五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「とりあえず、おめでとうと言っておくわ。」

「めでたい。二人とも、今日はお祝い。」

「あざす姉御。あざす殿。」

「二乃、三玖、ありがとうございます。」

 

 

休日、マンションで五月に勉強を教えていた。

午前の部を終えたところで二乃と三玖から食事に誘われたところだ。

俺、五月、二乃、三玖の4人でテーブルを囲んでいる。

 

 

あのステーキ店に来ている。

ここはやけ食いで来るような場所ではないんだが。

変な事を教えてしまったかな。

 

 

「好きなのを注文しなさい。支払いはこっちで持つわ。」

「わーい」

 

本日は二乃姉御の奢りである。ゴチになります。

まあ、財布は中野家共同から出るんだろうが。

今はもう中野父と和解してマンションにいるわけだからな。

 

店員がこちらのテーブルに来た。

 

「ご注文をお伺い致します。」

「ランチの200。」

「150。」

「200」

「さ、300」

「・・・・じゃあ俺も300かな。」

 

まああれだよね。彼女が300食うって言ってるからね。

この場合は俺も300食わないとダメだよね。ちょっと不安だけど。

 

と思ったが、良い事を思いついた。

 

 

「確認します。ランチの・・・」

「ちょっと待った。・・・・1kgなら骨付きで出てきますよね?」

「仰る通りでございます、こちらの写真になります。」

「あら。良いわね。4人いるし。」

「こ、これが出てくるの・・・?」

「腕が鳴りますね。」

 

 

イタリアのTボーンステーキ。ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ。

この店では1kgから塊での注文を受け付けている。今なら良いんじゃないか。

めでたい場だし。

 

 

そして一人だけ腕が鳴ると言ったウチの連れさん。

この貫禄である。腹が鳴るではないんだね。絶対に口には出さないが。

 

「では、こちらの1kgで宜しいですね。」

「ええ。持ってきてちょうだい。」

「かしこまりました。4名様ですので人数分のサラダとスープが付きます。

少々お待ちください。」

 

 

1kg物は始めてお目にかかるな。

まあ、実際は骨の部分も重量に計算されているので、可食部分は少し少ない。

問題ないだろう。

 

 

「それで?何が決め手だったわけ?」

「決め手ねぇ。色々あるよ。一言では言い表せない。」

 

五月を選んだ決め手ねぇ。

まあ、あそこだろうね。

 

「五月のチャームポイントは・・・・?」

「眼だね。あの眼に射抜かれてしまったよ。もうイチコロさ。」

「熱いわねー。妬けちゃうわ。」

「や、やめてください・・・恥ずかしくなってきました。」

 

なんでさ。告白した時に言ったじゃん。

でも人前では恥ずかしいか。ごめんなさい。

 

 

「ただ、まあ・・・・本人の前で言うのもあれだけど、

まだ返事はもらってないよ。ちょっとした理由でね。」

「はあ?どういう事よソレ。」

「大学に合格してから改めて返事をすると決めました。」

「五月らしい・・・・でも、油断しない方が良い。一花と茜ちゃんがまだ狙ってるかも。」

 

 

「多分大丈夫じゃないかな。この前、きっちりケリはつけてきたつもりだ。」

「あら?余裕みたいね。けど、そんなんで安心しない方が良いわよ?」

「なんでさ。」

「わたしと二乃は・・・今もフータローを狙ってる。姉妹だから、一花もきっと同じ。」

 

ああ。四葉くん言ってたな。ライバルですって。

まあでもあれでしょ。そういう設定みたいなもんでしょ。

風太郎と四葉くんの仲が悪くなれば黙ってはいないと思うけど、

仲良しなら手は出さんだろう。

 

「・・・・・ああ。確かに。断言はできないな。」

「え!?ナ、ナギくん?」

 

折角なのでイタズラをしよう。例え彼女候補だからといっても、

俺のちょっかいからは逃がしてあげられないよ。

 

 

「大丈夫だと思ってはいるけれど。人の心の奥底までは覗けないからね。」

「むむ・・・大学、絶対に受かって見せます。」

「良いね。良いスパイスになる。その意気だよ。

落ちたら、ひょっとすると俺、取られてしまうかもね。」

 

