五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「さあ、好きなものを頼んでいいぞ!俺のおごりだ!」

「わーい!ありがとうございます!」

 

ある休日の昼下がり。

上杉 風太郎と中野 四葉は仲良しこよしであったそうな。めでたしめでたし。

 

二人である店のテーブル席に座っていた。ほのぼのデート中である。

 

 

「なんでデートの行き先がファミレスなのよ・・・・」

「フータロー君にしては、頑張った方だと思うよ?」

「金はないからねえ。しょうがないね。」

「初々しくて良いと思う。」

「ご飯も美味しいですよ!」

 

 

風太郎と四葉くんがデートをするという話を姉妹4人からもらい、

それを無事5人でストーキング中。家庭教師も終盤と差し掛かったころになり、

満を持して五つ子から上杉先生にストーキングのお返しをしているのである。

最序盤に五月とひと悶着あった時が懐かしいな。

 

 

ファッショナブルな二乃はファミレスにダメ出し気味。

まあキミはねぇ。オシャレなカフェとかネットでバズる何かが無いとダメだよね。

 

一花も微妙だろうな。あのコーヒーショップ連れてけばなんとかなると思うけど。

しかし ここはいつも来てるよー とか言いそうでもある。

 

五月も二乃とよくあちこち行くから恐らくダメ。

現時点で引き出しはそこそこあるが、色々調べておこう。

 

三玖と四葉くんなら許してくれるかな。・・・・いや。三玖も怪しいか。

人見知りと言うだけで意外と三玖はあちこち行っている。

 

ダメだな。四葉くんしか許してくれなさそう。だが、四葉くんの顔はとても満足そう。

上杉さんと一緒ならどこでも楽しいです! という顔をしている。大天使四葉くん。

 

・・・だが、5人とも好きな人と一緒なら案外どこでも良かったりしてな。

 

 

俺が風太郎に多少金を貸すこともできたが、

変に背伸びしてそこが基準になってしまうのも良くないしな。

最初のハードルは低い方が良い。一度上げたハードルは中々下げにくい。

生活水準のようなものだ。

 

 

今はファミレスの中。庶民にも優しいイタリアンなレストラン。

このご時世の中、企業努力で値上げを抑え、頑張っている。

ここには風太郎が四葉くんを連れてきたようだ。

 

ここは一つ一つの値段が安く、提供する量が少ないのが良い。

色んなものを楽しめる。かといって、ちゃんとしたお得なランチメニューもある。

俺も好きな店だ。安いけど量が少なくて割高 という訳でもない。

コスパに優れているし、ちゃんとお金を出して楽しもうと思えばちゃんと楽しめる。

言うなれば、自由度が高く選択肢の多い店。味もそこそこ。

 

 

ちなみにここに来るまでは電車で移動していた。

そしてついさっき、移動中の電車の中で揺れがあり、

四葉くんが風太郎を壁ドンしていた。

 

 

・・・逆ではない。四葉くんが、風太郎を壁ドンした。素敵、抱いて。

四葉くんはイケメンだなあ。

 

 

「あ クーポン使ってる。」

「抜かりないねー。」

「ダメなの・・・?」

「デートでクーポンとかNGでしょ。」

「二乃きびしー。俺も使っちゃうかも。」

「ふふふ。私は気にしませんよ。ナギくん。」

 

風太郎はちゃっかりクーポンを使っているらしい。

仕方ないよね。彼の場合は。お金がね。背に腹。

 

 

二乃の姉御はデートで男にクーポンを使ってほしくないらしい。

俺からしたら正直意味が分からない。なんでやねん。

安上がりに抑えればまたすぐに次のデート行けるやろ。

 

 

言葉にしづらいが、現実感という奴かね。

デートと言うのは恋人との一時の夢。逢瀬。愛する人との憧れのひと時。

 

そこに割引クーポンという圧倒的日常感。

それが良くないんだろうな。一気に現実に引き戻される。シンデレラの12時の鐘のように。

ただ、ちょっと夢を見過ぎてないか、それ。夢を見ない有坂くんを見習いましょう。

 

つーかこのファミレスクーポンあったんだ。んな事したら経営大変ですよ。

ただでさえ安いのに。

 

 

 

「ナギくんも食べますか?」

「お。もらおっかな。」

「はい。あーん」

「あー」

 

