五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「おいコラ」

「・・・・・・・・・・」

「気づかないフリしてんじゃねぇーぞコラ。俺を忘れたとは言わせねぇ。」

「そんなわけないさ。名前だって憶えてる。・・・・・・・・・・・・・」

 

「前田くんだ、風太郎」

「よお、有坂。」

「凪。」

 

飯ごう炊さん中、因縁の2人が会話していた。

 

 

「中野さんとは順調なんだろーな?」

「あ、ああ。」

「・・・・お前は良いよな。フォークダンスの相手がいて。俺なんか結局一人だ・・・・

そこでだ。どうやったら彼女が作れるか・・・」

 

「腹減ったな・・・・」

「そうだね。」

「おい聞いてんのかコラァ」

 

前田くん、今から聞いたんじゃ流石にキャンプファイヤーには間に合わないと思うよ。

 

そんな会話をしていたら、荷物を持った四葉くんが通りがかった。

 

「上杉さん!肝試しの道具運んじゃいますね!」

「四葉?・・・お前確か、キャンプファイヤーの係だろ?」

「大丈夫です!折角だから手伝います!」

 

 

「凪、お前は準備良いのか?」

「大丈夫。出来てる。着替えに少し時間がかかるだけだね。」

 

「そうか。では凪、俺の飯を見ててくれ。」

「あいよ」

 

「前田、肝試しは自由参加だ。クラスの女子でも誘って来てみろ。

ただし、こっちも本気で良く。・・・・ビビるなよ。」

 

 

四葉くんと風太郎は去っていった。

 

「自信満々じゃねぇーか、あいつ・・・・」

「なんか知らないけどめちゃノリノリだからね。」

「有坂もオバケ役やんのか?」

「うん。これさ。」

 

 

白い鬼の仮面を見せる。

 

 

「おお・・・・すげぇなこれ。前見えるのか?」

「見えるよ。片目は空いてるし。」

「・・・・なんか期待できそうだな。」

「これつけて血濡れの刀持ってるから現地で驚かないでくれよ。

クラスの女子に声かけてきなよ。飯見とくから。」

「良いのか?・・・・・わりぃ!恩に着るぜ!」

 

二つの班の飯ごうを見ながら、頭の中で肝試しのリハーサルをしていた。

風太郎はノリノリだが、俺も結構ノッていた。小道具は想像通りの物を準備できたからな。

首尾は上々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肝試しの点呼を始めるぞー」

 

オバケ組が集まっていた。

「片倉ー」

「はい、先生。我がクラスからは有坂も参加します。」

「そうかー」

 

うちのオバケ担当は片倉くんなので、そこに話を付けた。

 

「有坂・・・・・うお、凄い格好だな。」

「うん。ちょっと気合入っちゃった。」

「ここはライトがあるから良いが。肝試しのルートはこれだ。どこに付く。」

「ここかな。」

「わかった。」

 

直進し、左折するタイミング、その右折方向に位置することにした。

ここで驚かせれば反対側である左折方向、進行ルート上に逃げてくれるはずだ。

 

「先生、有坂はここに付きます。」

「そうかー・・・・・・うわっ!?だ、誰だお前は!」

「先生、有坂ですよ。」

 

あなたがびっくりしないでください。

 

 

「あ、有坂くんか。かなり気合が入っているね。驚いた。血濡れの白鬼かい。」

「はい。小道具も持ち込んで準備万端ですよ。」

「そ、そう。そこまでやるのは有坂くんだけだろう。あまりやり過ぎないように。」

「あい」

 

 

あれから仮面を少し変えた。右目のブラインドを完全に外し、左目に血痕を増やした。

左目から血を流しているかのように見える。はず。

 

 

 

 

 

「えーっと左折看板はどこに・・・・」

刀を腰から下げ、ラジカセを持ちながら配置場所を探していた。結構広くないか。

そう思いながら歩いていると。

 

「食べちゃうぞー!!!」

「わーーーー!!」

 

