サトノの『道化役者』と『冠』は調う   作:つヴぁるnet

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赤の叡智「計画通りって、奴だね」






つぎに水風呂

 

 

その日、嫌なことがあったのならサウナ。

 

その日、良いことがあったのならサウナ。

 

その日、特になにも起きなくてもサウナ。

 

終わりも、始まりも、サウナで今日を飾る。

 

 

 

 

それが日向一族の掟。

 

木の葉にてサウナは最強!

 

 

 

 

あ、違うわ。

 

 

でも大きな温泉とか行くと忍者の漫画とか、世紀末ハードボイルドアクションの漫画とか、こうサウナをプラスアルファしたら強くなりそうなのが置いてあるし、やっぱりサウナって最強なのでは?

 

え?なんの話だって?

 

サウナ後にくつろぎスペースで寝っ転がって読む漫画って面白いよね!って話だよ。

 

それにウマ娘の世界にも前世と変わらず温泉は多いし、当然のようにサウナもみかけるし、学生時代は帰りに良く通っては、マネモブも多く集うそんなサウナ、焼け石に水をかけてこう、じゅわあああああああああああ!!!(PC書き)とロウリュすると全員がラブアンドピースできるような幸せなお時間、しかしあまりの熱気にリタイアする人もいるけどその点トッポってすごいよな最後までチョコたっぷりだもん。

 

 

「しゃあ!着いた!」

 

 

そして今日もサウナにやってきた。やる気は充分。でも勢い余って乱すな。一番大事なのはマナーだぞ。そりゃタフはルール無用だろうけどサウナはルール有りきな施設だ。そこら辺はサウナーとしてモラルもハイラル城も守護らなければならない。リンク?聞こえますかリンク。

 

あ、ちなみに今日やってきたサウナは一味違うところだ。都内から外れたやや田舎の所なんだが、しかし何故わざわざここまで来たかと言うと今日は休日なのでどこもかしこもいっぱいである。なので穴場探った。ちなみに関東は大体サウナ把握してあるぞ。最近はドラゴンロウリュたるアミューズメントじゃねえの?ってくらい凄いサウナも体験してきたから。アレ焼けるんだよね。てか喉が焼けた。

 

 

 

「んー?今日サウナでイベントか何かやってんのか?……げっ!」

 

 

 

しまったリサーチ不足だった。

 

ウマッターとかで把握しとくべきだったわ。

 

それでええと何々?

 

『午後のこの時間は男女カップル向け混浴サウナを開催しております』だって?

 

おいおいソロサウナお断りかよ。いや別にお断りじゃないけど雰囲気的におひとりさまお断りする感じか。せっかくの緑スキルがぁ!

 

でもここは穴場だけあって人は少ないしササっとサウナれば良いか?本当はしっかり数セット、サウナ、水風呂、外気浴で味わいたかったけど居心地の悪さとか関係あって今日は断念だな。まあいいさ。温泉メインも悪くない。今日はそう言うことにしよう。

 

そんじゃ入りますか。

 

では早速サウナにお邪魔しまー………

 

 

 

「ふぇ?」

 

「んぁ?」

 

 

 

随分とベタな展開が俺の目の前に訪れたがそこには一人の少女が座っていた。

 

しかしその娘は普通ではない。

ウマ耳を生やしたウマ娘だった。

 

でもそれだけならこの世界のデフォルト設定の一部で「ああ、ウマ娘か」って慣性で済む。俺も慣れた。ウマ娘なんて普通にいるし。あとここのスタッフさんもウマ娘だった。ちなみにウマ娘の身体能力でアウフグースされると熱波で消し飛ばされるんだよね。鋼の意志補正で耐えるけどさ。めっちゃ楽しい。

 

なので目の前にウマ娘いてもそれは日常的な話だから驚きしない。いや今驚いてんだけど。

 

しかし今回は一味違った。

 

この体に流れている血筋が騒ぐ。

 

あ、いや厨二病ちゃうぞ?

