鏡のファースト(完結)   作:プロトタイプ・ゼロ

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第三十八話「終幕」

 

 

 

 

〜〜〜にじさんじの世界〜〜〜

 

 

 燃え盛る世界。焼け付く匂い。無数の怪人達や空から降り注ぐ光線。そしてそれらを率いるは力を求めて怪人となった仮面ライダー……ロード・バロン。自らの信念を貫き、破滅の運命さえも覆した男である。

 

「脆い、貴様らの信念はそんなものか!!」

 

 長剣グロンバリャムを振るい斬撃を飛ばし建物を崩壊させる。そこから聞こえる悲鳴を無視して歩くロード・バロンだが、ふと足を止める。

 

 遠くの方から戦車が3台向かってきているのが見えたからだ。戦車がある程度の距離で停車すると、前についている砲台から弾が発射される。弾はほぼロード・バロンに命中し爆風とともに煙を起こす。それを見て戦車を操縦していた兵士たちから「やったか!?」の声が漏れる。

 

「ふん、こんなものか? ならば死ね!!」

 

 煙の中から黒い斬撃波が戦車を貫き爆発させる。その様子を冷たい眼差しで睨むと、背後に出現した黒いオーロラカーテンの方へ顔を向ける。

 

「来たか」

 

 その中から現れたのは3人の戦士だった。

 

「ちゃんと対象は殺したのか?」

 

 青い龍を模した鎧を身に纏ったプロテインの貴公子ゲフンゲフン――仮面ライダークローズ。普段のバカさっぷりが鳴りを潜め冷酷な雰囲気を醸し出している。

 

「どうやらまだのようですね……いったいなにをしているのやら」

 

 次に現れたのはライオンを模した黒い鎧を身に纏った真面目な戦士だった青年――仮面ライダーブレイズ。純白だった鎧は黒い闇に染まり、彼の真面目さも少し抑え気味になっている。

 

「……」

 

 そして最後の一人……なぜか変身せずにローブを纏っただけの人物が無言を貫いていた。フードの奥はまるで闇のように暗く顔を見ることもできない。

 

「貴様は相変わらず無言だな。たまにはなにか喋ったらどうだ?」

 

「無駄ですよ。彼なのか彼女なのかはわかりませんが、この人が口を開いたところを僕たちは見たことがありませんし」

 

 なにも喋らず一点だけを見つめるローブの人物に呆れたようにロード・バロンが言う。それに対してブレイズが肩をすくめた。

 

 クローズはローブの人物が見つける瓦礫の山に行くと思いっきり拳をぶつける。砂埃を起こしながら中からフードを被った白髪の魔法使い――アルス・アルマルが怯えたようにクローズ達を見ていた。

 

「おや、生存者がいますよ?」

 

「たまたま生き残っていただけだろ。すぐに殺す」

 

 ロード・バロンがクローズを押しのけて長剣グロンバリャムの切っ先を向ける。その刃が自分へと向けられたアルスは恐怖に怯えた瞳を震わせてロード・バロンを見上げる。

 

「すぐに死ねばよかったものを、自分の運のなさを呪うことだな」

 

 長剣グロンバリャムを振り上げ、そして振り下ろす。その動作にアルスは目を瞑る。だが、

 

「……? え?」

 

 気づいたときにはアルスは誰かに抱きかかえられていた。見てみればまだ幼さの残る少年の顔だった。

 

「……怪我はないか?」

 

 無表情ながらもこちらを心配した声音で問いかけてくる少年にアルスは頷く。それを聞いて「そうか」と満足そうにアルスを降ろし、後ろを指さす。

 

「早く逃げろ。それまでの時間稼ぎくらいならやれる」

 

「……でも、君は?」

 

「安心してくれ。そう簡単にはやられはしない」

 

 まだ不安げでありながらとりあえず少年の指示に従って逃げたアルスを確認する。そして少年は四人を睨みつけた。

 

「やってくれたな」

 

