五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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喫茶店なかの 店内、風太郎の結婚式前。

 

 

「もう片方行くわよ!一花、押さえてなさい!」

「はーい☆」

「えぇー!?も、もうちょっと心の準備を!」

「早くしてね・・・・私たちも会場に行かなきゃ。あの準備があるんだから。」

 

 

右耳の穴にピアス穴をあけられた四葉くんは、絶賛左も開けられようとしていた。

いたそう。俺は絶対やらない。

というか穴を開けた直後にピアスなんかしていいのかな。

 

「そうそう。わたしの担当メイクさん来てくれるって!」

「ほ、本当にやるの!?」

「何を怖じ気づいてんのよ。あんただって乗り気だったじゃない。」

「だね。上杉くんには確かめておかないと。」

「風太郎になんかすんの?」

 

何の話だろうか。何かを風太郎にするらしいが。サプライズか。良いね。

愛されてますわぁ。

 

「ナギ・・・そうね。アンタにも受けてもらうわ。」

「凪くんなら問題ないよ?この前、テレビで三玖を見抜いたもん。」

「そうだけど、五月ちゃんも不安でしょ?」

 

「いえ、全く。凪くんならわかるに決まっています。」

「だったら・・・なおさらやらないと。」

「・・・・嫌な予感するなそれ。もう大体わかったが。」

「有坂さんは相変わらず察しが良いですねー。けど、前回のようにはいきませんよー!」

 

 

愛されてると思ったらそうではなかった。愛しているかを試す気らしい。

・・・・・・この人達アレをやる気だ。

 

いいさ。受けて立つ。声さえ聴けば簡単に判別は可能だ。

あまり俺を舐めるなよ。

 

「では凪くん。私達は別で行きます。先に会場に行っていてください。」

「ああ。ではまた、会場で。」

 

姉妹は姉妹で集まって会場に向かうとのことだ。こちらは先行して向かおう。

 

まだ五月と俺は結婚なんてしてないからな。

席は別。四葉くんの親族席と風太郎の友人席の違い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結婚式会場についた。

教会に似た大きなホテルだ。恐らくは冠婚葬祭の婚・・・結婚式に特化しているんだろうな。

いよいよか。実感がわいてきた。

 

 

「よお。ナギ。」

「やあ、前田くん。久しぶりだ。」

「あ。ナギくん。この前はありがとう。」

「松井さん・・・・・でいいかい?呼び名は。大変そうだね。でも、おめでとう。」

「大丈夫。ありがとね?」

 

受付をすませてロビーへ入場。

前田くんと松井さんのペアが既に会場に来ていた。

風太郎の友人席の二人だ。松井さんは、ご存じの通り前田くんと既に結婚したから。

ちなみに松井さんは身重。・・・お腹に子供がいる。

 

 

「ナギよぉ。どうして友人代表のスピーチが俺なんだ?

普通お前だろコラァ。」

「それ、私も思った。なんで?」

「・・・・披露宴でわかるよ。俺には別の大役があってね。

新郎直々の依頼だ。またギタリストになってくれとのことだ。」

 

「な。マジかよ。アレ見れんのか。ならしょーがねえな。

・・・てことは、あいつらもいんのか?」

「え?何の話?」

「そう。声を掛けたら簡単に来てくれた。忙しいと思ったんだが。

案外ヒマらしい。」

「あのバンドを好き勝手呼べるのはおめーだけだろ・・・・」

「あの曲の作詞に俺の名前を入れてくれて、今は感謝しているよ。

お陰でネット上で俺は謎の人だ。」

 

あの曲を売り出した時、作詞の欄にばっちり俺の名前を入れていたのである。

川村さんは意外とその辺しっかりしていた。

 

売上の一部を貰えると連絡を受けたんだが、

税金などの手続きがありそうだったので要らないと言っておいた。

 

「ナギくん、有名人に知り合いでもいたの?凄いんだね!」

「松井さんも、よく知っていると思うよ。同級生だからね。」

「えー?高校の時にそんな人いたっけ?」

「忘れてても仕方ないさ。俺も彼らも、脇役だったから。」

 

 

 

 

 

 

 

「来たな。凪。」

「相棒。俺は嬉しいぜ。こんな日が来るとは。」

「お前は俺のおふくろか・・・・」

「昔とおんなじこと言ってるぞ。変わらんなぁ。」

 

