やりたいことができたので長生きしてみた   作:ははもり

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閑話

 俺の名はダンケル。

 今年で70になる魔法使いである。

 王都にて宮廷魔法使いをし、後進の育成のため70という節目に引退をした。

 俺が憧れたフランメ、その師匠であるクソババアのゼーリエを除けば人類で頂点にいる実力者である自負がある。

 王の信頼も篤く、引退の際には強く引き止められもした。

 しかし俺が死んだ後、後進が育っていなければこの王国の防衛に穴が開く。

 未来を見据えるならば強靭な魔法使いを育て、遥か未来まで王国の安寧の種を蒔き続けなければならないと説得をし、しぶしぶと言った表情の王を納得させた。

 強者が防衛の要にいる安心感も大事ではあるが、それを子々孫々へと繋げることもまた俺の使命である。

 それに俺が長く上にいることで安心感による怠惰を招く可能性もある、ここらが世代交代の時期であろう。

 

 「しかし、弟子が皆すぐに辞めてしまうのが問題だな。俺がガキの頃にやった鍛錬だというのに、いい歳した大人が皆逃げてしまう。軟弱だ」

 

 最初は貴方のようになりたくて! 最強の魔法使いに! 貴方の志を受け継ぎます! などそれぞれでかい口を叩いていたというのにちょっとシゴいてやれば皆裸足で逃げ出しおる。

 あのクソババアと比べて俺直々に親身に教えているというのに、困ったものだ。

 俺の頃なぞ、魔物の前に放り投げられ生き残れば鍛えてやるなどいうほぼ死ぬことが運命づけられた弟子取りの見極めがあったが、それに比べれば天と地ほどの差であろう。

 まったく……今の若者ときたら軟弱で困る。

 

 「ふむ、次は7歳のガキの弟子入り希望か、こいつも逃げなければいいがな」

 

 使用人に伝えられたガキの情報は文字も読めない一般人だという。

 今までは貴族の魔法使いや冒険者の魔法使いというある程度の基礎を固めてきた経験者ばかりだったが、全くの未経験者とはな。

 まあある程度他の常識を持っている奴よりマシかもしれないなと俺は半ばこいつも逃げるだろうなという諦めの感情で流した。

 それから半年後、ガキは俺の元にやってきた。

 体は細く、全くもって鍛えられている様子は見えず、ここに入った理由は自分がしたいことの糧にしたいという自分本位の願いをこの俺に伝えてきた。

 今までは耳心地のよい薄っぺらな言葉を並び立てていた奴らばかりであったが、この俺を踏み台にして夢を叶えたいというやつは初めてだ。

 こいつは今までの奴とは違う……その確信は久々に俺の胸を熱くした。

 そうしていざ修行をつけてやればこのガキは才能にあふれていた。

 エルフ語に公共語などの文字を半年でマスターし、記憶力がいいのか魔法陣や歴史書の文をまるで砂が水を吸うように吸収していく。

 こいつこそが俺の後継に相応しいと確信した。

 だがこの俺が親身に稽古をつけてやっているというのに毎日毎日俺に歯向かい文句を並べ立てる。

 うるさいだの鬼畜だの暴力反対だのと喧しい限りだ。

 俺の若い頃は毎日血のしょんべんを出し、毎日死ぬかと思っていたというのに睡眠時間がある程度確保できるだけ有情であろうに。 

 全くもってわがままな弟子だ。困ったものである。

 そうしてあっというまに一般の魔法戦士ほどの実力を得た俺の弟子は実家に帰って畑仕事をしたいとのたまいやがる。

 こいつは何を言ってるんだと頭を抱えた。

 お前は俺の後継者として俺を超える魔法使いになるのだ。

 そんなくだらないことに魔法を使う暇があればさっさと魔物の一匹でも狩ってこいと俺は三歩歩けば魔物と出会うと言われる魔獣の森の奥深くへと放り投げ、三日で帰ってこれなければ一週間飯抜きだと言い聞かせ一人帰る。

 相変わらずの減らず口で俺に死ねだのクソジジイだのと文句を言ってきたが俺の若いころはそもそも魔法すら使えない状態で森へと放り投げられたんだ。

 もうすでにある程度戦えるほどの実力をつけてやったんだ。むしろ聖人だと感涙でむせび泣いて欲しいほどである。

 そうして三日後、日を越えるかどうかの時間、奴は血まみれで帰ってきた。

 見えるところは全て打撲か骨折をしており、腕が千切れかけてはいたものの「飯だ! 肉をよこせクソジジイ!!」と威勢よく扉を開けて帰ってきたバカ弟子を見て、肉なんて貴重な物をなんでもない日に食えると思うな!!と殴って気絶させた。

 流石に死にかけたので僧侶を呼んで傷を治してやり、血を流しすぎていたので俺の特製のクソ不味い増血丸を口に無理矢理ねじ込んでやった。

 クソガキは気を失いながらもあまりの不味さに痙攣し、白目をむいて地に打ち上げられた魚のような反応をしていたがこの程度で死ぬような鍛錬はしていないので俺はそのまま放置し、部屋に帰った。

 俺はなんて優しい師匠だろうか、俺のクソ師匠に比べれば面倒見が良すぎるほどだ。

 そうして俺は俺の持つすべての技術をバカ弟子に叩き込むこと十年。

 やつは俺を超える魔法戦士として大成した。

 常人の想像を容易く超える魔法をいくつも開発し、王都の発展にいくつも寄与した。

 もう俺に教えられることはなにもないであろう。

 俺はこのバカ弟子を王へと推薦し、新たに弟子を取ろうと心に決め、

 

 「もう俺に教えられることはなにもない。お前は俺を超えた。お前のことは王へと推薦しておいた。俺の後継として王都をますます発展させるのだ」

 

 「なにしてんだお前ぇえええええええええ!!!!」

 

 「ぐぇえええええええええええええええ」

 

 そうしてバカ弟子の卒業と同時に俺はぶん殴られた。

 なぜだろう。




主人公は教え下手の師匠の話を聞かずほぼ独学で魔法を覚えました。

王「教え下手の人の耐久力の基準を間違えているこいつを世にはなっていいものだろうか……」

主人公「なに勝手に推薦してんだボケ老人!」
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