「ですがクロスギーツの命令だと全員を殺して世界を滅ぼすこと。結局のところはなにも変わってませんよ」

 

 そう言って少年を見やる四人に対して一歩踏み出す。

 

「この世界もこんなふうに……俺はお前たちを許さない」

 

 少年の腰にどっからともなく飛んできたドライバーが巻き付く。それを見て四人が警戒心をあらわにする。少年はドライバー――リーパードライバーの中央部分であるサーガオーブセッターに宝玉のような見た目をしたハデスサーガオーブをセットする。

 

 リーパードライバーから独特な待機音が流れ、ドライバーの右側についている鎌――リーパーサイスを下ろす。するとリーパーサイスがハデスサーガオーブが半分に切られる。

 

「ハデス、変身」

 

 少年の周りに黒い嵐のような風が舞い上がって包み込む。風で見えなくなったその中から二つの複眼が輝くと黒い嵐が真っ二つに斬り裂かれる。中から冥王と呼ぶのに相応しい見た目をした仮面ライダーハデスが姿を現した。

 

 仮面ライダーハデスへと変身した少年――常闇守は四人に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜鏡のファーストの世界〜〜〜

 

 

 

「ちっ!! どんだけいやがるんだよクソがっ!!」

 

 背後から奇襲してきたアビルローチを召喚したドラグバスターで撃ち抜きながらそう愚痴る。どれだけ倒しても無限に湧き出てくるアビルローチにイライラゲージが限界突破しながら目の前に迫るアビルローチをドラグセイバーで斬り裂く。

 

 千束達はドラグブラッカーが守っているためリュウガは遠慮なく直進してアビルローチを斬り倒す事ができる。だがアビルローチの親玉であるアルビノジョーカーが生み出したアビルローチ達の後ろで高みの見物するかのように立っているのがリュウガ的には気に食わなかった。

 

 なによりリュウガに変身している裏千束にとって自分の命よりも大切な存在達を狙われて冷静でいられるわけもなく、

 

「だがまぁ、全員ぶっ殺せば変わんねぇよなぁ!?」

 

 そりゃあもうめちゃくちゃブチギレていた。そのぶちギレざまは後ろでアビルローチを生み出しているアルビノジョーカーが多少ドン引きするほど。

 

 そしてその怒声は兄弟喧嘩と言う名の殺し合い中だったエボルトとキルバスのところにも聞こえていた。

 

「やれやれ、あちらさんはブチギレてらっしゃるねぇおわっ!?」

 

「ハハハハァァ!! このオレを無視するなよエボルトォォオオ!!」

 

「相変わらずうるせぇ奴だよお前」

 

 キルバスの拳を受け流しながら後ろへ後退する。

 

「さすがにフェーズ1じゃ限界、か……やっべぇ。どうしよう」

 

 エボルトがブラックホールフォームになるために必要なエボルトリガーは修復されたブラッド星で石化してしまっている。そして同じように石化しているドラゴンエボルボトルとラビットエボルボトル。フォームチェンジすることすらできない状態だった。

 

「こんなことならラビスに解析して修復してもらうの早めるべきだったかもなァ……」

 

 そんな事をぼやいた時だった。エボルトの頭にコツンとなにかが当たり、手のひらに落ちてくる。それを見てみればなんと先ほどぼやく原因となったエボルトリガーだった。内心「なんで?」と思ったが、それと同時に紫の光が目にも止まらぬ早さでキルバスを轢き飛ばした。

 

「……オマタセシマシタ、えぼるとサマ」

 

 現れたのはなぜかカタコトで喋るラビス。紫を基調とした液体状のアーマーを身に纏った彼女は、到着するなりエボルトの方へ挨拶をするとすぐにキルバスの下へ向かっていく。

 

「な、なんだァァァ?」

 

「キィィィィィルゥゥゥゥゥバァァァァァスゥゥゥゥゥ様ラブキィィィィィィィィィィィィィクッ!!」

 

 キルバスに向けて駆け出したラビスはそのまま片膝を折り曲げ飛び膝蹴りを食らわせる。

 

