ヒンフリは正義!
この作品でもいつかヒンフリの話を書きたい。
ホグワーツの二年目は最悪だ。
一年目の終わり、談話室で繰り広げた口論により、私に絡んでくる生徒は格段に減った。
談話室にいると針の筵になることに変わりはないが、多くの生徒が私に関わってもいいことないとようやく理解したのだろう。
ソレは良かった。しかし、それでも絡んでくる奴らはいる。
2つ年上のベル・フォーリー。
そして、セドリック・ディゴリーと、やたら私に吠えてくる女子生徒、ミリア・スミスだ。
この女の名前は正直、純血名家でもなければ、原作キャラでもないので覚える気はなかったのだが、何故か今年から私に絡む前に自ら名乗るようになったので自然と覚えた。
ホントなんなんだ?こいつらは。
私だってバカじゃない。
昨年の私の物言いは寮生すべてを敵に回したと理解している。現に多くの寮生は私を親の仇でも見るような視線を浴びせてくるし、今年入った新入生ですら私のことをあからさまに避けている。まるで私を少しでも触れようものなら女子供も容赦なく刺し殺す殺人鬼でも見るような目で。
なのに、ディゴリーは相変らず私に世間話を持ちかけてくる。
でもあいつはまだマシだ。今年からクィディッチの選手になったからか、授業以外の時間は殆ど練習しているので顔を合わすのは食事の時くらいだ。
厄介なのは女子二人だ。
寮は同じだし、同性なので風呂やトイレでも度々顔を合わせる。
果ては二人して不定期で寝室に突撃してくる。
ルームメイトも巻き込んで夜中に馬鹿騒ぎするので寝不足になる。
新手の嫌がらせにしてはいい性格している。
私は、吸血鬼としての特性のせいか夜行性で、夜は眠りにくい身体をしている。しかし、それでは昼間に眠気に襲われるので無理やり寝ているのに、深夜まで騒がれると眠れるものも眠れない。お陰でここ最近、吸血鬼らしく顔が青白く隈ができだした。
勿論、うるさいし眠れないのでやめろ、と言うがまるで効果がない。
全員揃って部屋から叩き出した事もあったが、やり過ぎだと私が寮監からお叱りを受けたので二度目はない。
両腕に教材を抱え、フラフラになりながら廊下を歩く。
睡眠不足は集中力、思考力の低下を招き、冷静さを削ぐ。これ以上の睡眠妨害は私にとって死活問題だ。
落ち着け、冷静になれと自分に言い聞かせている。しかし、酷い頭痛、胸の内から燻るイライラ燃える炎を簡単に消すことができない。
さっきの魔法史の授業は最早拷問だった。
ただでさえ普段から眠くて、一番集中力が続かない教科なのに人前で寝るわけにもいかず、八つ当たりでゴースト先生に塩をぶっかけたい衝動を我慢し続けた。
もう夕食いらない。おなかすいてないし。
皆が食べている間に少しでも寝よう。
そう思い、階段を下っていると後ろから声をかけられた。
「やぁ、ミス・パヴィエル。元気?」
この顔が元気に見えるなら聖マンゴに一生閉じ込められてろ、ディゴリー。
「え、顔色が悪いよ。大丈夫かい?」
「……………」
私の顔を覗き込んで慌てだす彼を押しのけ、動く階段を渡る。
「医務室に行ったほうがいいんじゃないかい?」
「ほっといて」
下手に医務室に行ってあの優秀な校医に吸血鬼とバレでもしたらおちおち病気にもなれやしない。
「君が心配なんだよ」
「なら、黙れ」
後ろをついて来るディゴリーを引き離したくて、一階に続く階段が動き出そうとしているのを察知し、これ幸いと思い、助走をつけて階段を飛び移った。
私が階段に足をつけたの同時に階段が動き出し、上階の縁で取り残されたディゴリーから引き離して……え、ちょ、おいおい何しようとして………っ!
「ちょっ!」
と、待て。たったそれだけを言い切る前にディゴリーは階段の手摺から見の乗り出して私の着地した下段に向かって飛び降りた。
僅か二、三メートルしか離されていなかったが、十二歳の子どもの目線では十分遠い。しかも、なんの魔法効果にも頼らない純粋なジャンプでは重力の効果の方が勝るわけで……。
コチラに向かって必死に手を伸ばすディゴリーの指先はあと少しのところで手すりに届かず、私の眼の前でスローモーションのように虚空に姿を消していく…………
ガシャン!!
