五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

113 / 130
111-5

 

 

それからーーーーーーーー五年後。

 

 

 

 

 

「ナギナギおっつー。」

「あいよー、気を付けて帰りー」

本日の有坂先生はこれまで。

 

 

俺はとある高校の先生として働いていた。旭高校ではない。

あの高校は・・・・ちょっと忘れたいことが多いから。

 

 

数年前のライブで伝説になりましたなんて言えるか?

今なら、生徒を手なずける材料にはなるかもしれないが、残念ながら仮面を被っていた。

証明できない。仮面はどこかへ行ってしまったからな。

正真正銘の過去。ちゃんとした伝説になってしまった。

 

 

「ナギ先生。ちょっとわからないところがあって。」

「・・・・・・」

「先生?」

 

珍しい。生徒の一人が話しかけてきた。放課後だってのに。残業代出ないんだぜ。

しかし君は特別だ。とても似ているからね。

 

「ああ、失礼。綺麗な眼をしてたからね。見とれてしまった。」

「・・・立派なセクハラですよ?」

「いや。とても似ているんだよ。俺の彼女に。その素直で真っ直ぐな眼は。」

 

「へぇー。彼女いたんですか。」

「ああ。高校からの付き合い。5,6年になるかな。」

「それ、ロマンチックですね。結婚しないんですか?」

 

「悩みどころだ。きっかけが欲しい。あの子は真面目だからね。

もう少しこの仕事が落ち着いてからでもいいと思ってる。

同い年の彼女で、向こうも教師を始めたばかりだからね。俺もまだ1年目のペーペーだし。

・・・・準備はひっそりとしているが。」

「え?ナギ先生1年目なんですか?そうは思えないんですけど。落ち着き具合とか。」

「精神年齢がおっさんとはよく言われる。」

 

 

「でも・・・結婚・・・早い方が良いと思いますよ?」

「そうなのかい?」

「だって、私は早い方が良いですもん。早く結婚したいです。」

 

「相手、いるのかい?」

「・・・・・・・・うう。セクハラです!セクハラ!」

「ははは。失礼。だが、その意見は参考にしよう。

それで?どこを教えて欲しいんだい?」

「この英文なんですよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車を飛ばし、帰路につく。

少し遅くなってしまったな。五月は先に帰っているかもしれない。

今は職場が近いので、同棲している。そのつもりで職場を選んだんじゃないのだが。

都合のいい偶然だった。

 

五月は中学校の教師。・・・塾講師の経験からやりやすかったんだろう。

こっちは高校。厄介な連中が多くてたまらない。俺はまだ若くてとっつきやすいらしいから。

ちょっかいを出してくる生徒が多い。叩いても何も出ないぞ。

 

 

 

さて、家についた。あのマンションのような豪邸ではないが。

まあちゃんとしたアパートだ。駐車場2台ですから。

階段を昇り、部屋の扉を開ける。

 

 

「ナギくん。おかえりなさい。」

「ただいま。五月。遅くなったね。」

 

エプロン姿の五月が出迎えてくれた。夕飯を作っていたところのようだ。

顔を近づけて、片手で相手の体を引き寄せ、鼻と鼻を軽くタッチさせる。ノーズキス。

 

五月は最近、これにハマっているらしい。最初は不思議な感じだったが、

俺も好きにはなった。

近づける時、いっつも力強く目を閉じるからな。><ってなるから。かわいらしい。

 

 

「お風呂、出来ていますよ。入りますか?」

「ありがとう。お先に入ろうかな。」

 

風呂までできているらしい。至れり尽くせり。

これは後でお返しが必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ。明日ですね。上杉くんの結婚式。」

「そうだね。早かったなぁ。5年前にプロポーズしてるからなぁ。」

「5年前・・・ああ。初デートの時の。」

「そうそう。ブランコで吹っ飛んだときさ。」

 

