『ちっこいのに銀貨5枚だ!』に転生です。 作:おそようございます
21歳で社畜戦士となって早10年、31歳の誕生日が幸運にも土曜だった俺は自分へのご褒美に以前から欲しかったパブリックスピーカーと関連機材をOMASONにて土曜の午前に届けてもらうよう手配した。しかもスピーカーとプリメインアンプは激安製品ではなく、BURAHA製の高級機種を買ってしまった。だが、独身貴族たる俺には小さな痛手でしかない。
ピンポーン
と来訪者の音がなる。
「は~い」
という俺の浮ついた応答に『宅配でーす』と返事が返ってきたことで、OMASONだと確信した俺は意気揚々と玄関へと向かい無事に荷物を受け取った。
そしてなんやかんや設定やら接続やらを終えた俺はさっそく、スポッティファイにて高音質の音楽を流すことを選択した。
♪~音楽鑑賞中
気づけば1時間ほど音楽を聴いていた俺はそこで1つの懐かしい曲を見つけることになった。その曲名は
『おそよう。』
かの有名な『旧 Hunter x Hunter』のOP曲の1つである。新も旧も好きなアニメではあったが、何故か旧版は淘汰され動画配信サービスでの定額視聴などは行われておらず、別途買い切りやDVDの購入やレンタルが必要となっていたせいで長らく視聴をしていなかった。
誕生日でハイテンションとなっていた俺は『おそよう。』を口ずさみつつ、こう思った。
(『旧 Hunter x Hunter』借りてこようかな)と。
おっさんレンタル中
ミトさんの拗らせ方に和みつつ「今の時代だとこの程度でも毒親とか親ガチャ失敗とか平気で言っちゃう子がいそうで怖いなぁ」とか思ったり、レオリオによる魚の盗み行為に関して「昔だから笑い話で済んでたんだよなぁ」とか思いながら懐かしのアニメを楽しませてもらった。
そうしてこの小説のタイトルでもある『あの場面』である。
試験会場へ向かうための船、海神丸の上にて船乗りの一人カッツオが受験者の一人がお遊びで放ったナイフを奪い取り、喧嘩となる場面。そこで一人のモブがこう言い放ったのである。
「ちっこいのに銀貨5枚だ!」
その瞬間俺は口にしてしまったのだ。
「こいつで良いからハンター世界行きたいなー」
と。
おっさん転生中
結果を言おう、俺は転生した。あの反射的に口にした願望を神様的サムシングに拾われたようで、『行っといで、特典は戸籍、言語能力、拠点(5年で消える)、念能力の開花と若返りね。原作開始は5年後、がんばれ。』と脳内に声が響き気付けば深い森の中の掘っ立て小屋の前に立っていた。
元の俺がどうなったのか分からないが死んだかもしれないので、とりあえず(父さん母さんごめんよ。)と心の中で謝っておく。
正直薄情だとは思うが今は、自分の体を覆う念能力の源であるオーラに興奮してそれどころではないのだから。
おっさん確認中
結果として以下のことが判明した。
・オーラ操作は特典によって強化されているのか応用含めスムーズに行えること
・基本的な練の維持時間が10秒弱であること
・系統は放出系であること
・肉体の強度は前世と大差ないこと
・小屋の中にあった鏡から現在の年齢が15歳程度であるということ
総評:私弱すぎない!?
これから先、原作までの5年間全力で効率よく修行できたとしよう。どこかで見聞きした情報で1か月でおよそ10分間の練の持続時間の向上が可能だとあったから、そこは5年もあれば戦えるレベルまで持っていけるかもしれない。特典であるオーラの操作能力のおかげでオーラ量関連のトレーニングばかりにしても問題がなさそうなのが最高の救いである。
だが身体能力!テメェーはだめだ!!
前世程度の身体能力から5年でトン単位を軽く動かせるレベルまで引き上げれる目途が立てられない!!
