「ハッハハハァ!! どうしたァ!? 元教官ともあろうお方が!! その程度かァ!?」
「相変わらずだな、その減らず口は!」
アナザーザビーの拳を顔を傾けることで避け、その次に飛んでくる拳を手で受け流す。その隙を突いてアナザーザビーの腹に発勁を叩き込むが……
「うぐっ……ははっ、ははははは!!なんなんだぁ、今のはァ!! 今のが攻撃のつもりかぁ!?」
アナザーザビーにはダメージは入っていないように思える。発勁なので相手の内側に攻撃するため変身者に対してはダメージが入ってるが。
「お前のことは聞いている。かつて私が武器の扱い方を教えた子だったお前が、今ではリリベルの部隊長になっているそうじゃないか」
「あん? だからなんだよ」
「だが、どうやらまだ……お前には教えなきゃいけない事が残ってるらしいな」
静かに構えをとる龍騎に「ちっ……」と小さく舌打ちしたアナザーザビー。
「そういうことは俺様に勝ってからにしろやぁぁぁ!!」
アナザーザビーゼクターに電撃が走り、一度アナザーザビーの全身に巡るともう一度電撃がアナザーザビーゼクターに戻る。アナザーザビーは大きく跳躍し、龍騎に向けてアナザーザビーゼクターの針を向け、殴りつけるように刺す。
龍騎はその腕を掴み流れるように受け流すと、アナザーザビーの横腹に膝蹴りを入れる。それによりアナザーザビーが吹き飛び壁を破壊しながら飛んでいくが、アナザーザビーは普通に立ち上がると苛ついたように足を地面に踏みつけ、頭を掻きしだく仕草をすると龍騎に向かって走り出す。
「ぶっ殺してやらァ!!」
「ふん!!」
アナザーザビーの拳と龍騎の拳がぶつかり当たりに衝撃波が広がる。その衝撃波に巻き込まれたきなと千束が吹き飛んだ。
「千束! たきな!」
「俺様の前で余所見をしている場合かァ!?」
二人を心配するあまり顔をそちらに向けてしまったその隙を逃さず、アナザーザビーは龍騎の胴に何度も拳を入れ、顔を掴んで膝蹴りを入れる。
そのダメージによろめいた龍騎に、アナザーザビーはスパークする蹴りを食らわせる。技を受けて地面を転がりながら変身が解除されてしまったミカ。
「ミカさん!?」
たきなが思わず叫ぶくらいにはボロボロになったミカは、それでも二人を守るために立ち上がろうとする。だが、
「ヒャッハァ!! 無様だなァ? なぁ、先生よ……かつての教え子に負けて、今の教え子の前で無様に寝転がる気分はどうよ?」
アナザーザビーに背中を踏みつけられ強く地面に押し付けられる。
「俺様はよぉ、アンタのこと尊敬してたんだぜ? 殺しの技術を教えてくれたことには感謝すらしてる。おかげで弱く醜いガキが、こんなにも強くなったんだ……先生としては鼻が高いだろうよ」
しゃがみながら背中をグリグリと踏みつけ、アナザーザビーがアナザーザビーゼクターをミカへと向ける。
「なぁ、教え子に今から殺されるわけだがよ……気分はどうなんだ?」
「ふっ……それも、悪くないかもな……お前を、そういうふうに育てたのは私だ。な、なら……その責任は私にある」
「ちっ……どこまでもそうやってぇ!!」
苛ついたアナザーザビーはアナザーザビーゼクターの針をミカにぶっ刺す。その瞬間を見ないようにたきなは思わず目を瞑るが、
「がっ……な、なんだ!?」
聞こえてきたのはミカの悲鳴ではなく、アナザーザビーの狼狽えた声だった。
「えっ……?」
「どうなっている……?」
気づけばミカはたきなと千束の近くで倒れていた。気絶している千束を抱き寄せ、たきなを自分の後ろへ誘導すると、周囲を警戒しながら睨む。
そして、闇は現れた。
どこにでもいそうな普通の旅人服を着込んだ、それこそどこにでもいそうな普通の青年――神楽舞吏が手に持ったライドブッカーを銃モードにしており、それをアナザーザビーに向けてながら歩いてきた。
「なんだァ、テメェはよォ!!!!」
「悲しんでる人の声が聞こえた。苦しんでる人の声が聞こえた。涙を流す人がいた、声を枯らした人がいた……」
吏の言葉の意味がわからずアナザーザビーは苛ついたように「あァ?」と聞き返す。
「お前が誰かを傷つけるのなら、俺はそれを許せない」
