秋の豚汁にはさつまいもを入れろ!!!   作:おいかぜ

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感想評価お気に入りありがとうございます!
総合評価0が関の山だと思ってたからかなりビビりました。どうして……?


圧倒的で感動的な 理想的超えて完璧な 運命的で冒険的な 時に叙情的な塩ラーメン

 

 水筒を忘れて、途中にはコンビニと自販機しかなかったから、仕方がなしに自販機に屈しました。160円、自販機にしては若干割安な、たぶん専売のPB商品っぽいお茶。お釣りを減らそうとして210円を投入して、10円玉5枚が返ってきた。二度と信じるもんか。

 あーあ。いや、決めたことを曲げたあたしが悪いか。

 

 土曜のサークルでの作業が昼前に終わって、じゃあ誰かを誘って作詞作曲作業の続きでもやろうかとAfterglowのグループに声をかけた。蘭は京都にいるから釣れないのがわかっていて、ひーちゃんはバイト、つぐはお店の手伝いらしい。夕方ならいけるんだけど、という返信に、無理はしなくていいよ、と返す。夜まで缶詰でやるつもりは無いし、適当に切り上げて遊ぶことまで考慮に入れている。

 

 バンド活動が緩くなっているのは、大きなチャレンジをする準備段階の、更に前段階にあたしたちがいるからだ。

 ネットでの知名度もかなり上がってきて、それならそこそこのハコを借りてツアーをしてみよう、という話が持ち上がった。東京の馴染み深い世界にばかり浸っていても良くないし、1度外に出てみようという試み。

 それにかかるお金を長期スパンで貯めていて、それ故にバンド活動も日々のライブと練習くらいの、緩めの平常運転をキープしているのだった。

 

 それと、本格的に華道に向き合い始めた蘭のスケジュールに全く余裕が無いというのもある。無理はさせたくないし、蘭だって無理をする場面じゃないとわかっているだろうから、そこも様子見。

 

 あたしが作詞作曲に関わり始めたのもそんな理由から。蘭の負担軽減と、あとはマンネリを打破するためのチャレンジ。あたしたちの心を描いてくれるのは蘭だ、という共通認識は薄れていないけれど、それと同じくらい4人の言葉も大事にしていい、との事。言い出しっぺはひーちゃん。そのくせ自分は歌詞を書いてない。いつか書かせてやろー、とは蘭と話していたけど、一旦保留中。

 

「アタシは行けるぞ」、とトモちんからの返信。おいでませ青葉亭、と答えれば、ひーちゃんの趣味っぽいマスコットキャラクターのスタンプが返ってくる。

 両親は留守だ。二人して野球観戦デートに行っている。お熱いことで、なんてからかうのはちょっと生々しくてはばかられるけど、せっかくチケットが当たったんだからゆっくり楽しんでくれば良いと思う。あたしも気楽でwin-win。気前が良くなったパパ上から賜った夕食代の5000円は、さてどこまで懐に入れようかしらん。

 

 30分後に帰宅予定、とメッセージを送って、部室から大学の最寄り駅へぽてぽて歩く。石畳の隙間に生えた苔を見るとほじくり返したくなるのは万人共通なのだろうか。

 あの白南風(しろはえ)の心地良さは記憶の彼方、藍色のモッズコートに吹き付ける秋の凍て風にうんざりして口はへの字に。照り付ける秋晴れ陽気じゃ誤魔化せない木枯らしの足音。10月いっぱいは秋の陽気を残しておいてください。

 

 ふぁいやー、と心做しか強めの踏み込みで家路を急ぐ。We Will Rock Youがやれそうなくらいのパワー。心の中のトモちんが熱気とドラムで全て吹き飛ばしてくれる。

 

 構内に植えられた樹木とビル群の奥に見える空には大入道の名残なんて伺えず、古いぬいぐるみからこぼれてきたワタみたいなコロコロした雲だけが浮かんでいる。

 

 そろそろマフラーを引っ張り出してきてもよい頃かもしれない。脱衣所のヒーターとリビングの炬燵もセッティングしたい。物置からいろいろ引っ張り出してきて貰えるように、あとでパパ上に頼んでおこう。

 せっかく秋ものに衣替えしたのに、あと半月も経たずに冬ものに入れ替える必要がありそうだった。お気に入りのニット帽が被りやすいことくらいしか喜ばしいことはない。このモッズコートだって、真冬に着るには少し寒いし。

