五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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スキーを終え、ログハウスに帰ってきた。

風太郎の様子を見に行く。

 

 

「ああ、有坂か。上杉の事はよくやってくれた。薬を使わせてもらっている。」

 

「お疲れ様です。先生。すいません。気づくのが遅れてしまいました。」

 

「そう気に病むな。上杉はさっき寝たところだ。静かにしてやってくれ。

キャンプファイヤーの担当だろう。そちらの準備をしてこい。」

 

「わかりました。一世一代の立ち回りをご覧にいれましょう。」

 

「??・・・・まあ頑張ってこい。」

 

 

薬を飲んで寝ているのなら、俺にできることは無いだろう。

予定通り、キャンプファイヤーの準備をしよう。司会進行は俺。

バイトでちょっと経験がある。いつもは女性である佐野さんの担当だけど。

 

 

ここからの俺は道化師。昔に戻る時間だ。

皆にお楽しみいただこう。

声を上げ、存分に笑ってくれたまえ。

 

 

 

 

 

 

 

「まもなくキャンプファイヤーがはじまりまーす。一旦離れてくださーい」

 

イベント進行役の有坂くんです。拡声器を使ってアナウンスをしていた。

一応、キャンプファイヤーの中を確認してから、かがり台に火が灯される。

人が中に居たら間違いなく助からないだろうな。いないけど。

 

・・・・少々、いびつな形のかがり台だ。丸太が1本足りていない。

あの丸太は倉庫の中で眠っているようだ。だが、これで良いかもしれない。

ここから火を入れてくださいと言わんばかりに、一辺が低くなっているからな。

 

 

炎が燃え上がる。大きい焚火だ。まぶしい。

生徒は各々写真を撮っている。

 

時間が経つにつれ、フォークダンスの話題がぽつぽつと聞こえてくる。

風太郎は・・・・当然踊れない。

これはこれで良かったのかもしれない。三玖は良いが・・・・二乃がな。

少し様子を伺うことにする。

 

 

「二乃。お疲れ。」

 

「有坂・・・・」

 

「彼は?・・・・いないみたいだな。」

 

「・・・・そう。振られちゃったわ。あいつから聞いたの。

嫌われちゃったかしら。」

 

 

あいつ。風太郎かな。

一応、けじめはつけたようだ。良いね。

ちゃんと責任を感じてやることはやっている。

 

 

「・・・・そのうち、また会えるさ。」

 

「・・・・そうね。上杉の知り合いみたいだし。

あんたは?金太郎くん知らなかったの?」

 

「うん。初対面だった。ただ、彼とは仲良くやれそうに見えたな。」

 

「そんなのわかるの?」

 

わかるさ。

 

 

二乃はいつもより随分素直だった。変に茶化しはしない。

問題なさそうだ。離れる。

 

 

 

 

 

 

「20分後にフォークダンスが始まりまーす」

「ナギっち!ウチとおどろー!」

「相手が見つからないからといって担当者を誘わないでくださーい」

「けちー!」

「本日のナギっちは店じまいでーす」

 

 

クラスメートとのやり取りで会場に笑いをもたらす。

ありがとう屋代さん。気が利くね。打ち合わせなんてしてないのに。

てか相手いなかったのか。あんた誰でもいいのかよ。

 

 

 

音響機器の準備をしておくか。CDのトラックを2番にし、停止。

ラジカセの出力をスピーカーに接続。

 

さっき聞いたら、1番は音声ガイダンスだった。

こういうトラブルは意外と場がしらける。しっかりとしておきたい。

1回だけなら、笑って許してくれると思うが。

 

 

 

時間が経つにつれ、周辺の話題はフォークダンス一色。

キャンプファイヤーの周りはカップルだらけだ。独り身はみんな外周の方へ追いやられている。

 

ああ、どいつもこいつもイチャつきやがって。滅べ。別れろ。

1組残らず写真を撮ってやる。あとで別れてアルバムを見て後悔するがいい。

しかしまあそれも、良い思い出。

カメラを首からぶら下げて辺りを確認する。

 

 

「で、さ!お、俺とダンス・・・・どうかな?」

「・・・・・うん。良いよ。」

くたばれ。ああ妬ましい。

 

 

 

ダメだ。ここに長く居てはいけない。心を強く持たねば。知り合いいないかな。

知っている人を見つけて、冷静になりたい。パパラッチ有坂。

 

 

 

 

 

 

