五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「次、この列ねー」

「りょーかいです」

 

 

金曜日。バイト中である。今週は祝日で3連休。

イベント会場の設営で観客席にパイプ椅子を並べたり、ブルーシートを敷いていた。

 

茜の面倒を平日中に見ることになってしまった。

試験中は勉強をメイン。試験が終われば陸上に専念する。

ただ、あいつはそれなりに勉強できるやつなんだけど。

 

 

いつ、俺が陸上部と和解するかはわからない。今は予想がつかない。

ずっとこのままかもしれない。あまり良くないな。それは。

手っ取り早く茜に戻ってほしい。自主練では限界があるだろう。

 

 

陸上部に申し訳なかったと頭を下げるのは簡単だ。

しかしそれは、四葉くんの駅伝参加を認める行為。

茜の未来か、四葉くんの未来か。この2つを天秤にかけなきゃならない。

 

四葉くんの言う通り、駅伝をやりながら赤点を回避するのがベストだが……

駅伝が終わるまではこのままかな。四葉くんが解放されたら、陸上部へ謝罪に行こう。

今は俺も……陸上部に顔を出すのは厳しい。

またキレちまうかも知れない。冷静になれる自信がない。

 

 

四葉くんは今も、陸上部に行っているらしい。

お人好しなのは・・・・・良い事だ。

俺は・・・・・無関心だからな。彼女の方がずっと立派だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい終わりでーす。今日はお疲れさまー」

「お疲れ様でした。」

 

午前中で設営終了。午後はフリー。

片付けは別の人がやるらしい。会場近くにあったベンチで休憩する。

・・・スマホにメールが入っているな。差出人は・・・・悪い。

ちょっと今は見る元気がないな。もう少し休憩。

 

 

 

「ナギ・・・・・?」

「?・・・・三玖。」

 

三玖が通りがかった。この会場に来ていたのだろうか。

 

 

 

 

「はい。お疲れ・・・」

「ありがとう。」

 

三玖にジュースを奢ってもらい、ベンチの隣に座ってもらった。

抹茶ソーダ・・・・今はいいタイミングかもしれない。

 

「ナギ、明日来てくれるんでしょ。」

「・・・ちょっとわからなくなった。四葉くんと顔を合わせづらくなってね。」

「四葉と?」

 

「部活の助っ人に来ていてね。トラブルを起こしてしまった。

陸上部の助っ人などやっている場合ではないって口論して、ひと悶着起こした。」

「・・・・四葉らしい。」

 

 

「大丈夫。ナギは悪くない。そのとおり」

「・・・ありがとう。嬉しいよ。」

 

三玖に慰められる。

 

あの時は頭に血が昇っていたので、届かない星 と言ってしまったが、それはかなり大げさ。

対して難しくはない。・・・・普通の人なら。ただ赤点を取らずに、部活も頑張るというだけ。

だけど、四葉くんにそれはとても難しい。

 

 

「でも、四葉くんの言う通り助っ人をやりながら、赤点回避も出来るっちゃ出来るからね。

また言いすぎてしまった。・・・そっちは、順調かい。」

 

 

「うん。フータローが教えてくれてる。」

 

「良かった。あいつなら大丈夫だ。」

 

「フータローの教え方がわかりやすいのは・・・・ナギのおかげ」

 

「うん?」

 

 

「同じ問題をおしえても、フータローはきびしい・・・でも、手早く教えてくれる。

ナギは・・・反対。優しく、ゆっくり教えてくれる。

フータローはたまに教え方が簡単すぎる時があって、わからない。」

 

 

「・・・・・」

 

「でも、ナギが教えてくれたところ、ちょっと覚えてたから・・・フータローの説明でも、わかる。」

 

「・・・そう」

 

「今は・・・フータローひとり。前より、ちょっとわかりづらい時がある。」

 

二人で補完しあっていると言いたいのかな。

同じ問題だから、風太郎の簡易解説を、俺が事前解説しており、その記憶があったと。

 

気づかなかったな。風太郎だけで家庭教師してるときもあるから、

その時に俺の説明で分からなかったところを改めて風太郎に聞いたんだろう。

説明は短い方が、理解しやすいだろうしな。

・・・いや、もしかしたら三玖の嘘かもしれない。俺を励ますための。

 

仮に信じるとして・・・確かに、それなら俺の存在意義はあるかもしれないが。

でも、俺の説明1回で覚えてくれる方が、お兄ちゃん嬉しいんだけどな。

 

 

