五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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「し、しっかりしてくれ、風太郎。」

「・・・・・・zzzzz」

 

 

中野家のマンション。

たどり着いたはいいんだが、風太郎の睡魔が限界を迎えてしまった。

エレベータの中でじっとしているうちにやられてしまったようだ。

背負いながら歩いている。

 

 

「も、もうちょっと頑張ってくれ。せめて中野家の中で。」

「zzzzz・・・・・」

「クソ・・・・・や、休めん。降ろしたら終わってしまう気がする。」

 

さっきまでの偉大なる教師 F.上杉はどこへいったんだ。

ちょっと前にもあったなこんな事。

さっきの決意の後で気が抜けてしまったか。

 

 

「ナ、ナギくん。来てくれたんですね。う、上杉くん!?・・・・・だ、大丈夫ですか?」

「五月・・・・手伝ってほしい・・・・」

 

天の助けが来てくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、悪い。集中しすぎて寝不足になった。」

「俺の目薬使う?」

「あまりにも遅いので、みんなで先に始めてますよ?」

「自習してたの?やるね。嬉しいなぁ。」

 

中野家玄関へ無事入場。

プリントを作っていたので寝不足と言わないのが出来る男である。

しかし、先に始めているとは。やる気あるな。うれしい。

プリント作った甲斐があったかも。

 

 

「・・・・今回こそは、お前ら全員赤点を回避してもらうぞ?

そこで、これを用意した。今回の範囲をすべてカバーした想定問題集だ。」

「あ、ちょ。」

 

ダメだって。量が多すぎる。一気に全部見せるな。厚さだけで何センチあると思ってんだ。

ちょっとづつ小出しにしていけばいいのに。それは見るもののやる気をなくす物理的な絶望。

 

今からこんな量をやらされるんですか

そう思ったに違いない。五月の顔が引きつってるもん。

 

 

「や、やっぱりお引き取りください!今日の約束はナシで!」

「に、逃げんな。お前にこれを引き取ってもらうぞ!」

 

プリントを何とか五月に押し付けた。

 

 

「こ、こんな量を・・・え?・・・・・・・・あ、呆れました。

まさかこれが原因で寝不足ですか?」

「そんなことはどうでもいいだろ。お前達だけやらせるのはフェアじゃない。俺達がお手本にならないとな。」

「ナギくんも頑張りました。ほめて。」

「ナ、ナギくんまで?」

「ほら、誰も逃げ出さないうちに行こうぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三玖、リモコンを離しなさい!」

「二乃こそ諦めて。」

 

「ありがとね五月、俺を励ますための嘘をついてくれたんだねぇ。」

「ち、違います。さっきまで頑張ってたんです!」

 

「・・・・・・・勉強中はテレビを消しまーす。」

「「あーー!!」」

 

中野家のリビングに入場。

二乃と三玖がテレビのチャンネル争いをしていた。

なお、上杉先生によってメディアはシャットアウト。

情報統制。テスト期間という戦時中である。

 

 

「前から思ってたが、あの二人仲が悪すぎるだろ・・・・」

「うーん。犬猿の仲だよね。・・・特に二乃。あの子はああ見えて、

一番繊細だから。衝突も多いんだよね」

 

一花スキャニングによる報告である。まあ合ってるよね。

 

ガラスの女、二乃。固そうに見えて、案外簡単に割れてしまい、

割れた瞬間、触れる者を容赦しない。

我ながらとても的確な例えだと思う。めちゃくちゃ失礼なので絶対に口には出さない。

 

 

 

「ナギ君!来てくれたんだね!」

「おっす一花。がんばりまーす。」

「ふふ。また教えてね?」

 

 

「なによ。案外元気そうじゃない。」

「自分不死鳥なんで。この間はごめんなさいです。」

「しつこい。もう気にしてないわ。」

 

 

「ナギ、約束守ってくれたね。」

「抹茶ソーダごちそうさま。良い働きだったよ。」

睡魔撃退的な意味で。

 

 

