教室に戻ると中はかなり騒がしかった。
さっきの子、どうやら転校生だったらしい。
どうやらその話で持ち切りのようだ。
制服が違うとかなり目立つ。台風の目になっていた。
「なあ聞いたか有坂!転校生だぞ!楽しみだな!」
「そうだねぇ。楽しみだねぇ。」
「なんだよその力のない返事は!絶対お前の隣だぞ!」
「良い人だとは限らないじゃないか、伊達くんや」
「そうかもしれないけどさぁ!」
「それに1度席替えするかもしれんよ。それならキミにもチャンスがある。」
「2週間前にやったばかりじゃないかー!」「よく覚えてるねぇ。」
席替え2週間前だっけ。ふつーに忘れてたぞ。
そんな話をしていたらチャイムが鳴った。やがて、先生が入ってくる。
「授業を始める前に、皆ももう知っていると思うが転校生が1人転入する。
有坂の隣の席についてもらうから、宜しく頼むな。入って来なさい。」
一人の女子生徒が入ってきた。さっきの子と同じ制服を着ている。
あの集団のうちの1人だったんだろう。それにしても・・・・さっきの子とかなり似ていないか?
髪型は違うが、かなり似ている。双子だったのか?
ピンクの髪のショートカット。変わった髪型だ。左右非対称。
「中野 一花です。よろしくお願いします。」
「良し。あの空いている席に座ってくれ。
有坂!学校側の不備があって中野さんの教科書が準備出来ていない!
悪いが今日1日は教科書を共有してやってくれ!」
「あ・・・・わかりました」
聞いていないぞ。大したことじゃないが、事前に一言欲しかった。
面食らっていたら机をくっつけながら小声で話してくる。
「よろしくね。えっと・・・」
「有坂です。有坂 凪。よろしく。」
「ナギ君ね。改めてよろしくね。」
oh。もう名前呼びですか。間違いない。
陽キャだ。陽の者だ。光の使者だ。相容れぬ存在だ。
そして周りから男子の視線が痛い。どうしてお前が。そう告げている。
目は口ほどに物を言っている。
というか男子だけじゃなくて女子も一部入ってる。なんでよ。
「ねぇナギ君。さっき食堂で星の髪飾りを付けた子と喋ってたでしょ?」
授業中、おもむろに話しかけられる。
星の髪飾りを付けていたかどうかは忘れたが・・・風太郎以外と喋ったのは1人しかいない。
「星は見逃したかもしれないけど、キミと良く似ている子と喋ったよ。
名前は聞きそびれたなぁ。」
「やっぱり!ねね、どうだった?その子!」
「どうだったって・・・・礼儀正しい子だったっていう印象だよ。」
「それだけ?他には?好きになっちゃったとか!」
「好きって・・・5分も喋ってないからねぇ。」
中野さんもグイグイ来るなぁ。頭の処理がちょっと追いつかない。
一応緊張してるんだぞこっちは。
・・・・・ああ、そういえば。
「顔が良く似ていると思ったけど、双子かい?」
「双子・・・・・・・そう、双子だよ!」
やっぱり。だから気になっているのか。
「中野!随分楽しく授業を受けているな。転校初日とはいえ遠慮はしないぞ。
138ページの問3!答えてみろ、4択のサービス問題だ!」
あらー、目を付けられちゃったよ。喋ってばっかいるから。
「あはは・・・まいったなー。えーっと・・・」
トントン
「あ・・・①番です!」
「宜しい!お喋りをしていても授業を聞いていれば構わん!
ただし他の者の迷惑にならない声量にするように!有坂!」
「はい。」
「次からは助け舟は出すなよ!」
「大丈夫です。たった今、泥舟が沈みました。」
ひと笑い取った。
「たすかったよー。ありがとね。」
「どうも。うちの担任だからさ、目を付けられるとまずい。
内緒話はこの辺でお開きにしとこう。」
「そうしよっか。」
お節介かと思ったが、助けて正解だったようだ。
・・・周りの視線はさらに強くなったかもしれないが。
授業間の休み時間、中野さんは大人気だった。
容姿も良いし、陽の者だし。フレンドリーだし。ありゃすぐにクラスの中心人物になるだろう。
「有坂くんごめんねー。ちょっと場所貸して!」
「あいよ、お構いなく。」
トイレに行っていた隙に席が占領されてしまった。
「肩身が狭いようだな。有坂。」
「全くだよ。片倉くん。」
「あれじゃお話ししにいけないぞー・・・・」
伊達片倉コンビの輪に入る。避難先にちょうど良かった。
この2人は真逆の性格だが、仲が良い。一緒の中学校だったらしい。
ちなみにこの二人、バンドをやっている。他のメンバーは知らないが。
「あの制服って何処の学校なんだ?」
「黒薔薇女子と聞いた。」
黒薔薇女子・・・・お嬢様校じゃないか。
「へぇー。なんでそんなところから・・・・」
「家庭の事情ってやつだな!知ってるぞ!」
「伊達くんは物知りだなぁ」
伊達くんを流しながら中野さんを見やる。質問攻めにあっているが、嫌な顔一つ見せない。