会場で受付を済ませ、新郎と交流する。

 

「あいつら、来ていたぞ。きっと皆驚くだろうな。」

「ははは。俺の人望に感謝したまえ。」

「・・・・そうだな。」

「お?だいぶ素直になったじゃないか。前言撤回しよう。やはり恋というのは凄いね。人を変える。」

「お前も、変わったからな。・・・・あいつに会ってから、全て変わった。」

 

小学校6年。

修学旅行で四葉くんと出会い、風太郎の運命が変わった。

 

5年前。

食堂で風太郎が五月と喋ったあの日をきっかけに、俺の運命も変わった。

 

それをきっかけに、風太郎は捨てたはずの他人との繋がりに目覚め、

俺も封印した過去から目覚めた。

全てが終わりを告げ、全てが新しくなった日。

 

 

「さて。良いとこみせてくれよ。楽しみにしてるぜ新郎さん。」

「何を。こっちだって楽しみにしてる。ギタリストさん。」

 

ギター弾くのは俺じゃないっつーの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、風太郎と四葉くんの挙式が行われた。

 

 

挙式は・・・あっという間に終わった。

 

 

随分あっさりしていたな。披露宴に時間を割いているので良いんだが。

風太郎の奴め。ちゃんときっちり決めてくれよ。

最初の入場で手と足が同じ動きだったぞ。右足を出して右手を出してた。

あと誓いのキスの時手がめっちゃ震えてた。

こっちは笑わないように必死だった。

 

 

ただ・・・気になったのは新婦側の親族がいなかったことだ。

中野父が出席しておらず、姉妹すら居なかった。何か企んでいるようだが・・・・

挙式に出ないってのは、どうなんだよ。

 

「有坂様はいらっしゃいますか。」

「はい。俺ですが。」

「新婦様が控室でお呼びです。」

「新婦が?・・・・わかりました。」

 

新郎ではなく、新婦からの呼び出しとは。予想外だな。

控室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・相変わらずのようで安心した!だが・・・俺を舐めんな!」

 

新婦の控室から風太郎の声が聞こえてきた。

・・・・扉が開いたままだからな。盗聴させてもらおう。

 

 

「お前が一花だ。」

「・・・うん!正解だよ?フータロー君。」

 

この会話。やはりやってるな。

 

「良いか、この際だから言っておくぞ。お前はクールビューティーなんかじゃねぇ。

自堕落、鈍間、惰眠をむさぼる怠惰だ!」

「そ、そこまで言わなくても・・・・」

 

大女優も上杉大先生の前では形無しである。

 

「・・・それでも、強くあろうとするその姿が、俺には眩しかった。

大した長女だよ。お前は。」

「・・・・フータロー君もね。お互い、長男長女だから。」

「何を言う。らいははお前たちほど手はかからん!

 

・・・・次はお前だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「二乃!」

「・・・そうよ!正解!はいはい次どうぞ!」

 

投げやりだなぁ。まだ、渦巻いているんだ。

風太郎への想いが。

 

「・・・お前の強さは、弱さの裏返しだ。お前の持つ厳しさも、愛情があってこそなんだ。

あの時の俺はそれを理解しきれてなかったんだ。・・・・すまん。」

「いいわよ。・・・・・・私は、後悔、して・・・ないから。」

 

 

 

 

 

「・・・三玖、だな。」

「うん・・・」

 

「フータロー。・・・たまに不安になるの。

私・・・上手くやれてるかな。」

「・・・自分を信じろ。言っただろ。

お前は、昔から出来る奴だ。俺が答える必要もない。わかりきったことだ。

あの日の出祭。・・・お前の仲立がなければ、

俺達が最優秀店舗になることはなかったんだ。胸を張れ。」

 

「・・・・そうだね。そう言ってくれると思ってた。ありがとう、フータロー!」

 

そうだったな。日の出祭はウチのクラスのパンケーキの屋台が最優秀店舗となった。

3日目は大盛況。女子組だけでは手が回らなかっただろう。

どんな状況だったか、どんな手段を取ったのかは知らないが、

三玖が男子組と女子組を仲直りさせてくれたと。皆そう言っていた。

 

 

 

 

 

 

「残るはお前だ、五月。」

「えっ・・・・私が四葉だけど・・・・」

 

・・・・おい。相棒。お前まさかやっちまったのか。

部屋の中がわからない。とっても見たい。多分風太郎は冷や汗ダッラダラだと思う。

 

 

 

「・・・なーんて!その通り!五月でしたー!

