五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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ある日の週末。

一花の長期ロケがちょっとした休みに入り、こちらに帰ってくるそうだ。

折角二人一緒の休日だ。流石に今日は俺も一花も勉強おやすみ。

 

 

三玖のメールを見たんだが、俺にはぴったりな仕事だと思う。

あまり稼げる仕事ではないらしいが。

まあいいか。一花が折れてしまった時の保険になれればいい。

一花の仕事とセットで相乗効果があるかもしれない。一花自身も助けられるかもしれない。

ここ最近の世の中は混沌としているからな。大事な仕事だと思う。

 

 

なんか近くに良さげな大学が無いので、東京には行かないとだ。

偏差値はそんなに高くなかったので、勉強はそれなりで大丈夫。通訳路線で英語の勉強だけ集中。

風太郎、悪いが俺も東京ついてくぞ。大学は違うけどな。

 

 

大学と並行して英会話教室にも行こう。

金・・・・どうしようかな。というか幾らかかるんだ?

将来の一花の為です って言えば間違いなく出してくれるし、

なんならこの理由を言わなくても出してくれると思うけど。

 

 

 

でも・・・でもさぁ。正面切って彼女に金をせびるのは・・・・・

それに途中で愛想つかされるかもしれないし・・・・・

 

 

 

 

 

 

ああもう。一旦考えるのをよそう。

しっかりしろ。ダメだ。

釣り合っていないと自覚しているから変な事を考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

今、俺は近くの駅についている。一花は新幹線で帰ってくるとのことだった。

ちなみに今やってる長期ロケは・・・・映画らしい。

一花はそういう路線で行くんだろうか。ドラマ、映画。

 

芸能人、タレント、ではなく、ちゃんとした女優。そうなるとイメージが特に大事だ。

 

 

 

あれから、一花の世間的評価を調査するために、

メディアやネットの記事をチェックしている。

とりあえず、一花に彼氏がいるという風潮、雰囲気は無かった。

 

 

 

 

つまり、今は俺が彼氏だとバレてはならない。絶対に。

間違いなくイメージダウンだ。

 

 

 

 

 

・・・・正直、気が気じゃない。

修学旅行や学園祭で普通に手を繋いだりしたものだが・・・

あの時は、学校の生徒だった。制服も着ていた。

仮に写真を取られたところで、そこまで問題にはならないかもしれない。

 

今回も生徒ではあるが、何のイベントもない完全なる休日に私服で二人きりでいる。

プールの時と違って風太郎たちもいない。

これを見つかってしまうと怪しいだろう。

相手が世間様だからな。まだ未成年の学生同士の恋愛だ。

手加減して、そっとしておいてほしいんだが・・・・

 

 

俺としては、悪いやつばかりじゃない。真っ当な人間は沢山いるはずだと、信じてはいるんだが。

自分の利益さえ得られれば、赤の他人がどうなろうと関係ない。

世の中には実際、そんな連中が多いからな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギ君!」

「やあ。おかえり。」

「・・・ただいま。」

 

彼女さん到着です。かわいい。

黒ぶちメガネつけてる。かわいい。

 

しかし、メガネだけで大丈夫かな。バレるんじゃないかね。

河川敷のあの時よりもかなり有名だからなあ。

 

「行きたいところはあるかい?」

「まず、ちょっと休憩したいかな。

新幹線の中で変な態勢で寝ちゃって、逆に疲れちゃった。」

「簡単に想像できるね。」

窓の手すりっぽいところに頭預けて ( ˘ω˘ ) って感じで寝てそう。

 

一花はお寝坊だからな。8時間でも睡眠が足りないらしい。

正直うらやましい。俺は日頃の不眠症のせいで良くても6時間しか寝れない。

まあでもバランス取れてるか。この前みたいにキミが寝てる間に部屋の片づけすりゃいい。

ハウスキーパーだな。良き主夫です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギ君はアイスコーヒーでしょ?」

「うん。席を取っておくよ。」

 

彼女さんに注文を依頼して、カフェの席を確保。注文、キミはフラペチーノだろ?知ってる。

まあ、まだ朝なんで大した客はいない。・・・隅だな。人目に付きにくい場所を。

そこまで気にしなくても問題ないとは思うが。

 

 