やはり光の使者だな。まぶしい。まばゆい。
しばらくあの人と席が隣とは・・・・頭痛くなってきた。まあでも今日だけか。
教科書見せるのは。
「有坂、悪いんだが・・・・」
「ああ、チケット?良いよ。日付は?」
「この日だ。」
「・・・バイトですなぁ。料金だけね。」
「いつも悪いなー!」
バンドのライブチケットを買い取った。
ライブハウスを借りてやっているんだが、最低限売らなければいけない
チケットノルマがあるらしい。
大体いっつも協力している。1度くらいは聞きに行きたいんだが。
なんかいっつもバイトが入ってる。
嘘じゃないんです。ホントです。ネットでプロの演奏が聴ける時代なのに、
金払って素人の演奏聞いてもなぁとか思ってません。
「家庭教師のバイト?」
「そうだ・・・・報酬は相場の5倍。これを逃す手はない、のだが・・・」
翌日の食堂。風太郎からそんなことを言われた。
上杉家は金がない。風太郎は様々なバイトをしている。
掛け持ちという訳ではないが。
そんな上杉家長男の風太郎に家庭教師のバイトが舞い込んだらしい。
ミスターパーフェクトのこの男なら、同い年以下の教師は楽勝だろう。
しかし・・・・問題がその生徒である。
なんと、よりにもよって昨日食堂で問題をおこした、あの赤い髪の子。あの子らしい。
ウチのクラスの中野さん、双子と言っていた。あの子も中野さんなんだろう。
「凪。お前昨日、あの後喋ったんだろ。仲介役をやってくれ。」
「いやー残念。多分無理だ。そこまで仲良くなってない。
うちの転校生に話をつけるくらいしかできないな。」
「クソ・・・・・肝心なところで頼りにならん奴め。」
「すいません。」
人に頼らないで自分でなんとかしなさい。
「と、とりあえず、昨日のように一緒に昼食を・・・・よし、いたぞ。」
アプローチするらしい。えらい。やってみるのは良い事だ。
「お待たせしました。」
「も~遅いよ?」
「友達と食べてる!」
フツーに友達の女子と食べてた。
ダメですねコレ。付け入るスキなし。
ウチのクラスの中野さんも居た。
「ぐ・・・」
「あら?・・・・すみません!席は埋まっていますよ?」
「ぐぐぐ・・・・・昨日の仕返しかっ・・・・」
同席の雰囲気を醸し出したが、拒否。
良いね今の顔。中々ムカつく顔だった。
優越感に浸っているようなそんな顔。
今日はあなたにかまっている暇はないんですよ
あなたと違って友達が何人もいるので っていう顔。
「・・・行こうや、相棒。失礼したね。」
「あれ?ナギ君?どうしたの?」
「中野さん。・・・いや、俺の連れがちょっとね。メシ食ってるなら、別に良いんだ。」
ウチの中野さんから声を掛けられた。
ちょっと今はキミと喋りたくないな。人付き合いのパワーを充電したい。
まだ友達じゃない人と話すには精神力が要る。
「・・・・」
赤い中野さんはこちらに会釈はしてくれた。
俺はとりあえず敵意は持たれていないらしい。良かった。
俺からのアプローチはそのうちできそうだ。
とりあえず、諦めていつもの席に向かう。
席に座って昼食を取ろうとしたが・・・・風太郎がついてこない。
ウチの中野さんに絡まれていた。もう席に着いたので、食べながら眺めることにする。
・・・・押されてるな。
やっぱウチの中野さんには風太郎もタジタジだ。劣勢ムード。別にケンカはしてないけど。
中野さんが帰ろうとしたが・・・・! 風太郎が手首を掴んだ。
「余計なお世話だ。自分の事は自分で何とかする。」
「・・・・がり勉君の癖に、男らしい事言うじゃん!」
背中をバシンと叩かれている。そら手首掴んだらセクハラですよセクハラ。
慣れないことするから。慣れない返しをされた。
でもちょっと格好良かったですよ今の。
「はぁ・・・・・一体どうすれば・・・・」
風太郎は諦めてこちらの席に帰ってきた。
飯をささっと食ったと思ったら両肘をついて考え込んでしまった。
上杉コンピュータが今後の接し方を検索中だ。
俺も食ったので帰ろうと思ったが・・・
風太郎の背後からさっきの友達の一人が近づいてきている。
リボンをつけたオレンジの髪のボブカットの子。
紙を持っている。・・・俺より風太郎に興味があるらしい。
じーっと顔を覗き込んでいる。・・・対面の席を譲ることにした。
なお風太郎は考え込み過ぎて全く気付いていない。
「・・・・・・どうぞ。」
「ありがとうございます!」
席を譲って風太郎に至近距離まで近づいていた。
あらー。ちかいちかい。つーかこいつ気づけよ。この子も中々かわいいぞ。
モテるなあお前。
そんなやり取りが、この日の食堂であった。
2年次のクラスメートは伊達軍武将の名前で統一しています。
立ち絵もないキャラクターをあんまり出す気はなかったのですが、
後半で活躍させてしまいました。