五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

26 / 130
24

 

 

林間学校の前日。

三玖は女子トイレに向かった。

三玖が入った女子トイレから一花さんが出てきた。なんというマジック。

 

 

そっくりだ。カツラ・・・ウイッグをつけている。

全くわからない。こんなもんどうやったら見分けがつく。

あのアルバムもそうだ。あれ誰が誰だよ。目元がわずかに違った気がしたが、

どの目元が誰なのかがわからない。

 

「あれは・・・一花か?」

「違います。中野・イリュージョン・三玖です。入れ替わるつもりみたいだ。」

 

 

風太郎とトイレの陰から三玖を見ていた。

折角なのでついて行ってみる。俺ハブられてるかもしれないし。

気になるわぁ。そういうの……

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方の教室。いるのは二人だけだった。

 

一花になった三玖と、前田くん。

あの不良がなんの用だ?タイマンか?ダチになるのか?

良かった。俺はハブられてなかった。

 

教室の外から風太郎と一緒にのぞき見をしている。

 

 

「中野さん・・・・来てくれて、ありがとう。」

「えっと・・・・前田君だっけ?クラスのみんなは・・・・?」

「悪ィ・・・・キミに来てもらうために、嘘ついた。」

 

 

あー。これは。告白かぁ。

そうかそうか。つまりキミはそういうやつなんだな。前田くん。

 

テストの時に遅刻で絡んできたのもそういう事か。

思えば、一花さんの転校初日からそうだったかもしれん。何か鋭い視線があった気がする。

 

 

「俺とキャンプファイヤーで、一緒に踊ってください!」

 

「・・・・わ、私と?・・・なんで?」

ブッ

 

噴き出してしまった。なんで と来たか。笑っちゃうわ。

やだなぁ振られるのって。人が振られているのを見たくもない。恥ずかしくなってきた。

共感性なんとかなんだな、俺。

まあでも、なんで告白するのかわからないって言ってたしな。

三玖はまだその辺がわからないらしい。でも風太郎くんのことは好きなんだろ?

 

 

「それは・・・・その・・・・好き、だからです。」

 

噴き出したがバレてなかった。良かった。聞こえてなかったようだ。

 

 

「ありがとう・・・・返事はまた今度・・・・!」

「今答えが聞きたい!中野さん、お願いします!」

 

 

絡まれてるようだ。しかし正攻法。

前田くん、中々純情だな。俺の中で株が上がったぞ。

見た目に合わず中身は結構ふつーなんだね。

 

 

「あれ・・・・中野さん、雰囲気変わりました?」

「!?」

 

あ、バレた。まあそうなるよね。教室の中の時と全然態度違うもん。

受けるにしろ断るにしろ、もっと元気にはっきりしてるはず。

 

「髪?・・・いやなんだろ・・・・もしかして、他の誰かと・・・・

入れ替わったりしてるんじゃ・・・」

 

 

すげぇ。完璧じゃないか。名探偵前田。

一花さんじゃないのはわかったにしてもよくその発想になるな。

俺達よりも中野 一花をよく理解している。もうこれ本人と付き合っても良いんじゃないか?

 

 

 

「風太郎、行ってやりなよ。」

「どうして俺が・・・一花はお前のクラスメイトだろ。」

「いやそうなんだけどさ、あれは中身が三玖だから。お前が行った方が良い。」

 

 

三玖さんのポイントを上げる大チャンスですよ。上杉大先生。

まあ本当は逆で、三玖が風太郎のポイントを上げないといけないんだけど、良いか。

風太郎を扉に向かって突き飛ばす。

 

 

「・・・っつ、おい・・・なんのつもり」

「!? 誰だおめーは・・・。聞いてやがったのか。」

 

 

接敵。

 

 

「・・・・一花、お前の姉妹たちが呼んでたぞ。早く行ってやれ。」

「おい、何勝手に登場してんだ?コラァ。気安く中野さんを下の名前で呼んでるんじゃねぇよ。」

「・・・・返事くらい待ってやれよ!少しは人の気持ちを考えろ!」

 

「ふふ・・」

 

 

キミが言うのかそれ。絶賛すぐ隣にいるかわいらしい女性の気持ちを考えてほしい。

しかしまぁ、今のやり取りを見て、風太郎なりに思うところがあったようだ。

 

 

