前田くんはあの前田くんです。2年次は一花とクラスメート・・・のはずです。
日の出を感じる。光が顔に直撃したのを察知して、起きる。
起きた時の光景を一言で表すのならば、死屍累々。
累々というにはまばらかもしれないが。
6時。アラームを掛けていないのにそんな時間に起きてしまう。困った体だ。
部屋を出て、自動販売機に向かい、缶コーヒーを買う。
あの部屋には紅茶しかない。紅茶は得意じゃなかった。
こちらの予想は案の定的中し、風太郎がテスト前日の一夜漬けを提案し、実行された。
提案した時五月ちゃんが曲りなりにも風太郎の提案を受け入れたのが、印象的だった。
全員リビングで布団をかぶりながら寝ていた。・・・・いや、二乃だけは部屋だった。
「あ。」
缶コーヒーを買って、部屋の扉の前で気づく。オートロック。
またやってしまった。これで2回目だ。廊下で待ちぼうけを食らう羽目になった。
どうせ入れないんだ。折角だからマンションの外へ出る。
ルームキーがなくても、エレベータは使える。
玄関口から外に出て、近くのベンチに座る。
多少雲は出ていたが、今の太陽にはかかっていなかった。日光を直に浴びる。
清々しい天気だ。テストなんかやるな。外で運動でもしてろ。空がそう言っている。
本日は中間試験当日。運命の日である。
スマホを持ってきていてよかった。時間がわかる。
まあ、7時30分にはみんな起きてるだろう。そのあたりでマンションに入れてもらおう。
「みんな遅いよー!上杉さん!先行っちゃいますよー!」
7時になれば起きるだろう。そう思っていた俺はかなりのバカだった。
5姉妹と俺達。7人そろって遅刻をかましていた。
この人たちは8時まで寝ていた。そしてそこから準備を始めたのでもう8時15分ごろになる。
8時30分を過ぎれば遅刻だ。残念ながら今日のリムジン送迎は無かった。
玄関口の部屋番号呼び出しを20回くらい押したが起きなかったので、
結局スマホで電話をかけて起こした。
あの機械、押しすぎで壊れたかもしれない。
まずいな。カメラにばっちり俺の姿が映っているだろう。
「どれにしようかな・・・・」
「悩ましいですね・・・・」
「・・・・早くしろ!悩んでいるのなら気になるものを全部買え!金は俺が出す!」
腹が減ったと言ったのでコンビニに寄ったが、これである。
しかし空腹でテストに集中できないのも困る。全速力で走れば間に合うと思うが、
俺はしんがりを務めていた。
遅刻とか生まれて初めてなんだが。あと早くしろ。なにのんびりしてる。
風太郎と五月ちゃんの空腹コンビを催促して外に出たら、他の姉妹もトラブルに遭遇していた。
なんか小さい外国人の子に絡んでる。何してる。そんな場合じゃないぞ。
テストサボりましたなんて中野父に報告してみろ。あの人なら最悪訴えられるぞ。給料泥棒って。
一番最初、それも真っ先に起きていただけに中々イライラしているのが自分でもわかる。
「どうしたのさ?」
「・・・迷子の子・・・みたい。」
「みたい?」
「I wanna meet my mommy....」
だー!こんな時に!仕方ない!
誰かが人柱になるしかない!英語が出来る俺しかいない!
つか選択肢が俺と風太郎の2つしかない!この人たち英語喋れるわけないじゃん!
「風太郎!四葉くんはもう先に行った!あとの4人を頼むぞ!」
「あ、ああ。」
「ナギ君・・・大丈夫?英語だけど」
「何を自惚れている!キミたちよりはマシだ!とっとと行ってこい!
