五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

38 / 130

こういった日常の一コマのようなシーンが、個人的に好きです。



2年次 2学期末試験~3年1組まで
36


 

 

林間学校は終わり、日常が戻ってきた。

 

 

戻ってきたんだが、うちの相棒は大きな病院で入院を決め込んでいる。

あの風邪、中々タチの悪い風邪だったらしい。

入院の間、家庭教師は中止。

ただ、平日の昼と放課後は、俺が姉妹に教えていた。平日なので金出ないけど。時給0円。

 

今日は・・・・なんと、全員がいる。

時々忙しい一花は当然、あの二乃も来ている。

学校の図書室で勉強中だ。

 

 

「ナギくん。」

「ん。どこだい。五月」

 

「ナギ君、ここ教えて?」

「はいはい。一花」

 

「ナギ。」

「お、ここまできたのかい、三玖」

 

「有坂ー。まだ終わらないのー。」

「二乃もやる?」

「嫌に決まってるじゃない。」

「はーい。」

 

 

二乃は来ているだけ。なんかスマホで遊んでる。

どんなことをしているか少し興味が出てきたらしい。

今日は姉妹全員来るから来ないと仲間外れになるし。

 

勉強の無理強いはしない。

が、期末試験が気がかり。赤点でクビ。

それを忘れたことはない。

 

 

 

勉強をしてほしいが、変に刺激をして拒絶反応が出るのも困る。

上手いやり方が1つしか思いつかない。

風太郎、金太郎になって頭の良い女の子が好き とか言ってくれないか。

それしかないぞ。二乃はかなり金太郎を気に入っていた。

 

 

「四葉くん?まだ終わらないのかい?」

「半分くらい出来ました!」

「・・・・・手伝うよ。けど、病室に全部は持っていかないようにね。」

「どうしてですか?」

「こんなもん作る時間があったら勉強しろって言われる」

 

「絶対言われるね」

「あいつは言う」

「・・・・間違いない・・・・・・」

「言いますね・・・・」

「えー!?」

 

 

千円札で折れば喜ぶと思うが、そんな姿は見たくない。

そもそも千円札で折れるのかな。正方形じゃないけど。

 

風太郎の入院という事で四葉くんは例のごとく千羽鶴を折っていた。

折らないと集中できないように見えたので、仕方なく手伝う。

 

 

頭カラッポの状態で勉強させたい。他に考え事や気がかりがあるとダメだ。

鶴の作り方はこの前、風太郎に教えてもらった。

メアド交換の時だったかな。

 

 

「四葉くん。残りは俺がやるから、勉強しよう。」

「わかりました!お任せします!」

「・・・・・ちょっとそこ違うなぁ。字が。」

「どこですか?」

 

英語のスペルを間違えていたので鶴を折りながら指摘する。

四葉くんはやはり5人の中で最も勉強の出来が良くない。自分の名前、漢字で書かないし。

簡単なのになぁ。・・・・・・・いや、姉妹の中では難しい方か。

 

 

覚えようとはしてると思うんだけど。やはり興味が湧かないとな。

四葉くんの好きそうな話・・・・・今度調べておこう。スポーツ系かな。

どうやって勉強に結びつけようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあなー有坂!」

「またな、有坂」

「さようなら。伊達くん。片倉くん。」

 

 

また違う日の放課後。今日は教師おやすみの日だ。

のんびり帰るかと思っていたら・・・・珍しい人物からメールが来ている。

ある場所に来いとの事。行ってやろう。

今なら怪しむことは無い・・・・と思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね。遅いわよ有坂。」

「ごめんごめん。」

 

メールの差出人、二乃だ。呼び出された場所は繁華街。詳しい内容は聞いていない。

何らかの食事に付き合えという事だろう。

姉妹・・・・・五月ではダメだったのかな。いつも一緒にどこかへ行っているイメージがあるが。

男がいないと入れない店?逆なら色々あるが。

 

 

 

「ここよ。付き合いなさい。」

「あー・・・・はいはい。なるほど。」

 

 

ラーメン屋だ。それも・・・・次郎系。

確かに女性一人では入りずらい。二人でも厳しいかもね。

俺も時々この店は来る。しかしここを選ぶか。アグレッシブだね。

 

 

「大丈夫?この店は、」

「平気よ。下調べはしてあるわ。」

「なら良し。」

 

 

大盛無料だが、普通でも量が多い。そこを調べているのであればいい。

大盛は俺も食えない。空腹時に調子に乗って無事半殺しにされ、二度と注文しないことを決めた。

 

