「・・・・やれやれ。参ったな。」
口の中は良いとして足はマズい。
歩く度に左足が痛い。体育はしばらく無理だな。茜はどうするか。
今あいつのタックル喰らったら死ぬ気がする。メールしておこう。
公園に来ていた。家出した2人の捜索だ。本日は3連休の最終日である、日曜日。
風太郎と三玖でバディを組み、俺は単独で探す。足をやったので遅くなるし。
一花は仕事に、四葉くんは駅伝の練習に行ってしまった。
足の件は姉妹と風太郎にはバレていない。上手く隠せた。
昨日……三玖と五月の様子が明らかに変だった。
作ったテストを破られたことや、俺が吹き飛んだことにより、頭に血が上ってしまっただろうか。
……今回の家出の引き金を引いたのは俺かもしれないな。
ひとしきり周辺を捜索したが、思ったより足が痛いのでとりあえず休憩している。
家に常備が無かったので、薬局で湿布を買って、足首に貼る。
そこまでひどくないと思う。病院に行かなくてもいいだろう。
「・・・・・有坂。」
「・・二乃。探していたよ。」
二乃が見つかったのは良いが・・・見られてしまった。
「どうしたのよ……それ。」
「・・・・・今朝ひねった。歩くのも結構辛くてね。松葉づえを使う気はないが。
ちょっとついてなかったよ。」
「そう。・・・・災難だった、わね。」
バレていると思うが嘘をついておく。
問題があったのは昨日。二乃と五月が家を出て行ったのは今朝。
だから今日の朝、自宅でひねったことにする。
「どこに行くんだい。」
「あんたには関係ないわ。」
「それはちょっと無理がある。一発貰ってるしねぇ。」
「それは・・・・悪かったわよ。」
「構わないよ。・・・・行先だけでも教えてくれないか。この足だ。追わないよ。」
「・・・・あの・・・・ホテルにいるわ。」
「ありがとう。それで充分だよ。・・・・別に、帰れとは言わないさ。
俺も似たようなときはある。自分に失望した時は・・・・いつも、一人になりたくなる。
キミを傷つけたあの時もそうだった。気持ちは・・・少しだけわかる。」
「なんで・・・・あんたは・・・・・・」
「ん?」
「いや・・・なんでもないわ。もう行くから。」
「ああ。」
流石にケガをさせた俺に対してはバツが悪く、かなり素直だった。
二乃の行先はわかった。適当なタイミングで風太郎と三玖の2人に連絡しよう。
すぐに連絡するのは二乃にとって良くない。
ホテルに二乃がちゃんとついてから、連絡をする。
・・・今、二乃の味方になれるのは俺だけだろう。
そこはしっかりケアしないといけない。あとは・・・五月か。
とりあえず、二乃は2人に任せて、こちらは五月に集中しよう。
「・・・・ダメだ。見つからん。」
18時くらい。かなり探しているんだが。
足ももう限界だ。仕方ないので帰る。二乃のようにどこかの宿泊先にいるんだろう。
もしかしたら部屋が違うだけで同じホテルという可能性もあるか。
帰路につく。
・・・・・・・・・もうすぐ家、なのだが・・・・・・・・・・・・・・
家の前に・・・・・・・五月がいる。
道理で見つからないわけだ。
しかし、俺の家をなんで知っているんだ。
「・・・・・・ナ、ナギくん~~~!」
「え?なにこの雰囲気?とりあえずウチくる?」
「お、おねがいします・・・・」
なんか涙目だった。
とりあえず家に入れた。
思ってたのと違うんですけど。
詳細を聞いた。
財布を家に忘れてしまい、ホテルは使えなくなった。
昼の時点で俺の家に行こうとしていたが、迷う。
あちこちを彷徨っていて、家の表札を確認。何とかたどり着いた。だが、家には誰もいないので施錠中。
そしてその時点でも17時。俺が帰ってきたのは18時すぎ。1時間も待って不安だったらしい。
うちの親少なくとも21時にならんとこないし。
『五月を見つけた。心配しなくていい。』
二乃を除く5人にメールを出す。
二乃には別個メールを送る。俺なりの気遣い。