こちらはこちらで、店内の6人掛けのテーブルに座り、注文を頼んでいた。

五月は普通にランチセットを頼んでいたので分けてもらう。

当然のようにハンバーグの乗ったフォークを向けられたので当然のように答える。

俺は小エビを揚げたシュリンプを注文していた。

 

皆で来てるのに気軽にシェアできるタイプの物ではなく、

一人だけランチセットを頼んでる辺り、五月は割とマイペースである。

そういうとこ好きよ。我が道を往く。

 

「んー。良いねこの味。やっぱ好きだわぁ。俺のシュリンプいる?」

「ふふ。くださいな。」

「はーいお口あけてー」

 

フォークにからっと揚がったシュリンプを差して、五月の口の中に運ぶ。

良いねぇ。俺達熱いねぇ。今11月だけどねぇ。

 

「隣でこいつらは見せつけてくるし・・・・

この前はこんな事なかったのに、急にどうしたってのよ。」

「あはは。ちょっとは気にして欲しいなー?」

 

「どうしてですか?修学旅行の時は一花も食べさせていたではないですか。」

「あ、あの時見てたのぉ!?」

「ナギ、私にもちょーだい。」

「良いけど自分で食べてね。」

 

 

別にいいじゃん。これくらいやったって。この間はちゃんとしたレストランだったから。

全く持って健全です。言っておくが、俺たちは滅ばないからな。永久不滅。

 

まだ俺が中二病持ちだったらメールアドレスをeternal_loveとかに変更してるね。

今は絶対やらないけど。拝啓、中二病仲間の平山くん。お元気ですか?

俺はもう夢を見るのをやめました。立派な彼女が出来そうで嬉しいです。敬具。

 

 

「う~・・・・向こうはもどかしいわね。

四葉、そんな奴はさっさと捨ててあたしに譲りなさい・・・

フー君、面倒くさいことしてないでさっさと告って付き合いなさい・・・・」

「どういう心境・・・?」

「どっちやねん。」

 

二乃がよくわからないことを呟きだした。

四葉くんを応援したい理性とフー君と付き合いたい欲望が戦っているようだ。

支離滅裂。

 

 

「・・・・あれ?まだ二人は付き合ってなかったのかい?」

「そうみたいだよ?告白した時に、やらなくちゃいけないことがあるって言われたみたい。

四葉からフータロー君に好きとは言ってるから、大丈夫だとは思うんだけど。」

「そこの解決は多分終わってるわ。あたしと三玖の事だと思う。」

「うん。この間、四葉とカラオケした。」

 

四葉くんと風太郎はまだ付き合ってはなかったらしい。

俺が勘違いしていたようだ。しかしこうして一緒にデートはしている。

だからまぁ、俺と五月のようにちょっとしたワケがあったんだろう。

二乃と三玖の件が解決しているらしいから、このデート中に改めて告白するのかな。

 

 

「四葉と三玖でカラオケ・・・・どんな曲を歌ったんですか?」

「二乃がいっつも歌ってるやつ。学園祭で踊った曲だよ。」

「もう、思い出したくないわ・・・あぁ・・・・どうしてあんな・・・・・」

「キミも俺の気持ちがわかったか。」

「アンタよりはマシ・・・・いや、仮面付けてたか。同じくらいね。

今でも学校内で声かけられるもの・・・・なんであんなことしたのかしら・・・・」

 

二乃は自己嫌悪に陥っている。茨のトゲ、レッドちゃんのくだりである。

 

ははは。わかるわかる。そうそう。この瞬間だよ。熱が冷めて冷静になった瞬間。

頭の中に時々フラッシュバックして大声で叫びたくなるんだよ。まさに黒歴史。

上杉くんと付き合えればいい思い出だっただろうに。振られてしまったからな。

ステージ上から大声で アンタが好きよー とか言えば良かったのに。

学園祭が初日からクライマックスを迎えるけどね。

 

 

ちなみにあの時、二乃が四葉に代わり踊った理由は、

中野父をステージ上から見つけるためだったらしい。

 

だが、風太郎の呼び出しの時にはあのステージ衣装のままだったから、

フー君に衣装を見せたくもあったはずだ。

結果振られてしまったために全てが黒歴史になったが。二乃くんなかまだねぇ。

 

 

結局ステージからは見つけることが出来なかったそうだが、中野父と俺は会っている。

体育館の中で当時は明かりをステージ以外消していた。暗くてわからなかったんだろう。

初日から中野父が来ていたかまではわからないが。

 

