五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「四葉、来たぞ。凪もいる。」

「はーい。お待たせしちゃってごめんね?

有坂さんもお久しぶりですねー。」

「変わらないなぁ四葉くんは。」

 

新婦の待機部屋へ到着。

白いカーテンの後ろから声が聞こえる。

まだお色直しの最中のようだ。

 

 

「もうすぐ着替え終わるからそこで待ってて?」

「あいつらも来てるみたいだぞ。・・・・何を考えてんだか。

高校生の頃から何も変わっちゃいねぇ。問題児だらけだ。なぁ?」

「全くだね。世話をするのも飽きてきたころだ。」

「それって私も含めて?」

「お前が一番問題児だったんだよ・・・・」

 

四葉くんは四葉くんだなあ。

色々やらかしてくれたよ。今となっては良い思い出だけどな。

 

そんな昔のことを思っていたら、俺達と新婦を遮るカーテンが開いた。

 

お色直しがおわ・・・・・・・・・・・・・・は?何してんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ。」

「・・・・・凪。俺はまだ夢を見てるのか?」

「奇遇だな風太郎。俺も夢の中にいるらしいぞ。ほっぺつねろうか?」

 

 

・・・・カーテンの裏から姿を現したのは5人の花嫁。

・・・・・・・・何を考えているかと思ったら。

今度はお前らが俺達をテストするのか。

 

 

「五つ子ゲーム」

「ファイナルだよ」

「愛があれば」

「見分けられるよね」

 

 

 

 

 

「・・・・馬鹿か!ってか四葉以外の四人!

こんなお遊びでウェディングドレス着てんじゃねぇ!

何してるかわかってんのか!」

「確かに。馬鹿のやることだ。残念だよ。家庭教師をやった意味がなかったようだ。」

 

 

 

上杉先生もたまらずご立腹。

目の前には全く同じ姿をした5人の花嫁がいた。

そしてこの人達、五つ子ゲームと言って見せた。

 

そら風太郎もキレる。キレていい。これをやりたいがために挙式サボったんだろ。

裏でやってた事がコレだぞ。俺ですらそんなことは考えない。

頼むからもうちょっと考えて欲しい。悪質なイタズラ。

 

挙式のメンツが最悪だよ。だって新婦の父親と姉妹が出ないんだもん。

1親等2親等が全員不在って。絶対他の出席者から噂話される。

ただ、指輪を忘れた新郎の姿を見られなくて逆に良かったかもしれない。

 

 

「確かにちょっと複雑だけど・・・・」

「思いついちゃったもんね・・・」

「それにお遊びじゃないよ?」

「これでも、花嫁の親族だからね。」

「って言うのは嘘で、私が花嫁本人です。」

「違うよ私だよ?」

「花嫁と言えば私!」

「二人なら・・・わかるよね?」

 

はぁ・・・・間違えたところで今更中止なんかできないだろうに。

何をしているんだか。

 

 

「・・・・ったく馬鹿野郎・・・・

少しは分別のつく大人になったかと思えば。

相変わらずのようで安心した。・・・・俺達を舐めんな。

 

 

・・・・凪。」

 

 

 

 

「ああ。わかっているよ。主役はお前だ。俺は一花だけ当てさせてもらおう。」

「頼むぞ。」

 

 

タチの悪いイタズラだよ。お灸を据えてやらなきゃいけないな。

よく見てろ。綺麗ないたずらの見本を見せてやる。

お前たちはもう少し勉強した方が良いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真正面から、花嫁5人を見つめる。

こんなことをするなんて。あの旅館の時を思い出す。

 

「・・・・まあ、良いもん見れたよ。近い将来、俺の妻になるんだからな。

良く似合ってる。次は白無垢が見てみたいもんだ。

俺とキミの結婚式は和式だな。決定。」

 

純白の花嫁姿は既に見てしまった。天丼をかますわけにもいかない。

その辺の悩みどころが消えたのは、良かったかもな。

 

コツコツと、革靴の音をあからさまに立てながら、ゆっくりと近づく。

目指すのは、真ん中の花嫁。

 

 

「しかし・・・・こんないたずらを考えるなんて。

どうせキミが発案だろ。少し反省してもらうぞ。」

 

 

口調を荒くする。怒っていることをアピール。

案外キミは羞恥心があるからな。これは効くだろ。

 

花嫁の手を、取る。

今ここで、リングでも持っていればね。丁度よかったのだけれど。残念ながら持ってない。

まだ正式な告知は本日これからだからな。

アナウンスの前に指輪を見せつけるわけにもいかないだろう?

