起床。
朝日がわずかに差し込んでいる。
6人はまだ起きていない。やはり俺が一番早かった。
右には風太郎。左には・・・この髪色は一花だな。両者寝ている。
昨日の間に入浴時間を把握しておいた。
6時。ちょうど入浴可能になる時間だ。一人で朝風呂を満喫する。
「ふー。」
誰かしら居るものと思っていたが、俺だけだった。
人がいないのでやりたい放題する。
桶で温泉を救いタオルを突っ込む。濡れたタオルを目の上に乗せて、
簡易ホットアイマスクにした。
目が痛い。睡眠時間が不足している証だ。昨日は珍しく昼寝したのに。
睡眠に対して神経質な俺は、いくら風太郎でも隣に人が居たらそう簡単に寝れない。
睡眠もそうだが、たまには一人になる時間がときどき欲しい。
やはり集団生活には向いていないようだ。
昨日の寝たふりもそういうことだろう。自分の事は自分が一番よく知ってるつもりだ。
風呂を上がって体をふいていたら、入浴希望者が来たようだ。ドアが開く。
「・・・・」
「・・・・・・・ん?先生?」
「・・・有坂か?」
うちの担任だった。
「まさかここに宿泊していたのか?」
「そうですよ」
「そうか。それは好都合だった。私たちも吹雪でここに泊まることになったのだ。」
「・・・・わーお。」
何たる偶然。昨日の今日まで誰とも知り合いに会っていないが。
「よし。では今日から合流だ。他の連中にも伝えておけ。
遅れを取り戻すため、出発は朝8時だ。」
「わかりました。」
「あれ。五月さん。なにしてるの。迷ったの?」
「な、ナギくん。探しました。どこに行っていたのですか。」
「朝風呂です。おかげでおめめパッチリ。」
部屋の前で五月ちゃんがなんか立ってた。
ドアノブを握って固まっていたが。
「俺探してた?ごめんね。みんな寝てるもんだと思って。黙って出ちゃった。」
「いえ。大丈夫です。私が起きた頃には姿がなかったので・・・・」
「そうそう、実はさっき先生に会った。学校のみんなもここに泊まってたようだよ。」
「え!・・・・急な団体客というのはうちの学校だったんですか。」
「らしいね。8時出発だ。みんな起こそう。」
「あ、ちょっと!」
なんか焦ってるようだが遠慮なく開けさせてもらう。
遅刻の前科があるので、もう容赦なく起こしにかかる。
折角あの遅刻は取り消しになったのだから、これからは遅刻0で行きたい。
出発8時はなかなかだ。
「おらー。キミたち起きなさい。」
「・・・ぬお。凪」
「ナギ君・・・もうあさ?」
5人でスヤスヤだし。1人ずつ起こす。
「何よ有坂・・・・うるさいわね・・・・」
「ナギ・・・・おはよう」
「おはよー・・・・ございまーす・・・・・zz」
「み、みんな寝てました?」
「御覧のとおり寝てますよ。五月さんも手伝って。まだ四葉くんが寝ながら起きてる。
もしくは起きながら寝てる。」
「そ、そうですか・・・・」
なんか腑に落ちていないように見える。部屋の中に何かがあったのだろうか。
「学校の連中もここに泊まっていたので今日から合流です。
出発は8時。遅れないように。」
今日の朝、旅館からは通常通り合流した。
2日目。オリエンテーションをさくっと終えて、飯ごう炊さん。
各々しっかりと働いていた。
「有坂。飯はどうだ。」
「火がかなり弱い。片倉くん。伊達くんから薪をもう少しもらってくれ。」
「承知した。」
「追加の薪だぞー!」
「丁度良かった・・・・・伊達くん。もう少し細く切ってほしいなぁ。」
「薪割はつかれるんだー・・・・」
伊達くん薪割苦手か。力はあると思ったが。
まさか1回1回フルスイングしてるんじゃないだろうな。絶対外すぞ。
火力の調整が難しくなるが、問題は火が死にかけてることだ。もっと細かい薪が欲しい。
「こっちは具材の下処理終わったよ。有坂くん。追加の仕事ある?」
「川村さん、屋代さん。じゃがいもの芽もとった?」