中野父が応援のペンライトでも持って気合入れて振っていれば別だが、まずありえない。

ちょっと想像したが、無表情で機械的に振っているだろう。

別の世界線でヤクザの組長にでもなってればノリノリで振ってるかもしれんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、図書館。

風太郎と四葉くんの二人は本を借りに来たようだ。

 

 

「上杉さんは、何かお探しですか?」

「いや・・・進学が近いだろ。目標や夢が見えてきたんじゃないかと思ってな。

そこんとこ、四葉はどーなんだ。」

 

「なんだか急な話題ですね・・・・」

「仕方ないだろ!お前にはその辺の事情を聞けずじまいのままだ。」

 

四葉くんの将来の目標や夢。そこを風太郎は気にしているらしい。

一応進学先としては体育大学と聞いている。この前、風太郎が教えてくれた。

 

 

「私は・・・・やっぱり、誰かのサポートをして支えることが、自分に合ってると思います。

最近、気づいたんです。それって私にとっては誇れることなんだって。」

「そうか。・・・・お前らしいな。」

 

「そう思えたのは・・・上杉さんがそうだったからなんですよ?」

「そう、なのか?」

「そうなんです!」

 

 

 

 

 

 

 

「あー!ムズムズする!」

「まあまあ」

「どうどう」

 

風太郎と四葉くんの真面目な会話を聞いて二乃さんご立腹。

姉御を三玖と俺で窘めていた。

本棚の陰から風太郎と四葉くんを見守っている。声大きいって。バレちゃうって。

 

 

温泉旅館で混浴に入ってきた時も思ったけど、キミは剛速球投げすぎなんだよ。

もっとじっくり行こうぜ。くすぐったいソフトタッチには我慢ならないらしい。

二人の恋はまだ始まったばかり。インファイトにはまだ早すぎる。

まだ1ラウンドの開始直後だ。

 

 

 

「それでも、具体的な目標はあった方がいいだろ。

小さい頃はあっただろ。夢とか。」

「むー。夢ですか・・・・でも、私もちょっと有坂さんに影響されちゃいました。

私も、今ではあまり夢を見ようとは思いません。

自分がやれること、できることを探してます。」

 

 

「凪らしい発言だな。あいつは自分にそんなことを言う癖に、

他人にはお構いなしに夢を追えとか目標に進めとか言うんだ。」

「はい。尊敬してます。

まあ、あったと言えばあったんですけど・・・・もう、忘れちゃいました!」

 

クッソ。こいつ。流石相棒。見抜かれている。悔しい。

お前よくわかってんじゃねぇか。

 

当たり前だろう。

俺が自分に対してどう思っているかと他人に対して何と言うかは別の話だ。

変な事言って俺みたいなやつが増殖したらこの国は将来お先真っ暗だ。

クローン有坂を生み出してはならない。禁忌である。

 

 

 

「思い出したら、ちゃんと言えよ。あいつはあったぞ。えーと・・・・二乃の昔の夢。」

「なんでしたっけ?」

 

「えーっと・・・・確か・・・・・日本一のケーキ屋さん。」

「そこまで具体的には言ってないわよ!」

「あ」

 

「図書館ではお静かにお願いします!」

 

 

二乃が会話に反応して物陰から出てしまった。

折角バレてなかったのに。だいなし。

そういや修学旅行のストーキングも二乃が反応して風太郎にバレたな。向いてないんだな。

三玖には既にバレていたけれど。

 

「う、上杉くん。私達には気にせず先に進んでください。」

「はーい二乃ちゃんこっちに来ましょーねぇ」

「ちょ、ちょっとナギ!掴まなくていいから!」

「お、お前ら。凪まで。いつから・・・・」

 

飛び出してしまった二乃を懐にしまう。

完全にバレてしまったな。

 

「お邪魔するつもりはなかったんです・・・どうか気にしないでください。」

「し、しかし・・・」

「あ、ですが・・・・初デートでクーポンやスマホ見たりは気にした方が良いかと。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

五月がそんなことを言い始めた。

うちの彼女気にしてるじゃねぇか。さっきのは優しさだったわ。覚えとこ。

スマホは多分大丈夫だけど。なんてったって、俺はキミに夢中だからな。

 

 

 

 

「よ、四葉。行くぞ。」

「は、はい!」

 

ちょっと気まずい空気で図書館を出て行った。

ただ、四葉くんは少し嬉しそうな顔をしていた。

 

