五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「どこ行ったんだ。やっぱりこの森は広すぎる。」

 

 

五月ちゃんを探していた。

この森はちょっと離れると崖があったはずだ。少し心配になる。

 

 

「おらー!!!驚けぇ!!!」

「ん?おつかれさま。」

「ギャアアアアアアアア!!!」

 

時々はルートに戻って探しているが、その度にオバケ役に絡まれる。

が、お面でことごとく返り討ちにしている。

驚くのは良いけど、そこから逃げて持ち場を離れないでほしい。

残り少ないけどまだ人来るんだぞ。プロ根性を見せろ。

 

 

「ここも分かれ道か・・・・じゃあ順路じゃないこっち。」

 

ある程度は探し回ったし、もう見つかるはずだが。

 

 

 

 

 

「二乃~~・・・・どこいっちゃったんですかぁ・・・・・」

 

しばらく探し回ったが、いた。

凄い所にいたな。隅も隅だぞ。声出してたからわかりやすかったけど。

お面を取って近づく。

 

 

「五月さーん。大丈夫かい。」

「あ・・・ナギく~~~ん!!怖かったです~~!」

 

 

抱きついてきた。よっぽどだな。

よーしよし。ナギおにいちゃんですよー。気分は一花おねーさん。

めっちゃ泣いてるし。着物が濡れる。

もう使わないものだから良いけど。

 

 

「はいはい。落ち着いて落ち着いて。帰ろうね。」

「はい・・・・一緒にいてください・・・・」

向こうから手を繋いできた。花火以来だな。

 

 

 

 

 

「二乃とはぐれてしまって・・・・」

「やっぱりかぁ。一花さんと三玖はセットで見たから、キミたちもセットだと思ったよ。」

「わたし・・・・怖いのが苦手で。ピエロとミイラをみて、走り出してしまいました・・・・・」

 

 

ピエロとミイラ。風太郎&四葉くんじゃないか。

そんなに怖いのかあの二人。今度は参加者として見たいな。

 

 

「ナギくんは・・・・なんで着物を着ているのですか?こ、腰から、か、刀も。」

「俺もオバケ役だったの。さっき白い鬼を見たでしょ。あれ俺なの。」

 

「ああ・・・・・」

「で、五月さん逃げる時に道間違えちゃったから。仕事投げて追いかけてきたの。」

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「ちょっと遠回りだけど、ラジカセの回収をしないといけないからさっきの場所に戻るね。」

「はい。ついていきます。」

「お面被って刀出すから。驚かないでね。」

 

 

手っ取り早く済ませるために刀を抜いておくことにした。

また驚かれてどこかに行ってしまわれては困る。

 

 

 

 

 

 

「「しゃぁああ!!殺してやるぜぇえええ!!!」」

「キャアアアアア!!」

「なんじゃいオラァ」

「うわああああああああああ!!殺される!!!!誰かー!!!」

 

「お、おい!どこ行くんだよ!」

「キミも刀の錆にしてやろうか?」

「ひ・・・・人殺しだーー!!!人質もいるぞ!!!助けてくれー!!!」

 

 

五月ちゃんにラジカセを持ってもらい道を進んでいた。

刀を装備して攻撃力を上げておいて良かった。

度々辻斬りに会うが、お面と刀によって切り伏せている。この面と刀が目に入らぬか。

楽しくなってきたが、そんなに怖いのか?これ。

 

 

足音と会話で位置を判断してるんだろうが、

脅かすときはちゃんと相手の顔を見てからにしてほしい。

この二人の格好を見れば何かしらの事情があることはわかるはず。

水戸黄門の気分を味わえるのは悪くないが。

 

 

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・」

「大丈夫かい五月さん。深呼吸深呼吸。いいよ。いくらでも待つから。」

 

 

五月ちゃんはかなり消耗している。回復を待つたびに足を止められる。

あまり時間がかかるのは良くない。暗闇がもっと深くなる。

あと手を繋いでいるので、体の驚きが俺にも伝わって、離してしまいそうになる。

別の方法を考える。

 

 

「ふぅ・・・・ふぅ。すみません。ナギ君、行きましょう・・・・」

「五月さん、肩を抱くよ。」

「え?・・・わ!」

 

肩を抱き寄せて密着させることにした。少し恥ずかしいが、仕方ない。

右手で刀を持ち、左手に五月ちゃん。良いね。気分は近衛兵。

 

またどこかに行ってしまうよりは良い。この方が五月ちゃんも安心するだろう。

ただ、これを二乃に見られたらまずいかも。

 

 

「二乃は・・・どこにいるのでしょうか。」

「中々見つからないね。もう帰った・・・・いや、ないな。」

 

 

姉妹想いの二乃の事だ、それはない。絶対に五月ちゃんを探すはずだ。

 

 

「・・・・今回もまた、ナギくんに助けられてしまいました。」

「良いってことさ。・・・・・・・今回も?」

「はい。上杉くんと和解できたのは、ナギくんのおかげです。」

「ああ。あれね。」

 