マジで体の警報ならしてるんや。いやもしかしたら本当の意味で警報鳴らされる側になるかもしれんけどな。ひゃー!笑えない。何もないサウナで二人っきり。何も起こらないはずないぜ兄貴ぃ。こりゃ宝塚の564くらい絶対何が起こるぜ。どどどどうすんのー!!

 

いやだってさ?先程も言ったけど名家の血筋故にこう本能的に刻まれてんのよね。只者じゃないって感じ。実際にあの娘からは普通以上のふいんき(変換できない)が伝わるもん。てか纏っているオーラだけで良いところの娘って感じするし、あと姿勢正しく座ってるだけで気品溢れかえっているし。それよりなんでこんな穴場に?訳わからん。

 

 

「!?」

 

「!!」

 

 

するとあのウマ娘も何かを感じ取ったのか耳がピーンとした。

 

え?え?なに?

 

 

「(ッッー!!!)」

 

 

なんかやばい!

 

俺もなんか彼女から共鳴している!!

只事じゃない!

 

これは……そう!

 

俺の体に封印された『エグゾディア(駆け落ち防止)』が反応している!!まさかの誘発ドローで5枚手札揃っちまったか!!

 

くっ!このままでは体の封印が解かれて木の葉崩しが始まってしまう!!今すぐ水風呂に飛び込んで抑えなくては!!クラマァ!!

 

 

 

「あ、貴方は!」

 

うああああああああ!!!(PC書き)」

 

 

 

ウマ娘がサウナを練り歩いてくる!!

 

や、やばい!

 

捕まえる気まんまんだ!

 

よし、男湯に逃げよう。

 

そうすれば流石に___

 

 

 

「待ちなさーい!!」

 

「待ちなさーいぃぃ?!!?」

 

 

女子(おなご)にも関わらず男湯に入ってくるんだって!?そんなの許さないわ!!!

 

 

 

「つ、捕まえました!!」

 

「いやマジでなにやってんだお前ぇ!!?」

 

 

お風呂で走ると危ないから流石に減速したけどあのウマ娘はそのまま減速せずコチラに突っ込んで俺の手を捕まえた。

 

ああもう終わりだよ木の葉の里。

 

 

「おい!バカなことやめて今すぐ戻れ!男湯に他の人が来ないうちに今すぐ!ハウス!サウナハウス!!」

 

「なら一緒に来てください!」

 

「それは一緒にサウナに入れってことか!?」

 

「そうです!いま一番熱い時間なんです!」

 

「よし、行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、ちゃんとイベントのこと知ってた上でサウナってたのか…」

 

「はい。そうでなければタオル巻きません」

 

「え?なに?つまりそれっていつもは全身を熱気で焼いてるってことか?」

 

「そうです」

 

「逞しすぎんだろ」

 

 

 

この娘、どうやら最近サウナにハマり出したのかサウナ巡りしてるらしい。

 

ほー、この年齢でサウナの魅力に気づくとは将来有望なサウナーだな。

 

特別に 鋼の意志 のヒントをやろう…あ、やっぱりいらない感じ?

 

だよな。

円弧マエストロで良いよな。

 

 

「……てか待て待て待て!俺サウナに釣られてしまったけど普通に良くないよなこの状況?」

 

「え?何がでしょうか?」

 

「いや危機感持てよなサウナ娘ェ!?混浴可能なイベント云々言ってるけど倫理観的に述べるなら普通は男女共にいる状況って身の危険とか感じるだろ!?しかも社会的立場で言えば俺の方が危険だし!君は、なんかこう…ないの!?」

 

「あの、サウナではお静かに」

 

「あ、はい」

 

 

クソ雑魚かよ俺。

 

金スキルの鋼の意志も役に立たねぇ。

 

まあ既に物語の展開は中盤以降。

 

発動条件は満たせなくなってるし。はーなの。

 

 

「ふふっ、ありがとうございます。お兄さんの言いたいことはちゃんと分かっていますよ」

 