 

風太郎と四葉くんが出てきた。

 

 

「あ。風太郎か。おつかれ。」

「アアアアアアア!!!」

「ば、化け物ぉぉぉ!!!」

 

 

こっちが振り向いた瞬間にえらい驚かれた。

 

 

「・・・・・いや、俺だよ俺。」

「っその声は・・・凪か!驚かせるな!」

「び、びっくりしましたー・・・・・」

「俺なんもしてないよ」

 

 

「凄いなその恰好。お前バイト先で何してるんだ。」

「幽霊役もやるからさ。」

「有坂さんはオバケなんですか?」

「たまにオバケになります。じゃあ行くよ。まあ頑張ってね。」

「ああ。肝試しに参加したことを後悔させてやろうぜ!」

「ノリノリだなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

配置についた。見えないところにラジカセを置いて、自分のスマホと接続する。

声を出さないので左折した時、気づいてもらえない可能性がある。

だから効果音を流してこちらを向かせる。

 

金属音。刀をイメージさせる音楽と効果音だ。時間もないし、

ちょうどいいのが見つからなかったので適当に選んだ。

よく聞くとツルハシをイメージさせる音なんだが、そこは何とかカバーする。

ラジカセはキャンプファイヤーの音楽に使うものを借りた。キャンプファイヤー係の特権だ。

 

準備は出来た。待つ。

 

 

よく考えたら・・・・風太郎と違う位置でオバケ役やってたら、

風太郎の手伝いにならないんじゃないか?ならないよな?

 

まあいいや、ここまで来てしまった。もう行くしかない。

あいつは言っていた。忘れられない夜にしてやる と、それを叶えられれば良いか。

時間があると余計な事を考えてしまう。早く誰か来てほしい。

 

 

 

 

 

 

足音が聞こえてきた。走っているようだ。記念すべき一組目の被害者です。

「ハァ・・・ハァ・・」

「ふぅ・・・・ふぅ。なんだったの?今の?」

「わからねぇ。ピエロとミイラに見えたが・・・・」

 

 

前田くんだった。隣にいる人は・・・・松井さんだったかな。あんまり喋ったことない。

ペア見つかったんだ。良かったね。

 

しかしちょうど左折看板の目の前で止まってくれた。前田くん100点です。優等生です。

有坂オンステージをお見せします。一応これで給料もらってんだぜ。バイトだけど。

 

 

下を向いて、後ろにあるスマホの再生ボタンを押す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「看板・・・・左だってよ。行こうぜ。」

 

カーン・・・・カーン・・・・

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ今、音が・・・・・だ、だれかいる・・・・」

「え・・・・うわっ・・・」

 

 

 

 

ヤンキー座りの態勢で下を向きながらゆっくりと、立ちあがる。

足を内またにしながら、とんでもなく猫背の格好に。首は下を向いたまま。

 

ある程度まで立ち上がったら、左手で左目を隠す。

首を左に曲げ、少しずつ上げながら相手の方を向く。

 

 

 

「「ヒッ・・・!」」

 

そうすると、まず何もつけてない右目が相手の視界に入る。

体を小刻みに揺らしながら、首を戻して、ゆっくりとまっすぐ相手を向く。左手を戻して・・・

 

「うわぁああっぁあああ!!!」

「キャアアアアアア!!!」

 

 

血で染まった左目が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次はゆっくり1歩ずつ前進しながら刀を、

あれ。もう行っちゃった。プログラムまだあったのに。

 

 

 

そんなに怖かったのか。前田くんさっきお面は見せたろ。

何のための打ち合わせなんだ。ネタがわかってるんだからもう少し男らしさを見せてくれよ。

それじゃダメだよ。彼女出来ないよ。ちゃんと守ってあげないと。

 

 

 

とぼとぼと歩き、スマホを止めて音楽を最初に戻し、所定の位置に戻る。

このバックグラウンドがなんとも悲しい。オバケから人間に戻る瞬間だ。

あれだけ驚いてくれたのだ、オバケ冥利に尽きる。

始まる前は少し不安だったが、自信が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからも血濡れの白鬼を演じていた。