明日は風太郎の結婚式がある。

俺は風太郎の友人席で出席だし、五月も当然、四葉くんの姉妹として出席。

席が遠いのが少し残念だ。

 

 

五月はあれから四葉くん達、姉妹に対して敬語を使わなくなった。

ただし、俺に対しては何故か敬語。去年理由を聞いたが、

 

凪くんからはまだまだ教わる事があるので

 

と言っていた。俺は別に構わないが。遠慮しているようには見えなかったし。

いつまで俺は五月の教師になるんだろうか。

 

 

 

 

 

しかし結婚かぁ。まだ23だぜ。はえーよ相棒。

そんな急がんでも。俺を置いて行かないでくれよ。

 

五月は・・・・うん。まだ教師になったばっかりだし。

もうちょっと落ち着いてからの方が良いと思うんだけどな。

しかし、たまたま今は同棲している。チャンスかもしれない。

・・・・悩む。用意はしてるんだけど。

 

 

「凪くん?どうしました?」

「いや、ちょっと明日の事をね。・・・余興がさ。」

 

適当な話題でごまかす。

明日、友人代表の余興があるんだよな。

風太郎からリクエストを受けたんだが、あんまやりたくない。

 

だって今回は仮面なしだぜ。はずい。

まあ仕方ない。風太郎、お前がやってくれと頼むんだからな。特別さ。

連中も特別に集まってくれたからな。今は人気で忙しいらしいのに。

 

 

「明日みんなくるんでしょ?」

「ええ。一花もアメリカから帰ってくるんです。」

「スケールの大きい話だ。」

 

3年1組のラブマスター 一花は大女優として完璧な活躍をしていた。渡米している。

凄いでしょ。俺が人生相談乗ったんだぜ。ワシが育てた。

たぶん誰も信じてくれないと思うけど。

 

 

「明日の朝、みんなでお店に集まるんです。ナギくんも来ませんか?」

「俺も行っていいのかい?姉妹水入らずを邪魔するような気も・・・」

「大丈夫です。みんな会いたがっているはずですから。」

「なら、俺も付き合おうかな。」

 

専門学校を卒業してから、二乃と三玖はカフェを始めた。

最近は忙しくて行けてなかった。客の入りは正直微妙。立地がねぇ。あそこだと。

 

 

「空港に一花を迎えに行かなくてはいけないので。明日は少し早めに出ましょう。」

「わかったよ。」

「それで・・・・ですね。」

「うん?」

「・・・・今日、一緒に寝ませんか?」

「・・・・ああ、いいよ。おいで。」

髪をかき分け、五月の額にキスを捧げる。でこチュー。

 

 

寝室は別々にしているのだが、たまに一緒に寝ることがある。

今日は甘えたくなったようだ。・・・・まあ、明日はあいつの結婚式だし。

 

もしかして、願望あるのかな。

五月ならお仕事が落ち着いてからにしましょうと言うと思うんだが。

あの日とは少し異なるが、五月を正面から抱きながら、寝た。

 

 

・・・・抱き枕という意味だ。別の意味ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

車を走らせ、空港に向かっていた。

今日は風太郎の結婚式。こちらもスーツと白ネクタイを着用。

しかしまさか・・・・こんな日が来るとはな。

 

風太郎はそのまま東京にいるため、会う頻度は減った。

だが、半年に1回は会っている。あいつなりに上手くやっているようだった。

四葉くんは途中から東京に赴き、風太郎と同棲しているとのことだ。

恐らくは大学を卒業したタイミングかな。風太郎は大学院にはいかなかったらしい。

 

 

「全員で集まるのは、久しぶりなんです。」

「あー。やっぱりそうなんだ。それぞれとは時々会っていたけれど。」

 

合うのが難しいのは一花と四葉。他3人は地元にいるのでいつでも。

前者は仕事。後者は東京。しかしその二人も、この結婚式には当然出席する。

貴重な機会だな。

 

