鏡のファースト(完結)   作:プロトタイプ・ゼロ

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第十五話「拾いアマゾン」

 

 

 

 僕がこの世界に呼ばれたのは単なる偶然だったと思う。

 

 最初は黒い狐さんに呼び出された。邪魔なやつがいるから倒して欲しいってお願いされた。その言葉を聞いたとき、どうしてか僕はその言葉に従ってしまった。

 

 赤い竜の騎士に倒されて、そしてキヴォトスに帰ったあとになってから気づいたんだ。僕はあのとき、普段の僕だったら絶対にあの言葉に頷くことはなかったはずだって。

 

 だからこそ、僕はアイツを探して倒さなきゃいけない。僕を騙して、関係のない人たちを倒させようとした黒い狐さんを!

 

 そして、僕はもう一度この世界に戻ってきた。

 

 方法はわからない。黄金の鎧を着たお爺ちゃんっぽい人が僕をここに連れてきてくれた。

 

『ここをくぐれば、お前は世界を渡ることができる。どうする?』

 

「どうして……僕を」

 

『さして理由などはない。だが、強いて言うなら……お前に見込みがある。それだけだ』 

 

 今でも、あのお爺ちゃんっぽい人の言ってることはよくわからない。だけど、ここに連れてきてくれた恩がある。だからってわけじゃないけど……人を殺そうとしたコイツは僕が倒す。

 

「さっきからしつこいなお前……そろそろ時とともに消えろ」

 

【フルチャージ】

 

 ガオウが電車のパスみたいなものをベルトに当てると、そこから流れたエネルギーが剣に向かう。

 

 僕は両手に力を込める。すると両手からバチバチと紫色の雷が放出され、鋭い爪の形を作った。

 

【ライジングアルファエッジ!】

 

 ガオウが剣から刃を飛ばしてくるが咄嗟にそれを左手で弾き返し、走りながらガオウの脇腹を右手で切り裂く。

 

 ガオウは痛そうに脇腹を押さえて膝をつく。その脇腹からなぜか砂が落ち始めているのは不思議だけど。

 

「ちっ……こんな小僧に負けるなんてな」

 

 ガオウが立ち上がるとどこからかワニのような電車がやってきて、突然ガオウを口の中に入れて走り去ってしまった。それに唖然としてしまった僕は逃がしてしまったことに気付けなかった。

 

「次は……倒す」

 

 アルファから元の姿に戻り、僕のいた世界――キヴォトスに帰ろうとした……だけど、

 

「僕、どうやってここに来たんだろう……?」

 

 そもそも僕はここにやってきた方法を知らない。あのお爺ちゃんっぽい人が出した灰色のカーテンがないと帰れないんじゃ……!?

 

「どうしよう……!? このままじゃあ先生に怒られちゃう!!」

 

 緊急事態だよこんなの!!

 

 ぐううううううぅぅぅぅぅぅ……

 

「それよりも……腹が、減った……よぉ」

 

 キヴォトスに帰ってからも色々事件が立て続けに起こったりしてご飯を食べる暇もなかったから今の僕はかなり空腹だ。そのせいもありどんどん視界が歪み始め、そして……僕の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、子供が倒れてる……? えぇ……どうしましょうか。ぶっちゃけどうなろうが私には関係ないけど……うぅ。と、とりあえずエボルト様の下まで運びますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「で、連れてきちゃったの?」

 

「はい。連れてきちゃいました」

 

「連れてちゃったのかぁ……」

 

 傷だらけになった謎の少年を背負ってラビスちゃんが帰ったときには柄にもなく焦った。ブラッド族として血も涙もないことをやらかしてきたオレだが、身内がついにとんでもないことをしでかしたんじゃないかとヒヤヒヤした。

 

 いや、ね? これでもこの子はいい子になったほうなんだよ? それでもまだ危ういところが多いってだけで。やっぱり人間の肉体を得たからか? それだとオレはどうなるんだって話だが。

 

 あーどうしよう。頭痛い。今はかつて長い間憑依していたイケオジの石動惣一に擬態してるが、それでも痛い。天才的な才能を持つラビスちゃんは、オレやキルバスよりもやらかしが多いからな。

 

 正直オレのベルトを解析して自力で専用ベルトを作るとは思ってなかったし、毎日オレの再び石化したエボルトリガーの解析してくれてるから頭が上がらないところはあるが、ついに犯罪をしちゃったのかとヒヤヒヤしてる。

 

 違ったけど。

 

 オレは内心苦笑いを浮かべながらそっと外に出る。今のラビスちゃんなら大丈夫だと思ったからだ。

 

 だからこれはオレがやるべきだ。ようやく人になりかけているアイツがするべきじゃない。

 

「ほら、出てこいよ……そこに居るんだろ?」

 

 店を出て少し離れた場所で声をかければ出てきたのは黒い制服に身を包んだ少年たち。どう見ても十代の少年たちが出してはいけない殺意を撒き散らしている。

 

「上の命令だ。貴様を殺す」

 

 少年たちが腕を掲げればどこからともなく現れた蜂型の機会が装着される。

 

【ヘンシン】

 

 蜂型の機械――確かザビーゼクターだった気がする――から少年たちの体にヒヒイロガネの鎧が纏われ仮面ライダーザビーへと姿を変えた。

 

