「茜くぅん?コンクリートの地面で俺のマウントを取ろうとするのはやめなさい?」
「センパイなら避けてくれるって信じてました!」
「こやつめははは」
「あ”~痛いっす~・・・・」
わけのわからない信頼を持たれているので両サイドから頭をグリグリしてやる。
ケガしたらどうする。お前のスピードだと威力が未知数だ。
「陸上部は終わったのか?」
「サボりました!」
「・・・・・あのさぁ。」
「今は試験前ですよ?勉強するに決まってるじゃないですか!」
「わからなくもないが、ケースバイケースだ。お前の場合は違う。」
高校1年にして調子がいい時は100m12秒を切ろうかという恵まれた足の持ち主。
試験勉強している暇はない そう言っても許されると思う。
陸上部が無いのならこんな時間まで学校内で何をしていたんだろうか。
「センパイ。乙女の一人歩きは危険がいっぱいなんですよ?ついてきてくださいね!」
「茜、先客がいるんだわ。周りを見ろ。」
「ナ、ナギ君?その子は・・・誰?」
「すばしっこい後輩だよ。なかなか捕まらなくてね。手を焼いて困ってるんだ。」
「ネズミみたいな言い方しないでほしいっす!」
「初めまして!1年の朝倉 茜です!」
「茜は陸上部の短距離エースだよ。」
「あ!1年生でもの凄い早い子が居るって聞いたことあります!」
「センパイ?この人たちがあの中野さんですか?」
「そう。一人は・・・・この間見たよな。」
「上級生にとってもキレイな5姉妹がいるって有名になってます!」
「・・・・・よろしくね」
今の会話を聞いてわかる通り、茜は人懐っこい。
同性だし、中野5姉妹とも馴染めるだろう。
「有坂さんと朝倉さんは仲が良いんですね!」
「中学校からの付き合いだからねぇ。」
「照れるっす!」
「なにがだよ」
「センパイはとっても足早かったんですよ!」
「へぇ・・・・意外。」
「昔の話。今は練習してないから茜の方が速い。異性だとしてもね。」
「また陸上やりましょーよー!」
「うちの家計かつかつやねん。バイトせなあかんねん。」
「もー!そんなんだから自慢の後輩が部活サボっちゃうんですよ!」
「茜・・・・それとこれとは話が別だぞ。」
「ホントに仲いいね。二人とも。」
中学から一緒ならこれくらいは仲良くなるさ。
「センパイは中野さんたちと何してたんですか?」
「家庭教師のバイト。勉強教えてる。」
「ずるいっす!自分にも勉強教えてくださいよ!」
「お前は勉強より部活だろ?」
「推薦で入ったわけじゃないんですよ!成績が悪いとふつーに留年しちゃいますよー!」
そうなのかよ。なんでこんなとこ来たんだよ。
スポーツ推薦とばかり思っていた。それだと話が変わるな。
「・・・まあ昼休みなら良いんじゃないか。放課後は中野さんたちに付き合うからダメだ。」
「でも今日の分は終わったんすよね!じゃあ今からなら教えてくれますよね!」
「は?今からってお前・・・・あ、ちょっと!」
「凪センパイをお借りします!今からは自分の独占です!」
茜の通学路の方向へ強引に引っ張られてしまう。
話聞けや。
「そういうこと!悪いね!付き合えなくて!」
3人に手を振ってさよならをした。
「台風みたいな子だったね。」
「ナギも・・・大変。」
「じゃあ他のみんなを誘ってパフェ食べにいこー!」
「お前なぁ・・・・この時間だぞ。今から帰ったところでロクに時間ないだろう。」
「えへへ・・・・すいません。」
いつものコンビニのガードレールに寄りかかり、一息ついていた。
通学路の方向が逆なので、大体ここを付き添いの線引きとしている。
「なんでスポーツ推薦で入らなかったんだよ。」
「旭高校は陸上の推薦がないんですよ?」
「そんなとこ選ぶなよ・・・・」
家から近いとは言え聞いてあきれる。自分の強みを何だと思ってるんだ。
遠くても自転車使うなり電車使うなりしたらいいじゃないか。バスもあるし。
「時間がないなら泊まり込みで勉強教えてください!」
「本気で言ってんの?」
「本気っす!」
「俺の着替えがない。」
「じゃあ自分が今から取ってきます!」
「アホか。」
あいにくそんな気はない。
結構時間かかるんだぞ。
「まあ進級出来ないのは困るしな。さっきも言った通り、昼だ。
昼休みなら付き合ってやるよ。・・・・・と思ったが。」
「なんすか?」
「・・・勉強のできる同学年で良いだろう?どうして俺になる。」
「センパイを漢と見込んでのお願いっす!」
「なんだそれ。」
「こんなこと気軽に頼める友達いないんですよー!」
「先輩には気軽に頼むのか・・・・」
舐められてる。絶対友達多いだろお前。
「あーもうわかったよ。昼な。昼。放課後は向こうの方を優先させてもらうからな。
あっちは給料も出てるんだ。中途半端なことは出来ないんだよ。」
「自分もお金出したらセンパイ買えますか?」
「それニュアンスがちょっと違う。あと金を出すのであれば他の人に頼め。
俺そもそもそんな勉強出来ないし。
教えられない問題あるし。そして貸し切りにするのであれば俺は高くつく。」
なんか危ない発言をしだしたのでここまでにしておく。
ヒモじゃないか。こいつのヒモとか嫌なんだけど。いつかホストにハマるんじゃないか。
「じゃあな。茜。勉強するときはスマホで呼んでくれ。」
「はい!ありがとうございました!」
こうして、仕事が一つ増えてしまった。
昼の方は風太郎に丸投げさせてもらおう。
まだ3人だし、対応できるだろう。
「中間試験で赤点なら・・・・クビ?」
「そうだ。お前にも伝えてくれと言われた。」
翌日、風太郎からそう告げられた。
状況がまるっきり変わってしまった。時間をかけてじっくり。
その選択が消えた。リミットがいきなり短くなってしまった。
「それは・・・・・・参ったね。」
改善策を考えたが、何も浮かばなかった。
赤点回避はかなり難しいと思う。
「二乃の方はこっちで何とかする。お前は五月を頼む。」
「あ、そう?普通逆じゃない?五月ちゃんはお前のクラスメートだろう。」
「・・・・あれは無理だ。俺の手に負えん。」
ちょっと汗がにじんでるのを見逃さなかった。
追加のケンカ入りました。この状況でようやるな。
茜の笑い方は当初、えへへではなく、にししだったのですが、
四葉の笑い方と被るのでやめました。
あざとさを感じるので、後者が良かったのですが。