五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「あー!林間学校がいつまでも続けばいいのにー・・・・」

 

「ご、ご機嫌だな。い、良いことでもあったのか?」

 

宿泊先、ログハウスの中。

二乃はとても上機嫌だった。対して、風太郎はとても心配そうだった。

 

 

「教えなーい。・・・・有坂!あんたさっきの事喋ったら許さないわよ!」

「承知しました姉御」

そう言って部屋に戻っていった。

 

 

 

 

「どーすんのあれ。俺はわかってるぞ。さっきの。」

「どうすればいい・・・・!」

 

 

風太郎は頭を抱えていた。状況を正しく理解している証拠だ。

一花さんと踊る約束をしたうえで、金髪風太郎である金太郎もまた、二乃と踊る約束をしてしまった。

前者を断って良いと思うが、しかし後者は後でウソがばれると怖い。

 

俺としては風太郎×三玖にALL INだったんだが、この状況では無理そうだ。

らいはちゃんごめん。ボッシュートになりました。

 

 

 

「どうしたの?ナギ君、フータロー君。」

「ああ、一花さんと三玖と・・・五月か。」

 

後ろから三人が現れた。たった今、問題の一人がいるが。

 

 

「風太郎、一花さんに事情を話していいんじゃないか?」

「・・・・お前もそう思うか?」

ある程度の妥協案は考えていたらしい。

 

 

「ナギくん。先ほどはありがとうございました。」

「ああ。良いんだよ。良かったね無事で。なんか白い殺人鬼が森の中にいたらしいし。

五月は?森の中をけっこう動いたけど、どっかすりむいたり切ったりしてない?」

「今のところは大丈夫です。」

「そう。」

 

「なあ・・一花」

風太郎が喋ろうとしたその時。

 

 

 

「あーーー!仕事あるんだったー!ナギ君もキャンプファイヤーの係でしょ?いこ!」

「え。ああ、うん。」

「五月ちゃんも!手伝って!」

「え?ああはい!」

 

 

「さぁさ。あとは若いお二人でー!」

「お二人でー」

 

 

一花さんの機転で拉致されてしまった。

なるほど。風太郎と三玖を2人切りにしたかったらしい。

気が利くけど、違う。それ今じゃない。

そんなことするくらいなら旅館の時、

三玖にキャンプファイヤーのパートナーを押し付けて欲しかった。

 

 

「三玖・・・二乃、知らないか?」

 

 

去り際、そんな会話だけが聞こえた。

お前も違う。それ今じゃない。絶対三玖怒るから。

焦ってるのはわかるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャンプファイヤーの準備のため、倉庫に向かった。

丸い丸太が積まれている。これを運べとのことだ。

大きい。中々ハードだな。一人では厳しい。

燃やすためだけにに木々が切り倒されたのだと思うと、少し悲しくなる。

五月は部屋に返した。肝試しでめっちゃ叫んで疲れてそうだったし。

 

 

「持てるかい?一花さん。」

「うん。これくらいなら平気だよ。意外と寒いね。」

「夜だからね。でも、運んでれば丁度良くなるさ。」

 

 

端と端を持ち、二人で広場まで木材を運ぶ。

そこそこ疲れるな。明日のスキーに疲れを持ちこまなければいいが。

 

 

 

 

 

「おや、風太郎。四葉くん」

「凪・・・・・」

「おつかれさまです!有坂さん!」

 

 

風太郎&四葉コンビとすれ違った。

四葉に肝試しを手伝ってもらったからそのお礼らしい。

しかし風太郎はかなり元気がなかった。ということは、

さっきの会話は上手く行かなかったのだろう。

問題は残ったままのようだ。俺なりにアプローチしてみるか。

 

 

 

「ねえ、一花さん。」

「なぁに?」

 

丸太を持ちつつ会話する。

 

 

「キャンプファイヤー・・・風太郎と踊るんだっけ。」

「うん。そういう事になっちゃったからねー。

・・・・やっぱり、三玖に譲った方がいいかな?

