五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

36 / 130
34

 

 

「五月がどこにもいません!」

 

 

四葉くんの捜索の結果、ほぼ全員が見つかって、休憩所の前に集合していた。

残るは五月だけ。ゲレンデでは朝から一度も見ていないが。

 

「四葉、お前も見つけてないのか。俺も朝から見てない。」

「俺も五月はスキー場では見てないね。」

「一花・・・・・休んでてって言ったのに・・・・」

「ごめん!四葉に捕まっちゃって!」

「全く・・・・私も人探してるのに!」

 

 

五月は本当にここに来ているのだろうか。

結構探したんだが。人は多いけど。

 

 

 

「四葉・・・・・五月には、逃げられたのか?」

「いえ、見かけてもいないです・・・・」

 

「事態は思ったより・・・・深刻かもしれない。遭難だ。」

 

 

 

風太郎がそう言った。

確かに。なくはない。

 

「一花・・・・・五月は本当にスキーに行ったの。」

「え・・うん。」

 

「ここ!ここはまだ見に行ってないです!」

 

四葉くんが地図の一部を指さした。プロフェッショナル・コース。

理由は忘れたが、立ち入り禁止だったはずだ。朝、説明があった。

 

「立ち入り禁止だろう?そこは。」

「そうですけど、いるとしたらここかもしれません!」

「五月が先生の話を聞いていないとは思えないけどなぁ・・・・」

 

 

一番無い。クラス内での五月は知らないが、

恐らく優等生タイプ。先生の言うことは聞いているはずだ。

まあ、事故でこのコースに行っているかもしれないが。

 

 

「・・・戻ってないかコテージ見に行く!」

「私は先生に!」

「ちょ、ちょっと待って!もう少し探してみようよ!」

 

 

一花が二乃と四葉を止めに入る。

 

 

「一花は?五月を見てないんでしょ?」

「そ、そうだけど。」

「なんでよ!ひょっとするとレスキューが必要になるのかもしれないのよ!」

 

さすが二乃。姉妹想い。

その通りだ。何かあってからでは遅い。

 

 

 

「ま、待ってよー!

五月ちゃんもそんなに大事にしたくないんじゃないかなーって・・・・」

「一花。・・・・・・まあ、俺達は昨日の前科があるからね。」

 

 

気持ちはわかる。けど、あの時とは状況が異なる。

 

 

「五月の命が危ないかもしれないのよ!大事にしたくないなんて・・・・

そんな気楽にはいられないわ!」

 

「一花。朝から誰も見ていないのなら、開始早々に遭難した可能性がある。

今から最速で動いても、危ないかもしれない。」

 

「ご、ごめんね。」

 

考えたくはないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を考える。全く候補が出てこない。

やはりプロフェッショナルコースに行くべきか。

滑れないわけではない。気をつければ、俺でもなんとかなるかも。

一番滑れそうな四葉くんと二人体制で行くか?

 

 

「・・・・!」

風太郎がふらついた。

 

しまった。忘れていた。風太郎は病み上がり・・・・違う。

顔がかなり赤い。今もなお、間違いなく体調が悪い!

そうか、らいはちゃんの風邪が移っているんだ。

 

いつの間にここまで・・・・・気づけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「風太郎。休め。その様子じゃ無理だ。探しに行ったら、今度はお前が危ない。」

「・・・凪・・・・もう少し待ってくれ。あとちょっとなんだ・・・・・」

 

 

あとちょっと?何を考えているんだ。

場所がわかりそうなのか。

 

 

 

 

 

・・・頑張れ。お前だけが頼りだ。

俺は・・・・何も思いつかない。・・・・情けないが、無力だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・凪、場所がわかった。耳を貸してくれ。

五月なら、お前の方が良い・・・・」

 

「わかった。」

 

風太郎から耳打ちを受ける。

 

 

 

・・・・・・・本当に?少し信じがたい。

どうしてそんなことを。

 

 

「本当か?」

「ああ、間違いない・・・・頼む・・・・」

「任せろ。」

 

「ちょっと!その場所、本当に間違いないんでしょうね!」

「大丈夫だ、恐らく見つかる・・・・」

 

風太郎は力なく答える。限界だ。

もう休ませよう。

 

 

 

「・・・・そう、じゃあ教えなさい!」

「待った。先に風太郎を戻らせたい。二乃、三玖、四葉。

3人で風太郎を送ってくれ。」

「わかった・・・」

「五月をお願いします!」

 

 

「3人も要らないわ!私も探しに行く!」

「ダメだ。・・・・・途中で風太郎が倒れた場合、

男性を運ぶのは女性2人では厳しい。3人いた方が良い。」

 

 

適当にごまかす。我ながら悪くない嘘だった。

多分2人で済むと思うけど。

 

 

「・・・・ふ、二人で充分よ!こいつはそんなに重くないわ!