「お待たせ!」

「うん。ありがとう。・・・・ん?こっちに座るのかい?」

「良いでしょ?」

「良いけど・・・席を変わろうか。一花が奥で。」

 

4人掛けのテーブル席を占領していたんだが、

対面ではなく俺の隣に一花が座ってきた。

隣り合わせは構わないが、店内側から見えづらいように、一花を奥の方へ移動させる。

 

 

「はい!ミルクと砂糖入りね?」

「おや。覚えていてくれたかい。それは・・・見たことないな。新作?」

「うん。期間限定だって。」

 

 

ちゃんと俺がブラック飲まないことを覚えていてくれた。うれしい。

予想通り一花はフラペチーノだった。飲んだことないな。どんな味するんだろ。

今度飲んでみよう。でも高いんだよなぁ。

 

 

「ロケの調子はどう?」

「最近は絶好調!ナギ君のお陰だね?」

「・・・そりゃよかった。」

 

なんもしてないんだけどなぁ。

 

「でも・・・ちょっと疲れちゃって。」

「あ、そう?じゃあ今日は避けた方が」

「うーんとね、そうじゃなくて・・・・マッサージしてほしいな?」

「え?」

「さっき新幹線で寝てて・・・首が凝っちゃったの。」

「なるほど。」

 

変な意味を一瞬想像したが、そういう事らしい。

・・・・なるほど。指圧師って仕事もあるか。

オマケ程度に考えておこう。仕事でクタクタな一花の疲れを取れる。

 

「じゃあ向こう向いてね。」

「え・・・うん。」

 

? なんか腑に落ちない反応だったな。

首と背中じゃないの?

適当に指で押していく。

 

「・・・この辺かい?」

「あー。ごくらく~」

 

年取ったねお姉さん。

まあこんなことしてたら周りの連中は中野一花とは思わんわな。

コーヒーを飲みながら、しばらく首をほぐした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はここで遊ぼ?」

「おお。初めてきたかも。」

 

コーヒーで休憩をした後は、アミューズメント施設に来ていた。

首のマッサージで疲れはだいぶ取れたらしい。

ボウリングだったりゲームセンターであったり、体育館的広場もあり。バッティングセンターもあるのか。

ちょっとワクワクするな。一花は何をご所望だろうか。

 

「ナギくんってスポーツ何が得意なの?」

「いろいろできまっせ。」

「じゃあ・・・・バドミントンは?」

「ああ。良いよ。」

 

ラケットとシャトルを借りてコートの中へ。

 

・・・・ん。メガネ外すのか。まあ運動するからな。

大丈夫だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・意外と下手だなぁ。俺。」

「もうちょっと手首を使った方が良いよ?腕全体じゃなくて。」

「手首・・・了解だ。」

 

ネットを挟んでバドミントンに興じていた。が。

男ではあるものの、俺は一花に押され気味だった。

手首を使った方が良いらしい。ラケット競技はちょっと慣れない。

 

いつも必殺お助け四葉くんの運動神経ばかり注目してしまうが、一花もかなり良い。

・・・五月も良いな。林間学校の一花に変装していた時、スキーはかなり上手かった。

二乃も・・・きっとセンスはあるだろう。そつなくこなしそうだな。

 

なんで三玖だけあんなに運動が・・・・

いや、違うか。同じ五つ子だから、運動神経は良いはずだ。体力がないだけなんだな。

サッカーやったことあるって言ってたし。

 

 

 

 

ポンポンポンポンと真正面でのラリーを続けていく。

少しわかってきた。一花も手加減してくれている。

 

「やっぱ学生の休日はこうでないとねー。」

「そう・・・だね。」

 

ラリー中に一花が話しかけてきた。

かろうじて、今は周りに誰もいない。

 

「女優の先輩やスタッフさんと出かけることはたまにあるんだけど、

なんで大人っておでかけ=食事になるんだろうね?」

「飲み会の・・・影響もあるんじゃ・・・ない?」

「あー、そっかぁ。みんなお酒好きだもんね。そんなに美味しいのかなぁ。」

 

一花は楽々ラリーしているが俺は結構必死。

受験シーズンに入ってからバイトを辞めたせいか、体力が落ちているかもしれない。

 