ナギ君も、三玖の気持ちには気づいてるでしょ?」

「ほんの少し怪しい所があるけれど。」

 

 

微妙な三玖の遠慮。それだけが気がかり。

風太郎が好きだとはっきり聞いているわけではない。おそらく、ほぼほぼ、なのだ。

 

独り占めをしないと言っていた。それが少しわからない。

風太郎を好きなのは、三玖だけだと思っていた。

それとも単に、5姉妹全員の友達である風太郎から、

1人だけ恋人という特別扱いになるのが嫌だったのだろうか。

 

5姉妹全員恋人というのは、現実的ではないだろう。それは受け入れないといけない。

 

 

 

「まあ・・・・キャンプファイヤーの伝説とかいうのもあるからね。

踊った後のその先まで踏ん切りがついてないんじゃないかな。」

 

「伝説・・・・そういえばそうだね。ねえナギ君。伝説ってどんなの?」

「あれ?知らなかったの?」

 

 

あんためっちゃ好きでしょ。この話題。

 

 

「四葉くんが話していただろう?」

「そうだっけ?もう一回教えて?」

「えーっと。キャンプファイヤーのフォークダンスで、

フィナーレのタイミングで一緒に踊っていたペアは

その後も永遠に結ばれる・・・・だったかな。」

「・・・・・・・!!」

 

 

・・・・明らかに驚いている。知らなかったらしい。

最後がなんか少し違う気がするが。

 

 

「そ、そんな。わたし・・・・ちっとも・・・知らなくて。」

「そう、なるほど・・・だからか。」

 

 

二人だけにさせる癖にキャンプファイヤーは自主性に任せる。

動きがなんか中途半端だなと思ったらこれを知らなかった。そういう事か。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

一花さんはその後黙ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ・・・・・ぜぇ・・・・あと一本・・・・」

「俺と一花さんでやるって。帰って休め。なんか顔色悪いよ?」

「いや・・・・ここで・・・・・好感度を・・・・・」

「何訳の分からん事を言ってる。肝試しの時薄着で風邪気味になったんだろ。

邪魔。とっとと帰れ。」

「・・・お前が・・・・そこまで言うなら・・・」

 

 

四葉くんがどっか行ったらしく木材を一人で運ぼうとしていた。無理だろ。

俺なら肩に担げば行けるかもしれないが、最後かがり台に乗せるのが厳しい。一人は無理だ。

 

明らかに体調悪いし。なんかに必死になってるし。どうしてこういう時だけ頭が悪くなるんだ。

こういう時は強く言わないと聞いてくれないので言葉を冷たくする。氷の有坂。対、茜仕様。

 

 

「あの、フータロー君。」

「ふぅ・・・・なんだ・・・一花。」

「明日のキャンプファイヤー、三玖と踊ってあげて?」

「一花・・・・いいのか。お前に告白してきた前田はどうする。」

「どうにかするから。三玖に伝えてあげて?」

 

 

「わかった。・・・・・・・・・だが、三玖が踊ってくれるかはわからないからな。」

 

そう言って、風太郎は戻っていった。

 

 

予防線を張ったんだ。そう。二乃の事があるからな。

このことを三玖に喋らなければ、二乃と金太郎が踊って丸く収まる。

風太郎=金太郎がバレず、かつ三玖にこの話が届かなければの話だが。

 

風太郎が二乃を選ぶのか、三玖を選ぶのかは、本人が決めることだ。

俺はどうした方がいいかな。・・・・・一花さんに釘をさしておこう。

 

 

 

「最後の一本、運ぼうか。」

「うん。」

 

丸太を持ち上げた。

 

「一花さん・・・・ちょっと事情があってさ。

もし風太郎が三玖と踊ってなくても、許してあげてくれるかい。」

「うん。もしかしたら、三玖も恥ずかしがって断っちゃうかもね。

若い二人にはじっくり仲を深めていただきますか!」

 

 

ちょっとイメージと違ったが、問題なかった。

 

 

「それでね、ナギ君。」

「あい」

「フータロー君を断っちゃったけど、前田くんがいるでしょ?」

「そだね。」

「踊っている人がいないと不審に思われちゃうから。明日、わたしと踊ってくれる?」

「え?」

 

 

そう来たか。どうにかするといったが。俺を当てにしていたのか。

でもなぁ。俺無理なんすよ。

 

 

「ナギ君となら大丈夫。今まで席が一緒で仲良かったんだから、変じゃないと思う。」

「あーー・・・・ごめんね。俺はさ、ちょっと無理なんだよ。」

「・・・・え?・・・・・だれかと・・・・踊るの・・・?」

「いや、ちょっと理由があって。だからさ。姉妹の誰かと踊る、で良いんじゃないかな。」

 

 

それが無難だと思う。同性は浮くかもしれないが、姉妹なら。

仲いいねーで終わると思う。前田くんも大丈夫だろう。

 

少なくとも俺よりマシ。俺が踊ったら前田くんマジギレコース。

彼は良い男だった。仲良くしたい。

 

 

 

 

 

 

「うし。じゃあ最後の1本持っていこうか。」

 

丸太を持っていこうと前に進みだした。

動かない。進めなかった。後ろが、一花さんが動いていない。

 

 

「一花さん?」

 

 

後ろを振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花さんが、泣いていた。

 

 

 

 

表情がわからない。無表情に見える。

無表情のまま、泣いている。

月の光に照らされながら、泣いている一花さんが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え? どうして?

