかったよ、だから周りでいちゃつくカップル見ては裏で呪いの言葉を吐いてた、さらにはそいつらを見ないために勉強をこれでもかと言うくらいやってやったよ、代償として友達を一人も作れなかったけど、恋は愚かなり…リア充爆発…いや、リア充爆殺
コマンド「あはは…恋愛したくても相手がいないんだけどな。レブはどうだ?、恋人とか出来たか?」
レブ「えっ…い、いねえよ!」
あからさまに態度を変えたレブは逃げ去ってしまった、それを見ていたマグはコマンドと目を見合わせて頷き合った
風太郎(中身は庄司)「あ?」
マグ「あの感じ…兄弟の俺らには分かる、レブは恋をしてるんだ」
だよな!とマグとコマンドは理解の出来ない話をして盛り上がり始めたのを見て俺は退散した(そういう恋の話とかはどちらかというと女子とかがするもんだけどな)、今は卒業最低レベルまで学力を底上げしなければならない…なので余計なことに首を突っ込まないで欲しいと俺は感じていた。一人素早く食事を終えた俺は教室へ戻り、次の授業の準備をしようと机の中から教科書を取り出そうとした時、一緒に一枚の封筒が入っている事に気づいた。封筒の表面には『上杉風太郎へ 近未来白狐』と記されていた、誰からの手紙だ?封筒を開けて手紙の内容を見た、『昼休みに屋上に来い、風太郎に伝えたいことがある、どうしてもこの気持ちが抑えられない』と書かれたその手紙は自分へ向けられた好意を伝えたいというものではないかと推測した、一瞬だけ冷静さを欠いた俺は自身の頬を叩き我に帰った、こんなものはいたずらにすぎない…そう思うことにしても結局5分後には屋上の中心に立って唯一の扉を見つめた
しかし一体誰なのだろうか…俺をここに呼び出したのは…会ったことのある人物の名前を頭の中に並べてみるがどれも俺に好意を持つようなやつじゃない、食堂で会ったレブに関してはそもそも男だし…だとしたらこの学校に通う誰かか?(五つ子を除く)でも皆俺に白い視線を飛ばすようなやつらだからそれはありえないか、だとしたらいたずらか…あぁ…くそ…馬鹿な遊びに付き合ってしまった…
そう思いながら校舎に戻ろうとしたとき、扉が開き奥からレブが姿を覗かせてきた、なんでレブがここに?
レブ「良かった…手紙見てくれたんだな。食堂で言えたら良かったんだが、誰にも聞かれたくなかったからな…フータロー…あのな…ずっと言いたかったんだ。す……す…」
あの手紙を書いた主…正体はレブなのか?…ということは…これは告白ってやつか?頭の中でマグの言葉が幾重にも重なって反響した、固唾を飲みレブが続ける言葉を待った
レブ「陶晴賢」
風太郎(中身は庄司)「陶…晴賢…?」
予想していた二文字がレブから発されることはなく、代わりに出てきたのは室町時代の武将の名前だった、拍子ぬけした俺は本能のままに言葉を鸚鵡返しした
風太郎(中身は庄司)「ちょ、ちょい待て!何が言いたいんだ?」
レブ「うるせえな、問題の答えだけど」
陶晴賢というのは今朝5人のギーツ達に対して出題した問題の答えである、それだけ言えれば用はないと言わんばかりの様子で、レブはいつの間にか首にかけていたヘッドホンをつけ携帯を操作し始めた
風太郎(中身は庄司)「待てって!なんでそれを今このタイミングで言うんだ!?」
理解が追い付かない俺は勢いよくレブの体を掴んだ、するとその衝撃でレブの手から携帯が落ちてしまった、地面を跳ねた携帯は俺とレブの元から離れるように地面の上を滑った
風太郎(中身は庄司)「ごめん!すぐに拾うから!」
謝りながら急いで携帯を取りに行った、するとこちらに向いていた画面に映る写真に目が止まった
風太郎(中身は庄司)「武田菱…?武田信玄の…」
レブ「見たな?」
甲斐の龍武田信玄を象徴する家紋…それが武田菱だ、思わず口に出してまじまじと眺める俺から隠すように携帯を拾ったレブは低い声で問いかけた
風太郎(中身は庄司)「え…?あぁ…」
レブ「…だ、誰にも言うなよ…戦国武将…その…好きだから…」
怒られるのかと思い身構えたが実際そうではなかった、レブは両手で顔を覆って蚊の鳴くような声で呟いた、この感じ…恥ずかしがってるのが分かるな
風太郎(中身は庄司)「武将が好きなのか…なんでだ?」
レブ「きっかけはマグから借りたゲーム、野心溢れる武将達に惹かれてたくさん本も読んだんだ。でもクラスのやつらが好きな人はイケメンの俳優や美人なモデル…それに比べて俺は髭のおじさん…変だぜ」
…はっきり言うと変かもしれない。だがここで切り捨てるべきではない、武将は勉強から遠い所に身を置いているレブと勉強を唯一結びつけることが出来るやつだ、これを逃すほど俺はバカじゃない
風太郎(中身は庄司)「変じゃない!自分が好きになったものを信じろよ、こう見えて俺は武将にも造詣が深い方だ、そういえば前回の日本史のテストは満点だったな」
レブ「そうなのか!?」
先程言った事にレブが食いついてきた、これだ!レブを勉強に近づけるにはこれが有効だ
風太郎(中身は庄司)「これが学年トップの力だ、俺の授業を受ければレブの知らない武将の話もしてやれるぜ」
レブ「それって…俺よりも歴史詳しいってことか?じゃあ問題。織田信長が豊臣秀吉を猿って呼んでいたのは有名な話だよな。でもこの逸話は間違いだって知ってたか?本当はなんてあだ名で呼ばれてたか…知ってる?」
流暢に言葉を連ねながら首もとに迫るレブ、ついさっきまで掴み所がなく感情の起伏が穏やかだった時とはまるっきり様子が変わっていた
俺は腕を組み頭の中の記憶を漁り始めた、すると少し前に歴史の教師が話していたことをすんでのところで思い出した
風太郎(中身は庄司)「…ハゲ…ネズミ」
レブ「…正解」
不服そうにしながら敗けを認めるレブ、自分の方が上回れると思ったのか答えを出され、心なしか残念がっているように見えた
レブ「知ってるとは思うが、俺が好きな逸話は…上杉謙信が女だったって説とか、石田三成は柿を食べられなかった事とか、信長が頭蓋骨に酒を入れていたとか…」
今の問題を答えたことで自分と同格と思ったのか、レブが次々と話す逸話集を聞き流した、今回のはたまたま知っていたわけで特別武将に興味があるわけではない、だが上手く活用しなければまたレブとの距離が離れてしまう、レブがまだ話をしようとしたとき、屋上に取り付けられたスピーカーから次の授業時間を知らせるチャイムが流れ出す
風太郎(中身は庄司)「な…なんか話し足りないな…うーん、この話はレブも聞きたいだろうな…よし!次の家庭教師の内容は日本史を中心にしよう、…受けてくれるか?」
レブ「…そこまで言うならいいぜ」
こうして俺はやっと一人目の関係を築く土台を作ることが出来たのだった
閲覧ありがとうございます!次回は主人公がレブを追いかけます!何故そうなったのでしょうか…そしてレブに近づく怪しい影が…
次回もお楽しみに!