「ぐぼぉふぁ!?」

 

 

「いやどこにラブ要素あったんだよ……」

 

 強烈な飛び膝蹴りを顔面に食らったキルバスは地面が陥没する勢いで埋もれてしまう。それを見てエボルトが呆れたように脱力する。

 

 そんなエボルトの言葉を聞いているのか聞いていないのかラビスはキルバスを埋もれた地面の中から這い出させると、その腹に拳を叩き込む。

 

「ぐはぁ……よ、よォラビス? げ、元気そうじゃないか」

 

「えぇ元気ですよ。そりゃあもう元気ですよ? 誰かさんが惑星ブラッドを破壊したおかげで寝るのを惜しんで直す羽目になりましたが……元気ですよ?」

 

 仮面の下でニッコリと笑みを浮かべながら青筋を浮かべているであろうラビスは、キルバスの首元を掴み耳元に顔を近づける。

 

「で? どこで何をして遊んでたんですか?」

 

 その声は憑依している茅森月歌の体から発せられているとは考えられないほど冷徹で低い声だった。その声からラビスがかなりキレていることをキルバスは発する。

 

「あ、いやぁ〜……はははァァ……」

 

「どこだって聞いたんだよ早く答えろよ殺すぞ?」

 

「すいませんでした」

 

 即座にラビスから離れ土下座をする。地面にめり込むのではないかと思うほど頭を強く、強く押しつけて。その頭の上にラビスが足で踏みつける。

 

「謝罪が聞きたいんじゃないんだよ……どこで遊んでいたのかって聞いてんだが? あ"ぁ"ん?

 

「す、すみません……」

 

 助けを求めるようにキルバスが弟を見る。エボルトはそっと顔をそらした。キレたラビスと関わり合いたくないからだ。おそらく今ここにエボルトのお気に入りである同じブラッド族の相棒(本人は強く否定するだろうが)こと宗一がいたら目を丸くすること間違いなしだろう。

 

 なお、その様子を遠くから見ていたリュウガは内心薄く笑いながら宗一に教えてやろうと考えていた。というかブチ切れていたリュウガが冷静になってしまうほどラビスがキレていた。

 

 その隙を突くかのようにアビルローチ達が一斉に千束達に迫る。ラビス達の様子を見ていて遅れてしまったリュウガがすぐに駆け出すがアビルローチのほうが早く千束達のもとに辿り着くと、その鋭い爪を振り下ろした。

 

「やめろ!!」

 

 だが待機させていたドラグブラッカーが尻尾で薙ぎ払ったので複数のアビルローチが飛んでいったが。

 

「そういやお前待機させてたわ」

 

「グギャァァオン!?」

 

 そりゃあないぜ姉御とばかりに雄叫びをあげるドラグブラッカーを無視してアビルローチの群れに突っ込んでいく。右手に持ったドラグバスターでぶん殴り、時に銃弾を放ち、少しずつアルビノジョーカーの下へ進んでいく。

 

 そしてカードデッキから1枚のカードを取り出し、ドラグバイザーにセットする。

 

【チャージベント】

 

 ドラグバスターにエネルギーが収集されていき、トリガー引くことでエネルギー砲並みの出力で放つ。

 

「……バースト、オン」

 

 アビルローチの群れに空いた空間から即座にアルビノジョーカーのもとにたどり着いたリュウガはドラグバスターを押しつけ、そのまま発砲する。チャージベントで出力が常に最大状態になっているドラグバスターから放たれたエネルギーは強大なる光となってアルビノジョーカーを飲み込む。

 

「ふん……」

 

 アルビノジョーカーが消滅したことで無数にいたアビルローチ達が泥のようになって消えていく。その様子を見て安心したのか今まで千束とミカを守るように抱きかかえていたたきなが気絶する。

 

「やれやれ、まだやってたのかよ」

 

「あれ、相当キレてる」

 