◇ ◆ ◇
あれから数年経った。
残念ながら、元の世界に戻る手がかりは未だに見つかっていない。一応、フランメの所有する空間転移の魔導書や召喚魔法についても念入りに検証してみたが、大した情報もなく、世界を渡る魔法の手がかりは見つけられなかった。
ショックではあったが、焦っても仕方ないので、私はフリーレンに私の世界の魔法を教えている。
「ーーーだから、魔法で生み出した炎と元からある炎を同じ凍結呪文で凍らせても魔力同士が反発し合うから、どうしても魔法で生み出した炎は僅かな差だけど、凍るのが遅いの」
「悪霊の火も?」
「あれは闇の魔術だからそもそも防げるものじゃない」
「闇の魔術って?」
「魔力だけじゃなくて強い負の感情を源にして行使する呪いの魔法。私の世界では法律で使用や研究自体が禁止されている。多くの資料は破棄されたり、禁書扱いで手に取ることはまず不可能。フリーレンが手にすることはないだろうけど、この魔法は手を出さないほうがいい。代償に何を失うかわからないからね」
「わかった」
「ムゥゥゥゥ〜」
そして、私はフリーレンにこの世界の古い言語を教えてもらっている。何処のどんな文献を見つけても読めるようになっておくことに越したことはないと思ったからだ。
「エミリア、違う。そこの文法はさっきのページと同じで主語を前に持ってきてーー」
「あ、そっか」
「因みにこのkoatが、文の最初にくると意味が変わるよ」
「わかった」
「ムゥゥゥゥ〜!」
「火関連のルーンは少し荒めに彫る方が発火しなくて程よく温めてくれるから懐炉代わりになる」
「温い………」
「この薬草はね魔法薬の原料になるんだよ(*´꒳`*)ムフー」
「こっちの魔法薬か………作ってみたいな。じゃあ、私は毒蜘蛛の足とか、蛙の目玉とか集めとくね」
「なんで??」
え、魔法薬の材料に必要でしょ?
「ムゥゥゥゥ〜!!」
……………。
「いい加減煩いな」
「同感だね」
別に害はないがいい加減鬱陶しいので、二人で言葉を話さない不貞腐れた大きな子供を呆れた目で見る。
ベッドの上で歳に似合わず頬を膨らませ、こちらを嫉妬と不満、僅かな怒りの表情でジッと無言で何かを訴え続ける我らが友であり師。
「フリーレンなんかやらかした?」コソコソ
「私じゃないよ。エミリアでしょ?」コソコソ
「私が?」コソコソ
「ほら、師匠と数日前、賭けが如何たらこうたら……って揉めてたじゃん」コソコソ
あぁ、あれか〜。
5年ほど前に交わした私が一人前魔法使いになるのが先か、フランメが私の魔法を三つ習得するのが先かという賭け。その賭けがついこの間決着がついたのだ。
と、いうのもこの賭け、私の条件はフワッとしていて具体的なことが明記されていない。
なので私がどれだけ魔力探知を磨き、魔力制限を人間にはまずバレないくらい上達し、攻撃魔法をどれだけ覚えてもどの基準が一人前の魔法使いか分からない。
自分では、まぁまぁ強くなった自覚があったが、此処には比較対象の魔法使いが化け物と天才しかいない。
それ気がつき、フランメに問いただしたが、何かと話をはぐらかし私に情報を与えようとしない。あれは絶対『呪い』の意趣返し……いや、はじめから私を勝たせるつもりなかったな。その一方で自分は清めの呪文と癒しの呪文をちゃっかり習得して後、一つ習得すれば勝つ、リーチ状態まで持って行っていた。
フランメ自身に勝てれば早い話だが、私以上に人間辞めてる奴に勝つのは容易じゃない。
このままではフランメが勝ってしまう。普通なら諦めるところだろう。負けたところであいつの弟子という肩書きが付属されるだけ。今はそんなににあいつに教えを受けることに抵抗はない。……だが、私はこんな負け方ぜぇぇっっったい!認めない。私は諦めは悪いし、一度受けた勝負に負けることはしたくない。
だから……。
「フランメが褒めちぎった若手魔法使いボコボコにしたの不味かったかな?」
「師匠にもメンツ?ってのが、あったんじゃない?」
自分が一人前の魔法使いになったことを証明する為、フランメが南側の国に仕事に行く際、こっそり尾行し、彼女が国一番の魔法使いだと誉めた若い人間の青年を煽って決闘を申し込み、
なにせ、魔法で環境変化を促し、此処では未解明な自然現象を自発的に発生させて攻撃に転用する、なんて他の人類、魔族にもない発想だ。
今のところ私にしか使えない魔法なところがいい。ルーン文字はフランメとフリーレンに教えちゃったから次の奥の手としてコレは黙ってよう。
「でも、あれから他の街で探ったけどフランメの評判が下がったって話は聞かないよ?」
「気分の問題なんじゃない?師匠こうなるとめんどくさいんだから早めに解決してよね」
そう言うとフリーレンは自分の読書に戻ってしまった。相変わらず部屋の隅で人間不信な犬のような唸り声で此方をウザい視線を浴びせるフランメ。諦めてフランメに近寄る。
「何が不満なの?フランメ」
「不満しかねぇよ!何で、お前たちだけでそんなに仲良くなってんだよ!」
「???」
てっきりこの前の賭け事の文句が出てくると思ったが、全く別の訳の分からない回答にしばし思考が停止した。
そして同じく混乱しているフリーレンと目が合う。
フリーレンと特別親しくなった覚えはない。確かにここ最近、話す機会は多いが互いの利益になるような情報交換というほうが正しい。
それはフリーレンも同じだろう。
そんな顔してる。
「エミリアは私の友人だろう!フリーレンは私の弟子だろう!何、私を除け者してんだ!」
((かまってちゃん?))