 

 

 

「・・・・一花。どうせもうすぐ一緒になるんだ。

そしてそんな恰好をしてしまったからな。今ここで誓いのキスを済ませるとしよう。」

 

「・・・ふふ。わたしは良いよ?」

 

「舌を絡める。飛び切り濃厚な奴をお見舞いする。覚悟しろ。」

「え、えぇ!?それはーちょっと・・・・・みんなも見てるしー・・・?」

 

「早くしろよ。とっとと目を閉じろ。ちょっと怒ってんだぞ俺は。」

「は・・・・はいぃ!」

 

ぶつくさうるさいので顎を取る。

こっちの真剣さが伝わったようだ。

 

 

「ちょ、ちょっとナギ!本当にやるつもり!」

「身内のディープキスなんて早々お目にかかれないだろ。よく見とけよ。」

 

あくまで一花から目を離すことなく、他の連中と会話する。

逃がしてあげないよ。息をつかせる間は与えない。

 

「え・・・・わ・・・!」

「ひぇー!?あ、有坂さぁん!」

「ナ、ナギくん!?」

「結構キレてんだぞこっちは。今さら五つ子ゲームなんて。

そんなに俺達が信用ならないか。何年の付き合いだと思ってるんだ。悲しすぎるぜ。

 

だから見せてやる。これが俺のキミへの愛だ。その身をもって味わえ。

お前たちも良く見ていろ。おかしないたずらをした罰だ。

眼を背けることは許さない。甘んじて受け入れてもらおう。」

「・・・・・っ。」

 

目の前の花嫁が目を閉じた。そして、喉を鳴らした。なんだ。緊張してるのか?

・・・随分と待ちわびているようだな。全く。

 

 

 

あーあ。やっちゃったよこの人。悲しいなぁ、俺の事わかってないんだ。

ナギ君テスト0点です。結婚はまだ先かも。まあもうすぐ籍入れるんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうするに決まってんじゃん。

フー

「!▲★×+!!*+!?!」

「凄い声だねぇ。間違いなく取り直しだよコレ。

NGシーンです。良い子は見ちゃいけません。」

 

当たり前のように顔を真横に持ってきて耳に息を吹きかけた。

目を瞑ったら最後。俺が好き放題出来る。

 

これはこれでスキャンダルだな。この反応は世間様に見せられない。

問答無用でカットです。上手く編集してください。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと!今のはする流れでしょぉ!!楽しみにしてたのにぃ!!!」

 

「楽しみだったのかい?まだやれないね。

こんなタチの悪いドッキリ考える女優さんにはお似合いじゃないか。

大体こいつらの前でするわけないじゃん。」

 

「む~・・・そういえばナギ君からされた事なかったなぁって思って・・・・」

 

 

 

 

「だと思ったぞ。相変わらずいたずらの上手い奴だ。お前たちとは大違いだな。」

「おや、流石相棒、わかっていたか。ナギくん博士の称号を上げよう。」

「もう持ってる。」

「そうだっけ?」

 

相棒は余裕の表情で不敵な笑みを浮かべていた。

流石ミスター100点。大正解です。

 

他4人は大きく息を吐いてとても安堵していた。本気でやると思っていたらしい。

キミたちもナギお兄ちゃんテスト0点です。

追試頑張りましょう。一花と結婚したら正真正銘のナギお兄ちゃんとなるので、

赤点ラインは60点に引き上げます。愛があれば100点取れますよね?

 

 

「では、後は任せたよ風太郎。

余興の打ち合わせをしてくる。一花も、遊んでないで早く着替えてきてくれよ。」

「うん。すぐ行くね?」

「しっかり決めろよ。わざわざ人の披露宴を貸してやるんだ。」

「ああ。ありがとな。」

 

新婦の待機部屋を離れて、披露宴のステージ袖へと向かった。

 

 

・・・俺から舌を絡めたことはなかったか。良い事聞いたな。

当分お預けにしてやろう。良いネタが見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギ、来たか。こちらは準備中だ。」

「ああ。ゆっくりやってくれよ。気にしなくていい。

それにしても良かったのかい。この曲で。ギター使わないけど。」

「構わない。シンセサイザーとパーカッションの練習にちょうどいい。

出来ることが広がれば、作曲の幅も増える。」

 

「ナギっちひさしぶりー!」

「ナギくんも芸能人の仲間入りしちゃったね?」

「俺たちより目立っちゃったなー!」

 

