鏡のファースト(完結)   作:プロトタイプ・ゼロ

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今回から第二章開幕です。

前回でも言ってたようにしばらく裏千束は出てきません。


第二章【マルチバース・ヴィラン】
第十二話「日常」


 

 

 

 

「ん、んぅ……ここ、は……?」

 

 青年が目を覚ますと様々な機械が自分の体に繫がっている光景が目に入った。両手は頑丈な鎖で縛り付けられており、どう頑張っても動かすことができない。

 

 ならば首だけでもとキョロキョロとあたりを見渡していると、不意にどこからか声が聞こえてきた。

 

「お目覚めですね、世界の破壊者様」

 

 そう声をかけてきた誰かは、黒い靄に包まれていた。赤く発行する2つの光がゆらゆらと青年を見つめている。

 

「ここは私の研究施設。あ、私のことは黒霧とでもお呼びください」

 

「……なんの目的で」

 

「ん?」

 

「なんの目的で、僕を……?」

 

「あぁ、そういう」

 

 黒霧と名乗った不審者はモヤでできた手をぽんと打つと、ケラケラと笑い出した。

 

「貴方をここで縛っているのは、暴れられないようにするためです。本来その鎖はかの魔王オーマジオウでさえも簡単には千切れないように作りましてね。ただの人間たる貴方では決して外すことはできませんので」

 

 コツコツと青年に近づいた黒霧は、その鎖に触れると話を続ける。

 

「私はこれでもマルチバース・ヴィランという組織に所属していましてね。研究部みたいなものです。そこで私は様々なものを研究し、解析し開発する。主な仕事はそんなところです。まぁ、戦闘能力は皆無ですがね」

 

 戦闘能力に関してはおそらく嘘だろうと青年は思った。得体のしれない存在が弱いわけがない。そう思った青年はより警戒心を高めた。

 

「おやおや、より警戒されましたか。まぁ無理もありません。目が覚めれば私のような変質者により、このようなうす暗いところで縛られているのですから」

 

(あ、自分の見た目が変質者だって自覚はあったんだ……)

 

 自分で言っておきながら若干落ち込みかけている黒霧に苦笑いを浮かべそうになる。

 

「さて、貴方な眠っている間私はそのベルトを使って様々な実験をしてきました」

 

 青年から離れた黒霧はコツコツと靴を鳴らしながら、少し離れた場所にある机に赴くとその上に乗っけられている物を取る。

 

 それは黄色い刃のついた黒いライダーベルトだった。そして青年にとっては見知ったものでもある。

 

「戦極ドライバー……」

 

「まぁ、知っていますよね。なにせ、そのダークディケイドライバーを解析し再現したのですから」

 

 敵意と殺意を含んだ目でクックックと笑う黒霧を睨みつける。頑丈な鎖で動けないほど縛られているにも関わらず青年は黒霧を殴ろうと身を乗り出す。

 

「ククク!! いいですね、その表情。ゾクゾクしますよ」

 

「何が目的だ!! どうして!! どうやって僕の存在を知った!? 誰の差し金だ!!」

 

「クククッ!! そんな一変に質問せずともお答えしますよ。ここは貴方にとっては退屈でしょうしね」

 

 腕を組み顎のところに手を置いた黒霧は、青年の周りを歩きながら話し始める。

 

「この世界で我々がやり遂げたいこと……それは仮面ライダー龍騎の抹殺と仮面ライダーリュウガの戦闘データを取ることです」

 

「龍騎……リュウガ」

 

「えぇ、そうです。仮面ライダー龍騎はこの世界を守る正義の使者であり、仮面ライダーリュウガはその役目を引き継いだ存在です。あくまでも、この世界での龍騎やリュウガは、ですが」

 

 黒霧は近くにあったノートパソコンに手をかざし引き寄せると、その画面に一人の少女を映し出す。

 

「彼女の名は錦木千束(にしきちさと)。オリジナルと違い、髪色は黒いですが本人とほぼ同じ存在です。彼女本人は自らを裏千束もしくは黒千束と名乗っているようですが……」

 

 青年は黒霧の話に集中できなくなっていた。彼女の姿が……青年の記憶を刺激している。

 

「おやおや、まさかそこまで彼女の姿を……クククッ! 面白いですねぇ」

 

 クックックと笑う黒霧は、画面を消すと青年残しに巻かれているダークディケイドライバーを起動させる。

 

「な、何をするつもり……!?」

 

「今日の実験を始めましょうか。なに、貴方は見ているだけで構いません」

 

 そう言って黒い靄の肉体から取り出した一枚のカードをダークディケイドライバーに差し込む。

 

【カメンライド】

 

 カードがダークディケイドライバーに差し込まれた瞬間、青年の肉体にとてつもない疲労感が襲いかかる。もはや声さえ出すこともできないほどの疲れが出た青年はそれでも黒霧を睨みつける。

 

【イクサ】

 

 サイドハンドルを押し込み、カードのデータを読み込ませると青年の目の前にナックルのような形をしたアイテム――イクサナックルとイクサベルトが現れる。黒霧はそれを掴むと腰に巻き付けた。

 

「さて、私でも変身できるのか試させてもらいましょうか」

 

 黒霧はイクサナックルを手のひらに押し付ける。

 

【R・E・A・D・Y】

 

 ベルトから待機音が流れるのを確認した黒霧は、イクサナックルをイクサベルトのバックルのスペースに装填する事する。

 

【フィ・ス・ト・オ・ン】

 

 イクサベルトに備わっている「イクサジェネレーター」という機能から発生した"仮面ライダーイクサのビジョン"が黒霧の前に出現。黒霧の肉体と融合するように合体し仮面ライダーイクサが爆誕した。

 

