「そうそう。ナギ君、これ。」
「ん?」
登校中、一花さんから茶封筒を受け取る。
「家庭教師のバイト代、ナギ君の分ね。」
「ああ、これはどうも。」
封筒を開けると1万円が入っていた。
「一人2000円を5人分。1回1万円ね。」
「・・・一人2000円だと?俺と額が違うぞ。」
「こっちは助手だからね。安くて良いって言ったのさ。
そもそもバイト代出ると思ってなかったし。」
素人の家庭教師でこれだけ稼げるんだから悪くはない。
ありがたく頂いておこう。
「凪、中間試験が近い。あれから一花は勉強に協力的になったが、
あと2人、二乃と五月がまだだ。試験前には協力を取り付けたい。」
「あいあいさー」
上杉大先生にご説明頂いた通り中間試験が近い。
進級に関して試験の成績は切っても切れない関係にある。
期末で赤点を回避しておけば大丈夫だとは思うが、中間も良いに越したことはない。
「五月はダメだった。二乃の方へ向かうぞ。」
「諦めるの早くない?」
また教室でケンカしたのだろうか。詳しい話なんも知らないけど多分風太郎が悪いと思う。
「二乃!・・・お前、中間試験は?」
「ゲ。・・・・・みんな、行こ!あいつらあたしのストーカー。」
「ストーカー?元カレかなにか?」
階段で二乃を見つけたが、ゲ ときたもんだ。
まだ引っ張ってるよストーカーの事。良い加減忘れてほしい。
周りの取り巻きに元カレと勘違いされている。
「二乃!俺は諦めないぞ!祭りの日、一度は付き合ってくれただろ!
考え直してくれないか!あと一回だけ!一回だけでいい!
お前の家で、知らないことをたくさん教えてやる!」
「ふふふ・・・・」
この人何言ってるんですか。あかんわろてまう。
決して声に出して読みたくない日本語。二乃の隣にいる2人に絶対勘違いされてると思う。
ん?これもしかして俺も仲間だと思われてる?
「あんたね・・・・誤解されるでしょうが!!!」
「あぁぁぁぁ・・・・・口内炎がぁ・・・・」
「そんなに痛かったのか、凪。」
「なんで俺までビンタされてるんだ・・・・・」
二人して二乃から手痛い一発を食らってしまった。多分口ちょっと切れてる。
一花裁判長、これ冤罪ですよ冤罪。
「問題でーす!今日の私はいつもとどこが違うでしょーか!」
「リボンが違うねぇ。」
「正解です!有坂さんには四葉博士の称号を差し上げまーす!
トレンドのチェック柄を入れてみました!」
「四葉くんはいつも元気だねぇ。でもここ図書室なんだよねぇ。」
「お前の答案もチェックが流行中だ。良かったな四葉・・・・」
「さーいせーんたーん!」
図書室でショートコントをやってはいけません。
四葉くんと風太郎は仲が良いねぇ。
博士になったので呼び名をちゃんからくんに変更してみる。
四葉くんはいっつも無地の緑のリボン。今日は緑のチェック柄を付けている。
「中間試験まで一週間だ!徹底的に対策をするぞ!
だから三玖も日本史以外を・・・英語・・・だと!」
「おお、良いね。こないだのところ出来てるじゃない。えらいえらい。」
「・・・少しだけわかってきたの。」
「凪!お前が教えたのか?」
「うん。合間合間を縫ってね。英語は俺得意だから。」
三玖にはちょくちょく呼び出しを食らって個人授業をしていた。
やる気があるのは良いことだ。お陰で基盤が出来てきている。
積み上げ教科と言われる英語では、大事なことだ。ただテストに間に合うかどうか。
「その調子だ!では張り切っていくぞ!」
あっという間に放課後になった。
「疲れた~!」「一刻も早く帰りたい・・・・・」
「凪・・・・このままでは放課後だけだと時間が足りん。」
「そうだね。しかし詰めすぎるとね。逆効果になる。時間の増加よりは、
効率が上がるやり方があればいいんだけど。」
量は足りていると思う。質はどうだろうか。
珍しく真面目に勉強方針について話し合いをしていたら。
フー
「☆!?▲!?×▼!!」
一花さんが風太郎の耳に息を吹きかけていた。
すげぇな。声にならない声だった。
「一花!?なんだいきなり!」
「そんなに詰めなくてもいいんじゃない?中間試験で退学になるわけじゃないんだし・・・・
私たちも頑張るから!じっくり付き合ってよ。」
「・・・そうかもしれないね。風太郎。」
進級して、卒業出来れば良い。
期末試験で合格ラインまで持っていければいい。今は土台を固めるべきか。
「ご褒美くれたら・・・もっと頑張るんだけどな?」
「じゃあ駅前のフルーツパフェにしましょう!」
「私は抹茶・・・」
「・・・・今から行かない?食べたくなってきちゃった。」
そういう流れになったようだ。
「二人とも!早くしないと置いてっちゃいますよ!」
「誘われたね。行こうか。」
「いや俺はいい。」
「え?」
「帰って自分の勉強をする。お前だけで行け。」
「・・・・・・はい。」
そうか、こういう奴だった。キミぶれないねー。
男一人だが、付き合ってあげようか。
勉強に対するモチベーションを下げないことが、一番大事だ。
「有坂さん!上杉さんは?」
「先生は自分の勉強があるそうですよー。」
「あはは。フータロー君はそうだよね。」
「ざんねん・・・」
「有坂さんは来てくれるんですか?」
「俺でよければお付き合いいたしま、あぶねぇ!!」
視界の右から俺の腰めがけてタックルが飛んでくる。
殺気を感じて何とか避けた。いや危ないってホント。シャレにならん。
こんなことをしてくる奴は一人しか知らない。
「凪センパイ!何してるんすか!一緒に帰りましょう!」
陸上部の後輩、朝倉 茜だ。