バンドメンバー達が余興の準備をしていた。

俺と一花がボーカル。彼らはバックで演奏をする。

そして、舞台の演出担当が2人。

 

 

「よぉ、ナギ。この度はおめでとう。」

「ははは。葛城君。今日の主役は俺のダチだよ。」

「私も、貴方を祝福するわ。本当におめでとう。」

 

「シズク。今回は、世話になったね。本当に助かったよ。」

「あの程度で貴方が名前で呼んでくれるのなら、安いものだわ。」

 

葛城君とシズク・・・・毛利さんも居る。

舞台のライトなど、演出を担当してもらう。

 

 

 

 

 

 

・・・一花のスキャンダルが発覚した時、

俺は友人である毛利 雫・・・シズクに連絡をした。

 

 

 

 

 

 

シズクは大学を中退し、ある芸能事務所でアイドルのプロデューサーをやっていた。

光る原石を見つけたの とか言って入学早々にやめたらしい。なにしてんねん。

 

 

若手なのにかなり敏腕らしく、光と闇を使い分けていた。

相変わらず良い仕事をする。融通の利く人だ。

 

 

 

シズクに連絡をし、俺と一花の映った写真を送付。

そしてその写真をネタに、別の週刊誌から追加で情報をリークさせた。

送付したのは・・・昔、高校時代や、俺が大学生時代に一緒に撮った写真だ。

 

 

そして、その週刊誌にはある一文を付け加えた。

 

「高校生時代から付き合っている、交際7,8年の長い付き合いのあるカップルである」

 

・・・・世間に向けてやったこと。

それはシズクのコネを使って清い交際であることをアピールした。それだけだった。

 

 

 

 

 

しかし、その一手で全てがひっくり返った。

 

 

ネット上では擁護派と否定派で勢力が拮抗していたが、

この記事により批判や毒を吐いていた連中も一転、祝福ムード。

わずかに叩いていた連中も長いものに巻かれてほぼ消えた。

 

先に隠し撮りをして公開した週刊誌はこの情報を一切書いていなかったため、

未成年の頃からちゃんとしたお付き合いをしているカップルの邪魔をするな と、

ボッコボコに叩かれる事になった。

否定派はこの記事のせいで赤っ恥をかいたわけだからな。

自らにぶつけられない怒りを一手に引き受けてしまった。

人というのは、過ちを犯した時、受け入れられない者が多いんだ。

匿名性の高いネットなら、特にな。

 

 

まあ、週刊誌サイドは俺達が高校時代からの付き合いであることを普通に知らなかったんだろう。知っていたところで書かないとは思う。書かない方が火の手が良く回るからな。

 

 

 

ただ・・・決め手となったのは1枚の写真と、文章の内容。

 

 

新幹線のホームで俺と一花がキスをしている写真。

昔、シズクがこっそり撮っていたものだ。

この時の一花は・・・・・旭高校の制服ではないが、制服姿だった。

学生時代の写真であるという効力にはなったようだ。

 

 

そして、交際7,8年という文章。・・・正確には違う。5年ちょっとである。

しかしこの期間にすると、一花が女優デビューする前から付き合っていたという事になる。

これがかなり大きかった。世間一般の俺の印象は、

女優を目指す同級生をひたむきに応援し、下積み時代から支えてきた理想の彼氏。

となったのである。・・・・嘘も方便。実感した。

 

ちなみにこの嘘はシズクの独断である。

やはり俺は・・・彼女には手も足も出ないようだ。

 

 

まあ、いろんな写真を一般に向けて公開したのは恥ずかしかった・・・・

特に中野父に怒られないかが心配だった。

愛娘と男がいちゃついているあられもない写真を、

世間に向けて公開してしまったわけだからな。ただ、そこもセーフだった。

 

お陰で丸く収まった。もう、スキャンダルの心配はほぼいらない。

誰もが認めるカップルとなったのである。

 

協力した礼として・・・これからは名前で呼んで とシズクに言われた。

だからまあ、こういう事になったのである。

 

 

 

「追加の写真があったから随分やりやすかったわ。楽な仕事だったわよ。」

「それは良かった。やっぱりキミには敵いそうもないよ。」

「ただ、追加の報酬を頂こうかしら。

このステージ、動画を取らせてもらうわ。彼女たちの教育材料としてね。」

「えぇ・・・・・絶対に外部に出さないでね・・・・」

「勿論よ。これで一皮むけてくれればいいのだけれど。

彼女たちは貴方と違って随分と手がかかるから。」

 

