葬送の吸血鬼   作:mituha

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注意!必ず読んでね。

両作品の魔法について自己解釈や勝手な設定が含まれています。
書いてるうちにまとまらなくなったので読みづらいかもしれません。
もしかしたら消すかも……。


イメージが大事【加筆修正】

その日、私はあまり使ったことのない翼を出して空を飛びながら夜間の散歩していた。

ただし低空飛行で。

すると、近くで何かの音が耳に入ってきた。

気になって気配を消しながら慎重に森の奥に進むと大きな木の根元に人間の子供がうずくまっていた。

おそらく同い年かひとつ下くらいの年齢だった。

翼を仕舞い、私は音を立てて子供に近づいた。

いきなり現れた私に子供は怯えたように体を震わせたが、相手が子供だとわかると、その瞳から涙が溢れた。

生まれてから人と関わったことがなくて、数年ぶりに対面したから何を話せばいいか咄嗟に言葉が出てこなかった。

この状況なら、迷子なのだろう。

人里に送り返すべきだろう。

それは分かったが、かけるべき言葉が見つからなかった。

 

コミュニケーション能力の欠如にショックを受けつつ、気がついたら私は無言でその子供の腕をつかんで立ち上がらせていた。

困惑と怯えの表情を浮かべるその子供に駆けるべき言葉を探したが、そもそもそこまでしてやる義理はないなと思い直し、その子供の腕を引いて森の中を歩きだした。

子供は抵抗しなかった。

 

時折、夜行性の動物が立てる音にビクビクと怯え、今にも泣きそう……というか、泣きながらついて来る様に流石に同情を覚え、私は子供に向き直った。

”ルーモス”

 

本来は杖先に明かりを灯す魔法だが、この時の私は未就学児特有の不安定な魔力を利用して指先に掌にすっぽり収まるくらいの光球を生み出した。

私の手のひらに収まるソレは私達二人だけでなく月明かりだけが頼りの森を少しだけ明るく照らした。

自分の手元だけなく、数メートル先までよく見え、その時やっと自分が手を引く子供のちゃんと顔を見た。

 

黒髪に灰色の瞳の男児が顔を赤らめてこちらを凝視していた。その男児は一言ポツリと言葉を落とした。

 

”まほうだ……ぼくとおなじ”

 

魔法族の子供だと知って、私は記憶を消す必要のないことに安堵した。

当時の私は記憶修正までできるほど魔法を操れなかった。

だが、必要以上に同族と馴れ合うつもりはなかった。それからは一言も話さず、森を抜け、私は一番近い魔法族の村まで男児の手を引いて歩き、村の入口で男児を放置して帰った

あの時の私はここまですればもう大丈夫だろうと思ったし、男児の安否など、もうどうでもよかった。

 

   ◇ ◆ ◇

 

私がフランメに魔法を教わり始めて一ヶ月が経った。

 

「この世界で魔力とは体内に内包されている物だが、それは微量ながら体外に放出されている。魔法使いは一般的にその漏れ出る魔力量を見て相手の力量を判断する。これは魔族にも言えることだ。ここまではいいな?」

「うん」

「お前の世界には人類が生存を危ぶまれるほどの外敵は存在しない。必要のない機能は発達しない。だから、この世界の魔法使いに当たり前のように見える魔力がお前には見えない」

 

今のフランメは魔力の制限を解いてるらしいが私にはフランメの周囲の魔力を視認出来ない。でも、自分にだけあたる風のようなモノが肌に突き刺さる感覚を感じる。

 

「完全に見えないわけじゃない。今もなんとなく肌にピリピリくる。これまでもあっちの強い魔法使いと相対する時も似たような感覚してたから………そうだね、この感覚が相手の魔力を感じてるのか」

 

フランメの魔力は大きくゆったりと揺らいだり、小刻みに振動するリズムのように揺らぐ。

揺らぎに合わせて指を叩くとフランメの顔が満足そうに頷く。

きっと、これは吸血鬼の野生の感が働いているのであって私だけの特性だ。私の世界の一般魔法使いは感じることすらないだろう。

 

「まずは基本だ。魔力を視認できるようなれ」

「なるのか………?」

 

それって、現地の人間が何千年と進化の過程で身につけた人体の機能みたいなモノだ。

私が今日明日で身につけられることじゃないと思う。

 

