鏡のファースト(完結)   作:プロトタイプ・ゼロ

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第十六話「これからのこと」

 

 

 

 

「ははっ……やっぱりエボルトは強いなぁ。仲間に引き込めそうにないのが残念なくらいだ」

 

 少し遠くにある屋根の上で黒い狐のお面を被った青年が座っている。そこからエボルトがザビー集団を蹂躙しているのを見て笑う。青年はジャケットのポケットに手をいれると、一つのフルボトルを取り出した。

 

「この俺がずぶ濡れになってまで手に入れた貴重なアイテムだ。がっがりさせてくれるなよ?」

 

 背後に黒いオーロラカーテンを出現させる。

 

 そこから現れたのは白い服に身を包んだ青年だった。人の良さそうな柔らかな笑みを浮かべた青年は、キョロキョロとあたりを見渡す。

 

「えぇと……ここはどこかな? それに君は誰だい?」

 

 どこかで浮世離れした雰囲気を持った青年は、目を細めて狐の青年に問う。

 

「俺か? ふっ……俺はクロスギーツ。すべてを破壊する……まぁ、神様ってことだ」

 

「へぇ~。神様ねぇ……まぁいいや! 君は僕を笑顔にしてくれそうだし、殺さないでいてあげるよ」

 

「ははっ! それは光栄だな。ゃあ、俺の頼みを聞いてくれるなら、もっと笑顔にしてやるぜ?」

 

――なぁ、究極の白き闇――

 

 そう言って仮面の奥で怪しく笑う青年を見たあと、白い服の青年――ン・ダグバ・ゼバは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「計画の方はどうなっている?」

 

 寂れて誰もいなくなった工場の中で、白く長い髭を生やした老人が刀を手に椅子に座っていた。その老人と相対するように白い制服に身を包んだ人の良い笑みを浮かべた少年――影山瞬がお辞儀をする。

 

「はっ! かの者からデータを排出し複製しておりますが、究極の力が完成するまではもう少しかかるかと」

 

「ふむぅ……それは困るな。私の命もそう長くない。早く孫の晴れ姿が見たいのだ。完成を早めよ。他のことは他人に任せよ」

 

「そうしたいのが山々なのですがねぇ……」

 

 瞬にとって目の前にいる老人がいつも通りの無茶苦茶な命令を下すのは当たり前だと思っている。だが、それでも瞬は笑みを消し困ったように眉が上がてしまう。それを見た老人が不審に思ったのか眼光を鋭くさせる。

 

「どうした? 私からの命令が聞けぬほどのなにかがあるというのか?」

 

「いえ、そういうわけではありません。ただ、最近邪魔がかなり入るもので」

 

「それぐらいなら貴様らでなんとかしろ。そのための暗殺集団だろう? それに……つい最近傭兵を雇ったそうじゃないか」

 

 傭兵。決して本名を明かさず、その素性は誰も知らないと言われた伝説。電波塔破壊事件から活動しているとされるが、その真相は謎のままである。

 

 瞬自体は傭兵のことは噂程度でしか聞いたことがない。それこそ自分たち「リリベル」と対象となる「リコリス」にいるとある少女と同じくらい。

 

「まぁ、そうですね。雇ったのは我々と手を組んでいる組織さんですが……というかそろそろ怪しまれてると思いますよ? 僕たちはかなり彼女らの命を奪うために組織から支給された仮面ライダーに変身してますからね」

 

「ふん。たとえ怪しまれたとして、だ。なんの力を持たないクソガキや無能どもになにができる? 伝説だかなんだか知らぬが、人を殺す才能を持っているからと言って仮面ライダーの力を持った我々に勝てる道理などなかろう?」

 

「えぇ、それは同意します。ですが、その彼女らにはかの有名な黒い騎士が味方していると聞き及んでいます。これ以上迂闊に手を出せば我々も潰されるかと」

 

 黒い騎士……裏世界で有名となっている仮面ライダーリュウガがリリベルの邪魔をしていることを瞬は知っている。そしてそれがリリベルである瞬が命を狙っている千束が関わっているときが多いことも。

 

 リュウガの強さはリリベルが変身する仮面ライダーを全員集めても傷一つつけることができていないほど高く、集団で獲物を狩るオオカミだと思っていたリリベルは、たった一人の仮面ライダーによりもはや壊滅に近い状態だ。

 

 だからこそ裏世界でも悪名高い「傭兵」を雇うことになったのだが。

 

「お前もわかっているな? 我々にとっては結果が全てだ。その結果が得られるなら、犠牲はどれほど出ても構わん。必ずリコリスを破滅へと導くのだ」

 

「かしこまりました……それでは失礼します」

 

 踵を返し工場から出る。深く息を吸い、新鮮な空気を肺に入れる。

 

(なぜ、あのようなお人になってしまわれたのか……今や僕はあの人の言いなりでしかない。でも、恩を返すためにも僕はあの人のために働かなければならない)

 

 制服のボタンを2つほど外し、ペンダントを取り出す。カチャリと音を立てて中身を見れば、そこには無愛想な表情を浮かべた黒い髪の少女と、対象的に満面の笑みを浮かべながらも頬を赤く染めた自分の写真がある。

 

(千束さん……貴女が笑顔を浮かべられるようになってくれて嬉しかった。だからこそ、僕は貴女の笑みを守りたい。でも……)

 

 そっと首を手を添える。

 

(これがある限り、僕は貴女の命を狙わなければならない。なんとか理由をつけて遅らせているが、それも時間の問題だろう)

 

 近くに止めてあったバイクに跨りエンジンを吹かす。そのまま瞬は自分のアジトに戻るためにバイクを動かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「それではこの子をどうするか決めていきたいと思います」

