五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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年は開け、正月。

 

今年もまた、皆で初詣に来ていた。

 

「ナギさんあけましておめでとー!」

「はい。あけましておめでとう。どーぞ。」

「ありがとーございます!」

「いつもすまんな。」

 

らいはちゃんに今年もお年玉を渡す。

中学生になったのでちょっと増やした。3000円から5000円。

なかなか痛い。

 

 

「ナギ君。フータロー君。あけおめだね!」

「今年も、この8人で集まれたわね。」

「フータロー、受験は大丈夫?」

「むしろ私の方が危ないです!」

「胸を張って言う事ではありませんよ・・・」

 

「ようやく来たか。・・・・あけましておめでとう。」

「おめでとー。」

 

五つ子も来た。

二乃の言う通り、去年と一緒。

今年もこの8人でお送りします。

 

 

「では、参るぞ。8人横並びで良いんじゃないか。」

「丁度いい横幅だね。」

 

賽銭箱に100円玉を投入。

5円玉は無かった。まあ、人との縁はもう足りているので良いだろう。

 

二礼、二拍手、一礼。

ここは神社なので構わない。お寺だとやり方が異なるとどこかで聞いた。

別にその辺にマナー講師なんていないだろうから、どこであろうともこのやり方をするが。

 

・・・・五月の合格を祈願しておいた。

 

 

 

 

「ナギ君ナギ君!今年の振袖どお?」

「そういや去年と少し違うね?」

「誰が・・・一番?」

「そうだね・・・・・あ、五月。・・・・・黒の振袖じゃないか。」

「え、ええ。」

 

振袖は去年の物と違った。

五月は・・・黒の振袖に控えめな白と金の帯。

振袖の下の方は満開の桜が描かれている。良いねぇ。合格祈願だねぇ。

 

 

「よく似合っているよ。・・・良いね。

下地が黒だから綺麗で長い髪が映える。邪魔をしない色だ。」

「あ、ありがとうございます・・・・」

「去年の俺のコメント、覚えてくれたんだろ?嬉しいなぁ。」

 

去年は四葉くんが黒だった。今年の四葉くんは深い緑を付けてきている。

そういやあの振袖はアパートの大家から借りたと言っていたな。

 

 

「はいはい。今日もごちそうさま。」

「おかわりが必要かね?」

 

「間に合ってるわ。」

「お腹いっぱいだねー。」

「もう食べられない・・・」

「私はもっと見たいです!」

「四葉くんは食いしん坊だなあ。上杉さんに食べさせてもらいなさい。」

「俺に振るんじゃねぇ。またお前らストーキングしに来るだろ・・・・」

 

今のやり取りで3人をノックアウトさせた。

要求したのは一花、キミだぞ。俺は悪くない。黒の振袖の事覚えててやっただろ。今の流れ。

完璧な接待ゴルフだった。一花はおねーさんだなあ。

四葉くんは上杉さんといちゃついてなさい。問題集越しに。

 

「ナギさんは五月さんと付き合ってるんですか……?」

「いえ。まだなんです。」

 

らいはちゃんがおずおずと聞いてきた。

ちょーっとね。キミには難しいね。

 

「ま、まだ?そ、そうなんですか?」

「らいはちゃんももう少し大人になればわかるよ。」

「え~。気になるなあ。」

 

らいはちゃんは中学1年生。もうすぐ2年だね。

大人の階段のーぼるー。いつかキミもシンデレラになるさ。

 

王子様は軍神 上杉 風太郎とかいう絶大なる障害を乗り越えなくてはならないが。

 

俺よりもテストの点数が良かったら認めてやろう!

絶対こう言うと思う。なお引き分け再試合です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!有坂くん!」

「あけましておめでとうございます。佐野さん。」

 

少しだけ皆と離れ、五月と手を繋いで周辺をぶらついていた。

佐野さんが屋台の運営をしていた。人形焼き。

 

 

 

「食べるかい?」

「ええ。折角ですし。」

「佐野さん。一つください。」

「はーい。ちょっと待ってね。」

 

 

「佐野さん。あれから北条さんとは?」

「ふふふ。捕まえちゃった。有坂くんのおかげだね。」

「Oh....」

 

北条さんお縄。満を持して実りました。

大きな桜が咲きました。かわいそうに北条さん。

これから一生手綱を取られて生きていくんだろうな。あの人は。

圧倒的かかあ天下。

 

「ええと、五月ちゃんで合ってる?」

「はい。いつきです。」

 

「有坂くん、卒業したら、宜しくお願いね?