ほぼ百発百中で怖がってくれる。逃げる時に転んでくれるとポイント高い。やる気と自信が増す。

1組だけお面カッコいいといって近寄ってきた人がいたので、

その人には普通に会話して対応した。

 

 

あれだ。ここに来るまでにびっくりした経験があって、驚く下地が出来ているかがカギだ。

そういう意味では風太郎と四葉くんは良い仕事をしているらしい。

自信はあるんだが、心が冷めていると流石に怖がってくれない。

 

 

 

また一組来たようだ。やりますか。嵐を起こしますか。

「ここ、左だって。」

「フータロー・・・金髪だった。」

「カツラって言ってたよ。私たちと同じだね。」

 

 

知り合いだった。まあやってみる。

一花さんの方はこのお面を知らないはずだ。図書室の時はピエロ風太郎しか見てない。

 

 

「う、うわぁ!お、鬼!?」

「・・・・・・」

 

片割れは何もコメントしてくれない。逃げないので続きをする。

素早く刀を抜く。素早く抜くが、抜いた後はゆっくりと降ろす。見せつけるように。

 

刀を降ろし、相手に切っ先を向けた状態で、首は下を向く。

そして、1歩ずつゆっくりと前進する。足を出す度、体を前後に揺らしながら。

刀を向けて迫っているのだ。こちらとしては、このタイミングで逃げてほしい。

 

 

「かっこいい・・・・」

 

 

うわ出たよこのパターン。本日2組目です。そうかぁ。不気味さが足りないかぁ。

一花さんの方は割と驚いたように見えたけど。三玖はこのお面知ってるからなぁ。仕方ない。

まあでも着物に刀だからな。三玖は好きそう。

 

 

「・・・・はーい有坂くんでーす」

「ナ、ナギくんか。ちょっとびっくりしちゃった。」

「お疲れ様・・・」

 

 

仮面を取って正体を表した。

 

 

「一花さんと三玖のコンビかぁ。楽しんでるかい?」

「わりと。さっきフータロー君たちにあったよ。」

「ノリノリだったでしょ。」

「気に入ってた・・・・一花、写真撮って」

 

観光スポットかよ。

 

 

「お面つけたまま・・・・刀出して。」

「うん。」

「違う・・・・こう構えて。」

「は、はい。」

「じゃ、撮るよー!」

 

パシャリと写真が撮られた。どこぞの江戸村かここは。

ポーズの指定までされたぞ。

 

「三玖!わたしも撮って撮って!」

「はいはい」

「じゃあ撮るよ・・・」

 

 

一花さんとも写真を撮った。

あのアルバムに追加されるかもしれない。

 

 

「すっごいねーこの格好。刀と着物なんてどうしたの?」

「バイト先から借りました。」

「流浪武士のバイト・・・?」

「そんなバイトないよ・・・・」

 

 

 

 

 

二人と別れてまた人を待つ。

また一つ、足音が聞こえてきた。走っているな。これは。

 

 

「も、もうイヤです~~!!!」

 

 

五月ちゃんだった。一人じゃないか。もう一人はどうした。

多分二乃だと思うが。

かなり騒いでいるので脅かすのはやめておこう。怖いのダメなのかキミ。

 

 

「いたっ・・・か、看板。」

看板に激突し、周りをきょろきょろしている。その拍子にこちらを向いてしまった。

あ。まずい。まだ下向いてない。目が合った。面を見てしまった。

 

「キャアァァァァァ!!た、たすけて~!!!」

 

 

 

行ってしまった。

 

 

ん?微妙にルートが違う。1本右の道へ行ってしまった。あっちは何があったか。

確か、どこかの道は崖に繋がる。

不安なので追いかけることにする。もう参加者も残り少ないはずだ。

今日のステージはもうおしまいです。

 

 

 

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