結婚式には前田くんも友人枠で出席する。同窓会といこう。

彼も松井さんと早々に結婚した。結婚式には俺も出たが、松井さんのスピーチ、

キャンプファイヤーの日から私達は結ばれましたと言っていたのが、印象的だった。

 

 

思えば・・・・俺はそんな縁起やジンクスとは無縁だった。

 

 

結びの伝説であるキャンプファイヤーは一人でカップルに呪いをばらまいてたし、

俺達は学園祭で付き合いだすカップル・・・・という事もなかった。

そして、旅行・・・・中野父から招待を受けた時。

あの高台の鐘を二人で鳴らすと結ばれる なんて伝説もあったらしい。

何も知らず、一人孤独に鳴らした。

 

まあ、良いんだ。俺はそんなものに夢なんか見ない。

・・・・今はもっと、現実を見ている。懐に忍ばせたこいつを、いつ、どうするか。

 

タイミングを見計らってでいいだろう。別に結婚式の最中でなくても良いし。

主役は風太郎で、俺ではないからな。一応持ってきたが、

今日、五月にそんな素振りが無かったらスルーで良い。

風太郎と四葉くんの結婚式を見て、何か反応があれば狙おう。勝てる勝負をしたいからな。

 

 

 

 

 

 

空港の前に車を止めて、一花を待つ。

あいつ、どんな格好で来るかね。どうせ女優オーラ丸出しで来るぞ。

 

 

「帰ってきたわ・・・日本!」

「旅行言ってただけでしょ?」

「うっわー。やっぱりそんな恰好して。」

「あー!五月ちゃん、ナギ君。お迎えありがと~」

 

 

一花はバカでかい黒の帽子を被り、サングラスを装着。

ワイシャツの上から高そうなジャケットを袖を通さずに羽織っていた。

 

ほらこれだよ。I am タダモノではないという雰囲気があふれている。

そんなにアピールしたいのキミ。本人にそんな気はないと思うが。

そんな恰好しなくたってお前は目立つんだぞ。

 

「ゆ、有名人なんだから!こっそりしてよ!」

 

五月もたまらずこう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旅行って・・・一応お仕事だったんだよ?」

「わかってるって。どう?手応えあった?」

 

運転しながら、五月と一花の会話に耳を傾ける。

 

「うーん。まだイントネーションだけが不安かな。」

「一花。・・・・intonation。」

「あちゃー。厳しいなあ。」

「一応、先生だからね。・・・発音、合ってますよね?凪先生。」

「正解だよ。五月先生に、はなまる。」

 

一花の英語は微妙。それじゃハリウッドスターになれないぞ。

 

「ナギ君、英語の教師なんだから通訳でついてきてくれればよかったのに。

大変だったんだよ?」

「俺の仕事はどうなるんだよ・・・・」

「ひと一人雇えるくらいの稼ぎはあるもん。付き人として雇ってあげる。」

 

「そら知ってるけど。お前のヒモはちょっと勘弁してほしい。

そんな恰好で降りてきて・・・自分は大スターでーすなんて言っているようなもんだ。」

「えー?こんな格好向こうじゃ普通だよ?」

 

「アメリカじゃそうだろう。ここはジャパンですよジャパン。即バレ。

お前と一緒にいたらそのあたりの気苦労が耐えなさそうだ。」

「もう・・・相変わらず淡泊~。」

 

「修学旅行の時のような町娘のようになってくれ。」

「ふふふ。懐かしいですね。ナギくんと一緒にパフェを食べました。」

「でかかったよねぇアレ。」

「そうでしたっけ?」

「えぇ・・・・・」

 

 

五月は特に覚えていないらしい。

あのアイス・・・・ノーマルサイズだったかぁ。

 

 

一花、二乃、三玖とは長い付き合いなので、

喋り方もいつからか風太郎に対する時と一緒になってしまった。

四葉くんは・・・うん。人妻になるし。四葉くんだし。そのまま。

 