それに近くの人に手伝ってもらえば」

「・・・・・察してくれ!どうして風太郎が俺にだけ耳打ちをしたのか!

危険な場所だ!・・・・お前まで居なくなったらどうする!」

「!」

 

 

ちなみに大嘘である。風太郎の言ったことが真実ならば。

もういいや、嫌われても。

語気を荒くして緊急感を出すためにお前って言っちゃった。ごめんね二乃。

 

「わ、わかったわ。」

 

 

よし。クリア。

後でめちゃくちゃ怒られそうだ。

ちょっと恨む。手早く風太郎を休ませたかったから仕方ないけれど。

 

「一花。事前準備に付き合ってくれ。キミが必要だ。ついてきてくれるね。」

「・・・・・わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人と風太郎が去っていった。

一度休憩所に入り、スマホでメールを打っていた。

 

 

宛先に3人を入れ、俺の荷物の中にある薬の事を連絡する。

先ほど言うのを忘れていた。切羽詰まっていたからな。

だが、休憩のおかげで落ち着いた。

 

 

「・・・・よし。一花、行こう。」

「どこへ行くの?」

「リフト。まずは頂上に昇る。」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どこにいますかねぇ。」

 

一花と二人でリフトに乗っていた。

こっちの方が良い。途中で二乃に戻ってこられる可能性もなくはない。

今は俺も、かなり心の余裕がある。休憩のお陰だ。

 

「一花・・・・昨日の事だけど。」

 

「う、うん。何?」

 

「・・・・あの話には続きがあるんだ。聞きたいかい。」

 

「・・・・・・聞かせて。」

 

 

 

 

「・・・・・・・嘘。言ったはずだよ?本当におしまいと。」

 

被っていたフードを脱がせる。

そういえば、今日はフードを脱いだ姿を1度も見ていなかった。

 

 

赤い髪のロングの末っ子、五月が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。五月。」

 

「・・・・・・ナギくん。」

 

朝から会っていた一花。それはマスク、フード、ゴーグルをつけて変装をしていた五月。

どうしてこんな入れ替わりを。なんの得があるんだろうか。

聞き出す。だが、向こうから喋ってきた。

 

 

「いつから・・・・気づいていたのですか。」

 

「・・・俺は全くわからなかった。風太郎が気づいた。

なんで気づいたのかまでは聞いてない。

・・・・まあ、今日のキミの発言や行動をみて、わかったんだろうね。」

 

「・・・上杉くんが。」

 

「ああ。・・・・凄い奴だよ。流石俺の相棒。

俺は、今のひっかけが無いとわからなかった。」

 

 

やはり、風太郎は俺よりも5姉妹の事を理解している。

俺は何もわかっちゃいなかった。

 

一花=五月だったことがわかれば・・・・・

あのメールは真っ直ぐ解ける。一花クイズは今、丸が花丸になった。

 

 

「それに引き換え・・・・俺は何もわかってないんだねぇ。

適わないや。あいつには。」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

「どうして、こんなことを?」

 

「姉妹の誰かが・・・・上杉くんに惹かれてることを知りました。」

 

三玖か。ぼかしてはいるが。

 

 

「家庭教師ではなく・・・・男女の仲になるなら。私は彼を知らなさすぎる。

本当に彼が信頼できるか・・・・・・確かめたかったんです。」

 

「なるほど。テストに合格だね。ミスター100点。素晴らしい。

俺は落第だ。本当になんにも、知らなかった。気づかなかった。」

 

 

 

現時点では考えすぎだが・・・・将来、結婚するとなれば、無関係ではなくなるしな。

気持ちはわからなくもない。

 

 

相棒。俺は0点だったわ。この子らと付き合う資格なんてないよ。

まあ、んなこと考えもしなかったけど。

 

 

 

 

「ふう・・・、とりあえず良かったよ。遭難していないことがわかって。」

 

「申し訳ありませんでした。」

 