結構無茶するんだよ有坂くん。いっつも急な電話入れても二つ返事で帰ってくるし。」

「ふふ。任されました。」

「暇っすからねぇ自分。」

 

 

バイト先から急ぎの電話が入った時は、大体出ていた。

そのことについて言っているらしい。あんたらが呼び出したんやろがい。

ちなみに受験シーズンに入ったので、バイトはもうやめた。

入る大学は地元なので、入って落ち着いたら復帰するかもしれないが・・・折角だ。

他の事をやってみたい。

 

「はい。どうぞ。私から二人にプレゼント。」

「わーい」

「ありがとうございます。」

「ふふふ。お年玉の代わりね。」

 

知り合いからも祝われながら、正月が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日は過ぎ、1月半ば。

3日後が入試の1次試験となる。

今日は俺も五月も別れて勉強していた。俺は自宅で勉強をしている。

早起きの俺は朝5時から勉強を開始。

 

俺もそれなりには自分の心配をする。

万が一、五月が受かって俺が落ちたらカッコ悪すぎるからな。

先生が落ちるわけにはいかない。

 

 

む。メールが届いていたようだ。

差出人は・・・・あら。珍しい。

 

『お嬢様達は 一丸となって頑張っておられます』

 

 

 

 

そんな短いメールと共に1枚の写真が添付されていた。

これは・・・中野家のリビングの写真。

 

テーブルにテキストやノートを広げて、メガネをかけた五月が目を閉じて突っ伏している。

寝ているんだろう。目を瞑った横顔が見えている。

 

背後で人差し指を口にあて、静かに、というジェスチャーをしている一花。

 

皿とコップを持って片づけをしている二乃と三玖。夜食かな。

 

寝ている五月に対し毛布を掛けている四葉くん。

やっていることは違えど、5人全員が写っていた。

 

・・・・そう。キミ達5人が集まれば何にだって負けやしないさ。

俺も負けてられないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・時は過ぎ。2月。

受験日当日。

 

既に1次試験である共通テストの方は終えた。

今日が2次試験。2月の下旬である。

 

「・・・・・・・・・」

 

大学が一緒なので俺も五月と一緒にいる。

共通テストを終えてからも勉強の量は変わらなかった。

つまり、特に共通テストの手応えに問題はなかったという事。安心した。

 

「・・・・・・・・・」

「緊張しているね。」

「・・・・はい。」

「良いね。その緊張もまた、思い出の一つ。

乗り越えていこう。五月のお母さんは、きっと乗り越えたはずだからね。」

「はい!」

 

「心配はいらない。その指輪を見て、思い出してくれればいい。

会場は違うかもしれないけど、右手から、見守っているよ。それは集中のサインだ。」

「ナギくんも・・・頑張ってください!」

「勿論だ。」

 

二人で共に会場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、1週間とちょっと。

・・・合格発表の日。

 

今日もまた、五月と二人で訪れていた。

「・・・・・・」

人は少しばらけている。

発表時間よりも少し遅く来たからだ。

 

 

まあ、はっきり言って、今の五月なら落ちないだろという俺の勝手な予測によるものである。

今の五月は俺と同じラインまで上がってきていると思う。余裕だろう。

ここまで成長するとは予想外だった。流石俺の彼女。まだ彼女じゃないけど。

 

万が一気が緩むと申し訳ないので・・・・

年明けから今までは一言もそんな事を口にはしなかったが。

 

 

「大丈夫かい。気持ちの準備が出来たら行こう。

合格発表の紙は逃げないから。」

「もう少し・・・・・もう少しだけ・・・・時間をください。」

 