「なら少しはこの場面を警戒すると怖がるとかしなさいな。世間知らずな無知なお嬢様タイプかと心配しちまうじゃねーか」

 

「あら?なぜお嬢様なんて思ったんですか?」

 

「雰囲気(変換できた)でなんとなくな」

 

「なるほど。…そうですか……でしたら、私も気のせいでは無かったんですね…

 

「あとこう言ってはアレだが、急なウマっ気だったよな?お嬢ちゃん。力加減できないじゃないかと思って俺はかなり身構えたぞ」

 

「!!…そ、それは、大変申し訳ありませんでした。ちょっとサウナの熱に充てられてまし…て、ね?」

 

「ならそう言うことにしておくよ。だけど風呂場で走るのはやめるんだな。不意な事故によって成長過程の"骨"が台無しになる」

 

「はい、わかりまし……ッッ!!??…な、なぜ、そう、だと?ピンポイントで骨格のことを…」

 

「え?いや、さっきほんの一瞬だけ見たけど1歩目の踏み込みがお粗末だった。力の入れ方からしてありゃ癖だな。足腰の使い方の基盤となる骨に難あり…… っとごめん、あまり語られたくない内容かコレ?」

 

「っ、いえ!!もっと詳しく!!」

 

「お、おう??それで…そうだな。 まあ、これは恐らくなんだけど、始まる本格化に対して一部骨の発達が遅れてんだろ。てかソレって生まれつきズレてるタイプだな?」

 

「!!」

 

「育ちが良さも含めて上品な座り方をしたそんな姿勢だけど、でも腰の下回り。細かくは仙骨か尾骶骨の辺りというかな?その辺の違和感を気にした上で背筋がやや不自然に伸びてんだと思う。実は座り方もそうなってるだけでかなり気にしているだろ?」

 

「っ……だから、骨…と?」

 

「そうだ。もし脚が原因ならアスリートウマ娘によくある本格化する肉体に走りの技術が追い付いていない、そう説明できる。しかし君はまだ本格化してなくて、走りは…… ある程度の学びはありそうな走行技術だがまだまだ未熟。ならそれ以外の原因に着目するんだが、まあこういうのって大体何かしらの『ハンデ』を背負った上で"正常"からズレている事が考えられる。君はバスタオル一枚巻いてるだけだから、足腰とか、あと肉付きとかもわかりやすかったので今のところ見るだけでなんか分かった。説明としてはこんなところか?」

 

「……………………」

 

 

 

これはよくある話なんだよね。

 

ウマ娘は急に成長する。

 

大体12才辺り、つまり中等部手前の辺りから急激に身体が変化する。

 

それはウマ娘だから。

『走りに特化した生き物』だから。

 

そのため肉体がある程度成長すると同時に骨なども走りに耐えれる体に作り始める。

 

第二成長期って奴だな。

 

あとこれはちょいと生々しい話になるが、子供は大人になる時、言葉の表現としては『女の子』は『女性』に、そして『男の子』は『男性』に、このように性別を意識した上で体の発達が始まる。

 

言わば思春期による”性成熟”の成長。

 

大っぴらに言えば『体付きが変わる』ってこと。

 

で、それがウマ娘の場合、普通の人間よりもかなり大きく変化する。そしてこの肉体の変化量について行けなくなるアスリートウマ娘はそう珍しくない。しかしその変化に気づかず無理した肉体の使い方をして怪我したり、怪我させてしまったりと、そう言った事故は絶えない。

 

まあだからトレーナーって存在がある訳なんだが。

 

そんな俺は一応トレーナー資格取得者だからこの子の変化には気づけた。

 

バスタオル一枚体に巻いてるだけだからよりわかりやすかったから色々言えたけどな。

 

 

いやそれより待てよ。

 

ここまで子供の体を、しかも女の子の体を分析しながら、腰つきがとか、姿勢がとか、バスタオル越しにとか、これ実はセクシャルハラスメントのまんまでは?