「それか直接視認出来ないなら、魔力探知や感知をの性能を上げろ。お前にはそれが向いているのかも知れん」

「わかった。」

 

目を瞑って肌に刺さる魔力に神経を研ぎ澄ます。

さっきまでビシビシ伝わってきたフランメの魔力が急速に薄れる。

先ほどと違って感じ方に不安定な波がない。

水面に静かに振動する波紋のように僅かな振動しかない。

確かにこれだけ微力しか感じ取れなければ、フランメの魔力量を誤認する。

これが魔力を内側に隠し、欺くということか。

 

「誇り高き魔法を愚弄する卑怯で最低な方法だ。そうだろ?」

 

フランメの切なそうな魔力の揺らぎに目を開け、首を傾げる。

 

「何処が?」

 

残念だけど、私にその感覚はわからない。

前世の私からしたら魔法なんて夢物語だから卑怯とか誇りとか以前の問題。

今世の私からしても魔法なんて手段の一つでしかない。人が当たり前のように火をおこし、船を作ることと大差ない。

私たちの世界の魔法族に聞いても同じ感想が返ってくるだろう。

 

純血名家達もマグル*1には使えない力を持つことにこそ誇りを持ち、新しい理論や薬を開発して、そのような功績にやはり血筋の偉大だ、と自尊心を固めることはあっても自分の使う魔法に誇りまで持たないと思う。

まぁ………無いわけではないだろうが、重視はしてないな。

 

だって、魔力と魔法を扱う力は私たち魔法族には生まれた時から当たり前に備わっている能力だから。

 

豊かさと合理性を優先した結果だ。

それが人類の敵への対抗手段になるなら、その魔力隠匿の必要性を説けば、彼らが特段疑問も持たずに実行する光景が目に浮かぶ。

 

そもそも私たちの魔法文化とこちらの魔法文化は違う。私たちの中では種族としての社会構造が既に出来上がっている。

創設者達の時代はならもしかしたら自分達の魔力や魔法に誇りを持ってたかも知れない。

 

でも、彼らだって戦争となれば話は別だ。

戦争とは心を排除したゲーム。

より、合理性を追求した者が勝つと決まっている。

 

「私にはその気持ちは分からない。使える手を使わないなんて愚者のすることだ。自分の魔力を抑える?不意打ち、騙し討ちが卑怯?

馬鹿馬鹿しい。見破れない奴が悪いんだよ」

 

言葉で欺き同情を誘うことは出来ても、小の犠牲を払い大の利益を得るまでの狡猾さや悪知恵が働かないなら、魔族も所詮獣畜生と同じだな。

 

………ん?

なんだよ。なんで急に頭撫でてくるんだ?

やめろ。

 

「エミリア、お前は魔法が好きか?」

「急にどうした?そんなこと考えたこともなかったよ」

 

私の答えにフランメは苦笑し、顔を曇らせる。

 

「私は魔族が憎い。全てを奪われたからな。魔法は魔族が扱うモノだ。人類はそれを解析し、自分達のできる範囲で流用しているにすぎない。要するに真似事だ」

 

しかし、フッとフランメの顔が緩まる。

 

「だが、私は魔法がどうしようもなく好きだ。私が最初に使った魔法はきれいな花畑を出す魔法なんだ。昔両親から教わって、魔法が好きになったきっかけになった」

 

私が最初に使った魔法……。

ふと、森の中で二人の子供を照らした一つの小さな灯りを思い出した。

 

「両親との思い出、魔法が美しいモノだと感じたきっかけ。それらはかけがえのない輝かしいものとして今も私の中で生きている。魔法の可能性は無限でどこまでも自由なんだ。でも、そんな魔法(思い出)を自分で抑制するとな、思い出を汚している気分になる。捏造している気がするんだ」

「なるほど…………だから卑怯で魔法を愚弄する戦い方か」

 

自分に縛りを課すことが思い出を汚すか………。そこまで聞いたらなんとなくフランメの気持ちが理解できた。

できたけど……。

 

「うん、やっぱり私はそうは思わない」

 

こちらを見るフランメの顔を真っ直ぐ見据える。

 

「私なら卑怯で最低なやり方でも、自分の命を優先してほしい。汚してもいいだろ。手が空いた時に綺麗にすれば。平和になった時に心置きなく縛りを解けば。ちょっと清掃を後回しにしてもフランメの両親は怒らないと思うけど」