「ああ。・・・・・準備が出来たら、俺の手を握ってくれればいい。何も言わなくていい。

あのライブの曲と一緒さ。二人で一緒に、歩いていこう。」

 

 

 

 

 

 

 

しばらく待っていた。五月が何も言わず、手を握ってきた。

「よし。俺がリードしよう。」

 

前に立って先導する。ゆっくり歩く。

 

 

 

 

「さあ、ついたよ。顔をあげられるかい。」

「・・・はい!」

 

俺も自分の番号を確認する。まあ、ここまでくると少し不安もあるが・・・・

 

 

よし。見つけた。ノープロブレム。もーまんたい。

あたりめぇよ。落ちるわけねぇだろ。この俺様がここを受けてやったことに感謝しろ。

入学金を免除してくれ。それでようやく釣り合いが取れる。

不安?そんなわけないじゃん。なに言ってんの?

 

 

五月の番号はちょっとわからない。反応を見るしかない。

「・・・・・」

 

「・・・・・!ナ、ナギくん!これ・・・・」

「確認しようか。」

 

受験票の番号を見せてもらう。

合格発表の紙と照らし合わせる。

 

 

・・・・あるじゃん。

 

 

「おめでとう。信じていたよ。」

「・・・・・お母さん・・・私・・・やったよ・・・・!」

 

人目も憚らず、パートナーを強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「おめでとー!」」」」」」」

 

中野家に戻り、マンションで祝賀会が実施された。五つ子と俺、風太郎もいる。

 

五月 大学合学 おめでとう

 

そんな飾りつけがされている。

・・・・・俺は?

 

 

「凪先生も優秀な生徒を生み出したようだな。」

「いやぁ上杉先生にはかなわないっすわ。ちなみに俺の飾りつけはないんすか。」

「お前は受かって当然だろ。甘えるな。」

「このひときらい」

 

ということらしい。現実は厳しい。

テーブルの上には持ち帰りで買ってきたハンバーガーやポテトなど

ファーストフードが並んでいる。事前に準備して落ちてたらアレだからね。

急ごしらえで良い。

 

「五月、おめでと~」

「D判定から受かっちゃうなんてね。肉まんオバケのパワーは偉大だわ。」

「に、二乃~~!!」

「どうどう。彼氏が見てますよ・・・・」

「これでみんな合格ですね!」

 

四葉くんは既にAO入試で体育大学の合格が決まっている。

一花は女優業、二乃と三玖は専門学校、四葉くんと五月は大学。

5人全員、心配なくなった。

 

江場部長と喧嘩した時、四葉くんの助っ人は今後において無駄だと言ってしまったが・・・

様々な競技で目覚ましい成果を上げる四葉くんの活躍に目を付けた大学があり、

今回のAO入試と繋がったのである。

ごめん四葉くん。あの時の俺は本当にバカでした。

 

 

「風太郎は?いつ向こうに引っ越すんだ。」

「再来週だな。少し手伝ってくれ。」

「あいよ。」

 

 

「お前とも、これっきりだな。来月からお前の顔を見なくて済むと思うとせいせいするぜ!」

「そうだねぇ。長い事一緒にいたからねぇ。向こうに行っても上手くやるんだよ。

武田くんと毛利さんを大事にするんだよ。数少ない君の友達なんだから。」

「お前は俺のおふくろか・・・・」

「今まで俺がどれだけ苦労したと思ってるんだよ・・・・」

 

武田くんと毛利さんもどうせ受かっているだろう。

風太郎も受かったかどうかは聞かない。こいつを落とせる大学は日本に存在しない。多分。

まあ、引っ越しをするという事は受かっているわけだ。

 

 

「東京に遊びに行くときは泊まらせてもらおうよ。」

「ああ、いつでも連絡しろ。金は取るけどな。」

 

相棒ともこれで離れ離れか。寂しくなるな。いつかこんな時は来るとわかってはいたが。

 

 

 

 

 

少しベランダに出て外の空気を吸う。

大丈夫だとは思っていたが・・・・肩の荷が降りた気分だ。

 

・・・最高だな。ハッピーエンドという奴だ。

 

 

