「あー・・・・疲れた。」
「お疲れ様。スーツ返してくるね。」
「サンキュー。らいは」
「しっかり旦那さんしなきゃダメだよ?お兄ちゃん。」
披露宴が無事に終わり、風太郎はお疲れモードだった。
ロビーのソファにぐったりと体を預けている。
心労もあったらしい。披露宴中は挙式中と違いそんなに緊張したように見えなかったが。
「大きな仕事が終わったね。新郎さんや。楽々していたように見えたんだけど。
武田くんにツッコミもいれていたし。」
「・・・披露宴前にあんな物を見せられたからな。お陰で頭が一周回って軽くなった。」
「ははは。披露宴中にやらなかっただけ感謝してくれよ。」
「ナギさん?何のお話?」
「ふふふ。ちょっとね。その内わかるよ。」
らいはちゃんは興味津々。
俺が挙式やるときは友人枠でらいはちゃんも呼ぼう。ご祝儀いらんから。
「あ、有坂さん。お疲れ様です!」
「お疲れー。キミの方が疲れてるだろ四葉くん。」
「そうですねー。私もちょっとだけ疲れました。有坂さんと五月があんな・・・・だもん。
披露宴中はそのことで頭いっぱいで、逆に緊張しなかったです。」
「そうかい?スピーチは立派だったよ。それを感じさせなかった。」
四葉くんもロビーに来た。
新婦もあのびっくり箱で頭をシェイクされてしまったようだ。ごめんね。
仕返しだよ仕返し。サプライズゲームに招待されたんだ。
サプライズボックスでお返しだ。因果応報。
披露宴中にやらなかっただけ感謝してくれ。実際やろうとは全く思わないけど。
いたずらは好きだが、空気は読めるつもりだ。
「新婦様、控室にお忘れ物がございました。」
「わっ。ありがとうございます!」
式場のスタッフが忘れ物を持ってきた。
・・・・緑の無地のリボン。四葉くんといえばコレだ。
新郎さんは照れ隠しで悪目立ちリボンと言っているがね。
「・・・・ごめんなさい。やっぱりもういらないので、捨てておいてください。」
「承りました。」
「いいのか、四葉。トレードマークだろ。」
「いいんだよ。今はもう、私に気づいてくれる人がいるから。
それに、風太郎が買ってくれたリボンが家にあるからね!」
「あれをまだ取ってあるのか?安物だぞ・・・・今度違う奴を買いに・・・・
いや・・・・もう必要ないんだったな。」
・・・姉妹の中で見分けがつけられるように、リボンを身につけていた。
・・・五月の星の髪飾り。
・・・一花の右耳のピアス。
・・・二乃の二つの黒いリボン。
・・・三玖の青いヘッドフォン。
まあでも、風太郎にはそんなもんもう必要ないよな。
俺もだけど。
「ごくろーさま。良い式だったね。」
「何してんだお前ら・・・・・」
風太郎と四葉くんと俺の3人で待合室に向かったら、
他の4姉妹が固まって、何か話をしていた。
ソファ2つに4人で座り込んでテーブルに何かを広げている。
「何って決まってるわ。式が終わればやることは一つ。新婚旅行よ!」
「は?」
「・・・・待て!ついてくるつもりかお前ら!」
「当然・・・」
「その行き先に悩んでるんだよ。」
テーブルの上に世界地図を広げていた。
・・・そんな暇があるのか。お前ら。
「ナギも来るでしょ・・・?」
「いやまあ行くけど。」
「来るのかよ!」
「だってねぇ。うちの嫁さんいるし。
それに、5人セットじゃないと落ち着かないだろ?」
「・・・・んなめちゃくちゃな・・・・
・・・でもまあ、それもそうだな。だがお前らの分の金は出さん。」
「はいはい。」
なんやかんやで風太郎も同じ気持ち。
そうそう。この5人は一緒にいて欲しい。セット装備みたいなもんだ。
時々、俺は五月を独り占めさせてもらうけどね。
「じゃあ、皆で行きたいところ、指差そう!」
「四葉がそう言ってくれるなら。」
「「「「「せーのっ!」」」」」
馬鹿なことやってんじゃないよ。
お前らの意見が合う訳ないだろ?
