五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

13 / 130
11

ビニール袋をぶら下げながら、ある芸能スタジオの前にいた。

さっき見せてもらった台本の最初のページには会社名が書いてあったので、

そこから位置を割り出した。

芸能関係には詳しくないが、この名前は聞いたことがある。

大きい仕事と言っていたが、誇張ではなさそうだ。

 

 

上手く行っているだろうか。さっきの俺のせいで変な影響が出てないと良いんだが。

落ちたら絶対俺のせいでしょ。参ったな。またやってしまっただろうか。

どうしていっつも俺は余計なことばっかり。

しかし・・・・疲れた。足が棒だ。思えば15時からほぼ立ちっぱなしだったな。

一休みしたせいでアドレナリン的な何かが切れて、代わりに現実を感じさせる何かがやってきた。

 

 

 

 

 

そう考えていたら、一花さんとさっきの男性が出てきた。

 

「ナギ君!」

「キミは・・・・待っていたのかい。」

「ええ。ちょっと探せばすぐ見つかりますよ。インターネットは怖いですね。」

 

嘘である。さっきの台本がなければさっぱりわからなかった。

 

 

 

 

 

「調子はどう?上手く行ったかい?」

「どうだろ。微妙かな。」

「間違いなく最高の演技だったよ。一花ちゃん、これから忙しくなるよ。」

 

 

 

 

本人は不安だが、見ている側は確信を持っているようだ。

あぶねぇ。良かった。あとで自己嫌悪に陥らずに済みそうだ。

 

「一花ちゃんのあんな表情を見たのは初めてだ。キミのあの演技のお陰だよ。

どうだい。キミもうちの事務所で俳優をやってみないかい?経験者だろう?」

「勘弁してください。自分の演技見てこいつだっせぇってなって落ち込むタイプなので。

あと素人です。」

 

さっきの演説のくだりを言っているようだ。

しばらく思い出したくない。時間が経てば現実味がなくなって、良い思い出として昇華されるが。

 

「一花さんは?今日はもうフリーですか?」

「もちろん!私が自宅まで送っていくよ。キミも乗るかい?」

「あー。それキャンセルで。ちょっと女優さん借りていきますね。」

「何?どこへ連れていく気だい?」

「決まってるでしょう?花火会場です。」

 

 

 

 

 

 

「お疲れだろうけど、もう少し頑張ってもらうよ。」

「ナギ君?どこに向かってるの?」

「花火会場だよ?」

 

多分俺の方がつかれている自信があるが、女優人生の瀬戸際だ。

メンタル的には一花さんの方がやられてるだろう。

 

「もうちょっと・・・もうちょっと・・・・」

「なんで繰り返してるの?」

「さすがに足が疲れたんだ。バイトで立ちっぱなしだったから。」

「そっちもおつかれだね。なんのバイトだったの?」

「それは・・・・ああ、見えてきたよ。」

 

 

小さな公園の中、花火セットを楽しんでいる4姉妹がいた。

「花火会場にようこそ。」

 

 

 

 

 

「ほら、追加の分だよ風太郎。」

「ご苦労だった。凪。お前もやれ。」

「無理。疲れた。代わりによろしく。俺らいはちゃん見てる。」

「・・・手は出すなよ。」

「出したら色々終わるねぇ。」

 

花火の入ったビニール袋を風太郎に手渡した。

ベンチで丸くなっているらいはちゃんの隣に座る。猫みたい。

ふー。疲れた。心地よい疲労感。今日は良く寝れるだろう。

 

 

一日が終わるとき、いつも頭の中で反省会をする。

人付き合いに100点はあるだろうか。多分ないと思う。

しかし あそこでああするべきだった と考えることはよくある。

 

今日のある時から、真剣に5姉妹と向き合おうと決めた。

それからの行動は・・・・100点だっただろうか?

 

 

 

 

 

 

100点だな。100点だった。そういうことにしておこう。どうせ自己採点だ。

もうダメだ。考えるのも面倒なくらい疲れた。今はそんなことをしている場合ではない。

この時間なら母さんの仕事が終わるころかな。電話を掛けて、迎えに来てもらう。

もう歩きたくない。

 

「母さん?お疲れ様。悪いけどあのコンビニまで迎えに来てくれる?」

『いいわよー』

 

二つ返事だ。助かった。家はここから歩くと20分はある。

ホッと一息。帰れると思ったら猛烈なけだるさがやってきた。

 

「凪」

「んー。風太郎?」

「帰るのか?」

「ああ。お先に失礼するよ。あとはよろしくね。」

どうやら俺が何をしようとしているかバレてしまったようだ。

 

「俺は良いが、あいつらが許してくれるかな?」

「いやホント・・・勘弁。マジで疲れてるんだ。今日は色々・・・あり過ぎた。」

「ここで休めばいいだろう。」

「電気真っ暗じゃないと寝れないんだ。俺は。」

「そうか。仕方ない。今日は自習ナシだな。」

「悪いね。」

 

相棒に後処理を任せる。5人に見つからないように反対側の出入り口から外に向かう。

セーフ。隠密行動成功。

今日の主役は、これにて退場しよう。

 

 

 

「フータロー君?ナギ君は?」

「あいつは帰った。酷く疲れていたぞ。いつも誰かの為に無茶をする。

その結果、スイッチが切れた。」

「スイッチ?」

「何かのきっかけで、あいつは吹っ切れる事がある。口調すら変わる。

今日は、三玖を見つけてからか、その前からだ。

威力が絶大な分、反動も大きい。今はお前たちの誰とも話したくなかったようだ。

大人しく帰らせてやれ。」

「そう・・・・悪いことしちゃったね。」

「全くだ。」

 

「ねぇ・・・・フータロー君。」

「なんだ一花。俺は自習に忙しい。」

「ナギ君の事、色々教えてほしいな」

「・・・・隣の席だろ。自分で聞け。勉強に関することなら教えてやる。」

「彼、おしゃべりはしてくれるけど、自分の過去に関することは聞いたことないから。」

「だからこそ、自分で聞くんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が変わり、登校中。

 

「悪いね、風太郎。この前は助かった」

「お陰であの日の勉強時間はゼロだ。」

「ごめんごめん。」

 

風太郎と登校する。いつもの流れだ。

日常は帰ってきた。ただし・・・・ある人に待ち伏せされていた。

 

「や。おっはー。」

「おす。」

「おはよう、一花さん。どしたの。」

「一緒に登校しようと思って。」

 

女優の登場だ。あんまり嬉しくない。

彼女といると目立つ。纏っているオーラが、雰囲気がそうさせる。

無暗に注目を浴びるのは好きではない。

 

 

あの後、姉妹には仕事の事を打ち明けたらしい。

概ね好意的だったようだ。まあそうだろう。高校生でありながら、女優。誇らしいことだ。

・・・・・勉強が両立できていれば。

 

「あ、一花さん」

「なぁに?」

「あとでサインください」

「ナギ君もサインしてくれるならいいよ。」

「・・・なんで?」

「社長がうるさいの。あの男の子は天賦の才があるって。」

「視線恐怖症って言っといて・・・・」

 

面倒なことになっている。なんだそれ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。