 

コレ犯罪者にならない?大丈夫?

 

いや、待てよ。落ち着け。

 

この場合は……そう!トレーナーという職業病故についやってしまったんだ!!

 

って思ったけど俺ってまだ職業無いやんけ。

んなアホな。

 

 

くっ、ここは仕方ない。

 

これ以上何が問題が起きる前にサウナから脱出して男湯に逃げるべき___

 

 

 

 

「採用です!!!」

 

「……は?」

 

「早速来てください!!!」

 

「……どこに?」

 

 

 

え?務所っすか?務所ですか?

 

でも自首した方が罪は軽くなるよな?

 

ここはレディファーストに任せてはダメだ。

 

男らしく出頭しよう、そうしよう。

 

 

 

「貴方を招待します!サトノ家に!!!」

 

「え?あ、なに?サ、サウナ家?」

 

「も、あります!」

 

「よし、行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヌケは見つかったようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 


おれは第二のサウナを向かっていたと思ったらいつのまにかガチガチの名家にいた…


な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…

 

頭がどうにかなりそうだった… 


サウナ だとか ととのう だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ… 


もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 

 

 

「騙したな!俺を!騙したな!君はサウナ家って言ったのに!」

 

「サウナ家ってなんですか!?めっちゃ楽しそうですね!でもそんなこと言ってませんから!あとココはサトノ家です!ここまで来たのなら観念なさい!」

 

「ちぃ!やられた!サウナの効果が体から切れてウマ娘の身体能力に勝てないぃっ!」

 

「サウナーの弱点は既に研究済みよ!時間が経てば経つほど効果は無くなる!」

 

「ちぃ!やるなブライト!」

 

「なっ!!ここはサトノ家です!メジロ家じゃありません!」

 

「ほわあああああああ!!!ほわちゃああああああ!!!」

 

「っ!まだこんな余力…!いや余熱が…!!これがサウナの余熱によって生まれる力…!!流石っ!私が採用しただけある…!!」

 

 

 

「急に娘が連れてきたと思ったら、君たちは一体何をやっているのだ?」

 

「あらあら、うふふ、どうやら既に素敵な殿方を見つけたようですわね?あなた」

 

 

 

さて、ポルナレフ状況で(ととの)わせたところで再度確認。

 

都内に戻ってきた俺はこのサウナ娘に案内されたのだが向かった先はどう見ても立派なお屋敷だった。しかしこの世にはそんなサウナもあるんだなと思い込み、テーマパークに来たみたいだぜテンション上がるなー、能天気に考えていたらこのサウナ娘の親が現れた。半分拉致的状況である。くそ!俺は第二サウナに案内されたんじゃなかったのか!?これはどういうことだダーレーアラビアン!?俺はサウナの子じゃなかったのか!!三女神マッチングアプリの一人だろお前は!!教えはどうなってあるんだ教えは!!いや知るかいな。

 

 

 

「あ、サウナパワーが完全に切れた……ふしゅぅぅぅ…」

 

「ふー、なかなかに大変でした。さて……お父様!お母様!私のトレーナーが見つかりました!」

 

「ふぁ!トレーナーぁ!?」

 

「私の……いえ!サトノ家のジンクスを破ってくれるパートナーとならん方です!」

 

 

「なんと!この者が!」

「!!…クラウン……この子はまだそのことを気にして…

 

 

 

なんてことだ!もう助からないゾ!

 

そんな脳内ボイスがセルフで聞こえるが、いやいやいや、待て待て待て、何を言うんだこの娘ェ!?

 

え?トレーナー?