彼女がプロデュースしているのは普通に人気のアイドルで、

俺も名前を知っているくらいには活躍してるんだが、

シズク的にはまだ納得していないらしい。

 

「ステージ、楽しみにしているわ。ライトの演出は任せて頂戴?」

「ああ。俺もプロデューサー毛利にしごかれたからな。安心してくれよ。」

「二人とも、宜しくね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆様、本日はご多忙の中、僕達の結婚披露宴にお集まりいただきまして、

誠にありがとうございました。」

 

披露宴が無事始まり、新郎・・・・風太郎の演説が入った。

サマになっているな。姉妹と父親が来たからだろうか。変なところは見せたくないよな。

 

「これまでお世話になった方々の前で、

ようやく挙式を執り行えた事を大変うれしく思います。

・・・・何せプロポーズ自体は5年前に済ませていますから。」

 

 

 

 

「おいナギ。今のマジかよ・・・・」

「ああ。本当らしい。俺も見たかった。見てないんだよ。」

「あいつ、相変わらずよくわかんねーことするよな・・・・」

 

友人席でヒソヒソ話。前田くんも思わずドン引きしていた。

そうだよね。付き合った直後にプロポーズだもん。

聞いてる側はバカップルの一時の過ちとしか思わないだろう。

俺も似たようなことをやってしまった経験はあるが。

 

 

「本当に・・・・・長い道のりでした。」

 

 

 

 

 

 

 

 

披露宴は順調に進み・・・・余興の番となった。

 

「一花、準備は良いかい。」

「・・・・・・緊張、するね?」

「最後はバシッと頼むよ。どうせここにいる人たちは、

俺たちの結婚式にも来るだろうからね。」

「うん。任せて。最初のエスコートは、お願いね?」

「もちろんだ。」

 

二人でヘッドセット型のマイクをつけ、ステージ中央へ向かった。

 

 

 

一時的とはいえ・・・俺もミュージカルの俳優ってわけだ。

 

 

 

まさか同じステージに立って、これをデュエットする日が来るとはね。

 

 

俺は変幻自在。その気になれば、何にだってなれる。

 

ある時は人々を楽しませる道化師。ある時は人を導く牧師。

ある時は技巧派の投手に。ある時は場の支配者に。

 

 

 

 

そして。これからの俺達はまさに舞台役者。

 

正真正銘、キミと対等の立場。肩を並べられる日が来たわけだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「続きまして、新郎友人の有坂 凪様、

及び新婦親族の中野 一花様から披露宴の余興の催しがございます。

皆様、盛大な拍手をお願いいたします。」

 

 

大きな拍手に迎えられ、二人でステージの中央へ立った。

最初は俺のご紹介となる。

 

会場内の照明は落ち、俺たちの立つステージのみがライトに照らされている。

 

数々の熱視線。張り付いた雰囲気。期待感に満ち溢れている空気。

会場が俺たちの言葉を心待ちにしているのがわかる。

例のスキャンダルで、今、俺たちは時の人だからな。

 

 

ああ、わかってきたよ。女優というのはいつもこういう事をしているんだね。

とても良い気分だ。俺たち二人が世界を回しているような。中心に立っているかのような。

そんな優越感に浸れるね。たまにはいいよ。この空気。

 

 

ただ、やっぱり。いつもコレってのは疲れる。

俺は俳優なんか目指さなくて正解だよ。予想通りだ。

これが日常になるなんてのは想像したくないね。

 

 

「どーも。最近はお騒がせしておりまして申し訳ありません。

有坂です。風太郎、四葉くん。この度はおめでとうございます。」

 

二人が立ってお辞儀をした。別に座ってていいのに。

 

「新郎さんからリクエストを頂きましてね。1曲やってくれと言われてしまいまして。

めでたい席なので景気よく腕の良い連中を呼びました。

バックにいるのは、俺の親友であるMinor rollの皆さんです。

皆様、拍手をお願いいたします。」

 

バンドメンバーをご紹介。

彼らは今や結構有名である。俺の彼女には負けるがね。

 

「1曲歌うんですが・・・デュエットをご希望とのことで。

新婦親族の一花さんにご協力いただきました。

・・・大女優との共演ですよ。気合が入るってもんです。

なので、ちょっとした舞台のようなショーを・・・・皆様にご覧いただきましょう。」

 

俺の一言と同時に、ライトの照明が落ちる。

右手で指パッチンを鳴らし、合図を出した。曲の始まりだ。

 

 

♬~~~~

 

 