「絶対、受かりますから!」

「大丈夫。合格までは鋼の意志でいるよ。安心して集中してくれ。」

 

五月はメラメラと燃えているようだった。

別に五月が落ちたところで俺も一花も変わらないと思うが。念のため。

五月をやる気にさせるために、使えるものは何でも使う。

キミは真面目だからね。これくらいのシャレでも本気になってくれる。

 

 

頑張ってくれよ。彼女さん。そら俺は男だけどさ。

惚れた女の良い所は見たい。何度だって、俺を夢中にさせて欲しい。

俺は心底惚れているんだよ。キミのそのひたむきに頑張る姿にね。

 

 

店員が大きな肉の塊を持ってきた。

どうやら用意が出来たようだな。

 

「お待たせしました。ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ。1kgです。」

「でっか。」

「やば!写真撮らなきゃ!」

「まさに肉の塊・・・」

「初めて見ました。」

 

こんがり焼けた肉の塊が目の前にドンと置かれる。

なんじゃこりゃ。エアーズロックかなにかか。

 

これがTボーンステーキ。T骨の左右のスペースに肉がびっしりついており、

見事なる長方形を形成している。肉を全て食べれば、T型の骨が残るわけだ。

 

 

「お切り分けします。」

 

ウェイターが目の前で肉の塊を手早く切り分けていく。

解体ショーだな。マグロみたいだ。

 

「骨の左右で肉の部位が異なります。左側がフィレ肉。右がサーロインとなります。

是非、違いをお楽しみください。ごゆっくりどうぞ。」

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しかったです。二乃、いつの間にこんなお店を調べたのですか?」

「・・・こいつから教えてもらったのよ。」

「そうでーす。発信源はナギくんでーす。」

「おなかいっぱい・・・」

 

1kgを平らげてマンションに戻っていた。

さすがに五月も大満足だろう。俺はほどほどに食った。

二乃と五月がメインだったな。二人で500は食ってるだろう。

俺も250くらい。三玖は150かな。残りは骨。

 

二乃と三玖も一緒だが、五月と手を繋いで帰っている。

自然に手を取れば、人前だろうと繋いでくれる。意識させないことが大事。

 

 

「ナギくんですか。・・・グルメですね。

じゃあ今度はお返しにスイーツのお店を教えます。」

「良いね。楽しみにしておこう。」

「気になるけど・・・・次は二人で行ってきてね。」

「そうね。付き合ってるってのにあんまベタベタしないんだから。

ちょっとつまらないわね。ま、でもアンタらならこうなるかしら。」

 

二乃はなんかしらけてる。いやいや。

キミみたいに五月が急に俺の事をナー君って呼んだら、それはそれでちょっと引くだろ。

 

 

「まだ正式には付き合ってないし。

合格まではこんな感じさ。俺だって自分の心にブレーキをかけているよ。」

「そ、そうだったのですか?」

 

「うん。今だってキミを・・・・・おっと。やめとこう。」

「ちょ、ちょっと。気になる止め方しないでよ。」

「続きはまた来週・・・・」

 

抱きしめてやりたいくらいだ と言いそうになったが抑える。

あんまり言いすぎると顔真っ赤にして帰ってしまうかもしれん。

今は、2人きりの時だけにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ナギくん」

「なんだい。お嬢さん。」

 

マンションに戻り五月の部屋で勉強中。五月が話しかけてきた。

四葉くんは風太郎と学校の図書室で勉強しているらしい。

本日は父親不在のため、遠慮なくお邪魔している。休日の昼だしな。

 

「大学に入って、将来何をするか決めていますか?」

「ああ。それか。まだ決めてないんだよね・・・・」

 

とりあえず進学はするという漠然とした俺の進路。

しかし、大学を選ぶというのはこの先の就職先に大幅に関わってくる。

ちゃんとした目標を決めた方が良いとはわかっているのだが。

 

 

「もし・・・ナギくんが良いのなら・・・私と一緒に、教師を目指しませんか。」

「教師か・・・・」

 