「・・・・ナギくん。」

「五月。いやはや、改めておめでとう。」

「何を言うんですか。ナギくんだって受かっているではありませんか。」

「まあ俺はね・・・予定調和みたいなもんさ。」

 

 

ベランダに出ていくと五月がついてきた。

 

・・・何の用があるのか、まあ、鈍感な俺でも流石にわかる。

 

 

「ナギくん。私は、貴方のお陰で今日この日を迎えることが出来ました。」

「大したことはしてないさ。ちょっと燃料を追加してやっただけだ。」

 

「貴方と一緒の大学に入り、これからお母さんのような教師を目指していきます。」

「ああ。良いね。素晴らしい。素直で真っ直ぐだ。わかりやすい。

とても・・・君らしい。」

 

「でも、私だけでは・・・・これから先、また躓いてしまうと思うんです。

二乃や・・・・上杉くんとケンカをした時のように。」

「・・・・うん。失敗をしない人間なんていないさ。」

 

 

「そんな弱い私を・・・・これからも、支えて、くれませんか。」

「勿論だ。・・・・改めて、気持ちを聞かせてくれるかい。」

 

 

 

「私は・・・ナギくんの事が好きです。」

 

そういいながら、俺の左手を両手で包んでくる。

 

 

「俺も、五月の事がこれ以上ないくらいに、好きだよ。

でも、俺は心配性でね。もし、彼らが気にならないのなら、行動で示してほしいな。」

 

「え?」

「見てよあれ。」

 

 

ベランダから室内を見る。

全員の視線は釘付け。当たり前である。ブラインドも何もないのだから。

 

凄い笑顔で見ている一花。

ニヤニヤが止まらない二乃。

顔を赤くしながらもこちらから目線を外さない三玖。

風太郎の後ろでわくわくしながら見てる四葉。

若干呆れた表情のものの、仕方ねぇなといった感じの風太郎。

 

 

「え・・・あ・・・うう。」

「ははは。流石に厳しかったようだね。まあ、今の言葉を聞けただけで」

「で、出来ます!」

「え?」

 

 

掴んでいた左手を離し、こちらに両手を広げてきて。

 

抱きしめられた。

 

 

「~~~~~っ」

「・・・・・大丈夫。そのまま顔を埋めていて良いよ。

もう、ちゃんとした恋人だからね。」

 

身長はこちらの方が高いため、顔をこちらの肩にうずめている。

こちらから五月を抱きしめ返し、頭の後ろを撫でてやった。

よしよし。ナギお兄ちゃんですよー。

 

そして部屋に不敵な笑みを返す。

 

どうだ?お前らが覗いていようが関係ないんだぜ。

そんなメッセージを込める。

 

 

すると部屋の中が騒ぎ出した。

一花、二乃、三玖が風太郎と四葉くんに対して何かを言っている。

3人は握りこぶしを作ってウッキウキで手を上げたり下げたりしてる。

 

あれだな。多分。お前らもやーれ、やーれというコールだ。

大変だねーあの人達。まあ、こっちをのぞき見した責任を取ってもらおうか。

覗くものはまた、相手から覗かれてもいるのだ。

 

風太郎が顔を赤くして3人になんか言ってる。やる気はないらしい。

四葉くん。キミから行かないとダメだぞ。やるんならな。

 

 

小学校の時の俺と同じさ。

ああいう光景で、俺はマジギレしてたわけだ。

風太郎、お前も少しは余裕を持ってみろ。それもまた、成長となる変化だ。

 

 

あ。

 

 

 

 

「五月、あれ見てよ。」

「・・・え?」

「面白いもんが見れるよ。」

「・・・ふふふふ。四葉らしいですね。」

 

 

 

 

 

四葉くんが風太郎にタックル気味のハグを仕掛けたため、

風太郎がバランスを崩し、倒れこんでしまったのだ。

風太郎は四葉くんに覆いかぶさられてマウントを取られている。

四葉くんまたやっちゃった。素敵、抱いて。

 

 

まあ、この二人はこれで良いのか。

 

 

この日、正式に五月と俺は結ばれた。

 

 

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