どう?うまくなったでしょ?」

「この・・・・焦らせやがって・・・・」

 

良かった。ちゃんと俺の彼女だった。

悪いな風太郎。俺と付き合ってからちょっといたずら好きになっちまったんだ。

俺の性格が少しだけ移ってしまったんだな。

 

まあでも、良いことなんだぜ。五月は中坊の相手をしなくちゃいけないからな。

堅物では色々支障がでる。相手は丁度、反抗期の年齢だからな。

柔を持って剛を制すという事さ。

 

 

「あのな。お前にあってからだぞ!俺とあいつの人生が狂い始めたのは!

諸悪の根源!妖怪カレー食い女!」

「わ、私だって!

あなたに会うまでこんなにデリカシーのない人がいるなんて想像もつきませんでした!

あたまでっかち!天然キス魔!」

「何がキス魔だ!まだ忘れてねぇぞ!観覧車の中であいつにキスを求めてたお前をなァ!!

その言葉そっくりそのまま返してやる!」

「む~~!あ、あれは凪くんがぁ!・・・・・うう。」

 

口調が元の敬語に戻ってるし。

やはり伝説のマスターノンデリカシーである風太郎を前にすると5年前に戻ってしまうらしい。

 

そして五月は俺が先にやったからその仕返しって言いたかったんだね。

ありがとう。秘密にしてくれて。そういうとこ好きだよ。

俺からした時は観覧車の頂上で彼らには見えてなかったからね。

 

 

「で。余ったお前が四葉な。」

「あっさり!」

 

全問正解です。流石上杉大先生。

 

 

「・・・・お前ら、五つ子に出会えたこと。

これは、数少ない俺の自慢だ。」

 

 

さて、次は俺かな。もういいだろう・・・声を掛ける。

 

 

 

 

 

「風太郎。クイズをしていたのかい。

・・・・・・うわ。みんなウェディングドレス来てるじゃないか・・・・・・」

「凪。来たか。お前もこいつらの被害者だからな。」

「来ましたねー!有坂さんも、やってもらいますよ!」

「はいはい。一度部屋を出るから。順番を変えてくれよ。」

「ふふ。自信満々だね?ナギ君?でも、それはどうかな?」

 

 

部屋を出て、中から鍵をかけられた。

まあ、わかるだろ。多分。

 

ちなみに五つ子は全員髪を短くまとめた、純白の花嫁の衣装だった。髪の色も同じ。

・・・・結婚前に着るなよ。結婚できなくなるぞ。

 

 

だが、丁度いいきっかけだったかもしれない。

 

 

 

良いものを見れたね。今ので、俺の中の何かが動いたよ。

心線に触れた と言うのかな。こういう時は。

 

 

 

 

 

 

 

 

「来い。凪。お前の番だぞ。」

「承知したよ。」

「これが、五つ子ゲーム、ファイナルだ。」

 

風太郎に呼ばれ、新婦の控室の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

旅館の時に行った、全員が五月の格好をして、それが誰かを当てる五つ子ゲーム。

その最終戦。

 

姿、形がそっくりな5人の花嫁が、俺の前にいる。

・・・・さて。口を開いてほしいものだが。

 

「「「「「・・・・・」」」」」

「・・・どうして誰も何にも言わないんだい?」

「・・・フフフ・・・ハハハハハ!!

凪。四葉から聞いているぞ!お前、集中することで声による判別が出来るらしいな!

・・・今回、その手は封じさせてもらう!」

「なんと。」

 

頼みの綱は無しか。

そうすると自信が少しなくなるな。

 

まあ、それでも少しだ。間違えようもない。

 

「その程度かい?風太郎くん。

がっかりだなぁ。俺はその程度で怯むような男ではないんだよ。」

「・・・そうか。では、やって見せろ。証明するんだな。」

 

「まあ、待ちたまえ。・・・・やられてばっかりでは性に合わない。

俺からも一つ、キミたちにびっくり箱を提供しよう。」

「なに?びっくり箱だと?・・・また何かいたずらを考えているな。不真面目な奴め。」

「ははは。流石相棒。俺の事をよく知ってるじゃないか。」

 