 

あれから何があったか詳しく聞いていないので、今聞いてみよう。

 

 

「作戦は上手く行ったんだね。」

「はい、上杉くんに三玖と呼ばれて・・・・あとナギ君がこの格好をさせた理由を考えて・・・

三玖のふりをしました。」

「うん。予定通りだ。良かったよ。」

「ありがとうございました。」

「いいんだよ。」

 

 

「花火大会の時も・・・試験の時も・・・今も。あなたは私を導いてくれます。」

「たまたまだよ。花火大会は偶然だったし。」

「感謝、してます。・・・・だけど、まだ一つ、直したいことがあって。」

「ん?」

 

 

「上杉くんです。彼とは、やっぱり相性が良くなくて。

売り言葉に買い言葉でムキになってしまうことがあります。」

「うーん。」

 

 

導く。・・・・ちょっと前に同じ単語を聞いたな。

試験の時に完璧に仲直りしたと思ってたんだが、

携帯のアドレスを交換した時にそうは見えなかった。そういうことらしい。

 

 

「大丈夫。まあ、この間もちょっと喋ったけど。相性が良くない人間はいるもんだ。特に気にしなくていい」

「ですが・・・・」

「時間をかけても良いって意味だよ。相性が良くない人間はいるけど、

仲良くなれない人間はそうはいない。焦せらなくていいんだよ。きっと変われるさ。」

 

 

家庭教師をする以上、風太郎も良好な関係を築きたいと思っているはずだ。

いつかは歯車がかみ合ってくれるはず。

 

 

 

「難しいよね。人付き合いって。俺もちょっと苦手なんだ。」

「ナギくんが・・・苦手なんですか?あんなに色んな人に囲まれてるのに。

さっきの飯ごう炊さんも・・・・」

 

「うん。ちょっと特別でね。初対面の人とかと話すのは大丈夫なのに、

まだ仲良くない知り合いとかと話す時は、とても緊張して、ストレスが貯まるんだ。

さっきは大丈夫だった。俺がなんとかするしかない。そういう気持ちだったから。」

 

 

「そう・・・・なんですか。」

「多分わからないと思う。この気持ち。だから理解しなくていい。

友達と呼べるまで仲良くなれば、緊張しなくなった。

だから、出来るだけいろんな人と仲良くするようにした。

一度仲良くなれば、もうストレスは感じないから。・・・仲良くなるまでが大変なんだけどね。

 

 

だから正直に言うと・・・・最初は嫌だった。キミたちの家庭教師。また気の許せない知り合いが増えると思った。けどあいつに頼まれたからね。頑張った。今はもう、大丈夫。」

 

 

「あなたは・・・・なんでも出来る人だと思ってました。けど、違うんですね。」

「当たり前さ。例えば、俺カナヅチ。泳ぎが得意じゃないんだ。息継ぎできなくて。」

「ふふふ。怖いですよね。・・・でも、そういうあなたの知らないところを知ることが出来て・・・嬉しいです。」

「それは良かった。じゃあ五月、二乃を・・・・探そう。」

「はい。ナギくん。」

 

 

かわいいな、五月。素直だし。なんだか良い雰囲気になってきた。

そんな素直で真っ直ぐな眼で俺をじっと見ないでよ。

あれかな。ストックホルム症候群かな。

早いとこ二乃を見つけて正常な状態に戻そう。

 

 

 

 

 

 

「見つかりませんね・・・・」

「うん。向こうも歩き回ってるんだろう。一旦戻ろうか。」

「はい。」

 

 

もうすぐゴール地点というところまで近づいた。

しかし二乃が見つからない。一旦引き返す。

オバケ役はさっきから全然見ていない。全員成敗してしまったかもしれない。

じゃあもうこの態勢で歩かなくていいんじゃ。まあいいか。隣の子かわいいし。役得。

 

 

「正面から誰か来ます・・・・」

「え?わかった。」

らしい。なんでわかったんだろ。刀をしまう。正面から来るなら、オバケではない。

 

 

 

 

 

 

「・・・五月!・・・・ってなによ!その隣にいるバケモンは!」

「待て!あれは、・・・・・・し、知り合いだ!」

二乃だった。そうか。お面被ったままだ。だからわからなかったんだ。若干視界が狭くなる。

男の声がした。二乃の隣に誰かいるようだ。面でよく見えない。

 

 

「これは・・・ナギくんです。」

「有坂?」

「そうですよー。有坂くんですよー。」

「あんた・・・・なんて格好してんのよ。」

「五月を守るためにこれが手っ取り早かったんだ。

ん?隣のその人は?」

 

 

二乃の隣に金髪の青年が立っていた。

お面でちょっと誰かわからないが。

 

 

「この人が助けてくれたのよ!」

「そうなの。」

「キャンプファイヤーで踊る約束もしちゃった!」

「そうなの。」

 