 倒れ込んだ三人を担ぎ上げたリュウガはエボルトと合流するが、ラビスはまだキルバスを足蹴にしていた。

 

 いつの間にか千束達を助けてくれた暁の仮面ライダーがいなくなっているが、特に興味のないリュウガは気にしてなかった。それよりも……

 

「エボルト、この3人頼んだ」

 

「え、ちょおま……重っ!?」

 

 いきなり三人の体を任され、そして意外と重たいミカに苦労するエボルト。それに少しだけ笑うリュウガは倒れ込んでいる荘と瞬の下へ歩く。

 

「……ちっ」

 

 倒れ伏し気絶している二人を見て舌打ちをするリュウガは二人を脇に抱え、ワープ機能を使おうとしているエボルトの元へ向かう。

 

「なんでそんなんになっちまったんだよバカ荘が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜喫茶店nascita〜〜〜

 

 

 

 エボルトが経営している喫茶店に戻ってきた裏千束、エボルト、ラビス+α。

 

「んで、これからどうするんだ?」

 

「……とりあえず私は黒狐が始めるらしいデザイアグランプリに参加することにした」

 

「え、マジで?」

 

「あぁ、マジで」

 

 デザイアグランプリがどういうものなのかはエボルトにはわからない。だが、黒狐――クロスギーツが主催を務める以上何が起こるかわかったもんじゃない。そういった不安からエボルトは裏千束がそのデザイアグランプリに参加することは否定的だった。

 

「でもいいのか? その間はこの世界はどうする?」

 

「お前がいるだろ」

 

「だからなぁってなぁ……」

 

 裏千束はチラッとラビスを見る。なぜかラビスが連れてきたキルバスが床に正座している。

 

「アレ、なに?」

 

「キルバス……オレの兄貴だよ」

 

「へぇ~……」

 

 思いっきり興味なさそうに聞いているのがエボルトでもわかる。なんなら究極破滅思考型キルバスでさえも自分に興味を持たれていないことを察することができた。

 

「キルバス様? まだお説教は終わっておりませんが?」

 

「聞いてる聞いてる!! ちゃんと聞いてるってラビスゥゥ」

 

「まったく……何度言ったらわかるんですかねぇ? アレほどまでに心中だなんてバカげた事はよしてくださいと言ったのに……そもそも心中とは相思相愛の男女が合意のうえで一緒に死ぬことから相手との同意がなければ成り立ちません!! それゆえにキルバス様のそれは自分勝手な独りよがりです」

 

「そこまで言わなくてもよくない!?」

 

「いいえ!! 言わさせていただきますが――」

 

 ラビスによる長々としたお説教をBGM代わりに珈琲を飲み、地下に放り投げてきた二人のことを考える。マルチバース・ヴィランが拠点としていたリリベルの基地は裏千束が結果的に潰した。だがそれはマルチバース・ヴィランが拠点の一つにしていた場所であって、マルチバース・ヴィランそのものを潰したわけではない。

 

 裏千束が従えているミラーモンスターからの報告がない以上この世界から出ていったのか、敢えて大人しくしているだけなのかは裏千束にもわからない。だが、リリベルの拠点がなくなっている以上あの二人がリリベルに戻ることは難しいだろう。

 

(それに、あのクソ狸が荘を野放しにしておくとは思えない……だったらこのままここに匿ってなんとかして味方にしておくほうがまだ安全だ。私がデザイアグランプリに参加しに行く以上この世界には居られないから)

 

 純粋な軍人としてのスペックは暗室に向いてる裏千束よりも、集団行動に向いているリリベルにいた荘のほうが遥かに高い。ぶっちゃけ裏千束のイメージで仮面ライダーに変身せずに荘に勝てるとは思っていない。

 

(まあま、そこは後で何とかなるだろ)

 

 いつの間にか淹れられていた珈琲を一口含んでから気づいた。

 

 この珈琲、誰が淹れた?

 

 その瞬間、口の中に猛烈な苦味が溢れ出した。

 

「にっっっっっっっっっっが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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