ん?あれはウチの川村さんだ。

喋っているのは・・・・・・・あれは、飯ごう炊さんの時の、葛城くん。キミだったか。

へーそーなんだ。クラス外だったか。良いこと知っちゃった。

 

 

あ。忘れていたことを思い出した。前田くんだ。

一花に告白した彼。一花は今フリーだ。もしかしたら声を掛けるかも。

 

探そう。前田くんやめとけ。一花は無理だ。ああ見えて難易度が高すぎる。

ん?でも一花は風邪気味か。断る理由はあるな。

 

 

 

 

きょろきょろと見まわして前田くんを見つけた。誰かに話しかけられていた。

肝試しの時に一緒にいた、松井さんだ。

 

「あ、相手がいないなら・・・・お、踊ってあげても良いけど!」

「・・・え?・・・お、おう!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良いね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォークダンス3分前でーす。ペアがいる人は心の準備をしてくださいねー」

「ナギっちー!」

「ダメでーす」

 

 

しつけぇ。もういいって。場は温まった。

これ以上は余計。主役は俺じゃない。ダンサーの彼ら。出しゃばってはいけない。

 

 

そういえば中野姉妹はどこに行ったかな。

ついさっきまではみんな居たんだけどな。ここにいないという事は、コテージのどこかに居るか。

結局5人は誰とも踊らないようだ。風太郎の面倒を見ていると思いたいが、

見張りの先生が居るからな。どうしているか。

 

 

音響機器の前に付く。態勢は万全。

担当の先生もいた。

 

 

「では有坂さーん、お願いしますねー」

「はーい」

「有坂さんは踊る人居なかったんですかー?」

「いたらこんな役を受けてません。」

「それは残念ですー。いらっしゃったら私が写真撮影変わりましたよー?」

「もうちょっと早く聞きたかったですねそれ。」

 

 

屋代さんどんまい。恨むならこの先生を恨め。

別に俺は踊っても良かったよ。伝説は信じてないし、昨日練習したし。

まあ、彼女も冗談だろうけど。

 

 

「では、私も踊ってきますねー」

「え?」

 

・・・誰と?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォークダンス30秒前でーす、皆さん並んでくださーい。

 

・・・・・このフォークダンスにはある伝説があるそうですー。

 

なんと、踊ったペアには永遠なる結びつきが訪れるそうでーす。

 

伝説が訪れるのはフィナーレの瞬間に手を握っていたペアでーす。

 

フィナーレのタイミングはアナウンスするので、ばっちり決めてくださいねー」

 

 

ちょっとパフォーマンスを入れた。好きにやらせてもらう。

どうせカップルしかいないのだ。盛り上げてやる。DJ有坂登場。

会場がちょっと騒がしくなった。バイトのおかげでこういうのは慣れてる。

あと、単純に向いているんだと思う。

 

 

「・・・では、時間になりました。

フォークダンスの始まりです。皆様お楽しみください。」

 

 

再生ボタンを押した。

 

 

♬~~~

 

 

 

カメラを使って一組一組写真を撮る。

 

さっきの先生は・・・どこにも居ないな。

きっと、音楽が聞こえるけれど人目の付かない場所で、同じ教職員と踊っているのだろう。

・・・大人だな。

 

 

 

 

 

笑顔で元気に踊るペア。

楽しそう。林間学校の前から仲睦まじく付き合っているのだろう。

 

 

微妙な顔でぎこちなく踊るペア。

初々しい。これをきっかけに付き合いだすのだろう。

 

 

自分たちの世界に入り、恍惚とした表情でカメラマンを全く意に介さないペア。

おまえらムカつく。滅べ。呪ってやる。至近距離でフラッシュを炊いてやろうか。

少しは気にしろ。

 

 

ペアごとに違うダンスだった。意識して見てみると違いがあり面白い。

曲の口笛を吹きながら、俺もちょっとノッていた。良い曲だ。

踊ってはいないけれど。

 

 

 

 

・・・・赤の他人はわかるんだけどね。あの五つ子は意識してみても違いが判らない。

髪の色と髪型が一緒だったら、きっとわからないだろう。

ふと、そう考えてしまう。

風太郎。やっぱすげぇよ。今日はお前がヒーローだ。

きっと5人はお前の部屋にどうにか忍び込んで、看病してくれているんだろう。

この会場には居ないんだから。・・・・よかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・フィナーレ、1分前です。」

 