 

 

「誰が?」

 

「貴方です!」

 

「どう言った形で?」

 

「採用、です!」

 

 

いやそのまま言われても困るがな。

 

 

「待ってくれ。状況が読めん。ええと、俺はサトノ家に来たのは理解した。そしてサトノ家のことも知っている。そんでもって…… 君はつまりサトノ家の者だったってこと?」

 

「はい!…あ、自己紹介がまだでしたね!」

 

()()紹介の間違いじゃないのか?」

 

「まぁまぁ!ここはサウナのような広い心で行きましょう!」

 

「俺は実際に広いサウナに行きたかったんだが…」

 

 

とりあえず逃げることは出来なさそうだ。

 

仮に逃げれても厄介な事になりそうだし。

 

ここは大人しく諦める事を脳内で選んでいると目の前のサウナ娘は両親の前に立ち、育ちの良さを見せるように姿勢を正してから両手を膝下近くまで下ろすとゆっくりお辞儀した。

 

 

「わたくしサトノ家のウマ娘サトノクラウンと申します」

 

 

「__!!!」

 

 

 

体に流れる血筋が一瞬だけ、ざわつく。

 

これはなるほど。確かに。

 

サウナで感じ取ったあの雰囲気は気のせいなんかじゃなくて、本当に良いところの生まれであることを再確認させる。

 

品性も、気品も、兼ね備えた__本物の令嬢。

 

 

 

「では次に貴方のお名前を教えてください!」

 

「え?ああ、俺の名は 桐生 徳(きりゅう とく)

 

「なるほど桐生さん!」

「む?桐生??…待て、君はもしや……桐生院の者か?」

 

「え?あ、はい!その通りです!と、言っても自分の生まれは桐生院から派生した分家の者でございます。よって苗字は『桐生』です」

 

「なるほど………ふむ、そういうことか……」

「え?あの…おとう、さま?」

 

 

サウナ娘…… じゃなくて、このサトノクラウンって子の父親は『桐生』の名を聞き、何か考えるように少しだけ目を伏せる。

 

え?なんかマズったか?

 

ガチガチのガチ勢な本家とは違いエンジョイ勢な分家だから礼儀作法とかもちゃらんぽらんであり、俺はこの方を前に何を踏み外したのかわからない。てか、うわぁ。周りにはこの屋敷の使用人とかもいるし、俺普通に囲われてるやないか!助けてエイリーク!

 

 

「ふむ、わかった。娘が彼を連れてきたのも理解した。この血筋の者は確かに信頼できる」

 

「なら!」

 

「うむ。まずこの者は認めよう」

 

「ええ、何をさ!?…え?え?自分はもしや彼女のトレーナーになると!?」

 

「いや、それはまだだ」

 

「え……お父様?」

 

「まず桐生くん。君は『中央』の資格を持っているのかな?」

 

「!?」

 

「いや、持ってません」

 

ッッー!??!!

 

「やはりそうか…」

 

「そんな!いや、でも…!あんなに詳しく…!な、なんで!!」

 

「なんでと言われても、持ってないから?」

 

「け、けど!私の体を見て骨格に異常を持っていることがわかったじゃないですか!そこまでの観察眼があるなら…!」

 

「サトノクラウン、これは別に普通のことだ。トレーナーなら誰でも持つ観察眼。だから『誰でも』の枠にいる俺なんかでもデフォルトとして分かっていることなんだよ」

 

「そんな……!」

「ふむ……そうか……やはりか……」

 

「ッッッ〜、嫌です!嫌です!桐生さん!中央の資格を取ってください!わたし!半年後には中央に行くんです!そのために香港から戻ってきたんです!このジンクスを破るためにここまで準備してきたんです!」

 

「え、今からぁ!?い、いや、でも…」

 

「お願いします!わたし!貴方となら!」

 

「クラウン、少し落ち着きなさい。それと桐生くん。娘が突然ですまなかった」

 

「あ、いえ、お気になさらず…」

 

「そんな……そんな……そんなっ…」

 

「…」

 

 

 

それから俺は解放されて、サトノ家から出ることができた。

 

屋敷を出る際にサトノクラウンの父に見送られながら再度「娘が失礼なことをした」と頭を下げていた。

 

俺も「大丈夫ですから!」と少し慌て気味に宥めてそのままサトノ家を去る。

 

 