教師のお誘い。立派な職業だし、悪くはないが。

けど大変って聞いた。昨今の子供はネットの影響でだいぶ小生意気だしな。

昔より今の方が大変だろう。少子化というのも少し気になる。

まあ、俺が年食うまでは問題ないと思うが。

 

 

「はい。この間、塾の生徒に教えていた時も思ったんですが。

ナギくんは、やっぱり教えるの、上手です。」

「あれは・・・教育というよりは人生相談だからね。俺の得意分野だ。」

 

あの女の子に恋の競争を話した時か。そういえば、あの子はどうなったかな。

まあ、成功しても失敗しても、今も元気で過ごしていることを願うばかりだ。

どっかのバカみたいに下を向いてはいけません。臨時講師ナギくんとの約束だ。

 

 

「そうかもしれませんが・・・・でも、わかりやすいです。

その子の身近なものに例えて、想像しやすくしたり。

途中でホワイトボードに文字を書いて、話を脱線させずに気分転換をさせたり。

自分なりの答えを説明して、最後はやっぱりその子の意志を尊重して。

 

ナギくんの良い所は、生徒と同じ目線に立って、親身に教えてくれるところです。

他人事という雰囲気を出さないから、自然と聞いてしまいます。」

 

「・・・・・・分析してるねぇ。」

 

聞いてる側はそう感じたらしい。

あんまり解説しないでくれよ、ちょっと照れる。

 

 

「あと・・・単純に面白いです。

ついつい話を聞いてしまいます。あなたの言葉には人を惹きつける何かがあります。

上手く説明が出来ないんですが・・・・」

 

「いや、ありがとう。そこはいつも気を付けているからね。

話を聞いてほしいのなら、まず聞き手よりも話し手が努力をするべき。

そう考えているから。」

 

 

ちゃんと説教できるか不安なんだがな。

教師の道は何回か考えたことはあった。

 

まあでも、一花が退学騒動を起こした時や、四葉くんの陸上部事件では

普通に説教かましたしな。別にいいか。

 

教師、良いね。

高校時代の1年半、この家庭教師の経験。そして昔、風太郎の教師としての経験。

振り返れば、俺は誰かに教えてばかりだったな。

・・・最初は出来の悪い生徒を見て、向いていないと思っていた。今となっては懐かしい。

 

 

「・・・・そうだね。良いかもしれない。・・・目指してみようかな。教師を。」

「ほ、本当ですか?無理にとは全く言いません。」

 

「いや。考えたことはあったんだよ。

ただね。生徒に優しくし過ぎて、いざという時に説教できるか不安でさ。」

「なるほど・・・・」

 

人を育てるには優しさだけでは不十分だ。

厳しさと現実を伝えてやらなきゃいけない。その辺は、夢を見ない俺の仕事かな。

挫折という物が、成長には必要だ。余程の天才でもない限りは。

 

 

「だが・・・大丈夫そうだ。よく考えたら、

自主退学の話の時に一花に説教をかましたことがあった。心配いらないな。」

「そんなことが・・・・私も聞きたかったです。」

「あれは・・・・うん。タメになるお話じゃない。聞かなくていい。

今俺がどんな気持ちだったかを解説したに過ぎないからね・・・」

 

軽い黒歴史である。割と自分勝手なキレかただった。

 

 

「そういう事だ。折角だから、同じ大学を目指そうかな。」

「だ、大学まで一緒にですか?!」

 

「うん。その大学、俺からしても悪くないと思う。

一度調べたことがあってね。就職実績の一覧は中々優秀だ。」

 

五月が目指す大学は一度調べたことがある。

教員就職率80%は教育大学の中では優秀だ。

 

俺の現状から比較すれば、俺自身の入学は余裕だろう。

やはり問題は五月。こっちに集中しよう。

 

 

「だから、これからも共に頑張っていこう。」

「はい!教えてください!落ちてはいけない理由がまた一つ増えました!」

 

俺の進路も定まった。

五月にもブーストをかけることが出来た。一石二鳥だったな。

 

 

 

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