「もう、大丈夫そうですね。」

「なんだかんだ、キミたちと一緒にいるのは嬉しいんだろう。四葉くんも。」

「どこまで行ってもお人好しなんだから。」

「くすくす。変わらないのは、いいこと。でしょ?」

「そうだね。おねーさんも安心安心♬」

 

恋敵でも、ライバルであっても。大前提としてこの子たちは五つ子。

やはり、5人セットを5人全員が望んでいるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり。公園。夕方になっている。

 

風太郎と四葉くんはブランコで立ちこぎをしている。

先ほどの一件で距離を取っているため、会話の内容は聞こえてこない。

バレてはいると思うが。雰囲気とムードを邪魔しない程度に。

 

「この公園・・・四葉が良く来ている公園です。」

「へぇー。初めてきたな。」

「いっつも一人で来てるんだよね。わたしは一回だけ四葉と来たっけ。」

 

 

五月と一花によるとそういう事らしい。

そういえば、今日のデートはどういう趣旨だろうか。

 

 

ファミレス。図書館。公園。

ちょっと俺にはよくわからないな。

 

しかし、二人にはわかるんだろう。それでいい。

 

 

 

 

すると、四葉くんが急に立ちこぎのスピードを速めて・・・・・

前に飛んだ。

 

結構な距離がある。やはり良い運動神経をしてる。

体育大学は伊達ではない。

 

ブランコで靴を飛ばしたり、座った状態で回転してグルグル回ったり。

無邪気に遊んだ子供のころを思い出す。

 

 

今度は風太郎が立ちこぎのスピードを速めた。

・・・・体重の差かな。かなりのスピードが出ている。四葉くんより早い。

少し不安になってきた。飛ぶのに失敗して顔面から行ったりしないだろうな。

ギコギコと金属音がここまで聞こえてくる。こちらは公園の外にいるんだが。

 

あ。

 

 

 

 

 

ブランコの鎖が、壊れた。

 

風太郎が宙を舞う。

 

 

 

 

体は地に対して横を向き、空中でグルグルと回って。

 

どさっと 風太郎の体がうつぶせに地に伏した。

 

 

 

「あーあ。」

 

「あちゃー・・・・」

「フー君!?」

「大丈夫かな・・・・」

「慣れないことをするから。」

 

 

 

 

 

オイオイオイ。死んだわアイツ。

あそこまで派手にやるとは大したものですね。

ブランコぶっ壊したぞ。これ弁償は上杉家ですか?

 

 

さて、何が起こるかな。相棒は動いているし、

んなケガはしてないと思うけど。

 

 

 

 

地に伏せた状態で風太郎が何かを喋っているらしい。少し立ち直り、

右足を地につけ、左足を立てて、四葉くんに跪く。

 

 

 

 

左手を開き、四葉くんに真っ直ぐと向けた。

 

 

 

「好きです。結婚してください。」

 

 

 

 

 

張り上げたその言葉だけが聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「ええええっ!!!びっくりしました!!」

 

 

四葉くんもたまらず反応。

そりゃそうだ。まだ付き合ってないだろ。

 

結婚を前提に付き合ってください ではない。

結婚を条件に付き合ってください である。

正しい文章になっているだろうか。わからん。

まあもう二度と使わないからいいや。

 

 

四葉くんは・・・笑顔で何かを風太郎に告げている。

 

 

 

どうやら、プロポーズ。受けたようだな。これでいいだろう。

 

 

 

「フータロー君、凄い事言うんだね?」

「どっかの誰かさんも負けてられないわねー。」

「ナギ・・・・年貢の納め時。お覚悟。」

「ははは。急かすな急かすな。余裕のない女はあまり好きじゃないねぇ。」

「全くです。結婚だなんて・・・ちょっと・・・・・う・・・・・・・」

 

 

今から結婚はちょっとねぇ。若気の至り。バカップル一直線。

その点において俺と五月は一緒だ。至って冷静。

そんなことよりも、まずは受験。目の前に集中。

 

 

「まあ、負けてられないのは確かだ。

五月、わかるね。今俺たちが何に頑張らないといけないのか。」

「はい。・・・・帰って、勉強をしましょう。」

 

「よし。じゃあ、俺たち二人は先に戻っているよ。」

「うん。またね。」

「気を付けて帰んなさいよ。」

「ばいばーい」

 

五月と二人手を繋ぎ、帰路についた。

 

 

 

この日から、風太郎と四葉くんの二人は正式に、付き合う事となった。

 

 

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