余っている手で懐からダークディケイドライバーを取り出し腰に押し付ける。するとダークディケイドライバーから帯が伸びベルトになると、ダークディケイドライバーのサイドハンドルを引きライドブッカーをベルトに付けそこから1枚のカードを取り出す。
「…………お前を倒す、変身ッ!!」
ブゥンと音が聞こえ、吏はカードをダークディケイドライバーに装填。
【カメンライド】
サイドハンドルを押し込む。
【ダークディケイド!!】
ダークディケイドライバーのバックルから複数の虚像が出現し当たりに散らばり、そこから吏の体に一斉に重なる。そしてバックルからプレートが出現し、攻撃しようとしていたアナザーザビーを吹き飛ばすと吏の顔面にぶっ刺さる。
その姿は世界の破壊者ディケイドと似ていた。唯一違うのは司が変身したディケイドのようにマゼンタではなく、シアンブルーであることだろう。
「俺が……すべての悲しみを破壊する」
闇を斬り裂く世界の破壊者……ダークディケイドが誕生した。バックルとシグナルポインターから深く濃い闇が広がる。その闇がアナザーザビーにぶつかると凄まじい火花を散らしながらアナザーザビーが吹き飛ぶ。
ライドブッカーを剣モードにしブレード部分を手で一度撫でると、アナザーザビーをライドブッカーで斬り裂く。
「ぐっ……て、テメェ!!」
「ふっ!」
立ち上がろうとしたアナザーザビーの肩を踏みつけ無理やり膝をつかせるとライドブッカーで斬りつけ、そして蹴り飛ばす。
「蜂……ザビーか。なら、コイツだな」
ライドブッカーからまたもやカードを取り出し、ダークディケイドライバーに装填。サイドハンドルを押し込み、その姿を解放する。
【カメンライド……ダークカブト!】
無数のハニカム状の光がダークディケイドを覆い、カブトムシを模した仮面ライダーダークカブトに変身、そこからまたライドブッカーからカードをダークディケイドライバーに装填。
【アタックライド……クロックアップ】
ダークカブトの姿が消えた瞬間、アナザーザビーが四方八方から攻撃を受け吹き飛ぶ。宙に浮いたアナザーザビーが今度は地面にめり込み、また宙に浮く。
「ちぃ!! 苛つかさせてくれるなァ!!」
アナザーザビーが手を地面に向けると紫色の衝撃波が広がり、ダークカブトの姿が現れる。一瞬訳が分からないといった感じの仕草を見せるダークカブトだったが、すぐに状況を把握したように次のカードを取り出す。
「はははァ!! 俺様を相手にクロックアップは通じねぇぞ!! なにせ今の俺様にはクロックダウンが使えるからなァ!!」
「なら、コイツだな」
【カメンライド……ダークドライブ!】
カードをダークディケイドライバーに装填し、ダークドライブに変身するとどこからともなく青と黒が特徴の車――ネクストトライドロンがアナザーザビーを轢き飛ばしながら走ってくる。
ダークドライブは吹き飛んできたアナザーザビーを蹴り飛ばすと自分の方に走ってきたネクストトライドロンを踏みアナザーザビーの方へ飛ぶ。その後ネクストトライドロンが周囲をグルグルと周り、ダークドライブはネクストトライドロンを踏み台にしながら地面に足をつけることもなく連続でアナザーザビーに飛び蹴りを入れていく。
蹴り終えたダークドライブの姿がダークディケイドに戻り、背後を振り返り全身から火花を散らし始めたアナザーザビーの方へ走る。
【ファイナルアタックライド! ディ・ディ・ディケイド!】
闇の光を纏ったカードが数枚アナザーザビーの前に出現し、ダークディケイドが飛び上がると同時にカードと上がっていく。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ダークディケイドが闇のカードを通過しながら威力を高め、ダークディメンションキックをアナザーザビーに食らわせる。その蹴りを食らったアナザーザビーは数メートルは吹き飛んだあと、大きく火花を散らして悲鳴を上げる暇もなく爆発する。
爆発した場所にダークディケイドが向かうと地面に倒れ伏し気絶する三島荘がいた。ライダーブレスにくっついていたアナザーザビーゼクターが逃げ出そうと飛ぼうとするが、それよりも早くダークディケイドがアナザーザビーゼクターを掴み握り潰す。
「ま、待て……」