『五月は俺の家に泊まりに来た。財布を家においてしまったらしい。』
事実だけを伝えるメール。
大丈夫。二乃の根っこは姉妹想いのはず。連絡した方が良い。
メールの返事は帰ってこなくていい。
彼女の癪に障らないよう、心配しなくていい という文章は抜く。
あんな肉まんオバケの心配なんかしてないわ
変なメール送ってくんじゃないわよ
となること間違いなしである。
メール出すのが俺なら大丈夫そうだけど。
というかドメスティックバイオレンス肉まんオバケって何。笑うんだが。
「大丈夫?」
「はい。ありがとうございます・・・・」
「泊まっていくのは多分ok。部屋の準備をするけど・・・問題が一つある。」
「問題・・・ですか?」
「両親の帰りが遅くてね。多分21時までは俺と二人ぼっち。
あと、寝る場所は俺と一緒の部屋になってしまう。」
「・・・?・・・・それの何が問題なんですか?」
「Oh...」
ピュアすぎる。男はオオカミですよ五月さん。
襲われたりとか考えないんですか。信頼されすぎている。嬉しいけど。
マンションのカードキーくれるくらいだしな・・・・
『同級生の女の子が家出してウチに泊まるそうです』
母さんにメールを出した。
風呂を沸かしたので五月に入ってもらい、その間に部屋の準備をする。
布団だけど寝れるのかな。いや、林間学校では寝てたか。
ん?俺が布団で寝ればいいじゃん。ベッドを譲ろう。でも受け入れてくれないかも。
「お風呂、お先に頂きました。」
「おつかれー」
五月が風呂から出てきた。今は夕飯作っている最中。
スパゲッティを茹でている。ソース?レトルトです。
乳化が俺には難しすぎる。1回も成功したことない。
「着席してお待ちください。お嬢さん。」
「ふふ。・・・ありがとうございます。」
茹でている最中にスマホが鳴った。両親からだ。
母さんのメールを開く。
『あらあらー お母さん嬉しいわー。今日は22時までかかるからー。ごゆっくりー♡』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ナギくん?スマホをじっと見て固まって、どうしたのですか?」
「・・・・いや、なんでも。」
勘違いされていらっしゃる。
断じてそんなことにはならない。割と真剣な家出だぞ。
ん?メールを出していないが、父さんからも来ている。
『聞いたぞ!お前もやるじゃないか!明日は赤飯を』ゴッ
「ナ、ナギくん!?いきなりスマホを投げ捨ててどうしたんですか!?」
「いやなんでも。」
メールの文を全て見る前にスマホをその辺に投げた。
結構長かった。6行くらいあった。どっちもおちょくりやがって。
俺がジョークやいたずらが好きになったのは間違いなく血筋だろう。
こちとら真面目な話やぞ。
「はーいどうぞー」
「いただきます。」
スパゲッティとサラダが出来たので提供する。
姫はたらこソースをご所望でした。
自分の分を今から茹でる。
投げたスマホは保護フィルムのおかげで無事だった。1枚余ってるから風太郎に分けてやろう。
多分機種違うから使えないけど。
「明日には帰れそうかい?」
「・・・いえ、今回ばかりは二乃が先に折れるまでは帰れません。
明日にはここを出ていきますから。今日だけ、お願いします。」
「その言葉を真に受けるほど、俺は向こう見ずじゃない。
財布を忘れたんだろう?いったん帰って、また出ていくのかい?」
「う、うぅ・・・」
ちょっとあれだよね。格好つかないよね。それは。
「別にいてもらっていいから。」
「あ、ありがとうございます。」
「昨日、母親の代わりって言っていたね。」
「・・・・そうです。女手一つで私達5人を育ててくれました。
今はもう・・・・いません。だから、私が母親の代わりになろうと決めたんです。」
「なるほど。」
女手一つ・・・どういう意味かな。
折角だ、もう少し正確に聞こう。
「女手一つというのは?
