2002年には「悪の枢軸の一国」とアメリカ合衆国大統領が北朝鮮を非難するほどに米朝の仲は悪化していた。
そして北朝鮮も国内の窮乏から国民の目ををそらす為にも対外強硬姿勢を維持し続けた。
しかし、実際問題北朝鮮を滅ぼしても得をする国は周りのどの国にも無かった。
__誰しも貧乏で借金まみれな凶暴な軍事国家を丸々抱えたくないのだ。
そして、北朝鮮は悪く言えば「飼い殺し」のまま21世紀を迎えた。
そして、この話はそんな貧乏国家が異世界へと転移する物語である。
2014年6月22日、朝鮮民主主義人民共和国 羅先特別市 豆満江
北朝鮮でも自国の経済状態や食糧事情を改善させるために経済特区が設けられ市場経済の導入が始められていた。
しかし、その経済特区はロシアにほど近い羅先だけであり他には朝韓合同の開城工業地帯があるだけだった。
しかし、外国人との自国民の交流を酷く嫌う北朝鮮政府によりそういった地域に住めるのは体制に忠誠を誓う一部のエリートと貿易関係者や政府関係者か国境警備隊だけだった。
朝鮮人民警備隊第17旅団に所属しているリ・ヒョンス伍長は部下と共に豆満江を流れる橋の向こう側を監視していた。彼の任務は文字通りの国境警備であり日本で言われる「脱北者」と言われる人々の「保護」や「処理」も含まれていた。
今日も彼は部下とともに自分の任務を忠実に全うすべく豆満江を流れる川の流れを監視していたところ突如として風景が陽炎の様に歪んだ。そして彼が不審に思い目をこすった瞬間に強い白い光が彼を包み込んだ。
強い光によって一時的に視力を失った彼が視力を回復した後に見た光景は__見慣れた緑豊かな森ではなく荒涼とした荒原が広がっていた。
そして、同じような光景は北朝鮮の今まで接していた陸の国境全てに見られた。
同時刻 アメリカ合衆国シャイアン・マウンテン空軍基地 北米航空宇宙防衛司令部
リ・ヒョンス伍長が強い光を浴びている時、アメリカ合衆国の世界戦略の一翼を担うこの基地は大混乱にあっていた。
彼らが人工衛星から監視していた北朝鮮がすっぽり消えて北朝鮮があった場所には海ができており傍受していた通信も途絶えていた。
このことが一時的に世界を大きく揺るがす事になるが、長期的に考えれば地域の大きな問題の一つが「この世界から」一時的にでも消え去ったのである。
地域にとってこれは大きなプラスだった。
考えてみて欲しい。
北朝鮮のGDPはおよそ2兆円しかないのだ。日本のGDPと比べても約300分の1しかないのだ。更に碌な技術力もないのだ。そして世界の中では孤立して鎖国に近いような事をやりほかの国との関係が武器関係以外ではほとんどないのだ。
しかし、そんな国がアメリカとは対立し、韓国とは小競り合いを度々起こし日本からは国民を拉致するなどの問題行動ばかり起こしている。
正直北朝鮮が存続することのメリットはほとんど存在しないにも等しかった。
かくして、大してどこの国が困るというわけではなく北朝鮮は異世界に転移したのだ。