 

二乃のテンションが凄い高い。何があったんだろう。

しかし、キャンプファイヤーを共にするということは、そういう事か。

熱いねぇ。恋しちゃったんだ。

じゃじゃ馬娘の二乃、堕ちる。相手はなかなかの強者だな。是非とも顔を見ておきたい。

 

 

「その子、この子と友達でね。誰だかわからないが、助かった。」

「あ、ああ。」

 

 

この状態で挨拶するのもあれなので、お面を外す。

 

 

「俺は有坂。キミの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なまえは?」

「・・・・き、金太郎って言うんだ。よろしくな!」

 

 

 

 

 

 

この人知ってる。

 

ぼくのともだちです。なんでこんな事をしてる。金髪のカツラなんか被って。

しかし、さっきの二乃の会話。そして今の名前。二乃はこいつが風太郎だと気づいていない。

ここは口裏を合わせた方が良い。

 

 

「じゃあ、知り合いが見つかったんならこれで!悪かったな!」

「・・・・・ああ!ありがとう!」

「あ、ちょっと!金太郎君!」

「二乃!彼に迷惑をかけたんだ、引き止めるな。」

「だって・・・・!」

「キャンプファイヤーの日にまた会えるんだろ?」

 

 

「・・・・・・・そうね。その通りだわ!たまにはあんたも良いこと言うじゃない!」

 

 

背中を叩かれた。痛い。どーすんだろこれ。

キャンプファイヤーのカップリングが風太郎×一花と風太郎×二乃になったぞ。

どっちの姉妹ショー。まあでも事情を話して風太郎×二乃が安定かな。

おねーさんなら我慢してくれるさ。なんか最初からあんまり乗り気じゃなかったし。

あとで風太郎から話を聞こう。

 

 

「二乃。」

「なあに、五月」

「・・・・・写真、撮ってください。」

 

・・・・・・キミもかぁ。慣れちゃったんだね。

しかし、さっきの風太郎。・・・いや金太郎。昔のあいつに似ていたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギっち聞いたー?肝試しの話なんだけど。」

「屋代さん。なんだい。」

部屋に戻って班内への伝達事項を喋っていたら、屋代さんが話しかけてきた。

 

 

「最後の方に参加したウチの友達がさ、オバケ全然見なかったんだって。

拍子抜けでゴールしたら、オバケの仮装した人たちが先生に詰め寄ってたらしいの。

日本刀をもった白い鬼の殺人鬼が出たって。」

「・・・・うん。」

 

 

「あんまりにも見た人が多いし、みんな凄い形相だったから、

先生が目撃者を連れて一度コースを周回したの。

でも、どこにも居なかったんだって。ナギっちもオバケ役っしょ?なんか知らん?」

 

「・・・・・片倉くんは?知ってるかい?」

「・・・・・・いや、私は知らない。」

「そう。・・・・・・・・・・俺も知らない。そんなものは見なかったな。」

 

「じゃあマジの幽霊じゃん!人によって見えたものが違うって話だよ!その殺人鬼だけじゃなくて、隣に女の子がいて、人質を取ってたように見えたって人もいるんだって!こわー!」

 

「キャンプファイヤーの準備に行ってくるね・・・・」

「・・・行ってこい。班長」

 

 

 

片倉くんがすっとぼけてるので俺もすっとぼけた。

すいません先生。やり過ぎてしまったようです。

本来の担当であるキャンプファイヤーの準備へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、林間学校に肝試しの殺人鬼の伝説が追加された。

 

出会っても殺されることはないが、刀と面が血で濡れているらしい。

時々、女の子を従えて現れるので、

昔この近くで死んでいった姫とその護衛である、と噂されている。

2人の距離がかなり近かかったので、姫と護衛は、

禁じられた恋に落ちていたのではないか とのこと。

姫と護衛のセットを目撃出来たら、近いうちに恋が訪れるらしい。

 

 

目撃した美術部員が、絵を描いた。他の目撃証言と合わせこみ色々修正を行い、スケッチは完成。

・・・・・伝説の為か、要所要所で都合のいい修正が行われているな。

 

鬼の仮面の人物が、右手で刀を持っている。このスケッチを見ている人物に対して、

それを向けている。

隣には、長い髪の女性がいる。左手には・・・・提灯を持っていた。

女性の顔は書かれていない。そこまで覚えていなかったのだろう。

・・・・・白黒のスケッチで良かった。

そして両者は、空いた手を使い、仲睦まじそうに手を繋いでいた。描写が細かい。

恋人繋ぎということまでわかる。

 

 

 

 

俺が殺人鬼の正体と知っている人がそこそこいるはずなのだが、面白いから黙っているようだ。

だから俺も何もしゃべらないことにした。先生まで黙っているのはどうかと思うが。

真相は有坂 凪と中野 五月が肝試しを仲良く満喫していた なのである。

 

それが広まったら俺も彼女も恥ずかしい。

 

 

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