パラパラとアナザーザビーゼクターだった破片を振り落とすと、その場を去ろうとする。その足を気絶から回復した荘が掴む。
「か、返せ……返してくれよ……俺の……俺のザビーゼクターを……!!」
それは懇願に近い悲鳴だった。野望を潰された三島荘が心の奥底から出した悲鳴の声だった。
「なぁ……頼むよ……返してくれ、俺の……ザビーゼクター……を!!」
その掴んだ手を振り払い、ダークディケイドは荘の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「お前が、どうしてそこまで力に固執するのは俺は知らないし知る気もないよ。だけど、人を傷つけすぎたお前の因果応報だ」
そして掴んでいた胸ぐらから手を離し、その場に後にする。
「待ってください!!」
そしてまたもや自身に引き留める声に、ダークディケイドは静かに振り向く。向けられたダークディメンションヴィジョンの冷たさに、一瞬だけたきなは死の世界を見るが、足腰に力を入れなんとか踏ん張る。
「あ、貴方は……貴方は一体何者なんですか!?」
「俺は……何者でもないよ。どこにでもいる通りすがりの旅人だよ」
そう言って今度こそ本当にその場を去ったダークディケイドを見て、たきなは胸の前で手を重ねる。その後ミカと千束を引っ張っていく。なお、たきなの力ではミカを引っ張っていくのはさすがに無理があり、ほぼ引きずっていく形になった。
「ザマァねぇな、力に溺れてあっけなく負けるなんてよ」
突然の重い殺気にたきなの体が震える。向けられた殺気の場所へ顔を向ければ、そこには黒い狐を模した仮面ライダー……クロスギーツが壁に背中を預けながら腕を組んでいた。
「本当にさぁ……力に溺れる奴らってのはどうしてこうバカしかいねぇのかね?」
ゆっくりとした足取り。たきなたちの方には一切視線を向けていない。隙だらけにしか見えないその姿なのに、たきなにはその姿に隙があるようには思えなかった。
クロスギーツは地面に倒れ伏す荘の背中を踏みつける。その痛みに気絶から目を覚ました荘を見下ろし、首根っこを掴み上げる。
「なぁ、どんな気持ちだ? 力に溺れて、何者かもわからねぇ奴に倒された気分は?」
痛みから言葉を出せない荘を投げ飛ばす。
「お前の存在は俺のゲームには必要ない。だからここで死ね」
今までのクロスギーツが見せていた陽気さはなく純粋な殺意のみが荘に襲いかかる。握りしめた拳に黒いオーラが纏い、荘に殴りかかる。
(そうか……俺は此処で死ぬのか)
自らの死を認め目を瞑った荘だったが、
「させるかぁ!!」
横から飛び出した影によってその拳は空を切った。
「へぇ~?」
「なっ……お前!?」
荘を助けたのは、なんと彼の部下である瞬だった。
「悪いけど、一応は上司なんだ……ここらで殺されちゃったらリリベルは機能停止する」
「それがどうした? 俺の知ったこっちゃないな」
「だろうね……だから俺が戦うよ」
「やめろ!! お前なんぞが勝てる相手じゃねぇ!!」
荘の叫び、それは部下を想う上司の言葉だった。あんなにも部下は道具という思考が強かった荘が初めて見せた言葉だ。
「隊長、俺は貴方のことを心の底から失望してます。貴方の野望も、俺達のことを道具としか思ってなかったことも……だけど、リリベルには貴方が必要だ。リリベルがここまで強くなれたのは貴方のおかげでもあるんだ!! だから、ここで死ぬことは俺が許さない!!」
その時、ビュンビュンと音を立てながら茶色のバッタが瞬の元へ向かってくる。瞬は制服の上着のボタンをすべて外し、上着を脱ぐ。その腰にはライダーベルトがある。
跳んできた茶色のバッタ――パンチホッパーゼクターを掴みZECTバックルにセットする。
「変身!!」
【HEN-SHIN】
顔を下へ向け、ハニカム状の光が瞬を包み込みその姿をバッタをモチーフとした姿に変える。姿が完全に変わるとコンパウンドアイが一瞬だけ光る。
【CHANGE PUNCH-HOPPER】
仮面ライダーパンチホッパーへと変身すると、瞬はクロスギーツを殴りつけた。
「ククッ……少しだけ遊んでやるよ!」
「遊ぶ日まもなく終わらせてやる!!」
黒い狐と銀のバッタがぶつかった。
最終章になってようやく瞬くんを変身させられた!!長かった……!!