「うわあぁぁぁあ!誰ぇええええ!?」
「四葉か・・・・俺だ。」
「図書館ではお静かに。四葉くん。」
平日の学校、図書室。三玖の勉強に付き合うついで、
風太郎と俺は担当である肝試しの準備をしていた。
正確には俺はキャンプファイヤーの担当なんだが、
面倒な役を押し付けられたと言っていたので手伝うことにした。
そう・・・・林間学校が近いのだ。
風太郎がオバケ役ねぇ。ちょっと想像つかないわ。
お化け屋敷に満喫してる姿なら想像できる。終始くだらんと言ってそう。
満喫じゃないなそれ。
「凪。お前どれにする。」
「この白い鬼のお面貰おうかな。ちょっと良い事思いついた。カツラはいらない。」
「・・・・いいこと・・・・?」
「バイト先から舞台で使う刀を借りてくる。」
「お前のバイトは本当に謎だな・・・・・」
目の部分と口の部分が開いている白い鬼の面。
かっこいいが、目と口のためのスペースが大きすぎる。
呼吸と視界確保に重点を置いているのだろう。
白い面に赤い横線が引かれている。傷跡を表現したのだろうか。歌舞伎役者の顔とは違う。なぜなら、般若のような角が2つ付いているからだ。
加工すればかっこよく怖く出来そうな気がする。センスいいな。どこから持ってきたんだコレ。
うちのバイト先でも使えそうだ。
「自習している隙に・・・・クラスの連中、面倒な役を押し付けやがって。」
「お気の毒に・・・・」「・・・・自業自得。」
後者だと思う。体育の授業とか単語帳持ちながらランニングしてないよな?
「上杉さんに押し付けるなんてひどいですよ!私も手伝います!」
「一応俺もいるよ。四葉くん。」
2人が3人になった。
「まあ林間学校などどうでもいい。俺に面倒ごとを押し付けた罰だ。
存分に怖がらせてめちゃくちゃにしてやる。」
「ノリノリじゃん。」
「じゃあ林間学校が楽しくなる話をしましょう!」
四葉くんが語りだした。
「クラスの友達が言ってたんです!最終日のキャンプファイヤーのダンス!
そのフィナーレに踊っていたペアは・・・・生涯を添い遂げる縁で結ばれるんです!
ロマンチックですよね!」
「くだらないな。非現実的だ。」
「・・・・うん・・・・」
「クールだねぇ二人とも。」
「冷めてる!つまらないですよー!」
そだね。ただの迷信だね。
しかし俺は見逃さなかった。三玖が少し顔を赤らめたのを。
親友。男になってこい。絶対どうにかしてペアにしてやる。
「やっほー。」
「一花さん。やほ。」
一花さんが合流した。
「うわ、なにその恰好。」
「構うな。今日は数学だ。」
風太郎は金髪のカツラと狂ったピエロのようなマスクをかぶったままだ。
さては気に入ったな?キミ。
「ごめーん。これから撮影が入ってるんだ・・・・それでね。
そういう連絡を出来たらいいなと思って。メアド交換、しよ?」
本日は付き合えないらしい。あれから確かに多忙になった。
「メアドね・・・・・そんなもん必要あるのか?」
「いやー必要でしょ。現に俺とはしょっちゅうメールしてるじゃないか。
花火の時だって連絡が出来れば違ったでしょ。」
休日の風太郎から、たまにらいはちゃんの自慢メールが届くのがうっとおしい。
大抵はらいはちゃんの写真付きでほっこりするから良いんだが、大体20%くらいの確率で文章だけの時がある。その時は思わず舌打ちしてしまう。
今度言っておこう。俺のメールアドレスをSNSの代わりに使うなと。
「・・・はい!これでおっけー。ほら、ナギ君も!」
「あいあい」
一花さんとメアド交換を交わす。
「アドレス交換大賛成です!上杉さん!有坂さん!
これが終わったら私とも交換しましょう!
「なにしてるんだい。折り紙なんか持って。」
「友達の友達が入院したので、千羽鶴です!」
「ほぼ他人じゃないか・・・・あと、病室にはもっていかない方がいい。」
邪魔だろうから。折るのは良いが、持参は代表の1羽だけにしといた方がいい。
「そんなことより勉強をしろ!ええい貸せ!凪!お前も手伝え!」
「紙ヒコーキと紙でっぽうしか作れないからおしえて。」
「クソッ・・・・いいか!まず三角に二回折って・・・」
「おー中野。良い所に居たな。このノート、クラスのみんなに配ってくれるか。」
「はーい!」
社会の先生が通りがかった。四葉くん、お願いを無事受諾。
なにしてんねん。折角手伝うのに水の泡だ。
「それじゃあ、行くね!」
「・・・がんばって・・・」
「一花ファイト!」
「四葉くん?キミも頑張るんだよ?」
一花さんは撮影に向かっていった。
隣で風太郎のスマホが鳴る。メール受信中と出てる。
俺はメールを出してないので、上杉父、らいはちゃん、一花さんの恐らく3択だ。
風太郎がスマホを見た。ひきつった顔をしていた。良くないメールだったらしい。
「やーやっぱ家庭教師としてはぁ!やっぱ5人のメアドを知っておかないとなぁ!」
「風太郎くん。ここは図書室だよ?静かにしなさい。」
急にどうしたこいつ。棒読みになって。
ん?俺のスマホにもメールが届いた。
差出人は中野 一花。
『バラされたくなければ姉妹全員のメールアドレスをゲットしてね☆』
と書いてある。添付が2枚。写真だな。
どこかに指を差し大きく口を開いている俺、そして後ろ姿の一花さんが映っていた。
車の窓から撮影しているようだ。
これは・・・・花火大会の時の。あの社長、写真を撮っていたのか。
どうしてそんなことを。
まあ別にいいなこれはバレても。一花くん甘いねぇ。それじゃあ俺はひるまない。
もう1枚も同じ写真だ。添付ミスかな。
どうして同じ写真を・・・・・うん?