 

 夏頃に何度かカットしていたせいで、最近とみに伸び始めた髪をいじる。ショート寄りのミディアムボブからセミロングに近い印象に。

 寒いから伸ばそうか、でも手入れが面倒だし、と葛藤している間に伸びてきた。オシャレ番長に今度相談しよ〜、と丸投げを決意。

 

 若干空いている電車に乗って、つい1時間半前に通過した道を逆再生。詩的に表現してみたけれど、じつは座っている場所が違うから行きとは見える景色が違う。行きがA面なら、帰りはB面の逆再生って感じ。……よくわかんないか。

 イヤホンから流れてくるのは蘭の声。自分たちのバンドの曲を聴いているだけなのに、この言い方だとあたしがストーカーみたい。ぐへへ。あ、自分の声。下手っぴだねぇ。

 

 最寄り駅まで帰ってきたら、我が家はすぐそこだ。テナントの入れ替わりが激しい駅前のシャッターに少しの寂寥を覚えつつ、心の中の作詞モードゲージをチャージ。

 大学の入学祝いで貰ったホワイトスミスの腕時計は、約束の時間の5分前を示していた。メーカー名に違わぬ細やかでシンプルな意匠が気に入っている。ギターを弾くときは着けていないから、大学生活のオトモって感じ。

 

 キーケースから家の鍵を取り出す。凹凸の凸の方を上にして差し込むべし。15年以上住んでいるから、流石にもう手間取ったりすることはない。……ひーちゃんの悪口ではないです。

 この時期特有の感覚だと思うけれど、外よりも家の中の方が少し寒い。掃除機は昨日かけたから大丈夫かな、と普段は気にもしない廊下の隅を注視しつつ階段を上って自室へ。たぶん大丈夫。ベッドの上の敷布団を片付けておく。

 ゴミ箱のすぐ横に転がっている、丸められたティッシュをつまんでボッシュート。今朝の寝起きの3Pシュートは見事に外れていたらしい。時間が来る前にリバウンドは決めたからセーフということで。

 

 おおっと、あわやブザービーター。タイムリミットを告げるインターホンが鳴った。

 カメラ越しに幼馴染のイケてるご尊顔を確認して、トモちんを迎え入れる。

 

「いらっしゃ〜い」

「お邪魔します。……モカ一人か?」

「ん、夫婦旅行中だからあたしだけだよ〜」

「置いてかれたのか?」

「パスした〜。夫婦水入らずでいいかなーって」

「夫婦仲が良いのはいいことだと思うぞ。つぐのところとか、夫婦でよくやってるよなぁ」

 

 勝手知ったる、という程でもないと思うけど、何度か来たことがあるはずだから、特に引っかかることも無く自室へご招待。

 PCを立ち上げて、今作っている真っ最中のデモを聴いてもらう。DTM及び音楽理論はまだ勉強中で、正直なところ蘭が作るようなクオリティには遠く及ばない。

 幸いなことに蘭というお手本があって、何もかも手探りだった初期のAfterglowよりもずっと恵まれた環境で勉強できているから、こうやって意見を貰ったりして作り続けていればじきにそれなりのものを作れるようになる……と思いたい。あまりにもあたしにセンスがないとかでなければ。

 

「ハンガー貸してくれ」

「そっちのやつテキトーに使っていいよ〜」

 

 レザージャケットをハンガーに掛けるトモちんに、気が利かなかったなぁ、と少し反省。クッションに座ったところでヘッドホンを差し出す。

 

「あの上着、重くないの〜?」

「重いっちゃ重いけど、もう慣れたよ。昔からレザーばっか着てるから」

「オシャレは我慢ってやつー?」

「その考え方を重さに適用してる人は少ないと思うぞ。……でも、冬のミニスカとかはホントに我慢だって尊敬しちゃうよな」

 

 それきり黙ってリスニングに集中し始めたトモちんの横で、あたしもノートを広げる。スマホのメモだって構わないとは思うんだけど、ペンで文字をきちんと書く方が刺激になるから好きだ。蘭に倣ってもいる。

 

 あ、その前に。待ってて、と言い残して一人キッチンへ。ポットでお湯が沸いているのを確認して、マグカップにコーヒーの粉を一杯。つぐ曰く「いちばんマシなメーカー」のやつ。……というのは冗談で、喫茶店の娘も普通にインスタントコーヒーや缶コーヒーを飲むらしい。この前ひーちゃんがおすすめを聞いていたときに挙げていたやつを、あたしもついでに買っておいた。味の違いはやっぱり分からなかったけれど、プラシーボでなんとなく美味しい気がしてるからヨシ! 