テスト受けられなかったら承知しないぞ!」
なんで俺がこんなことをしているのかわかっていなさそうなので流石に語気が荒くなる。
仏の有坂も流石にキレ気味だ。
もう早く行ってくれ。キミたちと1回離れたい。頭を冷やしたい。
5人を見送って少し安心した。
迷子の迷子の子猫ちゃんにアプローチしてみる。キミかわいいねぇ。
男の子か女の子かもわからん。
俺は犬のおまわりさんだよ。話してみなさい。
『Are you all right?』
「!~~~~~」
いや一気に喋らないでくれ。英語は得意だがネイティブの生きた英語は流石にわからない。
歌と会話は違うな。こういう時なんていえばいいんだっけ。
『take a breath、take a breath.... please slowly. 』
『~~~~~central hospital』
もうちょいゆっくりお願いしたい。しかし最後はわかった。
それだけ分ければ十分だ。
『Central hospital?』
『Yes.』
『I see. follow me.』
『・・・・thanks! Let's hold hands!』
手を繋いで目的地に向かう。8時32分。はい。遅刻決定です。
8時30分過ぎました。もう諦めた。のんびり行こう。
目的地、中央病院についた。
病院のカウンターで明らかに困っている外国の女性が居た。
あれだな。母親だろう。受付は3人体制で話を聞いているが理解できていないようだ。
ちゃんとした病院なら英語できる人はいると思ったのだが。
『Mrs!』
『!・・・~~~~!!』
感動の再会だ。よかったね。ぽかんとしてる受付の人に事情を話す。
「迷子のようです。」
「そうでしたか。助かりました。学生さんですか?」
「はい、旭高校の者で、診察希望ではありません。
今日中間テストだったんですが、おかげ様で遅刻です。どうもお世話になりました。」
「そ、そうですか。申し訳ありません。こ、こちらこそありがとうございました。」
「では失礼します。」
『Thanks a lot!』
『.....Farewell.』
もう二度と会わないであろう受付の人なので多少無礼でもいいやと思った。
別にこの人たちが悪いわけではないんだが。
うし。ゆっくり行こう。テストの日に遅刻の場合ってどうなるんだろ。ちょっと気になる。
母親と子供がこちらに向けて手を振っていたので、振り返す。
・・・・良いね。やはり感謝されるのは良い。お陰で機嫌がだいぶ良くなった。
大丈夫。まあちょっと内申点下がるかもしれんが、テストが0点になるわけじゃないだろう。
ふう。遅刻が確定したせいか少し落ち着いた。さっきまでかなり気が立っていた。
またやってしまった・・・・・反省だ。いつも俺はこうなんだ。
校舎の前についた。ちょっと寄り道をしたので9時15分。
うわぁめっちゃにらみ効かせてるよ。あの先生怖っ。
いざ自分が標的となるとたまったもんじゃないね。
「お疲れ様でーす。」
「遅い!遅刻だぞ!どこで何をしていた!」
「寝坊っす」
「いい度胸だな!指導室まで来い!」
「うっす」
「あ、遅刻したのって自分だけですか?」
「そうだ!貴様はよりにもよって中間テストの日に何をやっている!」
「それはよかったです。」
「喧嘩売ってるのか!」
学校に遅刻をしたのは人生初なので少しわくわくしている。風太郎と5人は間に合ったようだ。
もう何も怖くない。深夜テンションに近いものがある。生徒指導室に入るの初めてだな。
指導室に向かう道中、うちの担任に声を掛けられた。
「先生、報告がありまして。その生徒は次の時間から同じようにテストを受けさせます。」
「なんだと!」
「中央病院から学校に連絡がありました。
本校の生徒に迷子の外国人を見つけてもらいとても助かったと。
時間帯と身体的特徴を考えると彼です。」
「何?・・・・貴様、そうだったのか?」
「ええ。英語の授業って役に立つんですね。実感しました。」
「なら何故最初からそう言わない!」
「それを証明できるものがないですし、遅刻は遅刻ですし。寝坊したのはマジですし。」
病院の方からお礼の電話がかかっていたらしい。
気が利くねぇ。あの受付の人たち。ちょっと失礼な態度とってすいませんでした。
「そういうことなら仕方ない。勉強はしたんだろう。行って成果を見せてこい。」
「あれ、良いんですか。ありがとうございます。」
「では失礼します。有坂、ついてこい。」
意外と融通の利く人だった。指導室の中には入れなかったが。
「人助けで遅刻とは中々やるな有坂。」
「人生で初の遅刻でした。」
「今回はこっちの裁量でなかったことにしておこう。次の時間帯から皆と一緒にテストを受けろ。
放課後、1時間残れ。最初のテストの分はそこで実施する。」
「どうもです。」
「何、一般の方から感謝されることをしたのだ。俺も鼻が高い。よくやった。」
担任と別れ、教室のドアを開ける。
みんな席についていた。一花さんもいた。
「おー!有坂だ!遅刻か!」
「やあ伊達くん。テストはどうだい?」
「死ぬ気で赤点を回避してるぞ!」
「現在進行形か、いいね。」
「珍しいねー?有坂くんが遅刻って。何してたの?」
「ははは。不良になりたい気分だったんだよ。川村さん。」
「ナギっちが不良って・・・・・ないわー。」
「金髪にしたら意外と似合うかもしれんよ。屋代さん。」
「もっとないわー」
「ナギくん、あの子、大丈夫だった?」
「ああ。親は見つけたよ。朝はごめんね。一花さん。ちょっと気が立ってた。」
「ふふ。おかげで間に合ったし、いいよ。こっちこそごめんね。」
「遅刻しときながら中野さんといちゃついてんじゃねーぞ有坂コラ。」
「前田くん・・・・あんたこの子のなんなのさ?」
「リズムに乗せておちょくるんじゃねぇ!」
前田くんは不良っぽいがノリがいい。こちらのペースに合わせてくれる。
一笑い取ったところで、数学担当が教室に入ってきた。
「お喋りはそこまでだ!数学のテストを始めるぞ。」
テスト用紙が配られる。
「分針が40分に達したら開始する。名前の記入を忘れるなよ・・・・・・始め!」
中野父が勤めているのは正確には中央病院ではなく、総合病院なんですよね。
このような細かい違いが定期的に出てきます。申しわけありません。