非常に不味いことになった。あのクソパンダに対する怒りで、なんの目的で私がここに来ていたのかをすっかり忘れていたのだ。それにより私は、守るべき千束にリュウガとしての正体をバレてしまった。
今私の中では尋常じゃないほどの汗が流れ落ちている。黙り込んでいるのはおそらく焦りすぎて何を言えばいいのかわからないからだろう。
「はい、珈琲」
「あ、ありがとう……」
目の前に置かれた白いマグカップを掴み、珈琲を一口飲む。舌の上で珈琲の味を楽しみながらマグカップを机に置くと、千束とたきなが椅子に座った。
ふぅ……珈琲を飲んだら少し落ち着いた。今私がいる場所は喫茶店「リコリコ」。千束やたきながリコリスとしての活動拠点だ。
アンティークなお洒落さを醸し出すこの店の雰囲気は好きだ。それにここではミカがこだわってこだわりぬいた豆を使った珈琲を飲める……なんだここ、天国じゃないか。少なくともミラーワールドにあるリコリコよりは天国だな。
「それで、貴女はいったい何者なんですか?」
「ちょ、たきなー!? いきなり過ぎない!?」
「こういうのは単刀直入に聞いたほうがいいかと思って」
まぁ、たきなの性格的に聞いてくるだろうなぁとは予想してた。でももう少しこの雰囲気を楽しませろや。あんましリアルワールドのリコリコに来れる機会ねぇんだよこっちは。
「えぇと、な、名前はなんていうのかなー?」
ほら見ろ。千束がめっちゃ気を遣ってんじゃねぇか。
「……黒」
「ん?」
「……黒って呼べばいい」
司に裏千束か黒千束のどちらかで呼べって言ったらまさかの「黒ちゃん」だからな。呼ばれ慣れてしまった自分が悲しくなるが、確かに「くろちさと」や「うらちさと」って呼び辛いよな……。
「じゃ、じゃあ黒ちゃんで!! 黒ちゃんってさ、えっと……あの黒い騎士、なんだよね?」
「そうだよ。仮面ライダーリュウガ」
「リュウガってなんなんです?」
「リアルワールドと呼ばれる、こことはまた別のミラーワールドで戦う戦士のこと」
それからというものの、仮面ライダーやミラーワールドについての質問がかなり飛んできた。最初こそは真面目に答えていたけど、だんだん面倒になってきた。
「なんで……私と同じ顔をしているの?」
「は?」
「あっ!! べ、別に同じ顔なことに文句を言ってるわけじゃないよ!? ほ、ほら!! 世界には同じ顔の人間が3人いるって言うじゃん!? だけど、君からはそういう感じとは違う気がして」
へぇ~……流石オリジナル。普通の人なら違和感を持つこともないはずなのに、まさか違和感を感じたとは、ね……。
「別に……君が気にすることじゃないよ」
「そ、そっかー……」
気まずっ!! 自分で言っておいてなんだけど、凄く冷たい言い方になっちゃった!! ど、どうしよう……気を悪くしてないよな。
「おや、千束……その子は友達かい?」
カランカランと音を立てて玄関? から入ってくる黒い肌の男性――ミカ。野菜などがたくさん詰め込まれた袋をカウンター机に置くと、私の顔を見た。
「……ふむ、まさか、君は……」
「え、なになに? 先生、この子のこと知ってるの?」
「……いや、私の勘違いだったようだ」
はぁーー!!!! やめてーー!!!! めっちゃ怖い!!!! 怖すぎるよこの人!!!!
何かを思い出すかのように深く目を瞑ったミカは、優しそうに微笑むと私の頭を撫でカウンターの奥に入っていく。
大人の男性らしいゴツゴツとしているけどキレイな掌の感触がある……思わず手を自分の頭に乗せてしまった。
「どうしたの〜?」
「……別に、なんでもない」
「ふぅん」
やめろぉ!! そのニマニマした顔ぉ!!
「もう質問もいいだろ……私は帰る。珈琲、ごちそうさま」
「え、もう帰るの?」
「まだ聞きたいことがあるのですが……」
「……また、珈琲を飲みに来る。そん時に聞いてくれればいい」
服のポケットに片手を突っ込み、もう片方の手で扉を開ける。ここの珈琲美味しかったしまた飲みに来よう、そう思いながら外に出た。
〜〜〜〜
リコリコを出てから数時間後、私は司が送っていたメールに書かれている場所へやってきた。
そこは私がさっきまでいた喫茶店「リコリコ」と同じくらいお洒落な雰囲気を持った店だった。
「ここか……」
店の扉を開き中に入る。
「お、へいらっしゃい!!」
喫茶店……だよな、ここ?