「こんなことに付き合ってくれるの、姉妹の皆やナギ君フータロー君しかいないんだよね。

・・・なんか私、妙に大人びて見られてるみたいで。」

「・・・・まあ・・・仕方ないよ・・・・他の連中の・・・

気持ちはわかるから・・・・ねっ!」カコン

 

 

「あ、やったなー?じゃあお返し!」ビュン

「なー!!??」

 

少し強く打ち返したら奥の方へ高く上がってしまい、反撃のスマッシュが返ってきた。

ダメだ。敵わん。・・・もう少し体力付けとこう。

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ふー・・・・意外と体力無いんだなぁ。俺・・・・

中距離の選手だった俺は一体どこへ・・・・・」

「あはは。わたしも意外に思っちゃった。一緒にジョギング、する?」

「そうだね・・・受験勉強の気分転換に良いね。」

 

一花、ジョギングなんてしてたんだ。知らなかった。

もう少し詳しくならないとなぁ。

サングラスでも掛けて帽子被れば一花とはバレないだろ。

メガネで今のところは何とかなってるみたいだし。・・・不安だが。

 

 

「一花は・・・綺麗で、気品があるように見えるからね。見栄えの良い人は、

頭も良さそうに見えてしまうし、落ち着きがあるようにも見える。第一印象というのはバカにできない。」

「・・・あ、ありがと。ナギ君に綺麗って言われたの、初めてかも。」

「そうだっけ?」

 

俺そんなに他人を褒めてなかったかな。

幾らだって言ってあげるよ。だって綺麗だもん。

 

「・・・受験勉強は大丈夫そ?」

「ああ。行く大学は決めた。東京になってしまうけど。ごめんね。」

「大丈夫。そっちの仕事、多めに受けるようにしたらいいから。」

「いや、無理はしなくていいんだ。

一花の足を引っ張るわけにはいかない。俺が会いに行くから。」

「・・・・・・・・・・そお?」

 

俺を優先されるのは困る。こっちはオマケで良いんだ。

キミがやりたいようにやってくれないと。

 

「よし。落ち着いた。まだバドミントンを続けるかい?」

「別のところにいこっか?」

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・またかぁ。」

「あれ?ダメだった?」

「いや。良いんだけどさ。」

 

アミューズメント施設のカラオケボックスに連れてこられた。

またコンサートをご希望なんだろうか。

まあ良いか。ここならスキャンダルの心配はないし。

ちょっと恥ずかしいけどいいよ。動画だけ撮らないでください。

 

「ナギくんがこの間歌ってたのどれだっけ?」

「え?・・・・どれの事?結構あるよ?」

「えーっとね・・・・一番最初に歌ってた洋楽。デュエットしよ?」

 

一番最初・・・・ああ。

あの男女二人のペアで歌うやつか。

 

・・・ん?でもキミ英語出来ないよね?

 

 

「一花、歌えるの?あれ。」

「ううん。でも、ナギ君と一緒に歌いたいなーって。」

「あ、そう?嬉しい事言ってくれるね。」

 

ただ、今曲名をこっちに聞くくらいだからな。

多分まだちゃんと歌えないんだろう。

レッスンにお付き合いしますか。

 

「曲名はコレだよ。暇な時に原曲を聞いて、覚えるといい。

英語の勉強にもなるからね。発音がわからなければ教えるけど、

聞いた音をそのまま口にするのが一番だと思うよ。俺はそうしてる。」

「うん。わかった!」

 

そんなこんなでカラオケボックスでデュエットの練習をした。

ただこれ、完全な自己満足かな。

人前で一緒に歌う日は多分なさそうだ。楽しいから良いけどね。

 

 

 

 

 

「うーん。やっぱりナギ君みたいに歌えないなぁ。」

「別に俺を目指す必要はないんじゃないんですかね。」

 

練習の途中、そんなことを呟きだした。

俺そんな上手くないのに。90点以上なんて点数を出したことが無い。

80後半は安定して出せるんだけど。

 

「なんて言うか・・・迫力?があるから。どんな曲でも。」

「・・・まあ、歌ってるときは完全に自分の世界に入るからね。俺。」

「そうそう、そんな感じ!目が離せない、みたいな!」

 

正直よくわかんない。例のびょーきみたいなもので、

自分の歌っているところを直視出来ないからな。

一度見てみたくはあるが・・・・

 

「みんなもそう言ってるんだよ?だから自信もって?」

「ありがとう。・・・・・・みんな?二乃達のこと?」

「ふふふ。違うよ~。これ見て?」

 

そう言いながら一花はスマホを見せてきた。

動画サイトのようだ。

 

「・・・・日の出祭ライブステージ?」

「うん。学校がね。ライブカメラを付けててリアルタイムで放送してたの。

コメントもいっぱいついてるんだよ?」

「そんな大したことには・・・・」

 

動画は3日間に分けられている。

・・・・・? 521万再生?え?は?なんで?