形勢逆転だな。

 

まあ、こっちは遊びではなくて至って真剣な話なんだが。

 

 

 

 

 

 

 

至って真剣だからこそ、

 

不真面目で不敵な笑みを浮かべ、

 

こっちの余裕を見せつけてやるのさ。

 

 

 

 

 

 

 

多くの人の予想を超え、

 

観衆からの歓声を浴びる。

 

それが俺のやり方であり、

 

それが俺の至上の喜びだ。

 

 

 

そう。今の俺は喜劇の魔術師。

 

 

 

 

では、お前たちに驚嘆してもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く。まさかこんなことになるとはね。」

 

 

さあ。ここは舞台。主役は、俺と君だよ。

観客のつもりだったんだろうけど、俺は迷わず君を指名する。ステージに上がってもらうよ。

 

一人じゃ舞台は回せないんだ。だって、一世一代のマジックショーだからね。

 

 

「最近ずっとね。考えていたんだよ。誰かさんが結婚式なんてやるせいで。

俺としては、もう少し時間をおいてからでもいいと思ったんだが。」

 

 

頭を搔きながら、罰が悪そうに軽く下を向き。

静かにゆっくりと、仕方なさそうに目を瞑り。

やれやれと、どこかため息をつきながら。

とても、気怠そうに。

 

 

「まあ、5人の事はさっき風太郎がほとんど言ってくれたからね。

俺は答え合わせだけしようか。時間をかけたくもないし。」

「何?・・・さっき、聞いていたのか。」

 

 

スーツの懐に忍ばせていた、小箱を取り出す。

上品。気品のある箱。・・・まあ、見てくれだけだ。中のブツは大したものじゃない。

俺は今でも・・・夢は見ない。常日頃から、最悪のケースを想定するからね。

 

 

けど、これはもう夢なんてレベルの距離じゃない。

 

 

愛する人もいる。物の用意も出来てる。この上ない舞台も、衣装も整った。

後に必要なのは、俺の覚悟や思い切りだけ。もう現実的に考えていい間合い。

さあ、勝負をしよう。

 

 

「迷っていたんだが・・・・その姿を見て、決断してしまった。

遊びでウェディングドレスなんて着るもんじゃないね。」

 

「お、おい。凪。まさかそれは・・・・」

「見たらわかるだろう?キミも良く知ってるじゃないか。」

 

 

小箱を開け、中の物を取り出す。

・・・・男性から女性に送る最大のプレゼントと言われている。

 

 

「・・・婚約指輪だよ。」

「「「「「「ええええぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」」

「・・・・おい。声を上げちゃダメじゃないか。仕切り直しはしないからな。

まあ、今となっては声なんてなくともわかる。俺にも、愛があるからね。」

 

 

 

 

 

 

左端の花嫁を指さす。

 

「お前は、二乃だ。」

「・・・そうよ。ま、まさか。こんなところで。」

 

 

 

右端の花嫁を指さす。

 

「キミだね。四葉くん。この度はおめでとう。」

「は、はい・・・・・あ、有坂さんも・・・」

 

 

 

左から2番目の花嫁を指さす。

 

「一花。もう俺にはわかる。」

「うん。・・・そっか。五月ちゃんにもこの日が来たんだね。」

 

 

 

右から2番目の花嫁を指さす。

 

「三玖。今となってはお前も、たくましくなった。」

「ナギには・・・かなわないよ。こんな事になるなんて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで・・・・良かったのかな。これで。

・・・答え合わせをしているようなものだけど・・・・」

「う・・・・ぐす・・・・っ・・・・」

 

真ん中の花嫁は・・・・泣いていた。

 

 

・・・・あーあ。そのウェディングドレス借りものでしょ?