ほんとどうしよう・・・
おっさん思考中
というわけで俺は考えた、無い頭を必死に使って考えた。地面は考えをまとめるメモに使った結果見渡す限り文字やら記号やら絵だらけだ。ちなみに見られたら恥ずかしいため文字は全て日本語である。
結論:誓約付きの発を作成します。
まぁ、聞いてほしい。まず初めに俺は自分の運を信じて行う賭けが好きなんだ。大好きといっても過言ではない。ゲームでよくある確率性の合成強化なんかもアイテムを使って100%にしてから強化するより、5~10%程度で自分の運を信じて強化しちゃうのが好きなタイプなのだ。アホだという自覚はある。しかし、社畜でたまったストレスを発散する最高の方法だと感じているんだ許してほしい。
まぁそこで、今回も賭けをすることにしたのだ。賭けの内容は以下の通り。
5年後の原作通りの場面で『ちっこいのに銀貨5枚だ!』と言うまで以下の縛りを課す。
・全ての念能力の無効化
・身体能力の向上の無効化
成功した場合
・その間のトレーニングに応じ能力を向上
失敗した場合
・死ぬ
まぁ、原作通りになるか成らないか、その場面で言うか言わないか、という簡単な賭けとなっている。
俺のほかに転生者がいて原作が変わっていれば勿論アウト。俺になったことで原作と変わってしまっていて言えなくてもアウト。その間の努力すべてが泡となる・・・すばらすぃ。
完璧な賭けだが、危険すぎるかな?もうちょっと優しいのにしたほうが良いかな死にたくないしなぁ・・・あっ発動しちゃった♥
能力名『モブの意地』
おっさんトレーニング中
あれから5年たった。
俺は推定15歳のあの日の見た目から何一つ変わっていない。しかし、心は大きく成長したと思っている。毎日毎日死に物狂いのトレーニングを行い、動物を殺し食すことを日常とすることで忌避していた殺生にも慣れ、社畜時代は失っていた自立した精神性を確立させることに成功。しかし能力に関連する変動は何一つ得られなかった。誓約って怖いね、みんなは気をつけようね。クマに襲われたときとか本当に死んだかと思ったよ。悪足搔きで投げたキノコが即効性のある致死性の毒キノコでなければ死んでいたね。うん。
さぁ、いよいよ原作の場面へと俺は行くぜ!
おっさん移動中
まぁなんやかんやあって海神丸に乗船しくつろいでいると、ついにあのセリフが聞こえてきた。
「待ってよー!俺もその船に乗るんだ!!」
とりあえずゴン君とレオリオさんのコンビが原作通りやってきて俺は一安心である。
そして原作通り彼等は船に乗り、船長の渋い一言も無事決まり俺の出番が刻一刻と近づいてくる。
おっさん興奮中
やっとである・・・やっとこの時が来た。俺の出番がやってくる。
「兄さん、取れるかな?」
カッツオが男の放ったナイフを奪い取った。
疑似おっさん(レオリオ)視点
「兄さん、取れるかな?」
あ~あ、アホらしいったらないぜ。1銭にもなりゃしねぇバカみたいな喧嘩だぜまったく。
見定めてやがるようだが、このレオリオ様がつられてやるかってんだ。今囲みに行ってるやつらは全員落とされるんだろうぜ。
「はぁ~あ」
おっとどっかの言い伝えでため息吐くと幸せが逃げるんだったな。気を付けねぇーとな、金運に逃げられちゃたまったもんじゃねぇ!
ん?取り囲んでるやつの中に15歳程度のひょろ長い若い奴がいやがるな。ゴンほどじゃねぇがやるじゃねぇか、その年で試験受けようだなんてよ。だが、それもここまでだろうぜそんな喧嘩に釣られるようじゃまだまだひよっこだってーの。
だが、みょーに引っかかるなあの笑み。楽しんで囃し立てるってより、獲物が罠にかかって笑いたいがそれを抑え込んでるようなそんな何とも言えない不気味さが有りやがる。
なんなんだあの野郎?笑いを抑えるように震えながら口を開き始めたな、聞き逃すとやべーかもな。しっかりと聞いとくか。
「ちっこいのに銀貨5枚だ!」
瞬間何かが吹き抜ける、同時に感じる苦しい程の重圧を!!俺の心が叫びやがる『逃げろ!!』ってよぉ!!!!
昔クジラってやつを見たことがある。ありゃでけぇ、でかすぎて敵わねぇと本能で感じた。だが今感じてる何かはそれ以上だ!『ここにいるべきじゃねぇ、死ぬぞ!!』って本能が訴えてきやがる。
だからこそ俺は飛び上がり構える、その若い男の異変を見逃すべきじゃねぇと思うからだ。
「クヒヒヒヒヒ」
と男が笑い声をあげるだけで、俺の心臓が早鐘を打ちやがる。
「勝った・・・勝ったんだ俺は・・・最高にハイって奴だぁあああああ!!!」
そう叫んだ瞬間、男にさらなる異変が起きやがった。
ボキリボキリとミシリミシリと人体からしてはいけない音が鳴り響く。
ありえねぇ・・・現在進行形でその若い男がでかく逞しく変化してやがる!もはや進化ってレベルだぜそれはよぉ!?それに伴い周囲の重圧が一層強くなり凍えるような寒ささえ感じてきやがった、一体全体何が起きてやがんだこれはよぉ!?
さっきまで囃し立ててたやつらや、船員の半数以上が気絶してやがる。起きてるのは・・・船員の一部、俺と金髪坊ちゃん、そしてゴンだけかよ。そんでもれなく震えてやがる、そりゃそうだよなぁ!?
ハンター試験ってのはこんな過酷なもんだってぇのかくそったれ!!