「有坂さん・・・・・」

「四葉くん。この間はごめんね。俺もキミの選択を応援するよ。」

「ありがとう・・・・ございます。」

「なんだ、何かあったのか?」

「いいや。何にもないんだ、風太郎。」

 

四葉くんが駅伝と勉強どっちもやると決めた以上、それに従う。

出来ないと決まったわけじゃないんだ。

その方が四葉くん自身もやる気になるだろう。

 

 

「それじゃあ、ナギ君、フータロー君。これから1週間よろしくお願いします!」

「ああ。・・・・中間試験のリベンジマッチだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期末テスト勉強を7人で進めていた。

 

「・・・・・・・」

「・・・・あ、それわたしの消しゴム!」

「・・・・借りただけ。・・・・あ、それわたしのジュース!」

「借りるだけよ。・・・・・うぁ。ナニコレ・・・」

 

 

二乃が抹茶ソーダを飲み、悶絶。

残念。それは大谷吉継の鼻水入りである。

以前三玖からちゃんと教えてもらった。

 

なんだかんだ二乃が普通に勉強している。

驚き。この間の一件で俺に気を遣ってくれてるのかな。うれしい。

 

ただ、二乃と三玖がちょっかいを出し合い、イマイチ集中できていない。

対面にいるからそんなことになってしまうんだ。

 

 

「「・・・・・・」」

 

「どうにかならんのか、アレ。・・・・・アイディア募集中。」

「はーい!どうですか?みんな仲良し作戦!」

「とりあえず席替えしたら?」

 

二乃と三玖をどうにかする四葉くんの作戦が始まった。

今日の所は席替えしません?根本的な解決にはならないけど。

 

 

「上杉さんが二人を良い気分にさせたら、ケンカも収まりますよ!」

 

四葉くんのご機嫌取り作戦実行。

 

 

 

「はーはっはっは!良いねぇ!二人とも!何と言うか、凄くいい!・・・・・えらい!」

「もっとなにかないんか」

 

褒めるのが下手過ぎる。お前なら勉強系のなにかしらでイケるだろ。

三玖は社会いいねとか二乃は英語できるねとか。せめてそういうのを。

 

 

「あんたどうしたの・・・・気持ち悪いわね。」

「気持ち悪くはない。」

「本当の事を言っただけよ?」

「それは言い過ぎ。取り消して。」

 

二乃の悪態に三玖がすかさず反論。

作戦失敗。逆効果である。

 

 

 

 

 

「こんなのはどうかな!?第3の勢力作戦!」

「一回席替えしません?」

 

敵の敵は味方というアレである。ちなみに俺は無視ですか?ナギお兄ちゃんまたないちゃうよ。

 

「・・・・一応、頑張ってるあいつらに強く言うのは心が痛む。」

「あなたにも人の心があったんですね。」

「なにげに酷いね五月。」

 

風太郎が悪役となり共通の敵となる一花の作戦が始まった。

 

 

 

「ハーハッハッハ!!おいおい!まだそれだけしか課題終わってねぇのかよ!

と言っても半人前のお前らは!?課題終わらせるだけじゃ足りないけどな!

あー違った!半人前じゃなくて、五分の一人前かぁァァ!!!」

「なんだかイキイキしてない!?」

「流暢が過ぎる」

 

ノリノリ風太郎。さっきのと比較するといかに本人が普段どういう態度なのかがわかる。

 

 

「言われずとも、もう終わるところよ!ほら。」

「ん?・・・・そこテスト範囲じゃないぞ?」

「え・・・・や、やば!」

「まあ良いんじゃない。英語だから。他ならともかく。」

 

二乃のやってるところはテスト範囲よりちょっと前だった。

そんな気にしなくていいと思うけど。

でも英語って範囲によって使う文法とか大体決まってるからなぁ。

 

 

「二乃・・・やるなら真面目にやって。」

「・・!こんな退屈な事、真面目にやってられないわ!部屋でやるから放っておいて!」

 

あー。二乃が行っちゃった。

三玖さんそれダメでーす。危険球退場。

 

「ワンセット無駄になっちまった・・・・・」

「ざんねん。」

 

 

