紅き月の非日常   作:大正ロマン

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スパイファミリーの映画を見に行った時にこれのネタが全部ぶっ飛びました。
いやあ危うくスパイの二次創作おっ始めるとこだったぜ。


フィリフラ出血、大サービス!

二人の吸血鬼によるカリスマかんしゅー写真鑑賞会もとい辱めを

すっかり堪能されていた、あくる日の夜下がり。

 

 

「待ちなさいフラン!私がフィリップと行くからあなたはここで待ってて!」

「え〜。だからお姉様は心配しすぎなんだよ〜。

とにかく大丈夫だから!!フィリップも一緒だしね!!!」

「あ、ちょっと!……もうまったくあの子ったら!」

「ハハハハハ。お二人とも、あまり走られてはいけませんよ。」

 

 

かの高潔な紅魔館では、吸血鬼姉妹によるトムとジェリーも真っ青の追いかけっこが繰り広げられていた。

厳格な館主は事を冷静に考える余裕はなく、さながら般若の形相で妹君を追い回す。

一方でその妹様は、己の好奇心に任せて縦横無尽に館を駆け回る。

そして男はいつものことだと大して気にも留めず、幼女に引っ張られるのに任せ後に続く。

 

彼の“いつものこと”が全てを物語っているが、

これは至って、彼らにとっては至って普通の日常風景であるということを、

くれぐれも留意して頂きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

「ようやくひと段落つきましたね…。」

「いやー、大変だったね〜…。」

「うう…。」

ここは紅魔館。吸血鬼の根城である。

そのリビングには威厳のかけらも感じられないうつ伏せに伏している館主、

そしてそれを苦笑いで見ている男と少女の三人がいた。

「流石にやりすぎかと、妹様。

私でさえ彼女に同情してしまいました。」

「むう…。でもフィリップも結構ノリノリだったじゃん。」

「…おっしゃる通り。あの百面相はもはや才能ですね…。

自重すると言ったばかりなのですけれども。年長者として不甲斐ありません。

…まあ後悔もしておりませんが。」

「服めっちゃ赤いじゃん。サンタみたいになってるよ。

いやほんとに200年それに耐え続けた私の身にもなってよね…。

知らないでしょ?今回はあれで済んだけどさ、お姉様のボルテージのキャパなんて未知数なんだよ?」

「今身を持って知りましたよ。ところでクリスマスは何か欲しい物はありますか?」

「うわあすごいデジャブ。ブラッククリスマスってやつ?また同じ悲劇を繰り返したいの?」

「いえいえ、サンタとしてお利口なお嬢ちゃんに是非ともプレゼントを差し上げたいな、と。」

「うん、やっぱり理由になってないしなんかちょっと気持ち悪いな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事はかのアルバム騒動から始まる。

 

妹様による悪意のない暴露の後、当主様は言われた。

「これからも私に従いなさい。」

「ハハハ、相変わらず一貫されていらっしゃる。

やはり情緒が豊かでいらっしゃるのですね。」

「……子供っぽいって言いたいんでしょ。」

「子供心、初心に帰るのも大事な事ですよ?」

「だから否定しなさいよ!」

500年生き永らえ続けていた末の機転は伊達ではない。

それを証明するかのように、彼女は上手いことアルバムから日常会話へと話題を変換していた。

「(これよこれ!やっぱり私はこうでなくっちゃ!)」

「(んー、おやつ食べたいなー。

でも最近のお姉様結構ケチなんだよなー。)」

圧倒的なカリスマ性。

この荘厳な雰囲気に、皆も思わず沈黙していた。

かくして当主様の粋な物言いにより、ようやく騒動が終息したかと思われた矢先。

 

「お二人とも、そろそろティータイムに致しませんか?」

「ほんとに!?」

フィリップがそう言うや否や、待ってましたとばかりにフランは飛びつく。

「ほらフラン、そんなにがっつかないの。

いいわね、ちょうど小腹が空いてきたところだったのよ。」

「ええ、では少々お待ちください。」

やはりというべきか如何なるものをも破壊する少女、そして新参者の男は

たかだか一つの地雷を踏むだけに飽き足らなかったのである。

彼が唐突にリビングの開けた空間を指し示すと、そこにはテーブルクロスがかけられた

台車に乗った数々のスイーツ、そして紅茶が現れた。

「うわ!え、どっから出したの?」

「ハハハ。大したこともない能力の一環ですよ。さあ、お召し上がりください。」

「やったー!ありがとうフィリップ!」

フランはそれを満面の笑みで受け取る。

「あ、ちょっとフラン。私の分もちゃんと取っておくのよ。」

「え、お姉様の分?あるわけないじゃん。」

「………は?」

「ああ、レミリア殿の分ならこちらにありますよ。

申し訳ない、妹様の方に気合いを入れすぎてしまいまして。」

彼はそう言うともう一つの台車を指し示した。

「こちらでよろしければ差し上げますが…まあ、妹君のためですし、ね?」

 

フィリップは図らずも、諭すように話す、いや話してしまったのが運の尽きであった。

「…………」

「いやあ、なにぶんパティシエの真似事は初めてでしてね。感想を楽しみにしておりますよ妹様。」

レミリア殿は「フフフフフ…」…レミリア殿?…」

見やれば、かの姉君はふるふると体を小刻みに揺らしている。

その瞬間、二人の背筋にとてつもない悪寒が走った。

 

「フィリップぅ…あなた……いい度胸してるじゃない?…ねぇ?