「もちろん!」
「完璧だね。ナイフは使えるかい。薪に火をつけやすくするために薪の一部を削り取ってほしい。」
「どうやるの?」
「こんな感じ。片倉くんにもやってもらうから、見ててくれ。」
フェザースティックと呼ばれるやり方だ。木の一部を削りだし、細かい繊維を作る。
細かい繊維を木の本体から離れない程度に削り出し、繊維を導線に薪全体に火をつける。
「こういう感じ。」
「綺麗だね。やってみるけど・・・・私達じゃ力足りないかも。」
「じゃあ交代しよう。代わりに火を見ててくれ。」
「わかった!」
「よし。片倉くん。やろう。」
「任せろ。」
「有坂くん。薪は大丈夫そうだよ。火は安定したから、少し休んで。」
「いいのかい?」
「火を見るだけなら大丈夫だぞ!」
「働きすぎだ。少し休んだ方が良い。」
「ここからならウチらでもやれるっつーの!」
「じゃあ任せた。カレーのアクとりもよろしくね。」
その辺に座り込んで休憩する。うちの班は1人少ないんだが、峠は越えて安定した。
有坂、伊達くん、片倉くん、川村さん、屋代さん。この5人。
ちなみに俺以外のこの4人。中学校が同じで、バンドを組んでいる。
俺だけ仲間外れ。だが、上手くやれていた。
火の問題だけだ。飯ごう炊さんの課題は。
あとは知識を持ってる人が1人でもいればそれを共有して上手く行く。
休憩しながら周りを散策する。中野姉妹もそれぞれ頑張っていた。
「これ楽しいですねー!」
「もう薪割らなくていいよ・・・・・」
「四葉くん、まわりをちゃんと見なさい。薪でボウリングでもする気かい。」
「有坂さん!おつかれさまです!」
「折角だからちょっともらうよその薪。」
「あ、ああ、良いぜ。」
「ありがとう。」
「なんだったんだ?あいつ・・・・」
「今のは有坂さんです!私の友達です!」
「これ、もう使った?片づけておくね。」
「あ、ありがとう!・・・・・・・俺の部屋も片付けてほしいぜ・・・・」
「良いよな、中野さん・・・・・・」
「逆だな。キミが一花くんの部屋を片付けることになる。」
「よお、ナギ。・・・・・それもありかも」
「ナ、ナギ君!もーやめてよ!」
「ははは。しつれーい」
「な、中野さんって、本当にナギと友達なの?」
「んー・・・・・そうだね。今は、友達だよ」
「そろそろ煮込めてきたかな・・・・」
「あと3分24秒・・・・」
この人は細かすぎる。まあ変にアレンジを加えるクラッシャーよりはいい。
レシピを通りに実行できる人は料理が上手くなるタイプだ。
「五月さん。時計を見るのは良いけど、一緒に鍋をかき回した方が良い。
底が見えないからわかりづらいけど、カレーは焦げるんだよ。」
「ナギくん。わかりました。何秒に1回かきまぜれば・・・・・」
「フィーリングでいいです。それか同じ班の人に聞いてくれ。
焦げなければ何でもいい。手段は問わない。」
「は、はぁ」
鍋のどの部分を回せばいいとか聞かれそうなので逃げる。
変なアドバイスするんじゃなかった。
「ねぇ、中野さん。有坂くんと知り合いなの?」
「あの人は・・・友達です。」
「・・・・・な、なに入れようとしてるの?」
「・・・お味噌。」
「自分のだけにして!」
はーいクラッシャー登場でーす。カレーと味噌ねぇ。どうなんだろ。そんな悪くはないと思うが。
辛いもの食べて味噌汁飲んだら口の中は火事になるけど。直接入れたらどうだろう。
ただ、間違いなく違うことが一つある。
「三玖、味噌を入れるの?」
「ナギ。・・・そう。おいしくなるって聞いた。」
「入れるにしても分量が多すぎる。その中には既に人数分のルーが入っているんだろう。」
「・・・たしかに。」
「お玉ですくって、ちょっと入れてみ。んではい。食べる。」
「・・・・辛い・・・」
「辛い?ちょっとしか入れてないのに?そもそも水が足りないんじゃないか?