 

「この店に来たことあるみたいね。どれが良いの?」

「ん?んー・・・・こういうタイプを食ったことが無いなら、券売機の一番左上のやつでいいさ。

大盛無料だけど、やめた方が良い。壊れる。」

 

 

下調べしたんだろ?と言いたくなったが、やめる。

二乃にそういうことは禁句だ。揚げ足取りととられかねない。

 

 

・・・・いや、二人きりだ。一歩踏み込んでみるか。勇気を出してみる。

既に店内だ、大声を上げることはないだろう。

 

 

 

「事前調査したんじゃなかったの?」

「ネットには人気ランキングなんてなかったもの。」

 

あら、予想外。とても普通だった。拍子抜け。

 

 

さて俺は何にしようかな。今の気分は・・・・味噌。

 

味噌だな。やはり寒い季節は味噌が恋しくなる。

そんなことを考えてたら、二乃が券売機に千円札を入れた。

 

自分の分は今買ったはずだが。

ん?奢ってくれるの?

 

 

 

「いいのかい?」

「良いわよ、これくらい。誘ったのはあたしだし。」

 

 

一瞬、俺の頭に今後のビジョンが広がる。

これを貸しに何か押し付けられたりしないだろうな。

 

 

「・・・ごちそうさまです、姉御。」

 

信じてみることにした。さっき勇気を出したんだ。

毒を食わらば皿まで。この後何があろうと、未来の自分に何とかしてもらおう。

 

 

中野家は金持ちだし遠慮なく頂く。奢ってもらうのは今回だけのつもり。

次があるかわからないが。

 

 

 

「食券をお預かりします!」

 

店員が席まで来て持って行った。

店内はテーブルが無い。カウンターだけだ。そして見事に客は男のみ。

うちの姉御は紅一点だ。俺がセットで正「ねぇ。有坂。」

「はぁい!?」

 

 

「ちょ・・・・どうしたのよ。」

 

「いやちょっと・・・びっくりした。なんだい。」

 

 

話しかけられると思っていなかった。

考え事をしていたので変な声が出た。

 

 

「あんた、こういう店良く来るの。」

 

「ラーメン問わずなんでも。結構行ってるよ。

そっちは?・・・・ラーメン屋にはよく行くのかい?」

 

「全然よ・・・」

 

 

折角こうして一緒にいるんだ。コミュニケーションを取って良好な関係に持っていきたいが、

いかんせんNGワードで地雷を踏まないか気を遣う。

 

そう。今の俺はまさに技巧派の投手。二乃にホームランを打たれないようしっかり考えて、

七色の変化球を投げている。

 

今もそうだ。

今の文章の「ラーメン屋」の前に「こういう」をつけてみろ。それだけでニュアンスが激変する。

 

こういう店は女子一人じゃ入りづらいよな なんて言ってるのと同じだ。

馬鹿にしてるの もういいわ なんて言うかもしれない。

だから、遠回し遠回しにこの聞き方になる。

 

正直俺は二乃が苦手であるが、傷つけたくはない。

俺は二乃に対して一回前科がある。余計に気をつかう。

 

 

 

「まあでも、ラーメン屋でもオシャレな店は最近多い。五月と行ってみるといい。

・・・・あの子が気に入るかはわからないけど。」

 

 

これもちょっと怖い。オシャレというワード。

この店には一人で入れなかったんだな と捉えられかねない。

しかし今日の二乃は様子が違う。

一歩踏み出して探る。

 

 

「行けるところは行ってるわ。けど、こういう所はね。」

 

 

・・・ん?こちらの予想をはるかに上回って素直だな?

俺が警戒しすぎか?

 

 

 

「お待たせしました!」

 

ラーメンが二つ並ぶ。片方は醤油、片方は味噌。

といっても、次郎系。どちらも豚骨がベース。

 

「「いただきます」」

 

お互いラーメンに手を付ける。

えー、この時注意です。二乃の食事風景をじっと見てはいけません。

絶対怒られます。気になるけど。鋼の意志で見ない。というか二乃じゃなくて女性全般ダメ。

 

 

 

 

 

うーむ。中々減らんな。向こうはどうだろう。気になる。しかしダメだ。見るな。

口が汚れてきたのでティッシュを取る。・・・・取ったときに思った。

俺からは近いが、二乃から少し遠いな。

カウンターなので、全ての席にティッシュがあるわけではない。二人の中央に位置を変える。

 