いや、ジェラシーってやつか?
「別に話に入ってくるな、とは言ってないんだし放置はしてない。フランメが頻繁に留守にして二人で過ごすことが多かったから二人で過ごすのが当たり前になっただけ。フランメが疎外感を感じているのは、ただお前が話の輪に入りづらいだけでしょ?」
「ゔっ」
如何やら図星らしい。フランメはフリーレンを弟子としてとったはいいが、本人の仕事都合上、どうしても留守が多くなる。きちんと修行の課題は与えてから出かけるので、フリーレンは着実にフランメの教えを吸収していくが、師弟間の信頼やコミュニケーションは築けていないのが現状。
まぁ、この世界って一番早い移動手段が馬車だからなぁ。移動だけで遠ければ、往復一年近くはかかる。今は私がいるからなるべく近場の街まで付き添い姿くらましで送り迎えして、随分ショートカットできているが、それでも折角の弟子との時間を削られているのは代わりないか。
「如何いうこと?」
「フランメはフリーレンと過ごす時間が少なくて、距離感が掴めず、どう話しかければいいか分からないってこと。……子供か?」
「………あぁ!!子供だよ。何せこの中で一番年下だからな!」
それもそっか。
「距離感って何?」
………ここにも子供がいたか。
「そんなに四六時中一緒にいたいならフリーレンも仕事に連れて行けば?」
別にフリーレンだって十分一人前の魔法使いで弱くないんだから長旅でも大丈夫でしょ。何気に言った一言だった。一箇所に定住して修行をつけるのもいいが、各地を回って旅をしながら弟子を育てるという選択肢があるのも事実。寧ろその方が時間を無駄にしなくていいのでは?幸いと言っていいのか私達は全員独り身だし、家族のこととか考えなくていいのだから。
「それだ!!」
「は?」
え?マジ?私の呟きにフランメは晴天霹靂を受けたような満面の笑みを浮かべている。
「何で思いつかなかったんだろうな?!そうと決まれば統一帝国の首都まで旅するぞ!」
「えぇー」
まだ、この家の魔導書が読み切れていないフリーレンは不満の声を漏らす。
まぁ、フリーレンは朝が弱い、野宿が当たり前の旅、しかも生活習慣がだらしない×2の二人旅なら確実に苦労するだろうな。
「いってらっしゃい」
私はそんなのに巻き込まれたくない。この際、二人仲良く行ってきたらいいさ。
「何言ってるだ?お前も行くんだぞ」
「え?ヤダ」
なんで私まで。
「ガチトーンで言うなよ………」
だって、何度も言うけどこの世界の生活環境の水準は私が見たら下の下。特に下水処理が完備されていないトイレや水回り、風呂や食事、衛生観念の欠如。清潔で知られる元日本人としては発狂もの。それをこの数年なんとか魔法を駆使してこの家を納得できるまで改造した。
なのに、この拠点を捨ててわざわざ不便で更に不衛生が多い、旅生活とか絶対ヤダ。
しかも私が一度の姿くらましで移動できる最大距離はせいぜい5キロ。連続使用や長距離は体がバラける恐れがあるから、ベッドで寝たいとかトイレのために一々ここに戻ってくることはできない。
私にメリットがない。
「そりゃあ、旅は不便がつきものだが、それこそ醍醐味だろ?それに、私の話を聞いたらお前は私の提案を受け入れざる得ない」
「どういうこと?」
疑問符を浮かべる私にフランメは複数の紙の束、手紙を取り出した。
「私の師匠とのここ数年のやりとりだ。お前のことを話したら一度会ってみたい、と。あの人は歴史上で書かれたほぼ全ての魔法の知識を持っている。この世界で天地創造の女神に最も近い存在だ。お前の帰還の手がかりがあるかもしれん」
「そんな人がいるんだ……」
聞けばフランメの師匠、ゼーリエは神話の時代から生きるエルフだと。性格に少々癖のあるエルフだが、協力を取り付けられればこれ以上ない頼もしい存在だと。
この性根の曲がった魔法使いの師匠だし、絶対ロクなエルフじゃないな。
「………わかった。ついて行く」
しかし、現時点で帰還の為の唯一の手がかりだ。
逃すわけにはいかない。フランメの思惑通りになるのは癪だが、此処は大人として甘んじて受け入れるべきだな。
「で、そのエルフは何処にいるの?」
「帝国首都」
「めっちゃ遠い………」