「クックック……なるほど。これが仮面ライダー、ですか。なかなかにいい着心地ですね」

 

 本人の癖なのか顎に手をやる動作をした黒霧は独特な笑い声を上げると、青年に一礼する。

 

「実験のご協力、感謝しますよ? クックック……」

 

 変身を解除することなく黒霧はその場を去る。

 

 青年は項垂れるように顔を地面に向けたあと、気絶するように眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「マルチバース・ヴィラン、ねぇ……オレの知らない間にとんでもねぇ組織が来ていたんだな」

 

 割と地球での活動を好んているエボルトが買い出し(なぜかお菓子が多めなのは目を瞑るとして)から戻ってきた。司はとある場所で入手した情報をエボルトにも共有すると、エボルトがどこか渋い顔をしていた。

 

「悪質な転生者共が作り上げた組織がマルチバース・ヴィラン。なるほどな。そんでお前はそんなマルチバース・ヴィランを倒すために別世界から派遣された仮面ライダーだったってわけか」

 

「まぁ、そうだね。ぶっちゃけるとそこにいるバカも、別案件で来ていたんだけどね」

 

「敵の思惑にまんまとハメられたと? その……クロスギーツってやつに」

 

「そう」

 

「バカなんじゃねぇの?」

 

 頭が痛いとでも言うように押さえたエボルトを見て、どこか同乗するような目を向ける司。エボルトにはたたえさえラビスという問題児がいる。それなのに昔の癖で永民を雇ったのは早まったかもしれないと後悔し始めた。

 

 なにせ永民が考えなしにチャーハンのレパートリーを増やすせいもあり、食費が馬鹿ならないほどに増えている。エボルトが石動惣一として活動しながらバイトをしまくっているおかげでお金はなんとかなっている。擬態なので肉体的な披露もそこまでないが、精神的な疲れがめっちゃ高い。

 

 もうそろそろラビスにもバイト経験をお願いしたほうがいいのかもしれないと思い始めた。

 

「はぁ……やれやれ。まぁ、そのマルチバース・ヴィランってやつはオレのほうでも警戒しておく。量産された仮面ライダーってのが気に食わねぇしな」

 

 一番の問題はラビスかもな……とまたもや頭痛が酷くなってきたエボルト。最近のラビスは問題行動が酷い。

 

 今でこそとても落ち着いて接客できているが、時々やってくる悪質な客がラビスの胸や尻を触ったときなんて特にひどかった。そりゃあもう残酷なほどにボッコボコにするもんだから客からの印象もだいぶ悪くなっていた。

 

 永民がそのおバカ加減を発揮して場の雰囲気を和やかにしてくれているからなんとかなっているが。

 

「ラビスちゃんももう少し地球での活動をちゃんとしてほしいもんだよ」

 

「そんなにヤバいのか……」

 

「あぁ、もうヤバいね。特にセクハラ客に対する反応が」

 

 昔はそこまで酷くなかったんだけどなぁと愚痴るエボルトを見て、少しだけ興味が湧いた。

 

「ラビスの昔って?」

 

「まだ人間態を手に入れた頃は肉体の接触そのものには興味もなかったみたいなんだがな。どうやら精神面も年頃の女の子らしくなってきたらしいんだ。まぁ、そのおかげで昔みたいに何ヶ月も飲まず食わずがなくなったし、風呂だって毎日入ってるからいいけどさ」

 

「あはは……(なんだろう……この思春期の娘に悩みを抱える父親感は)」

 

 実際エボルトが擬態している石動惣一には娘が一人いるし、なによりラビスが憑依している肉体は別世界とはいえ現役女子高校生なため間違ってはいない。肉体の成長をラビスが止めているため、その肉体の持ち主に返す際に不備がないようにするためでもある。

 

 机に顔を伏せて項垂れるエボルトを見ながらマグカップを掴み、コーヒーを口に含んだ瞬間、

 

「うえぇ……まっずぅ」

 

 この世のものとは思えない味に思いっきり顔を顰めた。絶対にこんなのはコーヒーの味ではないと思う。

 

「また失敗か……いつになったら美味いコーヒーを淹れられるのか」

 

「それよりも客に不味いコーヒー飲ませたことに対する謝罪は?」

 

「ハハッ! ザマァ」

 

「殺すぞ」

 

 思わず湧き出した殺意は、カランカランという扉のベルの音で消え失せた。

 

「ただいま帰りました……何やってるんです?」

 

 エボルトのネクタイを掴み上げている司を見て、ラビスの視線が鋭くなる。

 

「いや、なんでもないよ」

 

 パッとネクタイから手を離しエボルトから距離を取る。エボルトはニヤニヤと笑いながら司の肩に手を回した。

 

「そうそう、オレ達仲良しだからなァ」

 

「誰が仲良しだ」

 

「まぁ、仲が良いならいいですが」

 

 ラビスはビニール袋をカウンターの上に置く。

 

「あれ? 永民は?」

 

 ラビスと一緒に買い出しに行っていたはずの永民が帰ってきてないことに疑問を抱いたエボルトがそう聞くが、ラビスは若干青筋を浮かべた状態で答えた。

 

「あんなバカは知りません」

 

(あ、これはまたなにかやらかしたな……)

 

 プンプンと怒りを表してるラビスはカウンターの裏に消えていく。それを見た司は「あはは……」と苦笑いしながら机の上に金を置き扉を開けた。

 

「一応俺が迎えに行くよ」

 

「おっ? それは助かるわ」

 

 司が外に出ていったあと、エボルトはポケットから石化したエボルトリガーを取り出す。

 

「さぁて、いつになったらこれが使えるようになるのかねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうなったかな?

良ければ感想などください!!

それではまた、次回でお会いしましょう!!
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