弁償とか大丈夫かな。まあいいか。これから財布は完全に一緒になるんだし。

二人なら心配ないさ。

 

 

でも。その様子なら断られる心配はなさそうだ。良かったよ。

 

もう少しちゃんとしたものを買えば良かったな。

まあ、結婚指輪は一緒に買いに行こう。婚約指輪は安物で我慢してくれ。

 

 

「・・・・五月。」

「っ・・・・は・・い・・・」

「ふふふ。ヒドイ顔だ。ごめんね。泣かせてしまって。

落ち着いてからでいいよ。」

 

スーツから白のハンカチを取り出し、愛する花嫁の涙を拭く。

小物というのは、こういう時に役に立つ。

 

「・・・ナギくん。もう、大丈夫です。」

「よし。良い子だ。では、改めて。」

 

 

五月の左手を取る。

 

 

「キミを愛しているよ。五月・・・結婚、しよう。」

「私も凪くんを愛しています。・・・・喜んで!」

 

 

薬指に、リングを通した。サイズは大丈夫。

以前クリスマスのリングで確認したからな。

 

通した瞬間。他の5人から歓声と祝福の声が上がった。

悪いな。だが今は挙式と披露宴の間の休憩時間。そしてここは新婦の控室。

 

この時間だけ、俺達を舞台の主役にさせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、友人代表、前田様によるスピーチとなります。

会場の皆様、ご清聴の方をよろしくお願いいたします。」

 

披露宴が始まり、ある程度の時間が経過。

新郎友人代表の前田くんのスピーチの時間となった。

 

「・・・・」

 

あらー。カッチコッチだよこれ。さっきの新郎かよ。

大丈夫かな。流石に変わってやれないぞ。

何か茶々を入れてやるか。

 

 

「う、上杉君。中野さん。結婚・・・」

「待て、前田。変な話し方をするなよ。調子が狂う。」

「は、ハァ!?」

 

風太郎から前田くんに対しツッコミが入る。

新郎の方が今は心に余裕があるらしい。

 

「いつも通り話せよ。高校の時と同じで良い。」

「・・・チッ!わーったよ!おめーがそう言うならそうしてやる!

ただし、どうなっても知らねーからな!ったく。用意した原稿が全部パーじゃねぇか!」

 

会場から笑いが起こった。

やるなあ風太郎。そうそう。前田くんはそれでいいんだよ。

 

 

「よく聞けよコラァ、上杉。おめーはあの林間学校の時からーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチパチパチと大きな拍手に称えられ、前田くんのスピーチは終わった。

言葉遣いこそ荒かったが、祝福している気持ちは十分に伝わる。

あれなら、会場の誰もが納得するだろう。後で文句を言われるようなことにはならない。

 

さて、俺も準備に移る。久しぶりにやるか。

 

 

「やあ。悪かったねみんな。」

 

「ナギ。スタンバイが出来ているぞ。」

「まさかまた一緒にやれるなんてなー!」

「ナギっちも変わんないねー。」

「ナギくん、こないだの新曲聞いてくれた?」

「聞いたよ川村さん。・・・あれ、キャンプファイヤーの時の話だろ?」

 

余興準備のためにバンドメンバーと最終的な打ち合わせをする。

 

 

彼ら、マイナーロールは一度解散したんだが・・・・・

あのライブハウス、ライブ風景を動画サイトでリアルタイム放送していた。

そしてあの時、演奏した新曲がネット上で評判。

口コミで火が付き、音楽業界の関係者から声がかかった。

そして、今はバンドを仕事として続けている。

 

 

爆発的に有名という訳ではないが、チャート上位を取る曲をコンスタントに出し、

息の長い活躍を続けている。本人たちも目立ちたがりという訳ではないため、

一般人からヘイトを向けられるようなことはしていない。安定勢力という立ち位置だった。

 

 

「あら。来たのねナギくん。」

「久しぶりだな。ナギ。」

「あれ?毛利さんと葛城君もいるの?」

「そうだよ。私が呼んだの。」

 

「リンから連絡を貰ってね。面白い事をすると聞いたから、飛んできたわ。」

「上杉の奴を祝福しに来たぜ。有坂。」

「それは・・・・踊るのかい?」

「ええ。タップダンスを披露しにきたわ。」

「また毛利さんに付き合わされたんだぜ?参っちまうよ。」

 

毛利さんと葛城くんは燕尾服を着ていた。

なるほど、バーテンダーっぽい。なら、ついでにガイダンスをやってもらおうかな。

 

 

 

「毛利さん、曲の」

「2拍子のガイダンスでしょう?私達2人に任せて頂戴。

ステージ脇にテーブルとグラスを用意しているわ。」

「・・・・さっすが。相変わらず俺が言わなくてもわかっちゃうんだねぇ。」

「光栄ね。このステージ、動画を取らせてもらうわ。彼女たちの教育材料としてね。」

「えぇ・・・・・絶対に外部に出さないでね・・・・」

「勿論よ。これで一皮むけてくれればいいのだけれど。」

 

