「はぁ……一体どこなんだよここ」
謎の場所で目が覚めてから何日経ったことだろうか。おそらく明に攻撃されたあとのことだろうけど。薄暗いしなんか埃臭い。
「ようやくお目覚めかな?」
「……あ?」
顔を上げ闇の中を見渡す。正面に見える赤いなにか。多分それが声の主だろう。
「クククッ。まさか丸一日も寝てるとは思わんだわ」
「…………誰だよ、お前」
「んぅ〜? あぁ、我のことか。我は櫻姫。そうだな……簡単に言えばクロスギーツ、つまり黒狐の仲間さ」
暗闇の赤い光――櫻姫と名乗ったクソ野郎はクックックと楽しそうに嗤う。まるで馬鹿にされているようで腹が立つ。いや、多分馬鹿にしているんだろうね。
絶対黒狐の野郎とは別のベクトルでたちが悪いタイプだ。コイツは。
「今頃お前の大切なお仲間さんたちが探してるだろうなぁ? まぁ、異世界のブラッド族とバクスターは元の世界へ帰してやったがな」
異世界のブラッド族とバクスターってことは宗一とパラドの二人な。あの二人元の世界に帰れたんだ。それはまぁいい。元々この世界の問題は私が解決するつもりだったし。今こんなだけど。
「……なにが目的?」
「目的、とは?」
鋭く睨みつけながら問うと、櫻姫はわざとらしい声で聞いてくる。
「私のところに来た目的だよ。なにもなしに来るなんて思えないんだよね。あの黒狐の仲間なら」
コイツが本当にあの黒狐の仲間だって言うのならなにか目的があってここに来たのは明白だ。まぁ、カードデッキもない今の私にできることなんてなにもないんだけどさ。
「クククッ。そう警戒しなすんな。今はなにもせぬよ」
「悪いけど信じられねぇな……」
「だろうな。だが、お前は我を信じざるを得ない。違うか?」
面倒だ。とても面倒だよ、コイツ。
今までの短い人生の中で一番相手にしたくないタイプの悪意だ。そう思うとやけくそ気味に舌打ちをしてしまう。
「おいおい、まだ会話を始めて数分だっていうのに随分と嫌われたものだねぇ?」
「お前のその言動で嫌われない要素がどこにあったんだよ!!」
「くははは!! それもそうか!!」
くそ!! 一体何が楽しいんだコイツは!!
「ほれほれ、特別だ。その鎖は外してやる」
カチャリ。私の腕から鎖が外れ、地面に鈍い音が部屋の中に響き渡った。本当に鎖を外しやがった。
「……ちっ。本当になにが目的なんだよお前」
「さてねぇ? まぁ、あとは好きにするといいさ。くはは」
その言葉を最後に櫻姫の気配は消えた。
〜〜〜〜〜
「はぁ……出れたのはいいけど、本当にここどこなんだよ」
アイツの思い通り部屋から出るのは癪ではあったがいつまでもあそこにいるのは不快でしかなかったため、私は普通に部屋から脱出した。
変身するためのカードデッキがなければ戦うための武装もない今の私にできることなんて限られてるけど、とりあえずここの中を探し回ってなんとか探すしかない。
「はぁ……これあれだよね。メタルギアソリッドみたいだよね。段ボールとかあったらもっとそれっぽいんだけど」
普段ゲームしない私でも知ってる超大人気ゲームのタイトル。その主人公が愛用している段ボールがあれば雰囲気的にもピッタリだと思う。
なんて自分らしくない馬鹿なこと考えていたら奥の方から男が二人やってきた。なにやら話し込んでいるみたいだから私のことには気づいていないと思うけど……どうしようか。廊下だと隠れるものも場所も……なんで段ボールあるの?
「仕方ない、か……隠れよ」
段ボールを展開しなるべく端っこの方へ移動してから中に入る。空いた穴から外の様子を確認していると、男が二人通り過ぎていった。
なんで気づかないんだよ。節穴かよ。思いっきり怪しいもんあったろ!!
ま、まぁ、この段ボールのお陰で難を逃れたからよしとするか。不満しかないけど……主にここの警備体制に。
それから数分くらい廊下を彷徨っていたと思う。時々巡回している兵士らしき男たちから逃げるために段ボールの中に隠れてやり過ごした。やっぱりあいつら馬鹿だと思う。
「それにしてもやけに広いなこの建物……もうずっと同じ階を歩いているけど一向に出口どころか窓や階段さえ見つからない。もしかして脱出系ゲームであるあるの時みたいな感じで見つけないといけないのか?」
無理ゲーだろそんなの。
「そういやここの奥に最近捕まった女のことは知ってるか?」
そんな言葉を聞いた瞬間、思わず段ボールの中に隠れた。
「女? って言うとさんざん我らを邪魔してくれたリュウガのことか?」
「あぁ、そうだ」
やはり私のことか。
「そう。その女だ。まさか奴に弟子入したとかいう馬鹿なリコリスが、我々に情報を共有しただなんてかのリュウガも思わんよな」
どういう、ことだ……? そういえば明はなんで私を裏切ったんだ。それがまだわからない。
私を裏切ったことは正直許せない。でも、それでも私を裏切らなければならないほどの理由があるのなら許してやろうとは思ってる。
これは、なんとしても理由を聞き出さないとな。
「リーダーは一体何を考えてるんだか……せっかく命を奪えるチャンスが到来したというに」
「あの人もあの人なりに考えてるってことだろ」
「そうかも知れないけど……」
ちっ!! もう我慢できねぇ!!
「オラァ!!」
「な、なんぐわぁ!?」
思わず段ボールから飛び出た私は、暇そうに話してる二人組のうち一人よ無防備な背中を蹴り倒す。その後慌てた様子のもう一人の首に向けて回し蹴りを放ち意識を刈り取る。
倒した二人のうち一人の装備と服装を奪いなんとか着替える。まぁ、ちょっと胸が大きいせいで入りきりそうもなかったけど……。
「よし、こいつらをロッカーの中に詰めてっと」
これでしばらくは大丈夫だろ。よし、鍵もゲットしたことだし早いこと上にいかなきゃ……ところで上に続く階段はどこにあるんだ?
〜〜〜〜〜〜
「おっかしいなぁ? なぁんで急に相棒とパラドはいなくなったんだァ?」
3人で外に出たはずが宗一とパラドの姿がどこにないことに疑問を抱いたエボルトは、もう一度店の中に入りそして外に出た。先程まで一緒にいたはずの存在がいない。それが何を意味するのか。
「やっぱなんかあるよなぁ……これ」
いなくなってしまったものは仕方がない、そう考えを切り替えたエボルトはため息を吐くと扉にかけてある「OPEN」を回転させ帽子を被る。
「さぁてと、ちょっくら行ってくるっかねぇ……マルチバース・ヴィランってとこのアジトに」
エボルドライバーを取り出し腰に装着するとコブラエボルボトルとライダーエボルボトルを装填し、仮面ライダーエボルに変身する。
そしてトランスチームガンを取り出したエボルは、自分の周りに銃口から放出した煙幕で包み込みその場から消えた。
〜〜〜〜〜〜
「通してもらうよ、そこを」
「悪いが……ここを通すわけにはいかないな」
裏千束が上を目指し、エボルトが拠点へ向かっている時、仮面ライダーアギト・グランドフォームへ変身した雪菜と、仮面ライダーザビー・ライダーフォームへと変身した三島荘が対立していた。
方や仲間を取り戻すために、方や上の指示によって。それぞれの想いを胸に。