しかし、その時、ふと視線を感じたので顔だけ後ろに振り向く。

 

サトノ家の屋敷を見ると二階の窓から彼女がコチラを見ていた。

 

だが奥に引っ込んでしまう。

 

俺は気づかないフリをしてほんの少し、早足で去ってしまう。

 

 

 

「………」

 

 

秋風が涼しい。

 

いや、涼しすぎる。

 

サウナ上がりの体を急激に冷やしてくれる。

 

それと同時に、まだ耳に残る、あの嘆き。

 

 

 

 

__このジンクスを破るためにここまで準備してきたんです!

 

__お願いします!わたし!貴方となら!

 

 

 

 

「………っ、何がサウナのように広い心だよサウナ娘。あんなに熱に充てられたように…」

 

 

 

 

未だしばらく、耳に残りそうな嘆き。

 

それが蝕むようにまとわりつく。

 

 

 

「ジンクスを破るために準備してきた?っ……ふざけるな。そんな使命感が成長途中の子供程度に背負えるか。君はもっと子供らしく夢見る形でターフに生きるべきだ。何故サウナーがサウナ好きかなのかわかるか?それはいつも"が"楽しいからだ」

 

 

 

 

 

その日、嫌なことがあったのならサウナ。

 

その日、良いことがあったのならサウナ。

 

その日、特になにも起きなくてもサウナ。

 

終わりも、始まりも、サウナで今日を飾る。

 

 

それが…

 

 

 

「満たされるからだ」

 

 

 

財布からトレーナー資格を取り出す。

 

どう見ても『地方』の資格。

都合よくも『中央』なんざ、書いてない。

 

ため息一つ共に財布に閉まうとそのまま携帯電話を開く。特に通知は無い。

 

10月10日__18:24。

表示されるのは日にちと時刻のみ。

 

 

 

 

だが不意に、カレンダーを見た。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

進めていた筈の歩みは止まる。

 

カレンダーの数字を直視する。

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

そして何を思ったのか俺は画面を親指でなぞる。

 

そこには…

 

2月28日__

第二次、中央資格トレーナー技能試験。

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 

 

 

 

 

カレンダーを閉じて、ボーと眺める。

 

まだ耳に残る___あの声。

 

 

 

 

__貴方なら!!サトノ家のジンクスを!!

 

 

 

 

血筋が___いや、刻まれた意思。

 

もしくは____鋼の意志が。

 

本家とは枝分かれた芽をもう一つ咲かせようと、この体に流れる血が騒がしい。

 

 

 

 

ああ、普通は出るわけない。

 

 

 

 

柿の木からは、柿が。

 

栗の木からは、栗が。

 

桃の木からは、桃が。

 

 

 

それが決まりだ。

 

それが定めである。

 

それが遺伝子なんだ。

 

実を付けるものは既に決まっている。

 

 

 

 

 

でも、この体は、この魂は、この世と違う。

 

 

 

 

 

そう、俺は転生者。

 

何故か始まった二度目の人生。

 

他所から持ってきたこの世にない__意思。

 

鋼かどうかもわからない、そんな意志。

 

しかしサウナで願われた、幸せの形。

 

それが本家の桐生院だろうと、分家の桐生だろうと、この俺に与えられたその血筋。

 

 

 

 

エンジョイ勢か。

 

そういや、そんなもんだったな。

 

なにせ俺は『桐生』って産まれだからな。

 

本家とは違う人間だから。

 

 

 

 

「…………いい訳か、こういうのは」

 

 

 

画面のボタンをいくつか押す。

 

そして耳に当てる。

 

 

 

Prrrrrr…

Prrrrrr…

Prrrrrr…

Prrrrrr…

 

 

 

……ガチャ。

 

 

 

 

 

『まさか、君からかけてくるとはねぇ。いや久しぶりだね、桐生くん』

 

「どうも、ご無沙汰しております。二つほど報告がありまして。一つは地方の資格を取得しました」

 