 

なんで泣いているんだ?

 

わ、わからない。そんなに俺と踊りたかったのか?

 

それとも丸太の持ちすぎで疲れたのか?

 

何?それともあれか。俺なんかに断られてプライドを傷つけてしまったか?

 

 

 

「一花・・・・さん?」

「え・・・あ・・・・」

 

 

泣いていることに気が付いていなかったらしい。

ようやく気付いたようだが、それでも涙は止まらない。

 

 

「ごめ・・・・・・・置いて・・・いいかな・・・・・」

「う、うん。降ろそう。ご、ごめん!一花さん!」

 

 

 

 

 

 

 

丸太を一旦置く。

離すような形になったので、ゴロゴロと転がっていく。

とりあえず、謝った。

やはり俺のせいだろうか。

 

 

 

いつの間にか、とても悲しそうな、それか悔しそうな顔になっている。

 

 

どうしよう。こんなことは予想していない。

 

 

な、何も浮かばない。俺はどうすればいい。時間か、時間が解決するのを待つか。

 

 

とりあえず、何処かに座らせようか。しかしこんなところにベンチなんてない。

・・・・外だ。倉庫の外に出れば。

 

 

 

 

「一花さん、ちょっと外に・・・・」

「あーー。早く終わらせて寝ようよー。もー疲れたー」

 

 

 

 

 

!!!

 

誰かが来た。この光景を見られるのはまずい。

俺がクラス内で抹殺される。どんな理由であれみんなのアイドルを泣かしやがって。

そうなるに違いない。

 

 

 

 

倉庫から出たら気づかれる。・・・・・・隠れるしかない!

 

「ごめん、ちょっと静かに・・・・!」

「・・・・きゃ!?」

 

 

 

 

 

「あれー?もうないじゃん。早かったねー。」

「ホントだ。」

 

 

とっさに扉の壁際に隠れた。ここしかなかった。

二人いる。倉庫の中まで入って来ていない。外から中を見ているんだ。

入ってこられたら終わりだ。頼む!

 

 

「もう全部運んだっけ?」

 

 

 

 

 

丸太はもう1本ある。

俺達が持っていた丸太は・・・・転がった先の壁際にあった。

壁際には外からの光が少ししか差し込んでいない。暗くて気づかないんだろう。

 

 

 

あれが見つかっても、終わる。

倉庫の中に入られたら、持ち出す時に確実にこちらに気づく。

丸太に向かっている間に、入れ替わりで脱出する。そんなことは足音を殺しながら出来ない。

 

 

 

 

 

一花さんを抱く形になっている。一花さんは何も言わない。

だが、涙は止まっていた。

 

 

 

 

「あのー!上杉さん見ませんでしたかー!」

「上杉?さっきすれ違ったよ。ログハウスに帰ってったけど」

「顔、青かったね。」

 

 

四葉くんの声が外からする。

・・・・いいぞ、ファインプレーだ。

 

 

「ナ、ナギ君・・・・」

「大丈夫。大丈夫だから。」

 

 

何が大丈夫なんだ?

 

なんで泣いているのか理由も知らないのに。

 

とりあえず、慰めた。

 

 

 

倉庫の中が、暗くなる。扉が閉まった。帰ったようだ。

鍵をかけた音がした。

とりあえず、凌いだ。

しばらくしたら内側から倉庫のカギを開けて、出ていけばいい。

・・・・・・・ほっとした。

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・・・」

 

 

 

大きなため息がでた。

焦った。疲れた。

胸の中にいた一花さんを解放する。

とっさの時は何するか自分でもわからない。花火大会の三玖の時もそうだった。

 

 

 

 

 

足に力が入らない。腰が抜けたのか?過剰な緊張から解放されたせいか。

自分の心臓が速いのがわかる。

下はコンクリートだ。構わない。倉庫の中に倒れこむ。

ああ・・・・・・疲れた・・・・・

 

 

 

 

「ナギくん・・・・・ごめん。私のせいで。」

「・・・・・いや・・・・・・・いいよ・・・・・疲れた・・・・・びっくりした・・・・・・・・」

 

 

 

 

少し・・・・・・・休もう・・・・・・・

 

 

 

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