全員の写真を撮り終えた。音響機材の前に戻る。

写真に手間取って予定時間をちょっと過ぎたが、まあいい。

フィナーレのタイミングはこっちに任せてくれている。タイミング良く停止ボタンを押すだけだ。

 

 

小さめに発したアナウンスで会場から「おお」という声が上がる。

存分に意識してくれ。主役はキミたちだ。

事前にアナウンスをすると周知をしている。だから小さい声でも拾ってくれる。

こういうアナウンスで俺の声が大きすぎると、雰囲気を壊してしまうからな。

 

30秒前は早すぎる。アナウンスのした後の余韻がもう少し欲しい。

2分前は遅すぎる。まもなくフィナーレであるという意識、ばっちり決めなければ、踊っている側はそう考える。

それを持続させるのにちょうどいいのが1分前。

 

俺はそう判断した。正解かどうかはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

次のメロディだな。

 

全てのペアの女性が男性の目の前でクルっとまわる。

 

男女お互いの右足を差し出し、共に笑顔で、首を傾げる。

 

そして、女性が男性の手元に戻ってきた瞬間。

停止ボタンを押した。

 

 

 

 

よし。完璧だ。

きゃー わーと歓声が上がり、誰から始まったかわからない拍手が始まる。

俺も拍手に参加していた。

 

 

「・・・・・はーい、お疲れ様でしたー。

 

フォークダンスはおしまいでーす。・・・・皆様に永遠の愛が訪れますように。

 

じゃ、花火やりますからねー。危ないですよー、燃えますよー、離れてくださーい。

もー散った散った。おらー、もやすぞー。」

 

 

はははは と会場から大笑いが起こった。踊った側が今のコメントを聞いてみろ。

独り身で踊れなくてひがんでる そう思ってくれる。だから笑う。予定通り。

 

ひがんでるのはマジだけど。滅べ。

 

 

 

良いね。やはり大勢を楽しませるのは、俺に向いている。気分が良くなる。

楽しかったかい?楽しんでくれたなら幸いだ。

写真を時間内に取り終えていれば、100点だったな。

 

 

 

 

「おまえやるなぁ!面白かったぜ。」

「サンキュー。じゃあ、あとはよろしくね。」

 

花火の進行役に拡声器を渡す。違うクラス。名前も知らない彼。

そんな全く無関係の人に褒められるのが一番うれしい。

きっと遠慮がないだろうから。

 

 

 

 

 

「有坂くんおつかれー」

「おつかれー。川村さん。」

「ふふふ。面白かったよ。みんな楽しんでた。」

「ギャラは結構だよ。ちょっと友達の様子を見てくるよ。」

「いってらっしゃい。」

 

部屋に戻り、班のみんなの顔を見る。既に全員居た。今日はもう寝るだけだ。

荷物を整理していたら、あるものを見つけた。風太郎に持っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

風太郎が寝ているであろう部屋に付いた。

見張りの先生はいないようだ。交代中かな。ちょうどよかった。

ノックをし、ドアを開ける。

 

 

暗い。カーテンを閉めているから一切の光が無い。

入ってきたドアから差し込む明かりが頼りだ。

ゆっくり、足音を立てずに歩く。

 

ベッドは6個。左奥のベッドに風太郎は寝ていた。

良く寝ている。顔が辛そうだが。

 

 

「あの子達は・・・・これに気づかなかったようだ。置いとくよ。起きたら使ってくれ。」

 

 

ベッドの脇におでこに貼る冷却シールを置く。

薬の事をメールすれば気づくと思ったが、薬を見つけて満足してしまったようだ。

 

 

「おやすみ。」

 

 

風太郎は寝ている。返事なんて帰ってこない。

先生が来る前に立ち去る。ふと周りを見ると、他のベッドにも誰かが居たようだ。

人が潜っている形が出来ている。気づかなかった。

 

ん?

 

奥のベッドの人物の髪の一部が、少し外にピョコンと出ている。

あのいつも跳ねている赤い髪。ベッドは残り5つ。全てのベッドが使用されている。まさか。

 

 

 

 

 

 

 

うっわ。そういう事か。今の独り言聞かれてた。はっず。

・・・・・知らない振りをしておく。

 

 

足音を殺し、出口に向かう。

部屋の外に出て、ドアを閉めた。

 

 

 

独り言を聞かれたが、いいか。

こっちの予想は当たっていた。少しだけ、五つ子について詳しくなった気がした。

 

そのような形で、林間学校は幕を閉じた。

 

 





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