 

毛利さんは大学を中退して、ある芸能プロダクションでアイドルのプロデューサーをやっていた。

向いている仕事だと思う。プロデュースしているのは普通に人気のアイドルで、

俺も名前を知っているくらいには活躍してるんだが、

毛利さん的にはまだ納得していないらしい。

 

 

「続きまして、新郎友人の有坂様から披露宴の余興の催しがございます。

皆様、盛大な拍手をお願いいたします。」

 

「さあ、行こうか。俺たちの番だよ。」

「ナギ。これを使うか?」

 

片倉くんから、血濡れの白鬼の仮面を手渡される。

・・・・・キミが持っていたのか。

 

「無くしたと思っていたんだが、回収していたのかい?」

「当たり前だ。これがなければ今の私達はいないからな。」

「ナギっちが忘れても、うちらは忘れないからねー?」

「・・・まあ、大丈夫だよ。今日は。知らない人もいるだろうから。やめておこう。

それ、持っていてもらっていいよ。」

 

彼らがもっと有名になれば、中々高値がつくんじゃないか、あれ。

チャリティーオークションなんかに足しにしてくれれば良いや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場のちょっとしたステージに楽器がセットされている。

ギターは一人居ればいいので、川村さんはハーモニカ担当。屋代さんはピアノ担当だ。

これを見れば、今から何が始まるかはわかるだろう。

まず、俺だけがステージに立ち、マイクを握る。

 

 

「呼ばれて出てきた有坂でーす。

風太郎、四葉くん。この度はおめでとうございます。」

 

二人が立ってお辞儀をした。別に座ってていいのに。

 

 

「さて、俺の後ろにあるこの楽器を見てもらえれば、

今から何をするかはご存じでしょう。1曲披露させていただきます。」

 

「・・・・・こう見えて、俺は結構すごい奴でして。

風太郎と同じ高校にいた頃、いくつか伝説を作ってしまいました。

・・・・思い出したくないものもありますけどね?」

 

会場から軽い笑いを頂き、その伝説を披露する。

 

「その伝説の一つがね。こちらの方々なんです。

・・・どうぞ。Minor rollの皆さんが、新郎新婦を祝福するためにいらっしゃってくれました。」

 

バンドメンバーを入場させる。

会場から驚きの声が上がる。そらそうだ。結構な有名人だもんな。

一花にゃ負けるけど。

 

 

「3年の学園祭の日に、この5人でライブをやりましてね。

当時は無名だったんですが、大変な騒ぎになりました。

その時のライブで演奏した1曲を、今から披露します。

・・・新郎に頼まれちゃいましたからね。」

 

 

「ただ、この曲。・・・ひとりぼっちで歌うのはつまらなくてね。

お集まり頂いた皆様にも歌って頂きたいんですが・・・・

あまりうるさいと外に迷惑でしょうし。とりあえず良いでしょう。

 

ただ、サビが4回もありまして。代わりと言っては何ですが、その時のリズムに合わせて、

その持っているグラスを動かして頂きたい。・・・こんな風にね。」

 

大げさな2拍子を披露する。

ガイダンス役として、サビだけはダンサーの2人にもグラスを持ってもらい、

ダンスを一時中断するよう指示してある。抜かりなく。

 

 

「・・・失礼、長くなりましたね。では、始めましょう。

 

・・・・・・・・・・ここは、ある外国の場末のバー。

・・・・・私は売れないギタリスト、皆様はそのバーを訪れた客・・・・・・・・・・」

 

 

 

♬~~~~~

 

 

 

披露宴であの1曲を歌った。

曲の途中からダンサーによるタップダンスを入れたのが良かった。

やはり、ちょっとした遊び心のあるサプライズが、効果的なんだよ。

満足した盛り上がりになった。良い余興になったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後・・・新婦、四葉くんによるスピーチが行われた。

 

「私は、皆と五つ子の姉妹として、生まれることが出来て幸せでした。」

 

「他の家とはちょっと違って、人から見たら奇妙なのかもしれません。」

 

「でも、私は。そんな家族が大好きです!」

 

 

二人は、あらゆる人から祝福を受けながら、披露宴を終えた。

 

 

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