…知ってるかしら……?食べ物の恨みって深いのよ?…

まさかフランを優先するとはね……。さあ、…私のチーズケーキは何処にあるのかしら」

「おお……。どさくさに紛れて作ってすらないものの話をするとは…。」

ようやく見せたカリスマの本領に、彼はらしくもなく戦慄する。

そしてそれは紅き幼子も例外ではなかった。

「…あーあ、やっちゃったねフィ「あなたもねフラン…?

私、そんな強欲な子に育てた覚えはないのだけれど……?

…ずっとこんなとこに引きこもっているから思いやりがなくなったんじゃないかしら……?」

「うわぁ…飛び火した。それはお姉様もそuムグムグ…。」

「いやあ危ない危ない。相変わらず行動が読めませんねえ。口封じも意外と大変なんですよ?」

「あれ、もしかしてフィリップに殺されルート?」

「ハハハ、何を言っても火に油を注ぐようなものですね。

現に今死にかけましたし。……ところで妹君。二百年キャリアがおありの先輩に対処ノウハウを

御教授頂きたいのですが……?」

「いやいや少しくらいあのメスガキ分からせてよ。年長者の意地はないの?」

「死ななきゃ安い、これが私の座右の銘です。」

「え、本当に主人公?…フィリップってやっぱ人間なんじゃないのかなー。」

「フフフフフフ……。」

彼は直感で何を言っても通じないことを悟っていた。

死人に口なし。再生こそするが、彼らにおいても普通に生死の概念が存在する生き物である。

 

「んー、強いて言えばそうだね。怪我しないように気をつけて、かな。

ああ、もちろん全部当たっちゃダメだよ?」

「ハハハ。……いや笑えませんね。怪我ってそれ相当ですよ。」

「フフフ、よく言うよフィリップも。あ、避けたら避けたで理不尽にキレてもっと弾幕張られるから

素直に受けた方がいいよ。」

「何ですかその荒療治は。」

彼ら吸血鬼界隈での怪我という事象は暫く治ることのないであろう損傷のみを意味する。

負傷など瞬きする間に治る彼らとして、吸血鬼をも傷つける痛みが長期間体を蝕み続けることには

如何なる種族と比べても耐性がなく、縁起の悪いものとして忌避されていた。

そのような一撃がこれから無数に降り注ぐというのである。

いくら自分より格が下だといえど、彼もその惨劇に緊張せざるを得なかった。

「大丈夫だよ。……今日は生贄が二人もいるからさ。

それに一人は壊れる気配のないブランド物!やったね。」

全てを破壊できる幼女は全てを破壊せんとする少女に死んだ魚のような目を向けていた。

「………心中お察しします。」

 

 

 

 

こうして、館主による凄惨な暴動は半刻余り続いた。

犠牲者曰く、彼女からは今までにないほどのカリスマ性をビンビンと感じていたという。

図らずも彼女はたったの一夜で地に堕ちたはずの威厳を取り戻した。

 

時はカリスマをようやく宥めすかしたところまで戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「でも…」」

確かに彼らは本気で反省しているようであった。

そう、反省はしているようなのだが、同時に彼らにはある一つの共通認識があったのだ。

 

「まあお姉様なら大丈夫だと思うけどね!」

「レミリア殿なら心配ありませんね。」

「だからなんなのよ!二人して館主をいじめて…。

「まあまあ慕われてはいるんですから。」……いや遊ばれてるの間違ーーー

 

「ティンローン」

突如、来客を知らせるチャイムが鳴り響く。

 

「「!!!」」

「いや音の癖強いな。」

「んー、こんな遅くに誰だろ?」

 

突如、来客を知らせるチャイムが鳴り響く。

それは、まるで自分の存在を強調するかのようなタイミングであった。

 

「………」

「………ハハハ。」

赤色の少女を除き、住人は警戒態勢に入る。

二人はそのすさまじい存在感に気圧されていた。

これほど距離が離れていても感じる、ただならぬ気配を。

「……フラン。もっとこっちに寄りなさい。」

「……不思議なお客人ですね。

夜も更けてきましたし、やはり彼らですかな?……いや、宅急便という線も……。」

「私たち魔女じゃなくて吸血鬼ね、確かに系統一緒だけど。それに魔女のコミュニティとかあれもないでしょ。」

「私も足舐められたい!!!ジジに!」

「「……………え、どこそれ。」」

 

「…いずれにしろ、やけに堂々としているのが気になりますねえ。

ご丁寧に呼び鈴を鳴らすとは…

 

夫婦漫才もとい家族漫才を軽くする中、彼はようやく異変に気づいた。

 

 

おや………これはこれは。随分とまあ懐かしい気配じゃないか。」

 

 

「…え?」

刹那、静寂と殺気が辺りを支配する。

「うわっ……あれ、フィリップ?」

 

カチャリ。

数瞬の後、ドアを開いたであろう音が微かに聞こえた。

 

「「…!!!」」

彼女ら吸血鬼姉妹はようやくその音で我に返る。

「フフフ……意味が分からないわ。何でこう面倒事ばかり持ってくるのかしらね彼は。」

「何してるのお姉様。早く追いかけようよ面白そうだし!」

 

 

 

 

 

 

部屋を見やると、紅魔館の用心棒は忽然と姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品のレミフラはスイーツ好き。
そういうことなんで。
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