 通ぶりたかったら羽沢珈琲店に蘊蓄を聞きに行くから、普段飲む分にはなんだっていい。

 

 プラシーボといえば。つぐが淹れてくれるコーヒーは、たとえインスタントコーヒーでも味が違う。つぐが買ってくれた缶コーヒーが5割増で美味しいのも同じく。

 

 2人分のマグカップをもって階段へ。立ち上る芳ばしい香りは、それだけでコーヒーの価値の3割くらいを占めている。

 あたしは本腰を入れて作業を進めるときのスイッチとしてコーヒーを好んでいるけれど、その理由の大きな部分が香りだった。安眠にアロマが効果を発揮するように、あるいは作業用BGMなんてものが存在するように、そして喫茶店で作業が捗るように。

 コーヒーの香りがあたしの労働効率を引き上げてくれているように感じる。1/fのゆらぎコーヒー。あたしを頭脳労働の世界へ連れて行ってくれる。

 

 カフェインでトイレが近くなるのだけは、玉に瑕かも。

 

「青葉珈琲店でーす」

「お、サンキュ。なぁ、これのスコアってあるか? ドラムだけでいいんだけど」

「こっちのファイルに入ってる〜……あ、最新版とちょっと違うかもー」

「それくらいは別にいいよ。気付いたことメモってるから少し待ってくれ」

「んー」

 

 期待半分不安半分。貶されることはないと思うけど、あんまりいい曲が書けているとは思えない。褒められたい思いもあり、成長のために本心からぶつかって欲しくもあり、という感じ。他のみんなもそうだけど、トモちんは特に忖度したり遠慮して優しい言葉だけを掛けてくるなんてことはしないだろうから、そこは信頼している。

 

 それと、歌詞。

 作詞については去年から少しずつ触れているけど、やっぱりあたしにとって蘭の感性は特別なんだと思う。

 

 日常や生活の一瞬を切り取る文章に、感性の色と表現の技巧が乗って文章が生まれる。あたしのファインダーはいっつも同じ構図で似たような景色を切り取って、地平線の向こうに消えた夕焼けの残滓を数えているばかり。

 

 思いもしないことを歌詞にはしたくない。偽りの感情をさも綺麗そうにカットして、イミテーションジュエリーで飾り立てた歌なんてAfterglowには必要ない。

 だから難しい。あたしの中で1番大きな感情をすり抜けて、小さな感情に名前を付けていかなきゃならないのに、あたしが持っている言葉のプールは酷く小さい。

 教養の差かな、なんて。見えていなかった蘭の努力が見えるようになったことだけが救いだった。

 

「うん、こんなところか」

 

 ヘッドホンを外して首にかけたトモちんが、ラインの個人チャットにメモを送ってきた。パッと見、結構辛口。

 

「悪くはないけど、アタシはモカの曲を聴きたいかな。まだ蘭の真似だろ? そうじゃなくて、Afterglowの曲も含めて、モカがこれまでの人生で影響を受けてきたものをもっと出してもいいと思うんだよ」

 

 真似から入ってるのは正しい成長ルートだと思うけど、とトモちん。

 

「歌詞もそうだけど、モカから見た世界が、Afterglowが、蘭から見たものと全く同じになるとは思えない。言わなくてもそんなことはわかってると思うけどな」

「まだ難し〜」

「だろうな。色々書いてるけど、焦らせたいわけじゃない。ゆっくりでいいさ」

 

 表現をもっと詰め込んでいい、というメモ。カバンの中からパットを取り出して、あたしが書いたよりもずっと複雑な、それでいて内容のあるパーカッションの例を出してみせるトモちんに拍手喝采。あとでスコア起こしして、と言うと録音で許してくれと返される。

 インスピレーションの泉が……。

 

 よく考えたら、音楽性を全てさらけ出してるのは蘭だけなのか、と今更納得。好みのバンドだってあたしたちはバラバラなんだから、心地好く感じる音楽だって本当はちょっとずつ違うはずなんだ。