帰ってしまったので作ったプリントも渡せない。

仕方ない。裏紙をメモ用紙として固定電話の横に置こう。

多分使うのに5年は困らない。細かくカットすれば10年以上かかるしれん。

俺の家にもちょっとくれ。

 

「弱気にならないでください。お手本になるんでしょう?・・・・頼りにしてますから。」

「ああ・・・・待てよ、二乃。」

 

五月の励ましによって、風太郎が動いた。

帰ろうとする二乃を風太郎が呼び止める。

まだ階段の踊り場近くにいる。立ち止まってくれた。

 

 

「まだ始まったばかりだ。もう少し残れよ。

ただでさえお前は出遅れてるんだ・・・・4人にしっかり追いつこうぜ。」

「え、ちょ、風太郎。」

 

 

ドはつかないが、直球。その発言はマズい。

お前は一番勉強が出来ないと言っているようなものだ。

 

あのラーメン屋の地雷源から生還した俺ならわかる。

その発言は彼女のプライドを傷つける。

 

 

「うるさいわね・・・・!何も知らないくせに!とやかく言わないで!

あんたなんかただの雇われ家庭教師!部外者よ!」

 

二乃の反論。無事爆発。悪化してしまった。

あー。やっぱりこうなった。ダメだよ。もうちょっと考えないと。

爆弾処理班の有坂に任せとけって。

 

 

 

 

 

「これ・・・・フータローとナギが私たちのために作ってくれた。

・・・・受け取って。」

「問題集がなんだってのよ!こんなもの・・・・いらないわ!」

 

三玖が二乃にプリントを手渡そうとしたが、拒否。

三玖の持っていたプリントを弾き飛ばした。プリントが宙を舞う。

 

ん?・・・・・・様子がおかしいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「二乃・・・・・・・・・・・・・・・・拾って。」

「三玖。大丈夫だよ。俺が拾うから。」

 

 

あれ、これもしかしてマズいか。

三玖が思いのほか本気で怒っているかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねぇ・・・・二人とも落ち着こう?」

「そ、そうだ、お前ら少し落ち着け。」

「いいよいいよ。俺が拾うって。無理にやらなくていいから。」

 

 

 

 

・・・・本格的にまずい。周りが焦り始めた。

いつものやんちゃでは済まなくなってきた。険悪が漂っている。

何とかカバーしないと。とりあえずプリントを集めて。

 

 

 

 

 

 

「・・・こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ!今日だって遅刻したじゃない!

いい加減よ!それで教えてるつもりなら・・・大間違いだわ!!」

「あぁ・・・・せ、折角死ぬ気で作ったのに・・・・まあ、真っ二つならいいか・・・・」

「え・・・・ご、ごめん!」

 

 

拾っていたプリントの1枚を拾い上げられてしまい、ビリビリと裂かれてしまった。

あ、危なかった。この前のメンタルのままここに来ていたら、まず間違いなく立ち直れなかった。

 

 

真っ二つだから組み合わせて、パソコンで文字を打って印刷しなおそう。

今日の俺なら大丈夫。まだ全然余裕がある。

というか、周りの余裕がないのがわかるから、かなり冷静沈着になっている。

 

 

 

「・・・・二乃・・・・!」

「ふ、風太郎。」

「三玖!俺達はいいから!」

 

かなり危ない。三玖が二乃に突っかかりそうだったので風太郎に止めてもらう。

大丈夫。二乃はさっき謝罪の言葉を口にした。ある程度は冷静に

 

パシン

 

 

 

 

「なっ・・・・・・」

 

「・・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五月が階段まで来て・・・・・二乃を平手打ちした。

 

 

 

 

 

「二乃・・・・・二人にちゃんと・・・謝ってください・・・・!」

 

 

五月だと・・・・!三玖じゃなくて五月。

気が付かなかった。

 

 

 

 

!・・・・まずい!二乃が右手を上げている!

