「五月がどこにもいません!」
四葉くんの捜索の結果、ほぼ全員が見つかって、休憩所の前に集合していた。
残るは五月だけ。ゲレンデでは朝から一度も見ていないが。
「四葉、お前も見つけてないのか。俺も朝から見てない。」
「俺も五月はスキー場では見てないね。」
「一花・・・・・休んでてって言ったのに・・・・」
「ごめん!四葉に捕まっちゃって!」
「全く・・・・私も人探してるのに!」
五月は本当にここに来ているのだろうか。
結構探したんだが。人は多いけど。
「四葉・・・・・五月には、逃げられたのか?」
「いえ、見かけてもいないです・・・・」
「事態は思ったより・・・・深刻かもしれない。遭難だ。」
風太郎がそう言った。
確かに。なくはない。
「一花・・・・・五月は本当にスキーに行ったの。」
「え・・うん。」
「ここ!ここはまだ見に行ってないです!」
四葉くんが地図の一部を指さした。プロフェッショナル・コース。
理由は忘れたが、立ち入り禁止だったはずだ。朝、説明があった。
「立ち入り禁止だろう?そこは。」
「そうですけど、いるとしたらここかもしれません!」
「五月が先生の話を聞いていないとは思えないけどなぁ・・・・」
一番無い。クラス内での五月は知らないが、
恐らく優等生タイプ。先生の言うことは聞いているはずだ。
まあ、事故でこのコースに行っているかもしれないが。
「・・・戻ってないかコテージ見に行く!」
「私は先生に!」
「ちょ、ちょっと待って!もう少し探してみようよ!」
一花が二乃と四葉を止めに入る。
「一花は?五月を見てないんでしょ?」
「そ、そうだけど。」
「なんでよ!ひょっとするとレスキューが必要になるのかもしれないのよ!」
さすが二乃。姉妹想い。
その通りだ。何かあってからでは遅い。
「ま、待ってよー!
五月ちゃんもそんなに大事にしたくないんじゃないかなーって・・・・」
「一花。・・・・・・まあ、俺達は昨日の前科があるからね。」
気持ちはわかる。けど、あの時とは状況が異なる。
「五月の命が危ないかもしれないのよ!大事にしたくないなんて・・・・
そんな気楽にはいられないわ!」
「一花。朝から誰も見ていないのなら、開始早々に遭難した可能性がある。
今から最速で動いても、危ないかもしれない。」
「ご、ごめんね。」
考えたくはないが。
場所を考える。全く候補が出てこない。
やはりプロフェッショナルコースに行くべきか。
滑れないわけではない。気をつければ、俺でもなんとかなるかも。
一番滑れそうな四葉くんと二人体制で行くか?
「・・・・!」
風太郎がふらついた。
しまった。忘れていた。風太郎は病み上がり・・・・違う。
顔がかなり赤い。今もなお、間違いなく体調が悪い!
そうか、らいはちゃんの風邪が移っているんだ。
いつの間にここまで・・・・・気づけなかった。
「風太郎。休め。その様子じゃ無理だ。探しに行ったら、今度はお前が危ない。」
「・・・凪・・・・もう少し待ってくれ。あとちょっとなんだ・・・・・」
あとちょっと?何を考えているんだ。
場所がわかりそうなのか。
・・・頑張れ。お前だけが頼りだ。
俺は・・・・何も思いつかない。・・・・情けないが、無力だ。
「・・・・凪、場所がわかった。耳を貸してくれ。
五月なら、お前の方が良い・・・・」
「わかった。」
風太郎から耳打ちを受ける。
・・・・・・・本当に?少し信じがたい。
どうしてそんなことを。
「本当か?」
「ああ、間違いない・・・・頼む・・・・」
「任せろ。」
「ちょっと!その場所、本当に間違いないんでしょうね!」
「大丈夫だ、恐らく見つかる・・・・」
風太郎は力なく答える。限界だ。
もう休ませよう。
「・・・・そう、じゃあ教えなさい!」
「待った。先に風太郎を戻らせたい。二乃、三玖、四葉。
3人で風太郎を送ってくれ。」
「わかった・・・」
「五月をお願いします!」
「3人も要らないわ!私も探しに行く!」
「ダメだ。・・・・・途中で風太郎が倒れた場合、
男性を運ぶのは女性2人では厳しい。3人いた方が良い。」
適当にごまかす。我ながら悪くない嘘だった。
多分2人で済むと思うけど。
「・・・・ふ、二人で充分よ!こいつはそんなに重くないわ!