 

それに人の記憶、思い出というものはどんな形であれ、常に輝きは失われない。

故郷の世界で魔法具を使って人の記憶を見た時、仕舞われた記憶達は瓶の中でどれも等しく美しい光を発していた。

 

例え、自らが殺した愛する人との記憶でも。

 

記憶、心は汚したようで案外汚れないものなのだ。

 

私の話を聞いたフランメは両手で顔を覆い、暫く俯いていたがすぐに吹っ切れたように顔を上げた。その顔にはいつも自信に満ち溢れた表情が戻っていた。

 

「そうか………そうだな。ありがとう、エミリア」

「どういたしまして?」

 

フランメが私の頭に手をのせる。

だから、なんでさっきから頭撫でんだよ。

 

 

私はフランメから魔力操作や魔物との闘い方を教わった。

この世界での魔法使いが魔法を使うことに必要な要素は、魔力の量、それを打ち出す力の強さ、そしてコントロールする力。

 

最初の二つは別に問題ない。

 

フランメ曰く、私の魔力総量は現時点でフランメと同程度あるらしい。私はまだ魔力制限が出来ないのでこれは確かな情報だ。

 

そして、打ち出す力も感情に任せて魔力をぶつければ木一本くらい薙ぎ倒せる。

しかし、コントロールする力。

 

これが難しい。

 

私たち魔法使いの杖は魔法生物の体の一部が材料となっている。私の場合、ホワイトリバーモンスターの背骨だ。

だから、杖自体に意志のようなものがあり、持ち主が魔法を行使する上である程度の補助をしてくれる。

 

例えるなら、水道の蛇口だな。杖は蛇口のハンドルのように水の放出量を調節してくれる。

だからこそ、今まで道具任せで意識してこなかったことを手探りの感覚でやろうとすることの難易度を知った。

 

しかし、習得不可能ではないはずだ。

 

魔法を扱う上で最も効率的で安全だったから今の杖魔法が定着しただけにすぎない。

そしてこれはあくまでヨーロッパ圏の話だ。

 

元々魔法族の起源は人類誕生と同じアフリカ大陸だと言う説がある。

確かワガドゥは今でも杖なしの魔法を当たり前に使って動物もどきも普通にいるらしい。

それに未就学児たちの中には杖なしでは扱えない自身の不安定な魔力を使いこなす子供もいる。

 

あのなんちゃら卿もそうだったはずだ。

 

ということは、私たちイギリス魔法使いの遺伝子には杖なし、己の魔力操作のみで魔法を扱う本能は抜け落ちてないはずだ。

 

 

そして自分の修練の一方で、私は自分の世界の魔法をフランメに教えている。

 

しかし、こちらも一筋縄ではいっていない。

 

フランメが花畑を出す魔法が好きと言っていた時になんとなく察したが、こちらとあちらでは魔法の法則や理論、ルールが全く違う。

 

私の世界、つまりハリーポッターの世界の魔法とは簡単に言えば、

1.杖に魔力を込める。

2.呪文を唱える。

3.方向性の指定。

4.魔法が発動。

注入、構築、射出指定、発動の、4ステップで成り立っている。

 

一方で此方は、先程の工程に例えると、

1.魔法を使うという意思で魔力が『起動』

2.自分の魔力量を『把握』

3.魔法を『選択』

4.『決定』

5.魔力を『注入』

6.魔法、魔法陣の『構築』

7.構築した術式と魔力を『接続』

8.術式に魔力を満たす『飽和』

9.威力の『変換』

そして最後に10.『発動』と、プロセスが複雑だ。しかも全部手動……つまり己の脳で処理している。それでも、私の杖魔法より速度性に優れているのは処理能力が違うから。

電卓使って計算してるのに、暗算の人に負けた気分で落ち込む。

 

しかし、こうして比較すると私の使う杖魔法は杖がこの1〜5、8、9の動作を自動で補助してくれることがわかった。そして、呪文は言葉そのものが6.構築と7.接続を担い、魔法が発動した結果そのもののイメージを持たせることも。

呪文の中に細かいプロセスが圧縮されているから、一定の鍛錬を積み、正しい発音で唱えれば魔法を扱えるのが私の魔法の利点。まぁ、その代わりにガンプの元素変容の法則のような覆ることのない色々な法則や規則性が生まれたようだが。

 

ほんと、無から有を生み出す魔法なんて私からしたらガンプ元素変容の法則はどうした?と言いたい。

 

魔力の消費が多い?