「明日・・・来てね。待ってる。」

 

「・・・ああ。ありがとう。」

 

「ナギがいないと・・・みんな寂しい。明日は5人全員いるから。」

 

「……ふふ。わかったよ。行くから。」

 

「やくそく。」

 

 

 

三玖は会場に歩いて行った。三玖だけじゃない。……五月も明日、待ってくれているじゃないか。

励ましの言葉を胸に、メールを確認する。差出人はさっき見た。

 

 

 

親友、上杉 風太郎。内容を確認しよう。

 

・・・・らいはちゃん自慢メールだったらキレる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギさんこんにちわー!」

「こんにちは。らいはちゃん。」

「凪、来たか。手伝え。」

 

 

午後から上杉家に来ていた。

メールには 家に来て手伝え としか書いてなかった。

さっき三玖がぶらついていたのもそうだが、今日は家庭教師やってないようだ。

祝日の金曜だしな。

 

 

「何これ。プリント?」

「あいつらにやらせる。お前も書いてくれ。」

「いや書いてくれって・・・・・手書き?」

「それ以外何がある。」

「いや、うん・・・・わかった。次はパソコンを持ってくる。」

 

 

家に戻るのが面倒なので今日はやめておく。

パソコンはあるが、プリンター無いんだよな。印刷する方法を探しておこう。

 

 

「この問題集と解説にマークをつけておいた。これを書き写してくれ。」

「わかった。」

 

 

ペラペラっとめくると問題集の一部の問いに赤い字で数字が書いてあった。

うへぇ凄いな。何ページあるんだ。

 

「この数字のところ?」

「そうだ。1は一花用、2は二乃用だ。残りもわかるな。紙は人物ごとにまとめてくれ。」

「問題を・・・・個別で作ってるの?」

「ああ。あいつらの出来ないところはわかった。」

「凄いな・・・・」

 

 

 

風太郎は、凄い。

そこまでやるか・・・・いや、感心している暇はない。

すぐに手を付けないと明日に間に合わない。やろう。

 

 

 

 

 

 

 

む。一花はこれが出来ないのか・・・・

二乃は・・・・・これかぁ。ここを解くにはあの前提公式が・・・・

三玖は?・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この問題は・・・・全員か。

なら、これも・・・・何?これは全員わかってるのか・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直・・・・あの日、お前が帰った後は、かなり家庭教師が捗った。

あの二乃まで勉強したくらいだ。・・・・あいつらも責任を感じたんだろう。」

 

 

「・・・・・そう。それは良かった。」

 

 

「それに、お前にもわかっていたことが一つある。一花の服装だ。

あいつは言っていたぞ。風呂上りの後に、素早く着ることが出来たのは、あの服しかなかったと。

俺はそれに気づかなかったぞ。お前だけだ。」

 

 

「・・・それは、光栄だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギさんもどうぞ!」

「ありがとう。らいはちゃん。」

「どーいたしましてー!」

 

 

夕飯時。まだ全て終わっていない。明日に間に合わない。

これは泊まりこみコース。両親に連絡した。

念願のらいはちゃんのカレーうどんを食える日が来た。結構嬉しい。

 

 

「五月って・・・・ここが出来ないのか?」

「そうだ。あいつはその部分がかなり苦手だ」

「へぇー・・・・」

 

 

紙を確認していく。

プリントを作ることで、俺も彼女たちの苦手な部分を知ることが出来た。

俺の勉強にもなってる。カレーが飛び散ったら台無しなので食事の手はいったん止める。

 

 

「ただいま。おう!ナギくんじゃないか!」

「お邪魔してます。」

「ああ!ゆっくりしていけ!」

親父さんが帰ってきた。

 

 

 

 

「風太郎、今日泊まるよ。」

「何を言う。そもそも逃がすつもりはない。」

「だと思った。」

 

「ナギさんおとまり?」

「うん。お世話になります。」

「わーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜。というか早朝。

途中まではらいはちゃんを適度に相手しながらプリントを作っていた。

親父さんも含め、今はもうぐっすりスヤスヤ。

この1枚で最後だ。

 

 

「これで終わりだ・・・・」

「よし・・・・寝れる・・・・」

 

 

キツい。絶対支障が出る。

俺はまだいい。日頃から睡眠時間が短い。

風太郎はかなりきているだろう。

 

「次からパソコンで作るから・・・・マークだけつけて、俺に渡してくれよ。」

「パソコンでそんなことが出来るのか・・・?」

「えぇ・・・・」

 