 

 

「なんでこんなに・・・・」

「えっと、ね。わたしのSNSで学園祭の事紹介しちゃって。

そしたらちょっとした話題になっちゃったの。

ミニコーナーだけどテレビのニュースでも取り上げられちゃったりして・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・もうやだ・・・・・・誰か殺して・・・・・・」

「あ、あははは。ごめんね?そんなに落ち込むと思ってなかったなー?」

 

座った状態で両肘を膝につき、思わず下を向く。知らなかった。

まさかこんなことになっているとは。二度とやらない。あんなこと。

 

この動画とコメントは絶対に見れない。誰か低評価爆撃して削除申請してくれ。

俺は無理だ。このページを開くことすら出来そうにない。

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「も~。ねね。元気出して?」

 

そう言いながら一花が頭を撫でてきた。

 

 

・・・・こういう感覚かぁ。良いね。撫でられたくなる気持ちがわかった。

今思えば、倉庫の時も撫でられてたけど、

あの時は俺がぶっ壊れてたから。よく覚えていない。

 

「・・・・・・」

「よしよし。おねーさんがいますからね~?」

 

何も言わず、そのまま撫でられ続けていた。

 

・・・あのライブでこれが貰えるんなら。良しとしよう。

良い報酬だ。ただ、こんなに俺の機嫌が良くなるのはキミだからだろうね。

 

ただ、やっぱりあの動画は直視できそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふいー。流石に疲れちゃったね?」

「そうだねぇ。体も喉もクタクタだ。」

 

カラオケの後もダーツやったりゲームセンターに行ったりと、

普通にアミューズメント施設を遊び倒した。

あのクレーンゲーム許さねぇ。2000円も持っていかれたぞ。

 

今は見送りの時間。一花は日帰りの予定だった。

健全なデートだったな。

 

・・・・女優の先輩やスタッフはメシばかり だったか。

いつもどんな店に行っているのだろう。

その辺、少し調べて好みをチェックしておきたい。

キミの機嫌を損ねたくはないからね。

 

「・・・・」

「ナギ君?」

「あ。ごめん。なんだい?」

「こっち、来て?」

「はーい。」

 

一花に案内されて人気のない所へ誘導される。

路地だ。人影はなさそう。

 

「ありがとね?今日は。」

「何を。俺も楽しかった。彼氏だからね。いつでも付き合うさ。

・・・あの動画があんなことになるとは思ってなかったけど・・・・」

「あはは。ごめんってば。

・・・・でね。これは・・・・私の感謝の気持ち!」

「え?」

 

そう言われて体をグッと引き寄せられる。

え。ちょ。顔がーーーーーーーーーー

 

 

彼女の顔がすぐ近くに・・・・・・っつ!!!

 

ドン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・・あ・・・・・」

「いたた・・・」

 

一花にキス・・・された。

 

ただ、俺が驚いたせいで、一花を両手で突き飛ばしてしまった。

申し訳ないが今の俺にはちょっと・・・無理なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・あ・・・その・・・・ごめ・・・・・」

「・・・・え!あ!ごめん!違うんだ!」

 

彼女はぽろぽろと涙を流し始めてしまった。

 

まずい。やっちまった。よく考えろよ。最低だ今のは。

どうしよう。

 

 

 

 

周りに人は居なかったはずだ。

この場所から動かなくていい。だからこうしよう。

 

「・・・・ごめん!」

「・・・え?・・・あ・・・」

 

とっさに一花の腕を掴んで胸の中に引き寄せ、抱きしめた。

今度は・・・・俺が撫でる番だね。

 

 

 

 

 

胸の中で泣いている一花。

抱きしめながら頭を撫でる俺。

 

 

 

状況が少し異なるが・・・・まるで、あの時の倉庫のようだ。

 

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