 

イメージの問題?

 

それだけなら魔法族の食料自給率の低さは長年続く社会問題にならない。

 

プロセスが細かい分、此方の魔法は自由度が高いんだろうなぁ………。

 

そして、私の魔法にはこちらの世界では馴染みのない自然の法則に従っている部分もある。

 

例えば、フランメは水を操る魔法は広く知られているが、水を生み出す魔法は希少だという。

こちらの世界の魔法使いは何もないところから大量の水が湧き上がるイメージが出来ないからだ。

しかし、私は出来る。何故なら空気中には酸素や窒素に比べると微量だが、水の素となる水素は存在するからだ。

あると証明されたものを想像するのは容易い。

だが、フランメに原子の説明をしても理解を得るのは困難だ。

 

呪文の中に込められた構築と接続のプロセス。普段何となくで使っているそれを一から紐解いて説明したことなどない。する必要などなかった。勿論、学生時代に理論はちゃんと習い覚えているが、呪文自体をバラすなど考えたこともない。

 

結論、私の魔法をこちらの魔法の法則に当てはめて説明するのはめっちゃ難しい。

 

「おい、もっと詳細な資料はないのか?」

 

フランメの文句に私は書き出している簡単なマッチ棒を針に変える変身魔法の理論の手を止めた。

 

「無茶言うな。私が学校で魔法を習ったのは80年も前だ。その上、本とか向こうに置いてきたし……記憶頼りにこうして説明してるじゃん」

 

そもそも、私はあまり勉強だって好きじゃない。学生時代は必要だったから詰め込んで勉強しかしなかったが、本来はこんな未知の研究に片足突っ込むタイプじゃないんだ。

 

「それは分かるが、もっと……こう、学術的な研究資料とか……」

「それがあれば苦労しない。向こうに置いてきた荷物には大抵のものが揃ってたけど、一緒に転移してこなかったからね」

 

惜しいな。魔法薬の調合も魔導具製作も、植物採取もできない。

私が魔力コントロールに手こずっているのと同じで、フランメは私の魔法を理解することに苦戦をしている。

 

特にフランメは私の見せた癒しの呪文や姿くらまし、検知不能拡大呪文などが習得したいらしい。

 

人体の損傷を治す癒しの魔法はこちらの世界だと僧侶………聖職者しか扱えず、その魔法も遥か昔、神話の時代に舞い降りた女神によってもたらされた魔法をそのまま使っており、ぶっちゃけ仕組みは分からないらしい。

 

人の体は何億、何兆もの細胞で構成されているから損傷したらその細胞を増殖していくイメージを持てばいいと言っても、人体の構造を解明できてない現地人に言ってもあまり効果はない。

 

空間に関する魔法も、今の人類では空間の仕組みを把握しきれないからイメージがつかず魔法にできないのは察しがついた。

実を言うと私も数学、物理に精通してたわけではない。

でも、二次元、三次元の区別くらいつく。

 

中途半端な認識だからこそ空間に関する魔法に夢を見てイメージが働きやすいのかもしれない。

結局、私の世界でも魔法はイメージが大切だ。

 

「うぅむ、斬新な魔法だ。だが、お前に扱えているからには人類が取得不可能というわけではないのだろう」

「そうだね。でも、癒しの呪文は切り傷程度は治せても病気や部位欠損には効果はあまりないからね。万能じゃないよ」

「そういうのはどうやって治してたんだ?」

「魔法薬だね。材料がないから再現不可能だけど」

 

私の世界の魔法薬はよく効くものが多い。骨を抜いちゃった後、骨を生やす薬や分量を間違うと永遠の眠りにつく眠り薬、元気爆発薬の服用し過ぎで一週間耳から煙を出し続けた生徒の話をすると何故かドン引きされた。

ホグワーツ流笑い話はお気に召されなかった。

*1
魔法を使えない人種




エミリア
魔力コントロールの修行中。

フランメ
魔法の研究に没頭中。

あれ?結構書いたのにまだ主人公出てこない……。
次は出るから!ちゃんと出すから!
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