知らなかったらしい。質素倹約は良いんだが、

文明の利器に無頓着すぎる。まあ使うと金がかかるからな。

 

「もう寝よう・・・俺もちょっとキツイ」

「・・・・・zzzzz」

 

既に風太郎は寝ていた。俺も早く寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぎさん?おはよーこざいまーす・・・・」

「おはよう。らいはちゃん。顔を洗っておいで。」

「はーい・・・」

 

 

起床時間。

睡眠時間を削られようが、俺は早起きだった。

寝れない。不眠症のせいで一定の時刻でほぼ強制的に起こされる。2時間も寝てない。仮眠。

おかげで目が痛い。後で目薬差そう。

三玖から貰った抹茶ソーダを飲んで、一時的に眠気は吹き飛ばした。

 

 

 

「どうぞ。らいはちゃん。」

「いただきます!」

 

 

無心でプリントと朝食を作った。かなり気分転換になった。

今なら、彼女たちの事も理解している。前回とは違うはずだ。

 

今なら大丈夫だ。行けるな。三玖も、五月も待ってくれている。

四葉くんは・・・・とりあえず、謝っておこう。

 

「zzzzzz」

 

風太郎はまだ寝てる。まあもうちょっと寝かせてやろう。

 

 

「おはよう!ナギくん。」

「おはようございます。メシ出来てますよ。」

「ナギくんのメシか!久しぶりだな。」

 

親父さんも起きた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・を。ナ、ナギ。早いな。」

「やあ。起きたかい。」

 

上杉大先生、起床。

まだ辛そう。だが、もう行かなくてはならない。

 

「酷い顔だぞ。洗ってきな。」

「あ、ああ。」

 

 

「メシ食って、準備出来たら・・・・早く行こう。あの子たちが待ってる。」

 

「・・・・・そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満を持して、中野家へ向かう。

もう大丈夫。メンタル復活。ノーマル有坂です。

 

 

0点を取らせてしまったのは申し訳ない。俺のやり方がダメだった。

 

彼女たちは自分の潜在的な苦手分野に気づいていないんだ。

そこを矯正してあげよう。

風太郎と一緒に作ったこのプリントがあれば大丈夫。

 

 

俺は凡人だ。天才でも秀才でもない。

だから、前に進めなくなったら休め。足が折れたら、休め。

治るまで休んでから、また歩きだせばいい。

 

風太郎のような天才達のように、足を使わずに飛び越えたり、

足を引きずりながら歩かなくていい。

俺は俺に出来ることをしよう。

 

 

 

「凪。」

「なんだい、風太郎。」

 

 

道すがら、風太郎が話しかけてきた。

 

 

「あの小テストは0点だったが・・・・それは風邪を引いて入院した俺にも責任がある。」

「・・・・・ああ」

 

「確かに、給料泥棒だ。」

「・・・・・・・・ああ」

 

 

入院中は給料出てないから正確には違うが、今そこを指摘するのは、無粋。

 

・・・・彼は何かを告げようとしている。

 

真剣な雰囲気を感じる。邪魔してはいけない。

 

 

 

 

 

 

「・・・・実は、期末で赤点を取ったらクビと、はっきり言われてはいない。」

「・・・そうなのか。」

 

「だが・・・あいつらが赤点を取ったら、こっちから家庭教師を中止しようと思う。」

「・・・・・・いいのかい。」

 

 

「構わん。給料泥棒は俺も気に食わない。

・・・・・だからお前も、最後まで付き合ってもらうぞ。」

「任せろ。」

 

 

「このことは、あいつらには言うなよ。」

「勿論。」

 





アンケートのご協力、ありがとうございました。
12:00と18:00が最多、次点で24:00でした。
ご勝手ながら18:00投稿を継続したいと思います。

12:00は避けたかったと言いましたが、
平日12:00~13:00は職場の休憩時間中にスマホで投稿内容の事前チェックをしているからです。

ただ、私と同じように休憩時間中でスマホで確認したい読者様もいるかと思い、
12時が最多になれば、12時で行く予定でした。
同率となってしまったので、こちらの都合を優先させてください。
投票していただいた方には、申し訳ありません。


追加の後書きです
最近はこちらのミスでご迷惑をお掛けしており申し訳ありません。注意点がかなり増えてしまったので、初回の前書きを消して、注意点で単話を作ろうと思います。今なら1000文字を越えられると思っております。

注意点を書いたら、各話の前書き後書きは消します。
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