下の方に時刻が書いてある。再生ボタンがある。シークバーがある。拡張子mp4。
これは・・・・・・写真ではなく・・・・動画っ・・・・・!!
「・・・・・・・・・俺もみんなのメールアドレス欲しいな。」
「協力・・・・する。」
三玖がスマホを出してきた。勿論俺も交換する。
「二乃と五月は食堂にいましたよ!さー行きましょう!」
「おい!お前のメアドは!・・・・ったく。」
2人は食堂とのこと。俺も付いていこう。
「お断りよ!お!こ!と!わ!り!」
「あなたのアドレスを知るメリットがありません。」
「想定してた通りの反応だな・・・・・・」
二人を見つけたが、御覧の通りである。
五月ちゃんと仲直りしたんじゃなかったのかよ。あんま変わってないぞ。
「ナギくんは教えてください。わからないことがあったら連絡させてください」
「やったー。」
こちらは難なく五月ちゃんのメールアドレスをゲットした。
「クッ・・・・だがこれならどうだ!今なららいはのアドレスもセットで!
お値段据え置きのお買い得だ!」
「・・・・・」
あ、悩んでる。ちょうどいいのでダメ押し。
「ちなみに俺のメールアドレスにはたまーに風太郎のらいはちゃん自慢メールが届きます。
写真付き。」
「・・・・・背に腹は代えられません。」
五月ちゃんがスマホを差し出した。
「じゃあ風太郎。あのメールの宛先を五月さんにして俺消しといてね。」
「断る。お前にも送る。」
「なんでやねん」
誰かと共有したかったんじゃないのかよ。一人でいいだろ。
「身内を売るなんて卑怯よ!」
「二乃は教えてくれないのか?」
「当たり前よ。」
そう、ここが難しい。しかし俺には1回だけ使える切り札がある。
「二乃くぅん?花火大会の時にみんな探すの手伝ってあげたよね?
その時の借りを返していただきましょうか。」
「・・・・・まぁ有坂なら良いわ。こいつと違ってうるさく勉強って言ってこないだろうし。」
「よし、勝った。」
二乃からアドレスを受け取った。任務達成。あと四葉くんか。
「上杉、あんたはダメよ!どうせ勉強しろとか言って問題をメールで送ってくるでしょ!」
確かにやりそう。宿題とか抜かして送ってくるのが容易に想像できる。
「・・・・・ではお前抜きで話をしよう。俺と凪と、他の4人で内緒の話をな・・・・!」
お、そう来たか。上手いねぇ。昔っから上手いんだわぁ。こいつ。
駆け引きというのをわかってる。
「・・・・か、書くものをよこしなさい。」
風太郎は生徒手帳を差し出した。
堕ちた。難攻不落の二条城、もとい二乃城が落ちたぞ。
軍師上杉、策士過ぎる。
「これで全員分ですね!」
「・・・あと一人いるだろ?」
「・・・・・・・私を忘れてます!」
「四葉くんはおっちょこちょいだなぁ」
四葉くんのスマホを受け取ってアドレスを交換した。
スマホを風太郎に渡そうとした時、四葉くんのスマホが鳴った。
このバイブレーション、着信だ。バスケ部 部長と表示されている。
「バスケ部部長だと・・・・・お前、まだ連中と何か」
「上杉さん!・・・・・まだちょっと頼まれごとがあったので、失礼します!」
行ってしまった。風太郎は追いかけていった。
俺はメアドを交換できたので、良しとする。バスケ部に向かったのだろう。
トラブル関係は上杉先生にお任せしよう。四葉くんと仲いいし。
「ふー。」
本日の勉強を終えて帰宅。風呂に浸かっていた。
父さんも母さんも仕事で遅いので一番風呂だ。別に何番でも良いけど。
何の気なしにスマホを見てみる。
5人の連絡先か。折角だし試しに誰かに連絡してみようか。
何か話す話題のある人は居たかな。
一人いたな。短く文章を打って、送信する。
返事は帰ってこなくてもいい。来なかったらそれはそれで構わない。
10分後くらいに返信が帰ってきた。意外だった。
内容は・・・・ああ。いや、作ったことはない。似たようなものなら、ある。
本格的なものでは全くないが。
返信を打ち込んで、返す。
また、返ってきた。結構返してくれるものだ。予想が外れた。
・・・・む。そうだっけ。だいぶ前の話だからな。
どうやら自分の趣味に関することなら、割と話してくれるようだった。
頭に入れておこう。三玖もそうだった。武将きっかけで仲良くなったし。
『こないだはありがとう おかゆが少し好きになったよ』
『別にいいわ あれくらい
そういえばあんたパエリアの話してたけど作れるの』
『知ってるだけ 作ったことはないよ
ジャンバラヤとかいうのなら1回だけ作ったことがあるかな』
『ジャンバラヤって・・・・・・別物じゃない』
『そうだっけ』
『具が違う パエリアは海鮮系の具材がメイン
ジャンバラヤは肉や野菜がメイン あと味付けも違う』
『納得 ネットで調べて海鮮系は下処理が面倒だったから作るの辞めたんだ 思い出したよ』