「おぉ~怖いねぇ。おじさん一人に多数か」

 

「感情を持たないブラッド族のクズ野郎が……よくもまぁそんなことをぬけぬけと」

 

「それに、ブラッド族なんて大物を相手にするのに少人数で相手するバカはいない」

 

「先輩達の言うとおりだ。故に、平和のためにここで死ね」

 

 ありゃりゃ……どうやらオレのことは調べてあるみたいだな。個人的にはありえないとは思わない。おそらくこいつらはリコリスとは別部隊のリリベル。

 

 女しかいないリコリスのようにその見た目から奇襲を仕掛けるのではなく、正面から敵を殺す暗殺集団だ。まぁ、一番の問題点としては……コイツらが「仮面ライダーの力」を持っていることだ。それもおそらく複製品。

 

 それだけ証拠が揃えば馬鹿でもわかる。コイツらの裏側に居るのはマルチバース・ヴィランだ。しかも今のところ仮面ライダーを複製できる組織はマルチバース・ヴィランだけだ。

 

「気にいらねぇな」

 

「……なに?」

 

 あぁ、気に入らない。全く気に入らない。

 

 なんのために戦兎がオレを倒したのか。なんのために成長したのか……仮面ライダーは……仮面ライダーはなぁ……

 

「テメェらのようなクソガキがお遊び気分で扱っていいもんじゃねぇんだわ!!」

 

 エボルドライバーを取り出し腰に巻きつけると、コブラエボルボトルとライダーエボルボトルを上下に振ってからセットする。

 

【コブラ!】

 

【ライダーシステム!】

 

【エボリューション!!】

 

 エボルドライバーのレバーを勢いよく回し、顔の前で手を交差させる。

 

【Are you ready?】

 

 覚悟は良いか? ふん、そんなものは決まっている。

 

「もちろんだ、変身!!」

 

【コブラ! コブラ! エボルコブラ!】

 

【フッハッハッハッハッハッハ〜!】

 

 靄のかかったような状態のハーフボディが生成されオレの周囲をぐるぐる回転しながら装着。靄のようなものが吹きとぼされコブラを模した仮面ライダーであるエボル・コブラフォームに変身する。

 

「エボル、フェーズ1……完了。なんてな」

 

 変身完了と同時に一番前にいたザビーをぶん殴る。本来の2%しかスペックを発揮できないとはいえ、量産型にはこの程度で充分だ……残りが故障してるから変身できないってものあるが。

 

 続いて隣のザビーを蹴り飛ばし、その後ろにいたザビーを……って!!

 

「お前ら全員ザビーしかいねぇじゃねぇか!! もっとなんかあっただろうが!! 他によ!!」

 

「うるっさいなぁ!! 支給されたものがこれだったんだわクソがっ!!」

 

 なんで……? そんなにお前らの上の連中ケチなのかよ……オレでも部下にはもっといいもの持たせるぞ? 多分。

 

「まぁ、関係ねぇ……滅ぼしてやる」

 

「はっ!! 紛い物の仮面ライダーモドキのくせに!!」

 

 いや、紛い物で仮面ライダーモドキはむしろお前らの方なんだよなぁ。

 

 まぁ……だからといって容赦はしないし、その力を使う意味を知らないガキどもには教えてやらなきゃなぁ?

 

「それじゃあ……勉強のお時間だガキども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ん、んんぅ……」

 

「あ、起きた」

 

「うわぁ!? がッ!? い、いったぁ」

 

 美味しそうな匂いに釣られて目を覚ました少年。目の前に片目を隠した茶髪の美少女の顔があることに気づき、ベッドから飛び起きた。そして頭を地面にぶつけた。

 

 変身しなければ他のキヴォトス人よりは脆い肉体とはいえ、それでも無傷で立ち上がる。涙目だが、無傷である(大事なことなので2回言った)。

 

「えぇと……とりあえず名前を聞いてもいいかな?」

 

「天野……迅、です。13歳」

 

「うわぁお……思った以上に子供だった」

 

 ラビスが少年――迅を店の休憩室に運びボロボロの服を脱がしたとき、肉体には無数の古傷が存在していた。それも幼い体が負うはずのない火傷傷や切り傷など。

 

 精神面が人間に近づきつつあるラビスは、その無数の古傷を見て心を痛めた。子供がこんなになっているのに親はなにをしているのか、と。

 

「迅くんは……その、家族とか……は?」

 

「家族……? それは、なに……?」

 

「え……?」

 

 思わず出してしまった声だった。家族を知らない。そんなはずはない。ラビスでさえ家族というのを概念で知ってるし、肉体の記憶を見たことがあるから憧れもある。

 

 だが、目の前の少年にはそれがない。

 

「雪菜に相談、かな……」

 

「……?」

 

 コテンと首を傾げる迅。頭を悩ませるラビス。

 

「とりあえず、後で詳しい話を聞かせてね」

 

 ラビスは立ち上がり、ご飯を作りに店の方に戻っていった。

 

 残された迅は……

 

「お、お腹……空いた」

 

 顔を真っ青にし、今にも倒れそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?

まさかまさかの腹を空かして倒れるアマゾンくん。ラビスちゃん……。


良ければ感想を送ってくれると嬉しいです。それではまた次回でお会いしましょう!!
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