さて、折衷案を探しておくか。大丈夫。こういうことは慣れてる。
「凪。」
「なんだい。」
「五つ子って・・・めんどくせーよな。」
「そうだねぇ。いつまでも俺たちの手を焼かせる。」
「・・・・全くだ。いつになったら解放されるんだろうな。」
「きっと一生、このままだ。」
「構わん。・・・・この地獄も、そこそこ楽しいからな。」
「言うねぇ、相棒。」
風太郎と一緒に、ため息をついた。
当然、俺も彼も……満更じゃあない。
「結局、場所は決まったかい?」
「いえ、やっぱり決まらなくて・・・・」
「だよね。知っているよ。」
五月を助手席に乗せ、車を走らせている。
みんなとは別れて、二人の時間だ。
結婚式で俺達もお疲れであるが、行きたい場所があった。
「凪くん。こっちの道から帰るんですか?」
「ああ。ごめんね。ちょっと寄りたい場所があるんだ。付き合ってくれるかい。」
「はい。もちろん構いません。」
「ありがとう。・・・・あいつのプロポーズは5年前だったからね。
俺も、5年前を思い出してしまった。」
「ここは・・・・」
「覚えているかい。」
「はい。凪くんがあの日、私を連れてきてくれた・・・・」
「そう。あの日の公園だ。」
3人から手紙を受け取って、答えを出したあの日。
30分だけ教師をして、この公園に連れてきた。
あの日と同じだ。満月と雲一つない星空。
これもきっと運命。
「・・・・改めて、確認しておきたくてさ。さっきの話を。
俺は、五月がどういう反応をするか、しっかり予想を立てたんだ。
五月なら、教師の仕事に慣れて、落ち着いてきてからにしましょうって言うと思った。」
「結婚の話ですね。」
「そう。」
「嬉しいです。私の事を考えてくれていて。」
「そら、ね。愛する彼女だもん。当然さ。」
「確かに、そうですね。まだ先生になったばかりですから。
不安もたくさんあります。・・・凪くんは、生徒にちゃんと授業が出来てますか?」
「ああ。今のところはね。厄介な連中ばかりだ。
一筋縄では行かないけど、上手くやれていると思うよ。
少なくとも、学級崩壊なんてことにはなってない。」
「やっぱり。凄いですね。私も今のところはちゃんと出来ていますが、
高校生が相手だと、自信がないです。」
「心配いらないよ。五月は綺麗だから。
年頃の野郎どもは美人に嫌われないようにおとなしくしててくれるさ。」
「・・ふふ。ありがとうございます。」
いい加減慣れちゃったね。俺の誉め言葉にも。
最初は戸惑っていたり顔を赤くしてくれていたのだけれど。
「5年前に・・・上杉くんが四葉にプロポーズした時の事を覚えてますか?」
「ああ。もちろん。」
「あの時、私が横でなんて言ったか覚えていますか?」
「・・・・・・・いや、あれは聞こえなかった。ちょっと、と言ったのは覚えているよ。」
「ちょっと、うらやましい って言ったんです。」
「おや。そうだったのかい。」
その時から夢を見ていたのかい?
現実的な俺とは正反対だね。だが、それも良いんだろう。
まるで引かれあう磁石。NとS。
「・・・良いね。それ。自信がついたよ。
でも、俺は心配性だからね。改めて聞こう。
あの場で、本心を言うのは厳しかったかもしれないからね。」
あの時は、断りたくても断れない雰囲気だった。風太郎と姉妹たちがいたし。
それを考慮して、念のため今一度確認をする。
五月の両手を取り、互いの胸の前に持ってくる。
「五月が間違った道を歩んでしまうのなら、俺がその道を戻そう。」
「凪くんがまた、立ち直れなくなってしまったなら、また私が貴方を変えます。」
「俺には五月が必要だ。だから、一緒にいて欲しい。」
「私にも凪くんが必要です。一緒にいてくれないと、この先がとても不安です。」
「五月、愛しているよ。・・・俺と、結婚してくれるかい?」
「はい、勿論です。」
星空と満月の下、誓いのキスを交わした。
「・・・・忙しくなるね。これから。」
「はい。大変ですね。でも、楽しみです。」
「でも、まあとりあえず。あいつの新婚旅行が終わってからだね。」
「凪くん、頑張ってくださいね?きっと通訳を任せられちゃいます。」
「うわぁ・・・通訳かぁ・・・・・大変だなぁ・・・・」
「ふふふ。私も手伝いますから。」
「おねがいねぇ?」
五月の手を取り、車へと戻った。
きっとこれから、色々あるんだろう。
だがまあ・・・・きっと大丈夫だ。
俺は夢を見ないが・・・・楽観的になることは出来る。
辛い時は、二人で共に、隠れながら生きていこう。
厳しい時は、二人で共に、救いを求めるように生きていこう。
嬉しい時は、二人で共に、光を浴びて生きていこう。
おしまい。