 蘭はRoseliaとかMyGOが好きだし、独創収差や燦々みたいに他のコンポーザーの影響を受けた曲だってある。そんな2曲だって普段作る曲とは明確に表現を区別しているから、蘭の中でAfterglowという芯は相当強固に根付いているんだろうけど。

 

 トモちんだって和楽器を構成に入れたメタルバンドにハマっていた時期があったし、ひーちゃんなんてミーハーだから流行りのバンドはだいたい抑えてる。

 思考をこねくり回してみても、結論は「蘭の劣化コピーならあたしが作る意味はない」。ううむ、やっぱり日々鍛錬。精進が足りません。

 

 それなりに形になってきたと思った曲でもこんな感じの評価なのだから、先はまだ長い。蘭の曲のクオリティが上がるのに比例して、トモちんのハードルも高くなっているだけ、という可能性もあるけど。

 

「休憩。腹減ったな」

「袋麺ならあるけど、食べる〜?」

「今日の青葉食堂はしょっぱいな」

「店休日なんで〜」

 

 ご馳走になります、というから2人揃って1階へ。時計は12時30分を指し示していた。そりゃあお腹もすく。コーヒーだけじゃごまかせなかったか。

 

 炊飯器の表示は32時間。2人前はよゆーで残ってる。48を超えたらまずいかなと思うけど、30はセーフだと思いたい。

 冷蔵庫を開ければ、意外と色々残っている。ネギと卵があればなんとでもなるかなぁ、と思っていたけどそれ以上の収穫。

 

 リビングのミニスピーカーがシャッフル再生で『Shake It Off』を吐き出し始める。普段はバンド曲、とりわけ邦ロックばかりだけれど、料理の時に流すとしたらアメリカンポップスが良い。カントリー寄りのサウンド、ウクレレとかバンジョーとか、そんな感じの音も好きだ。料理のときはハッピーでアッパーなテンションで居たいから。

 90年代以前の教養と化した名曲も良いし、21世紀の馴染みある人気曲でも良い。どうせ歌詞なんて聴き取れない。

 

「チャーハンもいる〜?」

「お願いします、シェフ」

「苦しゅーない〜」

 

 チルド室に青ネギ半分、野菜室に焼きそば用のカット野菜セットがあったのでそれも使おう、と決意。

 大フライパンにサラダ油を敷いて強火に。温度が上がってきたら卵を3つ、ネギも投入してそのままかき混ぜる。ぼうっとしているとそのままスクランブルエッグができあがるから、炊飯器の釜を持ち出してそのままドバッとお米を投入。火傷には気を付けましょうね。

 

 おたまでぐるぐるかき混ぜる。かっこよく鍋振りを披露したいところだけれど、全部ひっくり返すのが怖くて軽く混ぜる程度。リスクとリターンの釣り合いを考えられる慎重派なので。鼻歌を歌いつつシャカシャカ。味付けにシャンタンを使おうとしたけど、塩ラーメンと味が被りそうだから急遽変更。塩コショウと醤油、少しのオイスターソース。

 具材が少し寂しいかも。醤油ベースならまあいいか、と瓶に半分くらい残っていた鶏そぼろを丸々投入。失敗しても成功しても、思い付きでなんかいろいろやれるのが自炊の楽しみの一つ。チャーシューは常備してないにしても、ハムくらいあればラッキーだったのに。

 

 味見をしたらまずまずの出来栄え。カッコつけで茶碗じゃなくて平皿に盛り付けて隔離。キッチンのスペースを空ける方が重要だから、先に配膳しちゃう。

 

 二口コンロの片方でお湯を沸かしつつ、さっきのカット野菜セットを取り出す。人参ともやしとキャベツ。家族分のおかずを作るならともかく、一人分の食事を作るには人参一本とかキャベツ半玉とかは使いきれなかったりするから、案外こういうのは便利。……需要があって売られてるんだから当たり前か。

 

 少し大振りだった人参を刻み直して、ごま油を敷いたフライパンに人参とキャベツだけ投入。人参って、大根や蕪の仲間面をしているけど仲間はずれだよね。人参はセリの仲間だ。葉っぱもパセリとかディルみたいだし、味も独特。食べたことないけど高麗人参とかは似たような味がするんだろうか、なんて。そういえば、人参の葉っぱが食べられているのも見たことがない。大根なんかは汁物に入ったり炒められたりしているし、人参の葉もそういう発想になっても不思議じゃないと思うのに。美味しくないんだろうか。