それに近くの人に手伝ってもらえば」
「・・・・・察してくれ!どうして風太郎が俺にだけ耳打ちをしたのか!
危険な場所だ!・・・・お前まで居なくなったらどうする!」
「!」
ちなみに大嘘である。風太郎の言ったことが真実ならば。
もういいや、嫌われても。
語気を荒くして緊急感を出すためにお前って言っちゃった。ごめんね二乃。
「わ、わかったわ。」
よし。クリア。
後でめちゃくちゃ怒られそうだ。
ちょっと恨む。手早く風太郎を休ませたかったから仕方ないけれど。
「一花。事前準備に付き合ってくれ。キミが必要だ。ついてきてくれるね。」
「・・・・・わかった。」
3人と風太郎が去っていった。
一度休憩所に入り、スマホでメールを打っていた。
宛先に3人を入れ、俺の荷物の中にある薬の事を連絡する。
先ほど言うのを忘れていた。切羽詰まっていたからな。
だが、休憩のおかげで落ち着いた。
「・・・・よし。一花、行こう。」
「どこへ行くの?」
「リフト。まずは頂上に昇る。」
「さて、どこにいますかねぇ。」
一花と二人でリフトに乗っていた。
こっちの方が良い。途中で二乃に戻ってこられる可能性もなくはない。
今は俺も、かなり心の余裕がある。休憩のお陰だ。
「一花・・・・昨日の事だけど。」
「う、うん。何?」
「・・・・あの話には続きがあるんだ。聞きたいかい。」
「・・・・・・聞かせて。」
「・・・・・・・嘘。言ったはずだよ?本当におしまいと。」
被っていたフードを脱がせる。
そういえば、今日はフードを脱いだ姿を1度も見ていなかった。
赤い髪のロングの末っ子、五月が現れた。
「お疲れ様。五月。」
「・・・・・・ナギくん。」
朝から会っていた一花。それはマスク、フード、ゴーグルをつけて変装をしていた五月。
どうしてこんな入れ替わりを。なんの得があるんだろうか。
聞き出す。だが、向こうから喋ってきた。
「いつから・・・・気づいていたのですか。」
「・・・俺は全くわからなかった。風太郎が気づいた。
なんで気づいたのかまでは聞いてない。
・・・・まあ、今日のキミの発言や行動をみて、わかったんだろうね。」
「・・・上杉くんが。」
「ああ。・・・・凄い奴だよ。流石俺の相棒。
俺は、今のひっかけが無いとわからなかった。」
やはり、風太郎は俺よりも5姉妹の事を理解している。
俺は何もわかっちゃいなかった。
一花=五月だったことがわかれば・・・・・
あのメールは真っ直ぐ解ける。一花クイズは今、丸が花丸になった。
「それに引き換え・・・・俺は何もわかってないんだねぇ。
適わないや。あいつには。」
「・・・・・・・」
「どうして、こんなことを?」
「姉妹の誰かが・・・・上杉くんに惹かれてることを知りました。」
三玖か。ぼかしてはいるが。
「家庭教師ではなく・・・・男女の仲になるなら。私は彼を知らなさすぎる。
本当に彼が信頼できるか・・・・・・確かめたかったんです。」
「なるほど。テストに合格だね。ミスター100点。素晴らしい。
俺は落第だ。本当になんにも、知らなかった。気づかなかった。」
現時点では考えすぎだが・・・・将来、結婚するとなれば、無関係ではなくなるしな。
気持ちはわからなくもない。
相棒。俺は0点だったわ。この子らと付き合う資格なんてないよ。
まあ、んなこと考えもしなかったけど。
「ふう・・・、とりあえず良かったよ。遭難していないことがわかって。」
「申し訳ありませんでした。」
「リフトが終わったら、戻ろうか。あいつが心配だ。」
「はい。」
そう言って、会話を打ち切る。
しかし・・・・・1つ問題がある。