バンドメンバーによるしっとりとした演奏が始まった。

オルタナティブな曲。決して有名ではない。

皆、静かに聞いてくれることだろう。そうであることを願う。

 

 

まず、男性である俺の声から始まる。

ライトの照明を浴び、ステージ右へとゆっくりと移動する。確実に、1歩ずつ。

 

 

 

 

 

『肌寒い暗闇の中 孤独にすすり泣いて』

 

 

『頭上の雲が 落ちてしまいそうに見えるほどに』

 

 

『心はとても 沈んでいる』

 

 

 

 

『一人きりだった夜だけど』

 

 

『嬉しいな 貴女がそばに来てくれた』

 

 

『これで 俺は 一人じゃない』

 

 

ステージ右端に動き終わり、中央にいる一花を指さす。

俺に当たっていたライトが消え、次は一花にライトが当たる。

そして、一花の歌声が始まった。

 

 

 

 

『ねえ 私を導いてよ』

 

 

『まだ 心が定まらないの』

 

 

『二人で 何処へでも行ってしまいましょう』

 

 

「さあ 貴方の手で 私の運命を決めて』

 

 

 

 

 

一花が歌い終わり、サビに入る。

ここは二人による共鳴。

お互い、ゆっくりとステージ中央へ近づく。

 

 

 

 

 

『一度 全てを忘れよう』 

 

 

『大丈夫 今後の事は考えないで』

 

 

 

中央で二人両手を繋ぎ、肩の前に持ってくる。

ヘッドセット型のマイクの為、両手がふさがってても良い。

舞台用だからな。

 

 

 

『さあ ガラスの靴を履いて 舞踏会へ』 

 

 

『シャンデリアの光の中で 共に消えてしまいましょう』

 

 

『Ah ah ah ah.....』

 

 

サビの歌い終わりと共に、中央のライトが消える。

つないだ手を離し、天井を見上げ、二人でゆっくりと優雅に回る。

そして、ステージ両端にあるライトへお互い移動し、2番が始まった。

さっきと逆の動きをする。

 

 

 

『非日常な タイムライン』

 

 

『平和な時代に 落ちた稲妻』

 

 

『誰もが 混乱しているけれど』

 

 

『貴女と一緒なら 問題ない』

 

 

 

『一人ぼっちだった夜だけど やはり貴女がそばに居てくれた』

 

 

『これで 俺達は 一人じゃない』

 

 

 

 

 

 

『ねえ 私を呼び起こしてよ』

 

 

『心も 体すらも 眠ったままなの』

 

 

『二人で 共に消えてしまいましょう』

 

 

「さあ 貴方の手で 私のベールを脱がせて』

 

 

 

 

 

 

『一度 全てを忘れよう』 

 

 

 

『大丈夫 今後の事は考えないで』

 

 

 

『さあ 互いの手を取って あのスポットライトへ』 

 

 

 

『光の中 二人一つになって 共に行方不明になりましょう・・・』

 

 

『Ah ah ah ah.....』

 

 

 

『Ah ah ah ah.....』

 

 

 

 

 

『Ah ah ah ah.....』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~♬

 

 

二人手を繋ぎ、ステージの中央に立っている。

・・・・・歌い終わった。会場から拍手が上がる。

 

ここからは、主役にお任せだ。

一花が手を離し、披露宴の客人たちに向き直る。

 

 

「みなさんもご存じの通り・・・私、中野 一花と有坂 凪さんは付き合っています。

・・・新郎、新婦様からこの場を借りて、発言する許可を頂きました。

 

この度、私達二人も・・・・結婚することに、しました。」

 

 

 

 

一花のこの宣言により、会場から大きな拍手と小さな歓声が上がった。

 

・・・・風太郎と四葉くんの仕組んだことである。俺達に気を遣ったのだ。

 

今回のスキャンダルの決着として、いっその事発表してしまえと。

 

 

 

 

 

少しだけ、涙が出てきた。

 

 

本当に・・・寂しくなった。お前がこんな気遣いを見せてくれるなんて。

 

風太郎、あの時のお前は、もう居なくなってしまったんだな。

 

だが、同時に・・・・とても嬉しい。

 

 

 

 

彼らの披露宴の場を借りて、俺と一花は結婚の報告をした。

・・・また明日、世間を騒がせることになりそうだ。

 

まあ、今度はどいつもこいつも最初から祝福してくれるだろう。

これから、忙しくなりそうだ。

 

 

風太郎と四葉くんの結婚式はこの後、無事に終わった。

 

 

 

そして、1カ月後。俺達は何ら変わらない日常を送っていた。

 

 

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