原作よりこの世界が嫌いな七海建人君   作:H-13

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百鬼夜行・東京新宿

ノルマ、というものがある。夜蛾学長を介し高専と結ばれた契約は呪霊50体の討伐。

 

 

基本給と達成出来なかった時の減額値、上限の無い活躍における追加報酬。虚偽申告の厳罰化等、詳しく定められたモノに同意して、七海建人の百鬼夜行参戦は相成った。

 

 

 

呪術師の総数が少ない中で、その内の一握りしか辿り着けない一級術師。冥冥よりも若干低い契約金となったのは交渉の差か、広範囲をカバーできる術式の差か。

 

 

 

無骨な刀を腰に、愚鈍な鉈を背に。汚れが気にならない真っ黒な上下の服は高専時代の名残を残した特注品。

 

 

 

刀も、鉈も、等級は1級。銘は無く付与された特殊効果は無いものの、術式に合わせて造らせたが故に耐久値に重きを置いている代物。切れ味はそこそこに、呪力が切れても戦える様に、必要以上の重量の追加は控えている。

 

 

【シン陰流】

 

 

高専時代、吹っ切れてしまったあの後。高専関係者であった日下部篤也の縁を使って門下生となり、任務そっちのけで独学であった実践剣技を対人戦も視野に入れた形態化したものへと切り替える為に時間を割いた。

 

 

同学年に自分以外誰も在学して居ないコト。既に一級術師としてそこら辺の卒業して行った呪術師よりも実力が証明されて居たコト。様々な事情も組み合わさって、3年、4年時は殆ど高専から離れた生活を送って居た。

 

 

学生時代に準一級、そして駆け上がる様に一級へと登り上がっていた当時の七海の入門は快く歓迎された。結界術の若干の不適合があったものの、縛りによって扱い易く底上げされた『シン陰流・簡易領域』は七海にも十全に扱えるものだった。

 

 

シン陰流のみの実力で見れば師範代に若干劣る程度。ただ、七海建人の真価はそこに在らず。

 

 

『シン陰流・抜刀「水無月」』【十劃呪法】 【自己の縛り】

 

 

シン陰流・抜刀を初速に用いた派生技。強者が扱う物でない為に存在する純粋な形稽古。古くから時代の流れを汲み取り僅かながらに改良、洗練されて行った演武の如き技。

 

 

七海には十劃呪法がある。力業は不要。正確に、ブレも陰りも無くただ7:3の場所に刃筋を立てるだけで成立する。

 

そこに重なるのは自己に課した縛り。契約上任務として定められた時間外での呪力量と呪力出力を1割まで抑え込む代わりに任務中は5割増の呪力と呪力出力を得られる。縛りの成立と破棄が容易な自己の縛りだからこそ、任務の成功率を上げるためだけに七海健人はコレを編み出した。

 

 

術式を持たない二級までの呪霊から、術式持ちの準一級、一級の呪霊まで。押し寄せる呪霊の波に1本の銀閃が舞う。

 

 

一閃一殺。鍛え上げられた肉体と湧き出る5割増の呪力の防御力。並の呪霊では突破出来ない巨大な岩の如き肉体に防御を任せ、途中からは二刀で呪霊を斬殺して行く。

 

 

途中からは呪霊が波の様に殺到してくる為に力業。鈍鉈を持つ剛腕を持って叩き潰し、刀で脳天を割り裂く。どうせ服は明日の朝には捨てるのだからと、紫の返り血も気にしない。

 

 

「7.8.9.50………ふぅ。」

 

 

百鬼夜行開幕20分。呪霊の強さを選り好みすること無く早々にノルマをクリアした七海健人の呪力出力が若干陰りを見せる。5割増だった呪力出力は3割増まで落ち着き、それに伴い一旦最前列から家入先輩の居る最後尾まで退避をして来た。

 

 

 

「……七海?」

 

 

「お疲れ様です、家入さん」

 

 

また隈が濃くなっている様に見える白衣の女性。まだ始まってすぐの戦闘。がらんとした医療所用の建物の一階には先輩と、七海と、数人の補助監督の姿しか無かった。

 

一階エントランスの端っこで言葉を交わす。

 

「外、どう?」

 

「…今の調子ならば、抑え切れると思います。」

 

「ノルマ、あるんだろ?」

 

「俺の分は、とりあえず終わりましたから。」

 

一人称が私から俺に変わったのは何時からだっただろうか。公私は弁えている。だが契約以外に殆ど縛られる事の無くなった七海には、必要以上に己を律することは無くなった。

 

 

「彼奴、何やってんだよ」

 

「…夏油さん、ですか。」

 

「……相談くらいしろ阿呆…」

 

 

家入の口から溢れたのは、先輩後輩の間柄だからか。まだ負傷者も届いておらず無意識のものだからか。

 

「夏油さんは、頑固でした。五条さんや貴女が何と言おうと、やり遂げてしまうと思います。違うならば、とっくに戻ってきてるはずですから。」

 

「………………」

 

 

口がもにょり、歪む。言葉を発しようとしながらも頭で考えている言葉を口に出せない。そんな印象を受ける。

 

 

「家入さん!」

 

 

 

「…死ぬなよ。」

 

 

髪の毛をクルクルと弄びながら、運ばれてきた負傷者の元に向かって行く少し小さく見える先輩の背を見て、七海健人は来た道を戻った。

 

 

 

・リザルト

七海健人

・キルスコア

四級:42

三級:28

二級:11

準一級、一級:4

特級:1

・特筆

4連続黒閃達成

 

 

 

 

 

 

「まぐれ?そうですね、1回目は完全にそう。2回目もまぐれの範疇です。ただ、3回目、4回目となると話が変わります。」

 

 

「私の術式と黒閃は相性が良いのであのまま殴り合いが続けばですが、もう少し結果は伸びたように感じます。」

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