反撃が・・・・!立ち上がーーーーパシン

 

 

 

「っく・・・・・・・・がッ・・・・・・!」

 

 

 

「いてて・・・・ナ、ナギくん!!」

「あ、有坂!なんで・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

プリントを拾うのを中止し、五月の前に出て壁になった。

 

五月を叩こうとした二乃。しかしその間に俺が立ったので、予定より短いレンジになる。

右手は俺の耳付近にヒットし、顔を顎から持っていかれた。かなりの威力だ。踊り場から1階へ転げ落ちてしまった。

 

 

痛い。痛いが・・・・治りかけの口内炎。また完治が伸びてしまった。

折角あの時天ぷらを我慢したのに。

五月の前に立った時につい、五月を壁際に追いやってしまった。ケガをしていないと良いが。

 

あーもうバカかよ。壁になるんじゃなくて二乃の手を止めれば一番スマートだったろ。

本当に俺はとっさの機転が利かない・・・

 

 

「っつ・・・・五月。大丈夫かい。とっさに突き飛ばしてしまった。ケガはないかい。」

「私は何ともありません!ナ、ナギくんは・・・・!」

「・・・・・大丈夫だよ、多分。・・・まあ、ちょっと口の中を切ったかもしれないけれど。」

 

 

五月にケガはないらしい。良かった。

 

「二乃・・・・謝罪を!」

 

「な・・・・何よ。あんた、いつの間にこいつらの味方になったのよ・・・?

まんまと口車に乗せられたってわけね!こんな紙切れに熱くなっちゃって!」

 

「ただの紙切れじゃない・・・・よく見て。」

 

「な、何よ・・・・・・・・・・!!」

 

 

「全部・・・手書きなんです!上杉くんとナギくんが手書きで作っているんです!

今、言ったでしょう!死ぬ気で作ったと!」

 

「気にしなくていいよ。次からはパソコン使うから。

・・・・プリンターがなくて、昨日は手書きだったけど。

そのプリントも大丈夫。真っ二つなら読み取って打ち直して印刷できる。

だから大丈夫だ。気にしなくていいから・・・・・」

 

 

「・・・・・だから、何よ。」

「私たちも真剣に取り組むべきです!二人に負けないように!」

 

「に、二乃・・・・」

「二乃。いい加減受け入れて・・・・」

「いや、ちょっと。あの。」

 

いや、ちょ。話聞いてよ。

仲よくしてよ。俺、殴られ損。無駄死に。

ダメだ、みんな熱を持ちすぎてて止まってくれない。

先週、俺がやっちまったからか。その影響が残ってるのか。

 

 

「わ、わかったわ・・・・・あんたたちは私よりこいつらを選ぶわけね・・・・・

こんな家出てってやる・・・・・!!」

 

「二乃!冷静になれ!」

「前から考えてた事よ!この家は私を腐らせる!」

「二、二乃!そんなことをしては、お母さんが悲しみます!」

 

「・・・未練がましく母親の代わりを演じるのはやめなさいよ!」

 

・・・五月が?母親を演じるって?

 

 

 

「二乃!話し合おうよ!」

 

一花が二乃を引き止めようとはしているが・・・・ダメだ。止まってくれない。

 

 

「あ、有坂さん!口の中見せてください!」

「四葉くん・・・・あー」

「血、血が出てますよお!」

「・・・・大丈夫。これ前から。うがいすりゃ何とかなる。」

 

マジかよ。血が出てるのかよ。当分治らねぇ。道理でさっきから鉄分の味がすると思ったら。

それより・・・階段から落ちた時に、足首をやってしまったかもしれない。

 

 

 

「・・・先に手を出したのはそっちよ!

あんなドメスティックバイオレンス肉まんオバケとはやってられないわ!」

 

「ド、ドメ・・・・に・・・・肉・・・・!

そんなにお邪魔なようなら私が出ていきます!」

「あっそう!?勝手にすれば!私も出ていくから関係ないわ!!」

 

 

 

「ど、どうすれば・・・・・・・な、凪。大丈夫か。」

「無傷ではなさそうだけどね。とりあえず。

すまないな。俺にはこれくらいしかできなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日はこれっきり。

勉強なんてできる雰囲気ではなかった。

 

そして、翌日。二乃と五月は中野家を出て行った。

家出というやつだ。

 

 

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