まあとりあえずダメだ。諦めてくれ。
今日はどっかの誰かさんが食べるんじゃないからちゃんとしたカレーじゃないとダメだ。」
「うん。ありがと」
「愛する男に食わせる時は入れていい。あいつは何でも食う。」
「ふ、フータローはそんなんじゃない」
「俺は風太郎って言ってない」
「うるさい、いまなんでも食うっていった。」
「バレたか」
「た、助かったあ。今の人と友達?」
「うん。友達。」
「なんでご飯焦がしてるのよ!」
「やったことねーんだから仕方ないだろ!」
険悪な班が1つあった。あれは二乃の取り巻きだったと思う。
「使えないわね!文句いうなら私達だけでやるから・・・!」
二乃はやっぱり他の男子に対してもああなのか。見つかる前に逃げ
「有坂!ちょうどいい所に居たわね!手伝いなさい!」
捕まった。
「何すか姉御。」
「こいつらがご飯を焦がしたのよ!任せるとカレーも焦がしそうだし、
あんたがいるなら手伝ってもう一度ちゃんとご飯を作らせなさい!」
「えー。キミの方が料理は俺より得意だろ。」
「私はカレーの管理で忙しいの!」
「はいはい。」
カレーの管理て。あとは煮込むだけだろ。もうちょっと何かないんか。
たった今喧嘩中の相手には上手く教えられないわな。
「なんだよ!俺らだってがんばってるんだぞ!」
「まあ待ってくれよ。このご飯、そこまで焦げてるわけじゃないぞ。
上を掘り起こせば無事な部分はある。」
焦げたと言われている飯ごうを見せてもらった。
中心部分は普通に白かった。
「そっちはどうだい。」
「・・・・・こっちも似たようなもんだな」
「よし。じゃあ二人で無事な部分だけ救出して一つの飯ごうに移してくれ。
これなら追加は飯ごう一つ分で済む。清掃もよろしく。
空の飯ごうに米を入れて、もう一回行くぞ。一人手伝ってくれ。」
「わ、わかった。」
「言われっぱなしは癪だろ?さあ、あいつに完璧な飯を見せてやろう。」
「・・・・そうだな。」
「ここに計量カップがある。米を2合分入れてくれ。キミ、名前は?」
「・・・・入れたぞ。俺は葛城。」
「よし、葛城くん。さっきはどれくらい水を入れたか、覚えているかい。」
「確かこのくらい・・・かな。」
「あー。良い線行ってるけどちょっと足りんね。下にあるこのライン。これ実は2合分の目印なんだわ。中は3号、上は4号だね。手首が浸かるまでというざっくり目安もあるけど。」
「そうなのか?」
「そうなんよ。スマホで調べればでてくる。この飯ごう数字が書いてないけど。
なんでこのラインまで追加してくれ。」
「俺のスマホここだと圏外でな・・・・・・よし、追加した。火にかけて良いよな?」
「ああ。薪はちょうど持ってる。使っていいよ。」
「わ、悪いな」
うちの班に持っていこうと思った薪を使う。サンキュー四葉くん。
「水が足りないから焦げたのか?」
「いや、どちらかというと火加減の調節じゃないかね。水が足りないのなら、
足りない分だけ早く火から下ろせれば、水分不足でコメは固くなるかもしれないけど、少なくとも焦げない」
「火加減はこんなもんか?」
「うーん、もう少し強くていいと思う。さっき焦げたから弱めにしてるんだろ?
経験から学ぶのは良いことだ。が、大丈夫。安心してくれ。もっと行っていい。時間も少ないし、薪を増やそう。」
「なあ。」
「葛城くん、なんだい。いつでも気軽に聞いてくれ。」
「お前・・・・中野とどういう関係?あいつとちゃんと話せる男子、中々いないぞ」
「手のかかる教え子。それに俺もあんまり得意じゃない。」
「??」
たまにメールで料理のやり取りをするくらいにはなったが。
「ふ、吹きこぼれてきたぞ。」
「落ち着け、葛城君。ならとりあえず火はもう強くしなくていい。吹きこぼれてるということは、水が蒸発して飯ごうの中の水が時間とともに少なくなっているということだ。
だから、吹きこぼれが少なくなるのに比例して、火を弱めていく必要がある。
あとは、匂いだ。鼻詰まってたりする?」
「大丈夫だ。わかる。」
「じゃあ焦げた匂いが少しでもしたらそこで完成だ。不安なら、いったん開けてもいい。
ただし、吹きこぼれている間は開けてはいけないよ。
蒸気で火傷するかもしれない。開ける時は手袋を使うように。」
「わかった!」
「じゃああとは頼むよ」
「ああ。サンキューな!」
もういいだろう。別のところへ行く。
「今の二乃の元カレ?前に見たことあるけど・・・中々やるじゃん」
「凄いテキパキだったねー」
「バッ・・・・彼氏なんかじゃないわよ!」
「元カレじゃないならなんなの?あんたビンタまでしてたじゃない。」
「そうそう。彼だけじゃなくてもう一人いたけどさー」
「・・・・もう面倒だから友達でいいわ・・・・」
「中野!さっきは悪かった・・・・飯が出来たぞ!」
「ふー」
良いな。心地よい疲れだ。気分が良いせいか結局あちこちちょっかいを出してしまった。
今は頭が仕事モードだから疲れない。
後でどっと疲れが来るんだが……
さて、親友の姿が見当たらないね。見つけに行こうか。
葛城君も忘れてもらっていいです。
後は3年次まで新しいキャラクターは出てきません。
2年次の創作クラスメートは伊達、片倉、川村、屋代の4人。
サブヒロインの茜だけ覚えてもらえればいいです。