北海道の卒業旅行の帰り際。
帰宅前、新千歳空港でのんびりしていた。
・・・ホワイトデーのお返しを忘れていた。
折角なのでここで何か考えることにする。
幸いにも色んな施設があるからな。周辺を探索しつつ、吟味しよう。
「凪、どれがいいと思う?」
「ん?何が?」
「親父への土産だ。」
「それを俺に聞くのかい?」
風太郎からそんな相談をされた。
北海道土産を買っていこうとしているようだ。
親父さんの好みまで知らねぇよ俺は。
「そこまで手伝えんよ。知らないもん。親父さんの事。
らいはちゃんと一緒に選びなよ。
折角だからお菓子じゃなくてメシにしたらどうだ。
レトルトの味噌ラーメンとかさ。」
「・・・確かに。上げる相手が親父1人だしな。
よく考えてみる。」
土産ね。昔の風太郎なら考えられない・・・・
いや、親父さん相手なら十分あるか。
今はもう卒業してしまったからな。クラスメートに渡す機会はない。
友達や職場の同僚にお土産を渡す上杉風太郎。
そんな光景がいつか見れるかもしれないな。
それも・・・・キミたち、五つ子のお陰だよ。
「ちょっと三玖!それあたしのいくらよ!」
「早い者勝ち。二乃が後ろに座ったのが悪い。」
「ちょっと二人とも。落ち着いてよ~?」
「・・・・・・・・・・・」
感慨にふけっていたらちっちゃい回転寿司屋で喧嘩している人たちがいた。
さっきの余韻が台無しである。おねーさんが姉御と殿を嗜めていた。
店内で騒がないでくださいよ。恥ずかしい。というか個人で注文しろよ。
知らんぷりしとこ。ぼくこのひとたちとしりあいじゃありません。
「あ!ナギ君も一緒に食べよ?」
「・・・・・・良いのかい?」
・・・・・キミに言われたら断れないな。
テーブル席に同席することにした。
「欲しいのがあったら言ってね?取ってあげる!」
「ああ、ありがとう。流れてきたら玉子が欲しいな。」
「うん。任せて?」
「あんまり見せつけないでくれるかしらー?」
「キミたちだってさっきまで仲良くケンカしてただろう。お互い様だ。」
「ナギ、これ玉子。」
「ああ、どうも。」
「も~!ちょっと三玖!邪魔しないでよー!」
「一花がその席にいるのが悪い・・・・」
席順としては通路側に二乃と俺。
レーン側に三玖、一花がいるが、回ってくるのが三玖の方が早い。
仕方のない事である。
「ナギ君。この玉子も食べて。」
「え?うん。」
一花から玉子のお代わりを追加される。
別に良いですよ。2皿くらい。
「次は?」
「次?味噌汁が欲しいな。」
「はい。お味噌汁・・・・」
「いや三玖さん?」
「ナギ君。これも飲んで。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ジェラシーな彼女を持つと大変ねー。」
「くすくす。昨日のろけた仕返し。」
当然のように一花に2杯目の味噌汁を渡された。
どうやら三玖による昨日の仕返しらしい。
このひときらい。キミから最近どうって聞いたんじゃないか。
俺は答えただけに過ぎないぞ。冤罪ですよ、一花裁判長。
しかし裁判長は今回は頼りにならないのであった。
寿司屋でたらふく食わされて一息ついていた。
ホワイトデーのお返しは先ほど良いものを見繕ったので、
一人でソフトクリームをつまんでいる。
折角姉妹みんながいるんだし、今、俺が一花を独り占めするのは遠慮しておく。
「うぅ~~~~~・・・・・・」
なんか涙目な人がいた。
多分迷ってるなこれ。ここ人多いし。
「どうしたの。五月。」
「ナギ君・・・・・・迷ってしまいました・・・・
スープカレー屋さんはどちらに・・・・・」
「・・・・カレーかぁ。」
スープカレー食べるのかぁ。
やっぱり妖怪カレー・・・・・いや、うん。なんでもありません。
あいつネーミングセンス良いよね。
「向こうの方だよ。ついてきてくれ。」
「ありがとうございます。・・・その、迷いそうなので、手を。」
「手?別にいい・・・・・いや、ちょっと待った。」
さっきのくだりがあるからな。心配になる。
五月と手を繋いでいるところを一花に見られたらどうなる事か。