 

「ふぇ……?」

 

 指を天へ掲げながらそう宣言するラビスに、口いっぱいにお菓子を含みボリボリと噛んでいる迅が不思議そうに首を傾げる。

 

「でも実際どうするの?」

 

「流石にこの年齢の子は雇えねぇぞ? ラビスちゃんや雪菜で精一杯だからな。政府に誤魔化すの」

 

「あ、誤魔化してたんだ……」

 

「エボルト様にかかれば政府の認識を変えることなど朝飯前ですからね!!」

 

「いや違うよ? 流石に入念に準備するよ?」

 

 かつてエボルトが地球で暗躍していたとき、彼は様々な手を使って政府をまるで手駒のように扱っていた。だがそれも長い時間をかけて行っていたものであり、今エボルト達がいるこの地球はあの頃とは違うため準備する時間もなければ、流石にもう破壊する気もないため行うつもりもない。

 

 というか自分を倒したかつての戦士たちがいない世界で暗躍したところでつまらないし、熱が入らないだけなのが大きいが。

 

「迅くんはアマゾン……なんだよね?」

 

「モグモグ。ゴクン! うん、そだよ……アマゾンアルファ。僕の名前」

 

「アマゾン、ねぇ……そういや司はまだ来ねぇのか? この手に一番詳しいのはアイツだろ?」

 

「ここに急いでくるって言ってたきりなにも……」

 

 裏千束がいない今、唯一司と連絡を取れる雪菜も未だに連絡の一つもないようでお手上げ状態である。

 

「もう普通に女子高生受けを狙って、看板娘もとい看板息子でいいんじゃね?」

 

「というと……?」

 

「いやさ、迅ってばこうやってお菓子食うだけで可愛いじゃん?」

 

「「確かに」」

 

 ポリポリガチンガチンと夢中でお菓子を食べる迅を見て、微笑ましくなったのか雪菜とラビスの頬が緩む。

 

「まぁとにかく、そのキヴォトスってところに帰れるようにならない限り家で暮らしてもらうしかねぇだろうな」

 

「モグモグ……うグッ!? けっほけほ!! うぅ……おじちゃんやお姉ちゃん達と暮らすの……?」

 

「お、おじ……!? あ~そうか。おじちゃんかぁ……今のオレって」

 

「あのエボルトに精神的にダメージが!?」

 

「エボルト様になんてことを……!! 子供だろうと許しておけない」

 

「わーわー!! 落ち着いてラビス!! 相手はまだ子供なんだから!!」

 

「いえ駄目です!!」

 

 3人がハチャメチャしてる間も、迅のお菓子を食べる手は止まらなかった。

 

「……お菓子、美味しいなぁ。マキちゃんにも食べて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……なんだっていうんだよ!!」

 

 降り注ぐ雨に打たれながらバシャバシャと水溜りを踏んづけて男が走る。右手で抑えた左手からはドクドクと血が流れ服を染め上げる。

 

「簡単な仕事だったはずだ!! なのになぜ……」

 

 やはりあんな怪しい奴らから受け取るべきじゃなかった。男の脳内に浮かび上がる正体不明の黒い霧のような人物から貰ったベルト。

 

「クソっ! クソっ! クソがァァ!!」

 

 ポケットから取り出したのは赤い果実。見るだけで食欲を唆る不思議な果実だ。

 

 黒い霧のような人物――黒霧から手渡されたこの果実とともに渡されたベルト――戦極ドライバーは傷だらけになって使い物にならない。

 

「もうこれを食べるしかねぇ……い、いただきます」

 

 果実の皮を剥きゴクリと喉を鳴らすと豪快にかぶりつく。むしゃむしゃと身がなくなるまで食べ続けた男は、

 

「ヴァ……ああぁぁぁぁ……があああぁァァァァ……ヴァがァァァァァァァ!!」

 

 どこからともなくジッパーのようなものが現れ空間に穴を開けると、そこから現れた茨の鞭のようなものに体全体が包まれその姿を変異させる。

 

 緑を主体とした大きな爪を持つ怪人――ビャッコインベス。モチーフとなった白虎とはかけ離れた姿である。

 

 どういうわけか本来のビャッコインベスとは違い、背中にかなり大きな翼が生えており、頭にも日本の角がある。

 

「ウォラァァァ……がァァァァァァァァァァああああああああ!!!!」

 

 店へ向けて吠えるビャッコインベスは突如後ろを向くと警戒心を高める。人間だった頃の自分が走ってきた道から、一人の黒い鎧を纏う将軍が歩いてくる。

 

「…………怪人になったのか。だからあれほど。いや、もういい。お前は殺す」

 

 一瞬だけバイザーの奥から赤い光が宿る。その光が線となるように動いたように見えた瞬間、ビャッコインベスは十字に斬り裂かれていた。

 

 震える手で斬り裂かれた胸を手を置きながら後ろを向く。すると刀を鞘に納める音がする。

 

 その瞬間、ビャッコインベスは爆発し消滅した。

 

「お前たちみたいなのがいるから……義姉さんはぁ!!」

 

 ビャッコインベスが消滅したあと憎しみの闇を宿した将軍――タイクーンはゾロゾロとやってきたザビー集団を見てため息を吐く。

 

「またお前たちか……懲りないな」

 

 柄に手を添え拡張武器「武刃」を抜き放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちゃくちゃくと物語は進んでいきます。次でだいたい原作3話後編になるのかな?やっべぇ……もう一回アニメ見直さないと忘れがちになってる。

というわけでまた次回お会いしましょう!!

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