「リフトが終わったら、戻ろうか。あいつが心配だ。」

 

「はい。」

 

 

そう言って、会話を打ち切る。

 

しかし・・・・・1つ問題がある。

当然俺も・・・・忘れてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギくん。」

 

「・・・・なんだい?」

 

少し不機嫌そうに返事をしてみるが、止まってくれなかった。

 

 

何を聞かれるかはわかる。

今日の朝、一花と勘違いして余計な事を言ってしまった。

 

 

「昨日の夜・・・・一花と何を話したのですか?」

 

「俺のせいで倉庫の中に閉じ込められ、俺は大変に落ち込んだ。

見かねた一花が、フォークダンスを踊ってくれた。

以上。見ただろう?キミも。」

 

 

二乃と同じように返した。

あの場に姉妹全員が居た。当然、目撃している。

 

 

「フォークダンスの事は知っています。・・・・さっきの会話です。

あの話とは・・・・」

 

逃がしてくれなかった。

 

「ただの昔話だよ。」

 

「・・・・どんな、はな「やたら無暗に人に聞かせる話じゃないよ。あれは。

あの話をクラスの全員が聞いたら、俺は転校するね。間違いなく。」

 

俺の言葉で塗り潰す。それ以上聞くな。

それを態度で表す。

・・・・しかしこの子は・・・素直で真っ直ぐだ。

 

 

 

 

 

 

「私にも・・・・・聞かせて、くれませんか。」

 

「絶対に嫌。」

 

拒絶する。

彼女は少し涙目だった。心が痛くなる。

 

 

 

 

 

 

「・・・な、なら、なぜ一花には」

 

 

「一花どころか、誰にも喋るつもりはなかったよ。最初はね。この話は風太郎も知らない。

 

ただ・・・・昨日は忙しかった。飯ごう炊さん、肝試し、キャンプファイヤーの準備。

俺の頭も、心も、知らない間に・・・・パンクしていたようだ。

疲れ切って・・・・・油断して・・・・あの倉庫で、一花から優しくされたあの時、

つい、口を開いてしまった。

 

誰であろうと、もう二度と話すつもりはない。

・・・・どうして喋ってしまったんだか。一生の不覚だ。」

 

 

 

 

「・・・・それだけ。ほか、一花には何もしてない。踊っただけ。

あと変な話をしてしまっただけだよ。・・・・ああ、恋バナもしたっけ。」

 

 

「・・・・・わたしは・・・・・知りたいんです。あなたの事を、もっと。

この前のテストの時や、肝試しの時、私は、あなたの事を知ることが出来て、嬉しかった。

この人の事が良くわかった。この人は優しい人。そう思いました。

 

けど、その話を聞いて考えを改めました。私は上杉くんだけじゃなく・・・・

ナギくんの事も、知らなさすぎる。」

 

 

 

「そう。誰だって秘密の1つや2つはあるさ。勿論俺にも、風太郎にもある。

だから、俺はそれを知られたくない。悪いね。

……キミもまた同じように、俺に対して勘違いをしているだけだ。

優しそうに見えたかもしれないが、立派な人間という訳ではない。」

 

 

再び拒絶する。もうあのことは二度と喋りたくない。

嫌われても良い。今日は好感度が下がる日だ。

・・・・・昨日の夜もか。

 

 

「今は良いです。だから・・・・・待ってます。いつか、あなたの口から話してくれることを。」

 

 

 

「・・・・キミは優しいね。・・・・でも、そんな日はきっと永久に来ない。

もし、キミが知るのであれば・・・・いや、何でもないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフトの終点だ。

 

「ごめんね、五月。降りよう。」

 

「……はい。」

 

「折角来てしまったんだ。最後くらいは、一緒に楽しく滑ろうか。」

 

「はい。」

 

「・・・・・・・ありがとう。」

 

 

あれ以上は何も言ってこなかった。気になっているだろうに。

・・・・・とても優しい。

やはり君たちは姉妹なんだね。とても良く・・・・似ている。

 

 

 

 

 

一花と一緒に乗ったリフトで頂上に行き、五月と一緒に滑り降りた。

 

文字に起こすとめちゃくちゃだな。国語のテストだったら間違いなくチェックが付く。

 

 

 

 

しかし、風太郎はこの回答に丸をつけるだろう。

 

俺なら・・・・・花丸にするね。

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。