「もう!! 先ほども教えたよね!? ここは寿司屋じゃない!!」
「んなこと言われてもよぉ」
なんかこう……バカみたいな笑みを浮かべているバカと、チャラそうな見た目な割に真面目系な少女が言い争っている。内容がすごく馬鹿らしいけど。
「司はいる?」
「司……? ついさっき出ていったけど?」
マジかアイツ……人を呼び出しておいて本人いねぇのかよ。仕方ない。後でストライクベントしてやろっと。
「司の知り合いか?」
「そう、だけど……接客業としてその接し方はどうなの?」
「何度も言ったけど治らないんです」
なるほど……。
「すげぇなお前!! チビのくせにせっきょくぎょうについて知ってるのか!!」
「んだとゴラァ!? 誰がチビだぶっ殺すぞテメェ!!」
「なっ……そのキレ方!! まさかお前、リュウガニキか!!」
「リュウガネキな!? 勝手に男にすんな!!」
なんで
「ハッ!! 違うだろ!! なにさり気なくチャーハン食べさせてんだお前はァ!!」
「うめぇだろ? チャーハンは得意なんだぜ!!」
「一応ここチャーハンは取り扱ってないんだけどなぁ……早く帰ってきてくださいよ〜マスター」
茶髪の少女がこのカオスなフィールドに嘆いているけど無視で。
取り敢えず司というバカにはストライクベントの刑だな。焼いてやる。
〜〜〜〜
「へっへっへっへ〜! マルチバース・ヴィランも太っ腹だよなぁ……こんなにもいいアイテム無料でくれるんだからよ」
「ホントだよな。これさえあれば無敵だぜ!!」
「でも、リュウガには勝てねぇけど」
薄暗い裏路地で3人の少年がニタニタと笑い笑みを浮かべている。手にはそれぞれ、サソリを模した剣とトンボを模した銃、そして蜂を模した機械(またお前か!!)が握られていた。
「かぁーー! 早くリュウガをぶっ倒したいぜ!!」
「あのリコリコとかで働いているリコリスめっちゃ可愛い!!」
「犯してぇ!!」
下品な笑い声をあげながら裏路地を歩く3人の前に、黒いコートを着た青年が現れた。
「あ? 何だお前」
「それ……お前らも仮面ライダーか」
「だったら?」
青年が懐から黒いドライバーを腰につけ、黒と緑を貴重とした短刀のようなバックルを取り出した。
「なんだそりゃあ?」
「お前達屑どもを倒すために手に入れた力だ……!!」
『SET AVENGE』
ゆらりと少しだけ前かがみになると、右手の人差し指を親指で抑えポキリと鳴らす。
「…変身…!」
バックルからBUJINSWORDというロゴが出現し黒いモヤに覆われる。
『BLACK GENERAL BUJIN SWORD』
ロゴがBUJINとSWORDで左右に分断されると、それを禍々しい巨大な二つの腕が掴み、その手の中に出現した拡張装備を無理やり青年の体に押し込む。
『READY FIGHT』
装着に合わせて緑の竜巻が周囲に吹き荒れた後、縦に赤い斬撃のようなエフェクトが入り、それと同時に黒い霧が晴れその姿を表した。
仮面ライダータイクーン・ブジンソード。黒い狸の将軍と呼ぶのがふさわしい姿に、3人が思わず後ろへ引いてしまう。
「み、見た目だけだ!! やるぞ!!」
「「おう!!」」
『『『ヘンシン!』』』
3人の少年はそれぞれ仮面ライダーサソード、仮面ライダードレイク、仮面ライダーザビー(またお前か。いい加減にしろ!!)に変身すると一勢にタイクーンに向かっておく。
「お前らのような屑がいるから……義姉ちゃんは!!」
タイクーンが手を前にかざすと、なにもないところから黒いモヤが現れ一つの刀になる。柄を掴み、一瞬だけ鞘から刃を抜くとまた鞘に戻し、居合の構えを取る。
「俺の理想の世界を叶えるために……ここで死ね!」
漆黒の将軍が専用武器「武刃」を振り抜いた。
次回
「覚醒」
リュウガネキはイッチのスレキャラともう少し関わるべき?
-
関われ
-
関わるな