 

「手伝わなくて良かったのかー?」

 

 ソファに腰掛けたトモちんがスマホから顔を上げて、少し申し訳なさそうに言った。

 

「お客さんだからね〜。トモちんに塩ラーメンの美味しさを思い知らせてしんぜよー」

「いや、アタシも普通に好きだけど」

「アブラマシマシ野菜マシマシばっかりじゃーん」

「そんなことないって」

 

 トモちんは豚骨かこってり醤油ばっかりだ。ジャンクな美味しさこそラーメンの醍醐味だという主張も分かるけど、なんだかんだサッポロ塩ラーメンが落ち着きます。

 

 サッポロといえば、しばらく前にラーメン展で食べた味噌ラーメンも美味しかった。何故だかフライドポテトが入っていてどうしたものかと思ったけど、スープを吸った上でほくほくの食感が残っていてかなり悪くなかった。氷川先輩がポテト好きなんだっけ。つぐがそんなことを言っていた気がする。

 

 人参に火が通ったらもやしを投入。お前なんかいてもいなくても、とモカちゃんは常々思っております。平均的で盲目的、半永久的に安泰な、無痛無臭無害無安打無失点の味。食感だけじゃん、とネガティブ意見を火にくべてみる。

 野菜炒めにシャンタンを振りかけて火を止める。……ネギを入れるの忘れてた。余熱で火が通ることを願って刻みネギも投下。

 沸いたお湯に袋麺を2袋投入して3分。この、泡が吹き上がってくるのだけどうにかならないかなぁと袋麺を作る度に思っている。

 

 茹で上がったラーメンを二人分、粉末スープを入れた丼に盛り付けて、上から別で炒めておいた野菜を投入。シャンタンで中華風に、濃いめに味付けするのが青葉流です。

 

 休日なので手抜き料理。メーカーの企業努力によりナマケモノでもそれなりのものが作れます。

 

「へいお待ち〜」

「お、美味そう」

 

 シンプルなチャーハンと、少しだけ豪華な野菜塩ラーメン。あたしのチャーハンは少し少なめに取り分けたから実質半チャーセット。トモちんならこれくらいは食べるはず。

 

「いただきます」

「召し上がれ〜」

 

 レンゲがなかったから、金属スプーンと箸で食べる。チャーハンを作らなかったら温泉卵でも添えたりするんだけど、これはこれでいいや。

 

 最初は麺とスープだけ啜って、途中で飽きてきたら野菜も絡めて食べ進める。ラーメンを食べる度に、半分くらいで飽きるのがしんどいなと思っているから、実はあたしはそんなにラーメンのことが好きじゃないのかもしれない。

 味変用に少しくどくした人参に助けられつつ、変わらない味に舌鼓を打つ。

 

 チャーハンはパラパラの仕上がり。鶏そぼろを入れたのは正解だったかもしれない。最近はずっとシャンタンを使ったチャーハンばっかりだったから、久しぶりに醤油ベースのものを食べている。昔から我が家の味はこっちだ。色気づいたあたしも初心に帰るというもの。

 

「うん、美味い」

「改宗する〜?」

「アタシは無宗教だって。そりゃこってり系が好きなのは否定しないけど……」

 

 あたしの倍の速度で食べ進めるトモちんにちょっと引きつつ、20分くらいかけて完食。猫舌だから序盤のペースがとにかく遅い。

 とりあえず食器を流しに重ねてぐったり。

 

「ご馳走様でした」

「お粗末さまー」

 

 今日もひーちゃんやつぐが来てたらパスタとかにしてたかもな、と思ったのはトモちんには内緒だ。こんなズボラな男子大学生みたいなメニューで満足してくれるのはトモちんくらい……いや、みんなも美味しく食べてくれるとは思うけど、この辺の雑な感じはあたしたち二人のときだけの恒例行事だ。ラーメン屋に連れていかれたり、釣りやツーリングに行ったり。大学生っぽい。

 

「この後また作詞するのか?」

「んー、そのつもり〜」

「じゃあスタジオ借りようぜ。色々言ったし、気分転換しながらやろう」

「トモちんの奢り〜?」

「おうとも。天才美少女ギタリストの成長に投資だな」

「うへぇ」

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