「・・・・何勝手に人の話聞いてんだよ!お前にゃ関係ねーだろ!」

「一応関係者だ。」

 

あれ?俺達が中野家の家庭教師をしてるのってみんな知らないんだっけ。

 

「とっとと出てけ!オラァ!」

 

まずいな。喧嘩になったら俺も行くしかない。

そうなったら前田くんのメンタルボロボロだよ。どーしよ。

そんな時、一花っぽい三玖が、風太郎の腕を掴んで、こう言った。

 

「わたし、この人と踊る約束してるから!」

 

 

おめでとうらいはちゃん。この林間学校で、お兄ちゃんはでっかくなって帰ってきます。

楽しみにしててください。

 

 

 

 

「・・・・・う、嘘だ!踊るにしたって、有坂じゃなくて、こいつなんですか!?」

「ナ・・・ナギ?」

どうしてそこで俺の名前が出る。前田くん、キミ俺と一花さんのこと意識しすぎ。

ちょっと前まで隣に座ってただけだから。なんもないから。釣り合わんから。

 

「こ、こんなやつ中野さんに釣り合わねぇ!」

 

 

風太郎くん、キミもダメだそうです。

しかしこれよく考えたらダメだよね。この場合キャンプファイヤー踊るのは風太郎×一花じゃん。

らいはちゃんごめん。俺の早とちりだった。

どうにかして女優を失脚させなければ。

 

 

「そんなことないよ!フータローは・・・・格好いいよ・・・・」

 

 

クソ。その顔が見たい。見せろ。こっち向け。廊下からじゃ見えねぇ。

誰か鏡を持ってこい。それか前田くん、今そこで写真取れ。

 

 

「つ、付き合ってるんですか・・・・」

「ラブラブだよね!・・・・仲良く一緒に帰ろっか!」

 

 

あ、まずい。廊下に来る。ダメだな。逃げる場所がない。

窓から飛び降りるしかない。

 

 

「ちょ、ちょっと待てぇ!・・・・うおっ!有坂!?」

「どうも有坂です。」

「お前までなんでこんなところにいるんだよ!」

「そんなことより、彼らに何か言いたいことがあるんじゃないのかい。」

「そ、そうだった。・・・おい!恋人同士なら手を繋いで帰れるだろ!」

「!」

 

スルーしてくれるんだ。この男の人優しい。

 

 

「なんだ?出来ないのか?やっぱり怪しいな?なぁ有坂!」

「そうだねぇ。でも腕は組んでるよ?」

「手と手じゃないと認めねぇ!」

 

何故か前田サイドの住人になった。任せろ前田くん。

俺は全力でこの2人をくっつけるぞ。一緒に頑張ろう。

 

 

 

「あのな・・・・別に恋人同士だからと言って、

絶対に手を繋がないといけないわけじゃ・・・!」

パシッ

 

三玖が、風太郎の手を取った。

 

 

 

「い、、一花?」

「えと・・・・これは・・・・その・・・・・とにかく初めてじゃないから!」

 

「・・・・クソ!わかった、わかったよ!」

「おめでとうらいはちゃん」

「凪・・・・どうした。」

「なんでもないです」

 

 

しまった。心が声に出ていた。

キャンプファイヤーは任せてください、躍らせます。させてみせます。結ばれます。結ばせます。

やはり悪代官一花を成敗せねば。

 

「あの・・・・私が聞くのも変だけど、なんで告白しようと思ったの?」

「な・・・・中野さんがそれを言うか・・・・・」

 

ひどい。その質問は死体蹴りに近い。むごすぎる。

純粋なる剣。言葉のナイフ。

 

 

 

「一言でいえば・・・・相手を、独り占めしたい。・・・・これに尽きる。」

「・・・・!?」

 

 

 

 

恋の形は人それぞれだ。前田くん・・・・彼はそういう事らしい。

三玖は驚いた顔をしている。何故告白なんてするのか

そう言っていた人にはかなり衝撃的なコメントだったようだ。

良い仕事だ。前田くん。

 

 

「あーあ・・・・何言ってんだか・・・・おい!中野さんを困らせるんじゃねぇぞ!」

「俺が今絶賛困ってる最中なんだが。」

 

すげぇ。あんたすげぇよ前田さん。男だ。ホンマモンの漢がおる。兄貴と呼ばせてください。

振られてなお、告白した相手を思いやり、その後の幸せを願う優しさ。素晴らしい。

そして親友。お前冷めすぎだ。

 