ライバルだったからな。一応。先ほどは三玖だったが、五月だとちょっと危ないかも。
「あー!五月さんとナギさん!」
「二人で何してるんですか?」
天の助け。困った時のらいはちゃんと四葉くん。
待ってました。そうだね。
らいはちゃんにとっては四葉くんがお義姉さんになるんだもんね。
「二人とも、五月をスープカレー屋に案内してくれるかい。
俺はちょっとこいつと戦ってて手が離せない。」
「何味なんですか?それ。」
「ハスカップだってさ。色通りの味だよ。ではお願いね。」
「任されましたー!」
四葉くんとらいはちゃんに五月を引き渡し、アイスクリームを満喫。
そうやって各々空港内を楽しんで、卒業旅行は終わりとなった。
時は少し過ぎ、3月後半。
・・・・大学生活の為、本格的な引っ越し。
荷物を先に送っており、今日から東京に住むことになる。
新幹線のホームに来ていた。
「おや、久しぶりだね?有坂くん。」
「やあ、武田くん。向こうでもこいつをよろしく頼むよ。」
「任せてくれたまえ。」
「お前は俺のなんなんだよ・・・・」
「相棒だっつーの。」
「相変わらず、仲が良いのね。」
風太郎、武田くん、毛利さんと一緒に行くことになった。
場所は違えど、東京駅までは一緒だ。
「有坂くん。一花さんは?今日は来るのかしら。」
「見送りに来てくれるとは言っていたけど・・・・難しいみたいだね。」
・・・・まいったな。見送りに来ると連絡を貰っていたから、
プレゼントを今日渡そうと思っていたんだ。来ないとなると・・・・郵送かな。
「よぉ。来てやったぜコラァ。」
「前田くん。・・・あれ。みんなも。」
「有坂、旅立つ時が来たと聞いたぞ。」
「水臭いなぁ。ちゃんと私達にも言ってよ?」
「寂しくなるなー・・・・」
「ナギっち東京かー。遊びに行くときは泊めてー?」
「あのバンド活動、案外楽しかったぜ。まさか鍵盤ハーモニカが役に立つなんてな。」
前田くんとバンドメンバーの4人、そして葛城君が来てくれた。
連絡はしていなかったが・・・・毛利さんが手を回したかな。
「・・・・ふぅ・・・・ふぅ・・・・良かった。間に合った・・・・」
「・・・一花。」
一花も来た。良かった。来てくれた。
見たことのない制服姿・・・・ドラマか映画の収録の直後かな。
こいつを渡せるな。
「忙しかっただろうに。ごめんね。」
「ううん。良いの。だって、しばらく会えなくなっちゃうんだよ?
・・・お仕事よりも、大事だもん。」
そうだね。少なくとも4月中は東京に来ることはないと聞いている。
そうなると。5月のアレだね。俺が一旦帰ってくるさ。
「ありがとう。・・・・これ、受け取ってくれるかい。
気に入ってくれると良いんだが。」
そう言いながら、ポケットに入れていたプレゼントを取り出す。
・・・むき出しのままだが。今つけて欲しかったからな。
「これは、時計?」
「そう。・・・・あの卒業旅行で買ったんだ。
バレンタインのお返しだよ。遅くなってしまったね。」
青と白を基調にした時計。
氷の結晶をイメージしたものとなっている。
最初は安物の指輪を考えたが・・・・そんなものを渡してはな。
スキャンダルの種だ。
「もし、不安になった時は、それを見て思い出してほしい。
・・・あの雪の降っていた日、俺がホテルで君になんと言ったのか。」
「・・・・うん。絶対、忘れないから。」
「・・・間も無く、3番ホームに新幹線が到着します。
お待ちのお客様は黄色いラインの後ろに下がって、お待ちください。」
「みんな。わかっているね。」
「勿論よ。武田くん。」
「仕方ない。一肌脱いでやるか。」
「ナギ君。でも・・・・・・・やっぱり、寂しいな。
・・・・・離れたく、ないの。」
「・・・・そう言ってくれるのは嬉しい。でも・・・」
「なーんてね?」
「え?なにをーーーー」
また、胸を掴まれて・・・・・・・・
一花が俺に・・・・キスをしてきた。
・・・・・これはマズい!メガネをつけているとはいえ、
ここでこんなことをしてしまっては周囲の注目をーーーーー!?