『おお、そうか!そうか!それは良かった。うん。桐生くんは良くコチラまで足を運んで私の手伝いをしていたからな。そうやってよく勉強した結果だ。卒業したあの子も君の頑張りを喜ぶだろう』

 

「ありがとうございます。それでもう一つなんですけど。あー、でも、その、これは報告と言いますか、ええと、寧ろお願いと言いますか…」

 

『ふむ、それはなんだろうか?とりあえず言ってみなさい』

 

「はい。ええとですね……貴方の……沖田トレーナーが担当していたウマ娘ナリタトップロードの成長記録などを全部僕に頂けませんか?」

 

『!?…桐生くん……?きみは何を…?』

 

「中央の分析力(ガチ勢)を、彼女の5年間の軌跡(ターフ)を、どうか僕に貸してください。そしたら学べます。そうすれば僕の血筋はその時だけ"確か"になれます」

 

 

 

 

 

桐生ではない。

 

これは本当の___桐生院(ガチ勢)として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封印は解かれ___鋼の意志は本物になり。

 

その者は『冠』を飾る道化役者(クラウン)になる。

 

そうして『ととのう(調う)』ことになるだろう。

 

そんな彼は____そう、例えるなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ねぇ」

 

「……どうした?」

 

「なんかさ、また秋が始まりそうだなって」

 

「何を言う。もう秋じゃないか」

 

「ううん、そうじゃないよ。こう、なんと言うかさ。また実りがありそうだなって、アタシは思ったんだよね」

 

「実り…か」

 

「うん。だってほら…! こうして落ちる紅葉を頭に被ればさ、いつしかのキミやアタシみたいな、そんな独りよがりに投じれる。魂は自由なんだってね!それは今も思うよ」

 

「……なら、また被れば良い」

 

「あっははは!もう脚は既に動かないよ。私の実りは既に終わった。でも描くことくらいは出来そうかな。うん。こうやって目を瞑ってみれば、まだ『そうだった』時の魂がアタシを思い出させてくれる。じゃないかな?ミスター・パンプキン」

 

「勘弁してくれ。もう役割は随分前に終わった。もう踊り疲れたよ。俺はね」

 

「じゃあ誰かに踊ってもらおうよ!あの頃の時のようにさ。それが世界を巻き込むほどにもならない、小さなポケットの中でも、そうなりたい自分を求めれるなら…」

 

 

 

 

 

 

 

___誰でも『冠』は"被れる"よね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界はどうやら随分と都合が良い。

 

だからそこに。

よくありげなご都合主義があったとしても。

 

 

 

 

「一度だけ『桐生院』として挑んでやる。それでもしダメなら君がこの血筋に願い焦がれたジンクスはその程度だ。でも俺の名前はジンクスすら裏返る『徳』だ。親からそうやって幸せを望まれた。もしこれが本物なら、そのジンクスは…」

 

 

 

 

 

幸福を得る__頂の『冠』はすぐそこに。

 

青年は__桐生院という『道化役者』とならん。

 

ここから物語は ととのい 始めるのだから。

 

 

 

 

 

 

つづく






この作者なんでこんな一発ネタに本気になってんだ?
バカじゃねぇの?(嘲笑)

でもたのちぃ(脳死)



【例の二人】
自由なウマ娘が三冠を取るとGUNDAMはすることなくその年でカボチャ頭を脱いだ方の世界線であり、マフティーとしての使命感もこの世界に必要無かったためその者は普通のトレーナーとして歩んだ。二人目の担当ウマ娘カツラギエースのラストランを見送ると「自分は樫本の続きはしない」として中央を去った。現在は前世の続きとしてスポーツマッサージ師として職に就き、呪いと重責に縛られることない第二の人生をちゃんとした形で歩んでいる。前書きにある『カボチャ頭は無し』つまりこの意味でもある。もちろん隣には自由なウマ娘がいる事は言うまでもないだろう。


ではまた

とくさんか?

  • 違います
  • そうです
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