 

 

 

「行こう!フータロー!」

 

 

一花っぽい三玖と風太郎は腕を組みながら去っていった。

折角なんだから手も繋いでいけばいいのに。

 

 

 

 

 

「あー!ったくよー・・・・林間学校までに彼女を作ってキャンプファイヤーで踊りたかったのによぉ!」

 

「あの子はライバルが多すぎるだろう。前田くん。クラスで1.2を争う人気だぞ。」

 

「おい有坂!悔しくねぇのか!お前も中野さんの事が好きだったんだろ!」

 

「え?いや俺は別に?」

 

「そうなのか!?」

 

「うん。なんでそう思ったのさ?」

 

「だってお前ら授業中だけじゃなくて休憩中もめちゃくちゃ仲良かったじゃねぇか!」

 

「そうかもしれんけどさ。友達のそれと何が違うのさ・・・・」

 

「顔が違うんだよ!喋ってる時の中野さんの顔が!なんか見てていつもとちげぇーんだよ!」

 

「まぁーそれはねぇ。」

 

自分家庭教師ですから。

キミたちの知らない中野 一花を知ってますから。その違いだろう。

でも風太郎曰く自室が散らかし三昧でえらいことになってるらしい。恋愛はちょっと。

 

 

「キミ一花さんのこと大好きすぎるだろ」

 

「ほら!名前で呼んだ!」

 

「前からです」

 

子供かあんたは。休憩中もずっと見てたのかよ。ちょっと怖いぞ。

 

 

 

 

「まあ、なんにせよお疲れ様。」

 

「はぁ・・・・結局独り身かよ・・・・」

 

「元気出して。今度一杯奢るよ。」

 

「・・・・ラーメン食わせてくれるのか?」

 

 

そこ酒じゃなくてラーメンを連想するんだね。

まあ、未成年だけど。そういうとこ好きよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前田くんと別れて陸上部の部室に来ていた。

ラーメンは林間学校の後で奢ることにした。お気に入りのところへ連れて行ってやろう。

 

 

「よし。茜。この角度で押さえててくれ。」

「りょーかいっす!」

 

 

茜に手伝ってもらい肝試し用の小道具に細工を施していた。

刀の先端に血がついているように見えるよう、赤い塗装を施す。

そしてニスを塗って、必要以上にテカらせる。現地は夜だ。

折角色を塗っても暗闇で見えなくなる可能性がある。

 

 

「かっこいいお面ですね!」

「やっぱそう思うか。だがこれではつまらんのだ。」

 

 

これに不気味さや得体の知れなさを追加したい。だから顏付近の肌色を徹底的に隠す。

だからお面の裏を加工して、黒いブラインドをつける。

ブラインドは薄い黒のカーテンか何かをつける。

そうすることで、丸見えだった目と口が消えて、肌色が見えなくなる。

ベージュの見えない人型というのはかなり不気味に思うはずだ。

 

 

視界は悪くなるが仕方ない。着ぐるみの中に入っているよりはかなりマシだ。慣れている。

後は露出している首を隠す黒のフェイスカバーを着ればいい。現場は暗いはずだ。

フェイスカバーで十分ごまかせる。

・・・・・・フェイスカバーと口のブラインドが被ったな。

ついでに折角なので赤の塗装をお面の何か所かに丸く施す。

血痕と認識してほしい。

 

 

「茜。写真撮ってくれ。どう見えてるか知りたい。」

「撮りますよー!」

 

取ってもらった写真を見せてもらう。

かなりイメージに近かった。良いだろう。

 

あとはバイト先から持ってきた使い古された男用の着物と草履を着れば、完璧だ。

味がある。若干ボロボロなのが野武士感が出ている。

 

「結構怖くなりましたね。やっぱり目が真っ黒なのが怖いです!でもカッコいいです!」

「そうか?来年コレ使うか?」

「くれるなら貰います!」

「お面だけな。手伝ってもらって悪かったな、茜。」

「お土産お願いしますね!」

「・・・買えるタイミングあるのか?修学旅行じゃないんだし。」

 

 

 

 

 

塗装した刀を陸上部の部室で乾かして、明日回収することにした。

なんかあれだな。かなりやる気を出してしまったな。まあいいか。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。