五月だけは、今でも変わらない優しい話し方をしている。向こうが敬語だからな。

ちょっとあべこべに見えなくもないが、これで良いと思う。

 

 

重要なのは、周りではなく、俺達がどう思うかだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

車をその辺に止めて、カフェに向かう。

なかの という看板。上杉家の1階にある店舗である。

店舗の隣に階段があり、そこを昇ったところが上杉家だ。

 

「いらっしゃー・・・ってあんたたちか。」

「一花、久しぶり。」

 

「うんうん。二人とも元気そうでよかった。

お店も大繁盛のようで!」

「流石アメリカかぶれはジョークがお上手ね。」

「食べてくでしょ?今、用意するね。」

 

カフェには店長二人である二乃と三玖がいた。

なお他に客はいない。朝早いからな。

今日は結婚式だというのに営業していたのは、驚きだ。

 

四葉くんは来ていないな。主役は遅れてという事か。

 

 

「ほら、ナギ。どうせこれでしょ。」

「ああ、悪いな二乃。」

「フレンチトーストは食べる・・・?」

「いや。大丈夫だ三玖。五月の方を頼む。」

 

 

アイスコーヒーを貰う。

何も言わずとも砂糖とミルクを入れてくれるのが嬉しい。

常連という事もあり、完璧に覚えられてしまった。

贔屓目ナシでも良い店だと思うのだが。

 

 

「一花、どうぞ。」

「本場の気取ったカフェに行ってる人の口には合うかしら?」

「あれ?わたしがそういうとこに行ったこと二乃に教えたっけ?」

 

「二乃、いつも一花のインスタをウオッチしてるから・・・・」

「ちょっと三玖!言うんじゃないわよ!」

 

姉御のツンデレ炸裂。懐かしいな。5年前に戻ったかのようだ。

 

 

「三玖。この間はありがと!

またわたしが体調崩しちゃった時はよろしくね?」

「あれも・・・・もう、遠慮しとく・・・」

「あれか。びっくりしたよ。当時は三度見した。

場面が変わったらいきなりドラマの出演者が変わったからな。」

 

「あはは・・・ナギ君、他の人に喋っちゃダメだよー?」

「さて、どうしよっかなー。」

「織田社長・・・強引だから。」

 

 

一花の出演するドラマを見ていたんだが、放映途中の3分間だけ一花が三玖になっていた。

五月と一緒に笑ったものだ。どういうやり取りがあったかは予想がつく。あの社長の事だからな。

さて、物足りない。もう一人が来ない。いったい何をしているんだ。

 

 

「皆、今日の主役の登場だよ」

 

「どーも・・・皆さんお集まりで。あ。有坂さんも。」

「ああ。久しぶりだね。」

 

新婦が登場。四葉くんだが・・・・

どうして運動着で汗だくなんだ。この後何をするかわかっているんだろうな?

ごめんなさーい!日付を1日間違えてましたー! とか言い出しかねない。

 

 

「いよいよ当日だね。四葉」

「なんで汗だくなのよ・・・・」

「じっとしてられなくって。うちから自転車で走ってきたの。」

 

四葉くんは相変わらず四葉くんだなあ。

キミらしいが。

 

「一花」

「大丈夫、持ってきたよ。」

「四葉、これが私達からの結婚祝い。」

「お母さんの、形見のピアス・・・・」

 

ピアス。・・・母親はそんなものを残していたのか。

なるほど、二乃があの時、花嫁衣裳を着る時までに と言っていたが。これか。

 

「四葉、覚悟できてるわよね。」

「うん。お願いします。」

 

「じゃあ皆、行くわよ。・・・・せーの」

「「「「四葉、結婚おめでとう!」」」」

 

「いったぁ!!!」

 

 

「・・・おめでとう、四葉くん。風太郎もな。」

 

カフェの隅で聞こえないように、そう呟いた。

今は、姉妹水入らずだ。邪魔してはいけない。

 

この後が、楽しみだな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。