ここなら最短でも半年はかかる。
うぅ〜、嫌だなぁ野宿とか。そもそも前世のキャンプとかアウトドアもあんまり乗り気じゃなかったからやったことがない。
だって、虫は多いし、暑い寒いの温度調節は効かないし、獣はでるし。
大体家があるのに、なんでホテルや宿を使わずテントなんて狭い空間で寝なきゃいけな…
「あ」
「さて、そうと決まれば色々準備が必要だ。フリーレン、エミリア。まずは旅の準備だ。食糧、水、日用品………この辺は買い足す必要があるな。後、この家に結界を張って………時間は有限だからな手分けしてやるぞ」
張り切るフランメ。
「そんなに急がなくても、私、まだ読みたいものがあるし10年後でもいいじゃん」
魔導書が読み切れていないフリーレン。
旅にこの家にある全ての魔導書は持っていけないのであまり乗り気じゃない。
「いいわけあるか」
フランメはフリーレンから魔導書を取り上げる。
「読まなくてもここにある魔導書は私が網羅している。旅をしながら私が一つ一つ教えてやる」
「(´ω`)」
「それになフリーレン。この際だから言うがこういう機会を生かしてお前はもう少し人との関わりや、協調性、人間そのものを学んだ方がいい。エルフの感覚で自分の欲求ばかり優先しているといつか後悔するぞ」
「………別に必要ないよ。どうせ人間はすぐ死ぬし、たった100年も生きられないのに関わったって仕方ないじゃん。先生だってすぐ死ぬよ」
「勝手に殺すな。………そんなことねぇよ。なぁ、エミリア?」
「私は作りたい物があるから準備は二人でやって」
「おい、お前も私の話聞いてないだろ」
まずはテントだな。
布一枚じゃなくてしっかりした骨組みのあるやつ。
「エミリア、お前私より歳上を自称するなら、人の話を聞き漏らすところなんとかしろ」
自分で作ったことはないけど、必要な呪文は問題なく使える。
「フリーレンはもっと魔法以外にも関心を向けさせないと将来が………」
でも、念のため制作時間は多めに必要だ。
「おい、また無視か?………いい度胸だな」
あと、ルーンもいくつか用意しないと。
よし、そうと決まれば早く作ろう。
時間のかかるものばかりだ。
「…………ふん!」
バチンッ!
行き先を言うのも惜しくて、速攻姿くらましで街の近くまで移動する。
さて、まずは布地を調達して……と、歩きながら頭の中で計画を組み立てていると何かが顔をつたう。
「あれ?」
自分の右頬に手を当ててみるとベッタリと血がついた。どうやら頬が切れているようだ。
いつ切ったんだろう?
まぁ、勝手に再生するし………って、あれ?治らない?
なんか、だんだん顔がヒリヒリ腫れてきたし、出血も多くなっているような………。
顔を手で押さえていると足元に光るものを見つけた。
「あつっ!」
拾おうとしたが、触れた瞬間、火に直接手を突っ込んだような熱さに反射的に手を引っ込める。
布を被せて直接触れないように慎重に持ち上げるとそれは銀製のナイフだった。
なんでこんなところに、こんな物が?
…………………そういえば、姿くらましの瞬間、顔スレスレに何かが掠めたような…………………な、なんだろ、悪寒がする。そういえばフランメ、なんか出る時チラッと見たら機嫌悪くなかったけ?
それに私、銀製が弱点なこと話したっけ?
いや、教えてない!こんな致命的な弱点教えるわけない!まさか、私が日頃から銀製品に触れないようにしているのに感づいた?
……………出血のせいか顔の血の気が引く。
酒でも買って帰ろう。それで機嫌を直してくれることを祈って。
じゃないと、マジで死んでしまう。
この後、買ってきた酒とまだ話してなかった逆転時計の仕組み話でなんとかフランメの機嫌を直した。
エミリア
一度集中すると周りの声が聞こえない。
銀製品に触れられない。
心臓に刺さったらなんかしたら………ゾッ!
フランメ
今回は最初から機嫌が悪かった。
また、エミリアに無視されて気分が一層落ち込んだ。
フリーレン
エミリアとは打ち解けた。
少しずつ表情に変化が出始めた。
機嫌の悪い師匠を置いて出かけたのは少し怒ってる。
この時代ゼーリエがどこを拠点にしていたかは明かされていないので取り敢えず統一帝国の首都になりました。