今、キミたちの父親は家にあまり帰っていないようだ。いつも母親一人だったという意味かな?
それとも・・・キミたちを生んだ時は、母親が一人だったのかな?」
「えっと・・・お母さんから、聞いたんです。
お腹の中にいる子供が五つ子だとわかった途端、姿を消してしまったと。」
「つまり、後者か。」
五つ子だとわかったら姿を消した。連絡は取っているから今の中野父ではないな。
となると離婚。金銭的な不安の為か?・・・まあ、気持ちはわからなくもないが。
筋は通してほしいものだ。
「あの・・・・ナギくん。」
「はい」
「おかわりありますか?」
「・・・・・はい。」
和風ソースも平らげてしまった。
俺の分のスパゲッティをもう一度茹でた。
五月が母親ね・・・・そんな印象は、俺にはないんだが。
五月は・・・・元気で礼儀正しい出来た妹。母親の代わりになるために背伸び。
母親と呼ぶには個人的におちつきが足りない。
迷子や肝試しで涙目になってるのを見ると保護欲が出る。
一花は、まあおねーさん。ちゃんと長女してる。気配り出来る子。良きクラスメート。
二乃、うん。じゃじゃ馬娘。気を遣うが、姉妹想い。根っこを理解していれば、優しく出来るし、案外優しさを感じることもできる。
三玖。暗くて引っ込み思案。自信をつけさせたい妹。やればできるはず。
四葉くん。快活なお人よし。手のかかる妹。しかし、あの笑顔で何でも許してしまいそう。
俺にとっては5人中3人は妹にしか思えないな。
一花は俺と一緒に風太郎×三玖をくっつけようとしたこともあり、同い年の友達という感じ。
二乃は・・・まだ、よくわからない。もう少し喋らないとはっきりしない。
素直じゃない妹っぽくはあるが。
3人が妹なのだ。俺は兄のようなポジションになろう。やっぱりナギおにいちゃん。
風太郎は、厳格な父親だろうな。まあ中野父はいるけど、帰ってこないから。
「終わったら・・・・・俺の部屋でやるかい。」
「そうですね・・・・是非、おねがいします。」
さて、やることはちゃんとやらないとね。
折角俺の家にいるんだ。好きなだけやらせてもらおう。
「よし。何から行こうか。」
「国語で・・・・」
当然のようにマンツーマンで家庭教師をする。
たったさっきの一言でR-18を想像した皆さん。
頭が桃色過ぎます。少しはまともな人になりましょう。
上杉先生から強めのお薬、もといお手製問題集が贈呈されます。
あのピュア発言をしたこの子がそんなものを連想するわけないじゃないか。
そういえば、この状況・・・・中野父はこれでも無関心なんだろうか。
姉妹からの連絡が無いにしても・・・恐らく江端さんから報告が行っていると思うのだが。
「教科書とかあるの?」
「昨日、偶然会った四葉に届けてもらいました!」
「偶然ね。」
翌日の登校中。当然、五月と一緒に登校する流れになる。
荷物どうするんだろうと思ってたらそういう事らしい。
四葉くんはデキる女だなぁ。
昨日の夜に勉強を教えていたが、
五月は勉強する時、独り言が癖になっていた。
どうやらあの時、イケナイコトを教えてしまったようだ。
この場合、
一花から鉄拳制裁 二乃からビンタ 三玖が泣く 四葉くんがドン引き
どれがいいと思う?全部簡単に想像できるが。
俺は全部嫌だね。遠慮しとく。風太郎に譲る。良かったな相棒。釣りはいらんぞ、とっとけ。
さて。どうしよう。
かろうじて三玖はセーフ。一花は仕事。二乃と五月はケンカと家出、四葉くんは駅伝。
勉強に身が入るような状況ではない。
相棒と色々相談しようか。仕事ばっかりはどうにもならないかもだけど。