・・・・・・みんなが、壁に・・・・・・・
俺の背後には停止動作中の新幹線。
そして俺の前、一花の後ろには・・・・・みんなが。
風太郎、武田くん、毛利さん。前田くん。片倉くん。伊達くん。川村さん。屋代さん。葛城くん。
・・・・・9人が、俺達を囲むようにして、壁になっている。
・・・・・・おいおい。うちの彼女は、こんなにも計算高かったのか。
数学得意だしな。・・・・そういうとこ、好きだよ。
あと、この愛しい唇もね。
名残惜しいが、そろそろ時間切れだ。唇を離した。
「・・・・ありがとう。」
「今のは、全部嘘だよ・・・・全部。
寂しくなんかないもん。これを、貰ったから・・・・」
・・・・涙目だよ。
・・・・ありがとうね。
「ははは。大丈夫だよ。無理しなくても。
なんやかんや、ゴールデンウィークは近いからね。その時、俺が帰ってくるさ。」
「うん。じゃあ・・・・・待ってる。」
「良いもん見してもらったわ。コラァ。」
「そうね。まさにドラマのワンシーンだったわ。中々見られない光景ね。」
「凪、一つ貸しておくぞ。」
「上杉くんは相変わらず、素直じゃないんだね?」
「ではな。有坂。戻ってくる日は連絡してくれ。また会おう。」
「そうだね。またいつか一緒にバンドしよ?」
「リンもこう言ってるし、また帰ってこいよ!」
「ナギっち~~~・・・・」
「またな!絶対だぞ!有坂!」
「ああ。・・・・ありがとうね。みんな。
・・・では、女優さん。少しの間、さよならだね。元気でいてくれよ?」
「うん。行ってらっしゃい。」
「・・・行ってきます。」
友人たちと恋人に別れを告げ、4人で新幹線に乗車した。
新幹線の車内。
2人掛けの席を一つひっくり返し、4人席を作った。
「寂しいかい?有坂くん。」
「いや、全然。あんなもん貰っちゃったからね。良い思い出だ。
・・・・ただ、口元は少し寂しいな。風太郎は?四葉くんは良かったのか。」
「別れは済ませてある。大丈夫だ。」
「そうか。」
四葉くんは見送りに来なかったが、そういう事らしい。
当人同士が問題ないのなら、OK。
「さっきのはキミたちが事前に決めてたのかい?」
「そうだよ。僕と毛利さんのプロデュースだ。満足したかい?」
「100点だったと思うぞ。」
「おや、あの上杉くんから100点を貰えるなんて。悪くないね。」
武田くんと毛利さんの仕業だったか。
「プロデュース料として、さっきのキス写真、1枚貰ったわ。
これで、貴方を私の意のままに出来るわね?」
「おねがいですからほんとにやめてくださいこわいです」
「あら。どうしちゃおうかしら?迷ってしまいそう。」
怖すぎる。俺は今後どうなるって言うんだ。
別に毛利さんなら大丈夫だとは思うけど。
この人が本気になったら俺は手も足も出ないぞ。
「・・・・なあ。凪。」
「なんだい、風太郎。」
「お前、あのホテルの部屋で一花になんて言ったんだ?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
そして今日も旭高校卒のハイパーノンデリカシーは一糸乱れぬダイヤで平常運転だった。
流石は日本の鉄道である。いい加減察するという事を覚えて欲しい。
友、そして恋人とのしばしの別れを経て・・・・・・・それから5年が過ぎた。
ハーレムは書かないと決めていたと発言しましたが、
原作のままの状態で、既に風太郎と五つ子でハーレムが形成されている、と判断したためです。
私が五等分の花嫁でハーレム物を書くのであれば、オリ主など追加のキャラクターは入れません。