当然俺も・・・・忘れてはいない。
「ナギくん。」
「・・・・なんだい?」
少し不機嫌そうに返事をしてみるが、止まってくれなかった。
何を聞かれるかはわかる。
今日の朝、一花と勘違いして余計な事を言ってしまった。
「昨日の夜・・・・一花と何を話したのですか?」
「俺のせいで倉庫の中に閉じ込められ、俺は大変に落ち込んだ。
見かねた一花が、フォークダンスを踊ってくれた。
以上。見ただろう?キミも。」
二乃と同じように返した。
あの場に姉妹全員が居た。当然、目撃している。
「フォークダンスの事は知っています。・・・・さっきの会話です。
あの話とは・・・・」
逃がしてくれなかった。
「ただの昔話だよ。」
「・・・・どんな、はな「やたら無暗に人に聞かせる話じゃないよ。あれは。
あの話をクラスの全員が聞いたら、俺は転校するね。間違いなく。」
俺の言葉で塗り潰す。それ以上聞くな。
それを態度で表す。
・・・・しかしこの子は・・・素直で真っ直ぐだ。
「私にも・・・・・聞かせて、くれませんか。」
「絶対に嫌。」
拒絶する。
彼女は少し涙目だった。心が痛くなる。
「・・・な、なら、なぜ一花には」
「一花どころか、誰にも喋るつもりはなかったよ。最初はね。この話は風太郎も知らない。
ただ・・・・昨日は忙しかった。飯ごう炊さん、肝試し、キャンプファイヤーの準備。
俺の頭も、心も、知らない間に・・・・パンクしていたようだ。
疲れ切って・・・・・油断して・・・・あの倉庫で、一花から優しくされたあの時、
つい、口を開いてしまった。
誰であろうと、もう二度と話すつもりはない。
・・・・どうして喋ってしまったんだか。一生の不覚だ。」
「・・・・それだけ。ほか、一花には何もしてない。踊っただけ。
あと変な話をしてしまっただけだよ。・・・・ああ、恋バナもしたっけ。」
「・・・・・わたしは・・・・・知りたいんです。あなたの事を、もっと。
この前のテストの時や、肝試しの時、私は、あなたの事を知ることが出来て、嬉しかった。
この人の事が良くわかった。この人は優しい人。そう思いました。
けど、その話を聞いて考えを改めました。私は上杉くんだけじゃなく・・・・
ナギくんの事も、知らなさすぎる。」
「そう。誰だって秘密の1つや2つはあるさ。勿論俺にも、風太郎にもある。
だから、俺はそれを知られたくない。悪いね。
……キミもまた同じように、俺に対して勘違いをしているだけだ。
優しそうに見えたかもしれないが、立派な人間という訳ではない。」
再び拒絶する。もうあのことは二度と喋りたくない。
嫌われても良い。今日は好感度が下がる日だ。
・・・・・昨日の夜もか。
「今は良いです。だから・・・・・待ってます。いつか、あなたの口から話してくれることを。」
「・・・・キミは優しいね。・・・・でも、そんな日はきっと永久に来ない。
もし、キミが知るのであれば・・・・いや、何でもないよ。」
リフトの終点だ。
「ごめんね、五月。降りよう。」
「……はい。」
「折角来てしまったんだ。最後くらいは、一緒に楽しく滑ろうか。」
「はい。」
「・・・・・・・ありがとう。」
あれ以上は何も言ってこなかった。気になっているだろうに。
・・・・・とても優しい。
やはり君たちは姉妹なんだね。とても良く・・・・似ている。
一花と一緒に乗ったリフトで頂上に行き、五月と一緒に滑り降りた。
文字に起こすとめちゃくちゃだな。国語のテストだったら間違いなくチェックが付く。
しかし、風太郎はこの回答に丸をつけるだろう。
俺なら・・・・・花丸にするね。