そ゛ふ゛─────────っ゛。
『■■■■■■■…!!!』
「っ゛!!!」
耳を塞ぎたくなる程に不快な音。肉が抉れ、血が噴き出し、どうしようもない程に落としては行けない【イノチ】が溢れ落ちる音。
「っ、く゛ッ!!灰原!!」
四肢の欠損無し、されども満身創痍。二級術師2人で足りる様な任務では無い。そして目の前に浮かぶ討伐対象の呪霊。二級相当として高専に降ろされた任務。
その本質は「産土神信仰」により擬似的な神としての格を持った術式持ちの呪霊。二級2人が一方的に嬲られる現状を見て最低でも一級。此処が呪霊の力を最大限発揮出来る場所だとすれば特級にも片脚を入れているかもしれない。
背筋に走るのは死の気配と寒気。頭に浮かぶのは特級呪術師である先輩2人。理不尽で、頭が可笑しい《最強》
「ハハハ、……巫山戯るな」
腹が立つ。今の現状も、五条悟という存在にも。その隣に立つ夏油傑にも。表情筋が緩み、口からは血反吐混じりながら渇いた笑いが漏れる。
顔から青白さすら遠のき土色の顔をしたモノとしてそこに転がる同級生。友を見て腹の奥から湧き上がるドス黒い呪力。七海建人という呪術師が過去抱いた事の無い程に噴き出す感情。怒り、憎しみ、言葉に成らぬ暴走した意思は全て呪いとして焚べられて行く。
「私は────この理不尽が大嫌いです。」
全身に呪力が廻る。呪力出力限界が跳ね上がる。
バキリ…、鉈が悲鳴を上げる。柄が万力の様な七海の握力によりひしゃげる音がする。
不思議に、頭の中は怒りに呑まれていなかった。己を律する無意識の癖が、頭を回す最低限のスペースを確保していた。
「目には目を、歯には歯を。灰原の死には───お前の死を。」
節くれだつ木と獣とヒトの顔を組み合わせた様な呪霊の顔面に拳を叩き込めば黒い火花が散り初めて言葉としては聞き取れぬ苦悶の悲鳴が聞こえる。
「…解釈を広げろ。…術式は無限大。」
無意識に呟く教わったその言葉。対象を分割し、7:3の箇所を強制的に弱点とする七海の『十劃呪法』
無機物や手足の様な細かい応用の利く術式故に深堀も殆どしていなかったとこのハイになった頭は判断する。
何故物理的に見なければいけないのだろうか。世界には有限の空間が広がっているというのに。
『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』
結界術が苦手な七海であろうと一番最初に習得した帳という結界術。
初めての試み。結界の目的は目視できる空間の仕切り。ただのドーム型の墨が空間を区切る様に汚す。
【十劃呪法・拡張術式『刃螺刃螺』】
断つものはモノに非ず、十に分割するものは目の前の空間である。空間ごとその弱点とした場所にあるものを切り裂く必滅の一撃。
鉈に纏わりついた漆黒の雷が一筋空を撫ぜる。爆ぜる様に紫色の液体を噴き出し崩れて行く神擬き。
二連続となる黒閃の経験。限界を超えた呪力出力。多くも無い呪力を支えていた溢れ出る感情が緩んだ事により崩れ落ちる身体。
帳が上がり補助監督が駆け付けた時には灰原の遺体に掌一つ分届かぬ場所に倒れた七海の姿があった。