 

「・・・・・・」

 

差し出したわけではないが、位置を変えて1,2分後、二乃が使ったのが見えた。

俺と同じで口でも拭いたか、テーブルでも拭いたか。礼は言われなかった。

 

別に良い。そんなものは最初から期待してない。

これは二乃以外に限った話じゃない。誰だって同じ。俺が勝手にしたこと。

こういうことに感謝を求めてはいけない。

 

でも、普段、あまり感謝の言葉を聞かない二乃だから、

・・・・・・ほんのちょっとだけ、期待はした。

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

二人とも食い終わった。ほぼ同時。やるな姉御。結構量多いぞ。

俺、食うの遅いのかな。食事中、特に会話はなかった。俺も会話しようとは思ってなかった。

 

あれ。ここのノーマルってどんな味だっけ。

「ちょっとスープもらえる?」

 

 

あ。まずい。言ってから気づく。

これ、ちょっとした関節キスになるか?

 

この変態!だろうか。飛んでくる言葉は。

 

「・・・・あんたのもちょっと寄こしなさい。」

 

 

セーフ。こちらのスープも気になっていたらしい。

 

助かった。まあ使うのは互いのレンゲだし。

気にしすぎか。五月と俺を同列に見るのはあれだが、

五月とは結構シェアしているかもしれないし、そのおかげかな。

 

あ、普通にニンニク入ってる。いいね。女性には強敵だが、

入れないと次郎系の真価を知ることは出来ない。

この店食券持ってく時に自分から言わないと抜いてくれないんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。タダメシありがとう。」

 

店を出て、礼を言う。

 

「さっき言ったでしょ。別にいいわ。」

 

その理論で行くと、俺が金出したら食事に付き合ってくれるのか?

と言いたくなったが、さすがにやめておく。機嫌のいい今ならいけるかもしれないが。

 

聞きたいことはたくさんある。どこまで踏み込んでいいのか、距離を詰められるのか。

仲良くなる前のクラスメートなら、こんなことは考えない。

家庭教師の立場であり、目標遂行のためには必要なことだから、

ここまで様子を見ながら真剣に考える。

 

 

外は暗かった。冬だ。日の入りが早い。

「帰るだけなら送っていくよ。」

 

「結構よ。近いし、一人で帰れるわ。あんたが彼氏だと思われたくないし。」

 

彼氏?

・・・・・ああ、風太郎と一緒にビンタされたときに言ってたな。取り巻きの子が。元カレって。あれね。

 

「わかった。じゃあまた。」

 

ここで別れることにした。

緊張する食事だった。少し頭が痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の授業中。

 

「はーい、では伊達くん。187ページの問2番!解答はなんでしょー?」

「はい!えーと・・・・・」

 

あ、伊達くんどんまい。それ難しい。

俺もわからない。

 

 

 

昨日の二乃とのことを考えていた。

やけに素直だった。

 

あの店に一人で入りづらいから、男を誘った。

それはわかる。しかし、こちらの会話に全て答えてくれた。

また向こうから話しかけてくることもあった。

 

今までの二乃ならちょっと想像できない。おそらく、会話の中で軽めの地雷を何回か踏んでいる。

しかし無事だった。・・・・・・・・・・軽めの地雷ってなんだよ?

 

 

また、店を出た後に何か要求されることもなかった。

食事代を払ってもらった。店を出た後、何かと等価交換、もしくは脅迫と思ったが。

ふつーに付き合ってくれた礼だった。

 

 

ふむ。なんであんな態度だったのだろう。

わからない。もっと語気が荒いと思う。

それとも元々これくらい仲良かったっけ?

俺は二乃に苦手意識があるからな。ネガティブイメージがある。

 

 

わからないので、楽観的に済ませる。

理由はわからないが、二乃と少し仲良くなっている。

だから、態度が軟化している。そういう事にした。

 

一体いつのタイミングだろう。

知らない間に、俺が何かのトリガーを引いていると思うんだが。

 

 

向こうが少し変わったんだから、俺も変わる。

これから必要以上に二乃を警戒するのは、やめよう。

昨日の俺は考えすぎだ。

 

 





アニメの日常回で、キャラクターの好みや指向がしれっと判明する。
私はそんな回が大好きです。

私の趣味で、今回のような原作にはないオリジナルの話も定期的に入れさせていただきます。今までだと4話がそれにあたりますね。

サブヒロインが登場するものは除くものとしています。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。